美琴の活躍により、監視カメラの映像が見られるようになった。
映像は簡単に切り替えることが出来、入場ゲートと出場ゲート、それに各アトラクションの前にメインストリートの複数箇所、裏路地にもきちんと設置されている様子だった。
切り替えてはみるものの、サーシャは反応を示さない。
とどのつまりが、マリア=ファルスサードは見つからないのだろう——上条はそう解釈し、映像を切り替えていった。
「……ストップ」
サーシャが言ったのは、アーク・アイランドのメインアトラクションでもある『アーク』の前だった。
メインアトラクションなので、当然人手は多い。とはいえ元々の数が少ないから、それでも閑散としているのだが。
「居たのか?」
上条の問いに、こくりと頷いたサーシャは、ある一点を指さした。
「第一の解答ですが、ここです」
指さした一点には、少女が一人歩いていた。
白いワンピースのようなドレスを身に纏った、金髪の少女だ。小さい黒い鞄を持って歩いているその姿は、言われなければ観光客か富裕層のいずれかだと判断するだろう。
警戒をされることのない姿だからこそ——寧ろ好都合。
「……こんな小さい女の子が、魔術師なのかよ?」
上条の問いに再度頷くサーシャ。
「第二の解答ですが、その通りです。しかしながら、見た目だけで判別してはいけません。先程も言った通り、フェンリルを持ち出しているのです。それに、ここにわざわざやって来たのですから、何か目的があるに違いありません。そうでなければ、世界最高のセキュリティーとも言える学園都市の外壁を突破出来る訳もなく」
「……世界最高、かなあ?」
上条が思いつく限りでもそれなりに魔術師やら何やらが突破してきている印象だが、今はそれを議論している場合ではない。
「第三の解答ですが、少なくとも科学技術は最高峰なのではありませんか。まあ、我々魔術師からしてみればこんな城壁、簡単に突破してみせますけれども。最近はアレイスターの守りも強固になりつつあるようですが」
「?」
上条はサーシャの言っていることがさっぱりと理解出来なかったが——それはそれとして、
「少なくとも、これから我々が何をすべきであるか——それは一応の結論を見出すことが出来ます。第一の質問です。分かりますか?」
「そりゃあ」
分かっている。
分かりきっている話だ。
「——ソイツを探し出す、ってことだろ?」
上条は答える。
サーシャはゆっくりと頷いて、
「第四の解答ですが、その通りです。見つけなくてはなりません。彼女が何を為出かすか分かっていない以上——食い止めなくてはならないのです」
目的は、決まった。
手がかりは僅かであっても、ないよりはマシだ。
少女の姿を、追いかけること——それが上条達の当座の目標だ。
閖上水面は、アーク・アイランドのメインストリートを歩いていた。
目的は最初からずっとぶれていない。この遊園地に設置されているアトラクションの一つであり展示物の一つであるそれを——見るということ。
無論、それで終わりではない。
魔術を行使する必要がある——それを用いて、大魔術を。
魔術を行使すればこの街がどうなるか、それは分からない。
閖上水面も『彼女』から聞いただけであり、その魔術がどんな魔術であるかさえも、理解していないのだから。
そんな危うい状態であったとしても、閖上水面の表情は明るい。
「ふんふふーん」
鼻歌なんて歌っても良い。
何も知らなければ遊園地を楽しんでいるただの少女にしか見えないのだから。
マリア=ファルスサード。
魔術師である。
ロシア成教に属する魔術師であり、フェンリルという武器を所持している——それ以外の情報は、誰も持ち合わせていない。
まるで何者かがわざと消去してしまったかのようだった。
メイドの少女が一人、アーク・アイランドの片隅に居た。
ただ居るのではなく、掃除ロボットの上に乗って、とても眠そうな顔をしている。
土御門舞夏。
見たままの通り、メイドである。
「……実習でやって来たは良いけれど、流石に暇だなー。ちょっとばかりアトラクションを楽しんだって、バレやしないんじゃないかなー」
そんなことを企てていると、風変わりな見た目の少女が走って行くのを見かけた。
白いワンピースのようなドレスを身に纏った、金髪の少女だ。
少女は何かを探しているのか、キョロキョロと辺りを見渡しながら走っていた。
舞夏は分析する。
「……流石は学園都市の遊園地、ってところだなー。もしかしたら招待客かもしれないけれど。あれ? でも招待客って学生限定なんだったかなー?」
舞夏がそんなことを考えている間にも、少女は何処かに消えていってしまった。
「何だー、質問してみたかったのになー、何のアトラクションに勤務しているのかってことぐらい」
どうやら舞夏の中では、先程の少女はアーク・アイランドの従業員であるという結論に至ったようだった。
それだけの話だった。