「……はは」
美琴は、笑っていた。
科学一辺倒の最先端とも言える学園都市で、魔術——引いてはオカルトめいた名前が出てきたからか?
答えはそのどちらでもないか、或いはどちらでも言えるのかもしれない。
「オカルトっていうのは確かに学園都市でも噂話程度には出てくることもあるけれど……」
別に学園都市はオカルトを全否定している訳ではない。
確かに、科学技術の総本山——そういう場所である以上、魔術を筆頭とした異文化はオカルトと一括りにされてしまうのも、或いは致し方ないのかもしれない。
「魔術って、まさか本気で言っているつもり? 幾らアンタの話だからって、流石にそこまで理解出来るとは到底——」
「いや、だから」
「学園都市の人間は、魔術を理解しない? 聞いたことはあるけれど、まさか本当だったなんてね」
言ったのはマリアだ。
「……魔術を理解出来ないのは、確かにその通りなのかもしれねえな。現に、俺も知らなかったよ、魔術という存在を。
「幻想殺し。貴方という存在は、イレギュラー過ぎる。魔術を理解して、科学技術をも超越するその能力——」
一息。
「……先ずは、それを排除しなければならない。
一瞬だった。
上条の隣に、マリアが突如として出現して——マリアは、右腕を切り落とした。
「……えっ?」
「再度、
上条当麻は突然のことに理解出来ずに——その場に倒れ込んだ。
窓のないビル。
アレイスター=クロウリーは、ニヒルな笑みを浮かべていた。
「……何がおかしい、アレイスター」
土御門の問いを聞いて、アレイスターは元の表情に戻る。
「幻想殺しについて、何を知っているのか。何も分かっていないのであれば、それを口にすることは出来ない——と。そう思っただけに過ぎないのだよ」
「何だと?」
「幻想殺しを、学園都市の超能力で測ることが出来るような範疇だと思っているのかね? レベル0というのは、あくまでも便宜上だ。確かに、無能力者だよ、彼は。しかしながら、それは超能力を持ち合わせていないだけだ。超能力以外の力を持ち合わせていたとしても、超能力という定規に照らし合わせてみれば、無能力だった。ただ、それだけに過ぎない」
「幻想殺しは……」
「——原石、とでも言えば良いかな? 能力とは違う、人工的に作り出されたものではない。学園都市の超能力は、いわば作り出されたものだ。無論、その石を輝かせるも燻らせるも周り次第なのだろうが」
「……狂ってるな」
土御門は言葉を吐き捨てる。
「今更かね」
アレイスターは、そう言い放ち。
会話は終了した。
「ちょ、ちょっと……!?」
駆け寄った美琴だったが、直ぐにそれが急を要する事態であることは分かる。
右腕が、肩から先が、切り落とされている。
ほんの数秒前まで、彼の身体についていたそれは、最早その機能を果たさない。
「ええと、その……」
「回復魔術」
「えっ?」
こんな時にも——彼女は冷静だった。
「回復魔術! 使えないの、使えるの!?」
インデックスは、サーシャに問いかける。
「え、ええと、第一の解答ですが……使えなくはないですが、」
「使えるなら、良い」
インデックスは、目を瞑る。
「な、何を」
「今から、回復魔術を言う。だから、それを使って」
インデックスは、一人の少女だ。
しかし、その正体は一〇万三〇〇〇冊の魔導書をその脳内に完全に記憶する——魔導書図書館。
彼女を手にした魔術師は、魔神とも言える領域に到達することが出来るとされる、
だから、彼女をこう呼ぶ。
上条当麻が目を覚ましたのは、ベッドの上だった。
「こ、ここは病院……?」
「残念ながら、と言って良いのかどうかは分かりませんが、違います」
気付くと、上条の直ぐ横にはサーシャが座っていた。
「そ、そうだ。俺は確か右腕を切られて——」
上条が慌てて右腕を確認しようとすると、サーシャが口元に人差し指を当てた。
「第一の解答ですが、貴方の右腕は回復しています。そして、彼女のお陰です」
気付くと、上条の隣のベッドで、ぐっすりとインデックスが眠っていた。
「イン……デックス?」
「禁書目録とは、このことを言うのですね。彼女がもしも魔術師だったならば、きっと世界を征服することさえ出来たことでしょう。そういう意味では、彼女が魔術師ではなく、魔術とは無縁の学園都市に居ることは、幸福なことなのかもしれません。戦いということを知らなくて良い、という意味では……」