第十六話
目的地は決まった。
主役は揃った。
後は——どのようにして、相手の目的を阻止するか、だ。
「……如何すれば?」
上条は考えていた。
考えているばかりで、具体的なアイディアが全く出てこないのが、少々悲しいところではあったが、しかしながら何もしないよりはマシだ。
大いに、結構。
「……それにしても、マリア=ファルスサードには味方はいるのか?」
「居るとすれば——一人しか居ません。彼女は、孤独を好んでいましたから」
言ったのはサーシャだ。
彼女しかマリア=ファルスサードのことを知らない以上、質問は自ずと彼女との間に広がることとなる。致し方ないことだが、それをサーシャを理解している以上、未だ良いのかもしれない。
「そうか……、でも少数精鋭って可能性だってある。そうなると困るのは、その戦力がどれぐらいのものかって話だよな。知っているか? サーシャ」
「第一の解答ですが、こちらもデータベースに載っておらず。不確定な情報だらけなのです。数少ない情報で言えば、彼女たちは血も繋がっていないのにまるで姉妹のように仲が良いと言われていました。周りから見てもそれは一目瞭然なぐらいには」
姉妹、か。
上条はふとあることを思い出した。
血も繋がっていない——というのはどうかとして、クローンとして作り出された一三〇〇〇体の妹とそれを救った姉のことを——。
「……何であたしの顔を見ているのよ?」
ふと上条は美琴からそう言われて、我に返った。
「え? そっちの顔、見てた?」
「無意識なのはそれはそれでどうなんだっつーの。……とにかく、姉妹みたいに仲が良いのなら、それは結構面倒臭そうよね」
「如何して?」
「だって、絆が結ばれているでしょう。下手したら、自己犠牲を厭わないぐらいの固い絆がある可能性だってある。……そういう時の人間って非常に厄介よ、きっと」
「何か経験でも?」
「アンタには察するという能力はないの? それすらも含めて無能力者ってわけ?」
「……何か、すごーく傷つけられた気分」
上条は勝手にしょぼくれているが、しかし歩みは全く止めなかった。
人々は巨大遊園地をどう楽しむかしか考えておらず、会話の内容も次にどのアトラクションを遊ぶだとか、ご飯は何を食べようだとか、やっぱりもう一日ぐらい遊びたいよねだとか、そんな楽観的な内容しか聞こえてこない。
上条たちにとっては、それは守るべき日常だ。
もしそれを破壊しようとする人間が居るというのなら——。
「ここですね」
サーシャの言葉を聞いて、上条は上を見上げる。
そこには大きなコンクリートの柱が何本か設置されていた。中心にはエレベータと階段が置かれていて、少し中空に浮く形で船が設置されている。
ノアの方舟。
かつて世界を洗い流すほどの大洪水が起きた際に、人間と動物の番いを載せることで生きながらえた——伝説上の船がそこにはあった。