とある魔術の大遊園地≪カーニバル≫   作:natsuki

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第二十話

「違う」

「え?」

「終わらない」

 

 水面は首を振る。

 

「だって」

 

 一歩。

 さらに近付く。

 

「わたしが終わらせない」

 

 マリアが息を呑む。

 

「あなたを連れて帰る」

 

 震える声で。

 それでも確かに。

 水面は宣言した。

 

「何回逃げても」

「何回拒絶されても」

「何回嫌われても」

 

 そして。

 

「わたしは、あなたのお姉ちゃんだから」

 

 方舟が起動する。

 世界が揺れる。

 だがその瞬間。

 マリアの瞳から、一粒だけ涙が零れ落ちた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 方舟は、起動した。

 最初に起きたのは振動だった。

 地鳴り。

 地震にも似た揺れ。

 だがそれは自然現象ではない。

 もっと巨大で。

 もっと異質で。

 もっと根源的な何か。

 まるで世界そのものが軋みを上げているかのようだった。

 アーク・アイランド全体が揺れる。

 観覧車が軋む。

 ジェットコースターが停止する。

 噴水の水面が波立つ。

 そして空が――歪んだ。

 

「……何だよ」

 

 上条当麻は思わず呟く。

 空が割れているように見えた。

 雲が裂けている。

 否。

 雲ではない。

 もっと奥。

 空という概念そのものが引き裂かれているような光景だった。

 紫色の光が空を走る。

 巨大な光の輪が出現する。

 誰が見ても異常だった。

 誰が見ても理解出来ない現象だった。

 

「サーシャ!」

 

 上条は叫ぶ。

 

「これは!」

「術式です!」

 

 サーシャも叫び返す。

 

「方舟が神話を再現しようとしている!」

「再現ってレベルじゃねえだろ!!!!」

 

 その瞬間だった。

 轟音。

 巨大な影が落ちる。

 

「――ッ!!」

 

 上条は咄嗟に飛び退いた。

 一秒遅れていたら身体ごと潰されていた。

 フェンリル。

 巨大な狼の前脚が地面を砕いていた。

 コンクリートが爆散する。

 衝撃波だけで数十メートル先のガラスが吹き飛ぶ。

 

「こっちを見なさいよ!」

 

 美琴が叫ぶ。

 青白い雷光が奔る。

 数千万ボルト級の電撃。

 普通の生物なら蒸発している。

 だが。

 フェンリルは止まらない。

 電撃が身体に命中した瞬間。

 その周囲の空間が歪んだ。

 まるで何かが書き換えられたように。

 そして。

 雷は消えた。

 

「はぁ!?」

 

 美琴が目を見開く。

 

「今度は何よ!」

「恐らく」

 

 サーシャが歯を食いしばる。

 

「現象そのものを書き換えています!」

「つまり!」

「雷が効くという結果を消した!」

「反則だろ!」

 

 上条は叫ぶ。

 だが。

 そんなことを言っている暇はない。

 フェンリルが再び動いた。

 速い。

 巨大な身体からは想像出来ない速度。

 弾丸のように突進する。

 牙。

 爪。

 衝撃。

 全てが必殺だった。

 そして。

 上条は気付く。

 フェンリルは強い。

 確かに強い。

 だが。

 

「違う……」

 

 上条は呟いた。

 フェンリルは障害だ。

 最大の敵ではない。

 本当に止めなければならない相手は別にいる。

 

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