時を同じくして、第七学区。
大遊園地『アーク・アイランド』、その入り口。
ゲート入り口にQRコードを翳すと、ゲートが開かれた。
「……何というか、ガラガラだな……」
「とうまとうま!! 何だか良く分からないけれど、楽しそうなんだよ!!」
学生を招待するとは言っていたが、その数までは上条も把握していなかった。
今、この遊園地に居る招待客は、最大二百名。
キャパシティは一万人と言われていることを考えると、このガラガラ具合も頷ける。
「……何というか、意外と広い?」
「とうまとうま!! 美味しそうな匂いがするんだよ!! とにかく先ずは、ご飯を食べて落ち着こうよじゅるり」
「えーと、インデックスさん? 心の声がダダ漏れになっているような気がするのですけれど……?」
インデックスの胃袋は無限大であることは十二分に理解しているはずの上条ではあったが、しかしながら休憩をしたかったのもまた事実。
上条の住む学生寮から第七学区のアーク・アイランドまでは、そう時間はかからない。
しかしながら、今日はプレオープンということもあって、多くの野次馬やマスコミが駆けつけていて、第七学区への交通は大混雑であった。
「スマートフォンでも見れば、混雑状況は分かったんだろうけれど」
残念ながら上条はそこまでスマートフォンを使いこなせる訳ではない。
使いこなすべきであるとは考えているのだろう。
学園都市に住む人間として、それぐらいの科学技術は理解しておくべきと勝手に解釈している。
或いは、土御門や青髪ピアスとの連絡が最近はショートメッセージアプリ経由になりつつあることも影響しているのかもしれない。
しかし、そういう状況であってもなお、上条はあまりスマートフォンを有効活用しようとは思わない。
思いたくない、というのが正解やもしれないが。
「……えーと、インデックス。あんまり食べられないかもしれないけれど、取り敢えず一旦休憩するか?」
「休憩? それってつまり、ごはんを食べられるってこと? ごはん、ごはん!!」
「うわーっ! お前はパブロフの犬か何かか!? ご飯というワードを聞いたら興奮する性格でも持ち合わせているんですかねーっ!!」
ワイワイガヤガヤと、上条とインデックスは会話をしながら、一先ずは一番近くにあるカフェへと向かうことにするのだった。
サーシャ=クロイツェフ。
ロシア成教が誇る魔術戦闘特化部隊『殲滅白書』の一員であり、専攻分野は人間以外の『あらざる者』の殲滅だ。任務遂行のためにはロシア本国では一切禁じられている魔術の実施をも躊躇わない。
ロシア成教のエージェントである彼女は、今学園都市に来ていた。
「……何故、ここにサーシャさんが居るんでせう?」
上条は唯一空いていた席で相席を頼もうとしていたところに、サーシャが座っていたために、目を丸くして質問をしていた。
「第一の解答ですが、解答を拒否します」
「……それって、解答の意味があるのか?」
「第二の解答ですが、確かにその通りです。しかしながら、こちらとしても組織に属する身として、言えないこともあるということは理解していただきたい」
上条はそう言われて、致し方なく席に腰掛ける。
インデックスはきょとんとした様子だが、直ぐにメニューを見始める。
「その……インデックスさん?」
「うん?」
「別に問題ないのか? その、俺の隣に座っているのは——」
「うん、魔術師でしょ。でも、問題ないよ。少なくとも、わたしに危害を与えることはなさそうだし」
(それで良いのか……?)
上条の頭には疑問符が沢山浮かんでいたが、しかし当の本人はそれほど気にしていない様子であることを踏まえると、上条がそれほど考えることもないのだろう。
上条はメニューを開く。すると、上条の目には直ぐに普段よりも三割ほど高い料金のメニューが入ってきた。
場所代としても、かなり高額だ。
「……いや、高いな。一番安いメニューはないか……? うーん、このオムライスにするか。これだとギリギリ二千円を切っているし」
「えーと、それじゃあこのスーパーランチセットが良いかも!」
「おいちょっと待てインデックス、それは三千円を優に超えるぞ……! 食費を今後切り詰めていかないといけなくなる——!」
上条が値段を見て阿鼻叫喚の悲鳴を上げるのを見て、サーシャは溜息を吐く。
「第一の質問ですが、あなたは今お金を持ち合わせていないのですか?」
「持ち合わせていないというか、一般的な学生として大したお金を持っている訳じゃないんですよ。いや、まあ、普段よりは多めに持ち歩いているとはいえ!」
「第三の解答ですが、ここで出会ったのも何かの縁です。わたしがお支払いしましょう」
「……え?」
サーシャの予想外の提案に、上条は首を傾げた。
「第二の質問ですが、提案が聞き取れませんでしたか?」
「いや、その——ごめんな。提案が予想外すぎて。もう一度言ってくれるか?」
「第四の解答ですが、了承します。ここで出会ったのも何かの縁です。ここのお金は、わたしがお支払いしましょう」
サーシャの提案に、上条は涙が出そうなぐらいに歓喜するのであった。