とある魔術の大遊園地≪カーニバル≫   作:natsuki

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第四話

 一通り食べ終えたところで、上条は改めて頭を下げる。

 

「いや、ありがとうな。まさかこんなところで魔術師から施しを受けるだなんて」

「第一の解答ですが、別に問題ありません。困ったときはお互い様、ですから」

 

 サーシャからそう言われると、上条も少したじろいでしまう。

 インデックスはデザートのアップルパイを食べながら、パンフレットに目をやる。

 パンフレットには、アーク・アイランドの全体マップが描かれており、そこにパークの説明が追加されているスタイルだ。

 

「メリーゴーラウンドに、ジェットコースター……!」

 

 目をキラキラさせているインデックスだが、上条は何処か落ち着いている様子だ。

 

「……第一の質問ですが、何か気になることでも?」

「隠していても、気になっちまう。魔術師が学園都市に居る、その理由を」

「……はあ」

 

 サーシャは溜息を吐いて、話を続けた。

 

「第二の質問ですが、ほんとうに知りたいのですか?」

「教えてくれるのか?」

「第三の質問ですが、あなたはこれを見て何か気付いたことはありますか」

 

 そう言ってサーシャはパンフレットを指さした。

 

「パンフレット?」

「……何か、儀式を行おうとしているのかな?」

 

 インデックスの言葉に、サーシャは頷く。

 

「第二の解答ですが、ご明察です。あなたも、覚えがあるでしょう。物体を設置して、エネルギーを流し込むことで生まれる術式を——」

「——御使堕し」

 

 上条は覚えていた。

 否、忘れるはずがなかった。

 つい一ヶ月ほど前に、上条当麻の父、上条刀夜が偶然発動させてしまった大魔術。

 それは、玉突きスタイルで人間の魂と肉体が切り離されてしまう魔術だ。それによってサーシャ=クロイツェフの身体には大天使が降りたともされているが——。

 

「第三の解答ですが、覚えているようですね。残念ながら、わたしは全く覚えておりませんのですが……。困り果てたものです、後遺症に困ることになろうとは、流石に思いもしませんですから」

「そうか……、大変なんだな」

 

 その身に天使を堕としたサーシャは、その記憶を持ち合わせていない。

 にも関わらず、人間の身でありながら天使を堕としたその代償は支払っていた。

 全くの偶然であり、被害者であるにも関わらず、だ。

 

「第四の質問ですが、先程の続きをしても構いませんか?」

 

 こくり、と頷く上条とインデックス。

 ふう、と溜息を吐いたのち、サーシャは再び話し始めた。

 

「我々の耳に、ある情報が入ってきました。それはとある魔術師が我々とは異なる行動を取っているということ。ロシア成教に属していたとされる、魔術師です」

「魔術師?」

「マリア=ファルスサード。彼女はフェンリルを与えられていました」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。話が全く追いつかない。マリア=ファルスサードという魔術師が居て、その、フェンリルっていうのは?」

「フェンリルは北欧神話に登場する狼のことだね」

 

 言ったのはインデックスだ。

 流石は一〇万三〇〇〇冊もの魔導書を補完する魔導書図書館——禁書目録だけのことはある。

 

「その通りです。フェンリルは、我々ロシア正教にある武器の一つです。ただの武器ではなく、意識を持った武器――とでも言えば良いのでしょうか。詳しい話は、何せ誰にも分からないのですから」

「何故だ? ロシア正教が管理しているんだったら……、ある程度把握出来ているはずなんじゃ?」

 

 上条の問いに、深く溜息を吐くサーシャ。

 

「第四の解答ですが、まさにその通りです。……ロシア正教の管理下にありながら、行方が定かになっていなかった。そんな幻とも言える存在、それがフェンリルでした」

「……ちょっと待て。おかしくないか? 何で何処にあるかも分からない幻の武器が、魔術師に伝わっていることだけは分かっているんだ? 普通、それも含めて幻のような気もするけれど……」

「マリア=ファルスサードが意識を上書きしていた――そう言われています。彼女の魔術の一つでもありますから」

「上書き?」

 

 ええ、とサーシャは言って、

 

「マリア=ファルスサードは、様々な事象を『上書き』出来ます。例えば、自分が太刀打ち出来ない状況でそれを使えば、状況が完全に逆転するように。そして、それは一度発動してしまえばひっくり返すことすら難しい——そう言われています」

 

 それってチートじゃないか。

 上条はそう反論しようとしたが、

 

「第五の解答ですが、当然、これには条件があります。そうでなければ、この世界を牛耳ることすら出来るでしょうから。一応、あなたにも伝えておきましょう。と言っても、わたしが知っているのは僅かなデータの可能性がありますが」

「それでも良い。……出来ることなら、出会いたくはないけれど」

「先ず、彼女が想像することしか上書き出来ません。人間は想像出来ることしか実現出来ない……とは言ったものですが、それに則っていると言っても良いでしょう。魔術にはどんなものでもルールが存在します。ルールを破る魔術というのは、最早魔術師の欄外……神やそれ以上の存在でなければ、実現出来ないことですから」

「物騒なことを言うな。……それはそれとして、ルールは覚えた。問題は、その魔術師とアーク・アイランドのレイアウトに何の関係性が? まさかここで何か大きな魔術を行使しようとしているのか……?」

 

 だとしたら、それは有り得ない。

 何故なら、アーク・アイランドは何ヶ月も前から緻密な計画によって準備されたと言われているからだ。実際の工事期間は学園都市の最新鋭技術によって、外界のそれよりも大幅に短縮されたとしているが、それでも準備期間は必要だ。

 

「彼女は、レイアウトに関わっていません。そもそも、そんなことをさせようとするのは、許されないでしょう。……あの男ならば」

「ならば、どうして?」

「第六の解答ですが、これはあくまでもわたしの予想です。……恐らく、マリア=ファルスサードは元々出来ていた未完成の魔術に一つ加えただけに過ぎないのです。目玉がない竜の水墨画に、目玉を追加して完成させたかのように」

 

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