とある魔術の大遊園地≪カーニバル≫   作:natsuki

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第五話

 さて、その頃。

 

「……つ、ついにやって来たわよ、アーク・アイランドっ!! それにしても、学生しか居ないからむちゃくちゃ閑散な感じがするけれど?」

 

 常盤台のエース、御坂美琴もまたアーク・アイランドの入場ゲートを潜っていた。

 約一名のおまけを含めて。

 

「お、お姉さまと遊園地デート……! ま、まさかこんな日がやって来ようとはっ!! あんまりオカルトとか興味ありませんけれど、本日ばかりは祈りを捧げる気分ですわよ……!」

「はいはーい、アンタはアンタで風紀委員の仕事があるんでしょ。こっちはその間に暇だから、遊園地を巡っていよっかな?」

「何を仰いますか、遊園地をパトロール、もといデートすることだって大事な――」

 

 そこまで言いかけたところで、非情にも黒子のスマートフォンが小刻みに震えた。

 

「……もう何ですの、こんなときに。――げっ」

 

 慌てて電話に出る黒子。

 

「……もしもし」

『あー、やっと繋がった。何をしているんですか、白井さん』

 

 声の主は同じく風紀委員の初春飾利だった。飴玉を転がすような甘い声色の彼女の役割は、どちらかと言えば後方支援――裏方からオペレーターとして活躍するのが殆どだ。

 

「何を、って。パトロールをこれからするところなんですの」

『えー、そんなこと言ってアーク・アイランドで遊ぶつもりなんじゃないですか? ずっと楽しみにしていたのに、ずるいなぁ』

 

 ……まさか私物のスマートフォンなのに盗聴でもされているのか、と思いたくなるぐらいの勘の良さだった。

 初春は続ける。

 

『アーク・アイランドでは配置場所が決まっていましたよね? そりゃあ、超電磁砲の御坂さんが居るのは心強いですけれど……、あくまでも風紀委員ではありませんから、そんな大っぴらにお願いをすることは出来ないんですよ? 風紀委員の力が衰えたなんて少しでも思われてしまったら、学園都市の治安は悪くなる一方なんですから』

 

 黒子は聞いていてとても耳が痛かった。

 しかし、言っていることは全て事実だし、正論だ。

 

「……はいはい、分かっていますわよ。しかし、それでもやらなきゃいけないことが時には――」

 

 急に電源が切れたかのように言葉が聞こえなくなったので、初春は問いかける。

 

『あれ? 白井さん、白井さーん……?』

「お……」

『お……?』

「お姉さまぁーっ!? お姉さまはいったい何処に行ってしまいましたのーっ!!」

 

 アーク・アイランドに、絶叫が響き渡る。

 黒子が話しているうちに、美琴が何処かに消えてしまったからであった。

 

 

 さて、その美琴はというと、メインストリートから一本外れた路地を歩いていた。

 路地と言っても、まるでヨーロッパを歩いているかのような石畳の街並みは、ここが学園都市であることを一瞬忘れてしまう程だ。

 ただまあ、聞こえてくる音声が英語やフランス語のそれではなく日本語だけであることを踏まえると、一気に雰囲気が変わってしまうのだが。

 

「……やーっぱり、海外のシチュエーションって音声も大事なのねえ。薄々予想はしていたけれど、こうもあっさり思い知らされちゃうとな」

 

 美琴は伸びをして、スマートフォンを開く。

 元々予定していたプランでは、先に限定ゲコ太を手に入れる。

 それからは、様々なアトラクションをつまみ食いする感覚で幾つか体験する、といった感じであった。

 

「……えーっと、ゲコ太ゲコ太……」

 

 キョロキョロと辺りを見渡す。

 限定グッズとはいえ、招待客の最大数を考慮すればそう簡単になくなることはないだろう——美琴はそう高をくくっていた。

 

「まあ、最近はそういう限定グッズを転売する輩も出てきているし、油断は出来ないけれどねー。そんなことをしている奴が居たら、超電磁砲をぶつけてやるところだけれど」

 

 独り言をつぶやきながら、お目当ての場所へと歩いて行く美琴。

 彼女の目的は、いつも単純だ。

 

 

 遊園地である。

 幾ら魔術師が居るからとて、それは変わらない。

 従って、上条とインデックスは、ジェットコースターに乗っていた。

 恐らく人工的に作られたであろう山岳に作られたそれは、トンネルを通ったり滝を潜ったり落下が複数見られたりなどと、かなり歯ごたえのある様子だ。

 本来ならば沢山の客が押し寄せそうな人気アトラクションに思えるが、今日はプレオープン。

 何せ入っている人間が二百人程度しか居ないのだ。

 混雑とは無縁の遊園地は、こうも快適であるのか。

 四人乗りのコースターを、上条とインデックスで貸し切っている。

 

「……ちょ、ちょっと怖いかも」

「まあ、そうだな。確かに怖さはあるかもしれん」

 

 今、二人の乗るコースターはゆっくりと上に上がっている。

 ジェットコースターのお約束として、上に上がっているということは落下があるということだ。

 それも、それに至る経路は大抵上る前から見えている。

 それは恐怖を煽る演出だと言えるだろう。

 

「……来るぞ!」

 

 そして。

 そして。

 そして。

 二人が乗るコースターは、蓄えた位置エネルギーを使って急速に落下していく——!

 

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