窓のないビル。
再び、アレイスター=クロウリーの話。
「
男は数瞬間を開けて、答える。
「人間は、神のことなど何も理解出来ない。そうであるならば、人間を超えた身体を手に入れなくては神の答えに辿り着くことは出来ない——良く言ったものだよな、アレイスター。超能力者の最高点であるレベル5……、さらに
「ご明察。流石に知っているか」
「アレイスター……、何を考えている?」
再び、男はアレイスターに問いかけた。
「人間は、楽園に住んでいた。楽園であれば、穢れも何も知らないままで良かったのに……唆されて、知恵の木の実を食べた。それによって人間は『知恵』を身につけ、やがて楽園から追放された……。何故だか分かるかね」
「何を話すと思いきや創世記の話か? 神は命令したんだろう。楽園にある善悪の知識の実――それだけは食べてはいけない、と。しかし、蛇に唆されてしまい、ついには食べてしまった。それにより人間は無垢を失い、気付いた神は人間を楽園から追放した。原罪とでも呼べば良いか」
「答えにはなっていないな」
アレイスターは言う。
何処か笑みを浮かべているようにも感じられた。
「神は恐れたのだよ。人間が、神と同じ地位に立つことを。だからこそ、楽園の外に追放し、人々を険しい世界で生きていくように命じた」
知恵の木の実。
それを食べたことにより、人間は知恵を身につけた。それは、神になるに等しい代物であった――と。
「それとこれと、何の繋がりが?」
男の言葉に、アレイスターは答える。
「人間が人間として存在するのは、その罪に縛られているからだ。それは人間として生きている間は一生続けられる。檻とでも言えば良いか」
檻。
今生きているこの世界を、アレイスターはそう捉えた。
「その檻から脱出すれば、さらに上に辿り着くことが出来る、と? 人間の運命から解放されれば、後は天上の意思に辿り着くということか」
「その通り。だからこそ、実験を続けてきた。いや、
アレイスターがここまで語るのは珍しい――男はそう思い、話を聞いていた。
しかし、無論警戒はしていた。アレイスターは自らのことと計画については口を固く閉ざすことが多く、これまで話していくということは、何か裏があるのではないか――そう勘繰ってしまうのだ。
「じゃあ、誰かを犠牲にするというのか? それこそ、肉体的な死をもって」
「……そう。わたしは、そう計画を立てている。しかしながら、
「なぁ、アレイスター」
男は、口を開けた。
そして――考えを口にする。
「――その第一候補が、無能力者だっていうのか?」