とある魔術の大遊園地≪カーニバル≫   作:natsuki

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第二章 水に垂らした一滴のインク   (not)_clearly.
第七話


 魔術師サーシャ=クロイツェフは、アーク・アイランドの路地を走っていた。

 そしてそれを追いかけるのは、上条とインデックスだ。

 

「な、なあ、サーシャ? 未だ追いつかないのか、その魔術師には」

 

 幾ら何でも走り過ぎだ——上条はそう思い、サーシャに質問する。

 漸くサーシャは立ち止まると、首を横に振った。

 

「……第一の解答ですが、完全に見失いました。何処に消えてしまったのでしょうか」

「……いや、それは俺も聞きたいところだけれどさ」

 

 上条とサーシャが話していると、漸くインデックスが二人に追いついた。

 その効果を失ったとはいえ、修道服——『歩く教会』を身につけているのだ。普通の人間よりは重量がある服装と思って差し支えはないだろう。

 

「はあはあ、やっと辿り着いたんだよ。で、魔術師は居るのかな?」

「——息を切らしているところ悪いけれどな、インデックス。どうやら見失ったらしいんだ」

 

 簡潔に状況を報告すると、インデックスは地面にそのままへたり込んでしまった。

 

「そんなのってないんだよ……。お腹が空いたんだよ」

「何処かで休むか? 手がかりがない以上、無闇矢鱈に歩き回るのもどうかと思うし」

「第二の解答ですが、出来るのであればそれは避けたいところです。マリア=ファルスサードが何を目的に学園都市に侵入したのかが分からない以上、一刻も早く彼女と対面しなければなりませんから」

 

 それもその通りだ。

 しかしながら、現状手がかりが何一つとして存在しない。

 であるならば、道を闇雲に探したところで、それが正解に辿り着く近道であるとは言えない。

 

「考えろ……」

 

 上条は呟く。

 如何にして魔術師を探し出すか? 学園都市から招待された二百名の人間の中から——たった一人を。

 

「……やっと追いついたかと思えば、何を物騒なこと話しているのかしら?」

 

 声が聞こえた。

 それはインデックスでもサーシャでも——当然、上条の声でもない。

 上条が振り返ると、そこに立っていたのは——、

 

「アンタも当たったんだ? この遊園地への招待状を」

 

 ——学園都市の超能力者、その第三位、御坂美琴であった。

 

 

 美琴は上条から事情を聞き、何となく理解した様子だった。

 とはいえ魔術師とかオカルティックな事情には明るくない。そこは超能力者であるから、致し方ないとも言えるのだろう。

 

「……つまり、この遊園地から一人の少女を探し出したい、ってことなのね。外見的な特徴は? それとも、誰か一人が直ぐに判別出来るような、風変わりな見た目でもしているんだったら良いのだけれど」

「第一の解答ですが、わたしであれば判別は出来ます。元々は、同僚みたいな立ち位置ですから」

 

 サーシャは手を上げて答えた。

 

「よし、それなら問題ないわね。ちょっとついてきて」

 

 美琴はそう言って、足早に何処かへと向かう。

 せめて何をするのかぐらいは話してほしかったものだが、急いでいる以上致し方がない。何処かのタイミングで聞き出せば良いだろう——上条はそんな諦観の気持ちで、美琴の後ろをついていった。

 直ぐに美琴は立ち止まった。

 彼女が立ち止まったのは、公衆電話の前だった。

 もうすっかりスマートフォンが流通している昨今では、最早絶滅危惧種に近い感じではあるのだろうが、しかしこれでも災害時には一定の効果があると聞く。携帯電話は基本的に無線で通信している以上、混雑が見込まれれば確実に使えなくなる。例え無線であろうとも、架空線と呼ばれる線によって通信がなされている以上、リミッターは存在するからだ。

 そして、携帯電話は最早一人一台とも言える時代である。ということは、常に一億人以上の人間が使っているのであって、災害時にそれが集中してしまえばパンクすることは必至だ。

 一方、公衆電話を含めた固定電話は、実際に電話線が伸びている。即ち、電話線さえ断線しなければ一定の通信品質は保たれるのである。

 そういったこともあり、公衆電話は完全に消失することはなく、現在に至っている。

 そして、それは美琴にとっても好都合であった。

 中に入り、慣れた手つきで携帯電話を公衆電話と接続する。

 

「あれ? スマートフォン、持っていないんだっけ?」

「持っているけれど、あれはもうこのやり口には使えないのよね。変なセキュリティーがかかっているからかもしれないけれど、やりづらくなって困るのよねー。科学技術の進歩も考え物よ」

 

 一番科学技術の進歩を享受しているはずの超能力者がそう言うのは、最早皮肉だ。

 

「これをこうして、っと」

 

 美琴の身体から、ばちばち、と音を立てて電気が出てきている。

 御坂美琴の能力、超電磁砲。身体から電気を生み出すことが出来、コインや小さい金属を媒体として電磁力によって高速の弾丸を撃ち出す能力だ。

 それを応用、或いは基本に立ち返ったことが——こうやって体内から電気を出すということなのだろう。

 

「……あのー、御坂さん? 無能力者にも分かりやすく、今の状況を説明してもらえませんか?」

「何よ、もうちょっとでこのファイアウォール突破出来るから……っと!」

 

 美琴は携帯電話の画面を見る。

 そこに映し出されていたのは、少し高い位置から映し出されたアーク・アイランドの入場ゲートの様子だった。流石にもう入場する客も居ないのか、閑古鳥が鳴いている様子だ。そことなく入場ゲートの職員も退屈そうな様子を見せている。

 

「……これって」

「そ。監視カメラの映像——わたしが上手くやりくりして、監視カメラのデータベースにアクセスした、って訳。今はこういうのリアルタイムでサーバーに送られているみたいだし、便利よね。まあ、数秒のディレイはあるらしいけれど、それでも活用するには十二分だと思うし」

 

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