舞台裏の勇者   作:珍宝銀銀丸

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読んでくれてありがとうございます。


奴隷パーティ

 

 

翌朝、俺達は牢屋前の通路に並べられ、人数の確認とここにいる兵士たちの上司らしき人物からの通達があった。

 

「私の名はヘムズ監督官だ。私は貴様らを様々なところから集めた。主に売られた者、債務者、犯罪者から構成されている。いまから貴様らには『隷属させる魔法スレイン』をかけさせてもらう。この魔法は

術者の命令に逆らえなくなるものだ。もし逆らおうものなら、強制的に自害するようになってある。」

 

そんな理不尽な内容に周りの者たちは皆騒ぎ立てた。

 

「黙れぇ!!!貴様らの意見など求めてなどいない!!これは決定事項だ!お前ら、連れて行け。」

 

「「はっ!」」

 

そして俺達は通路を出てしばらく歩き、ある程度ひらけた部屋まで連れて行かれた。

 

 

 

♢♦︎♢

 

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

俺の2個前の順番の人が、魔法をかけられた瞬間に、悲鳴をあげのたうち回っていた。

 

「こんなの聞いてねぇ!!!」

 

その悲鳴を聞いた前のやつが列から逃げ出した。

 

「おい!!列に戻れ!!」

「ど、どけぇ!!!」

「チィッ!!」

 

ザシュッ!!!

 

「ギャッ……」

 

そいつは兵士に胸を槍で貫かれ息絶えた。

 

っ!?こ、こんな簡単に…人を殺すのか…!?

 

目の前の光景に動揺し、固まってしまう俺に後ろのギュメイが諭すように言う。

 

「…これから人死にが当たり前のように出るだろう。だから…慣れておいた方が良い。心が壊れる前にな。」

 

あ、ありえない…。慣れるわけないだろう!!狂ってる…狂ってやがる!!

 

俺にはこの兵士たちも、ギュメイも、狂人にしか見えなかった。

 

「次の奴!!ぼさっとしてないでこい!!」

 

とうとう俺の番がきた。

それでも動けない俺に、痺れを切らした兵士が俺を蹴飛ばし、前に出す。

 

「ぐっ…!!」

「『隷属させる魔法』」

 

その瞬間、体に雷が落ちたような、全身が焼けこげるような痛みが走った。

 

「ぎゃあああああああああああ!!!」

 

そのまま俺は意識を失ってしまった。

 

 

 

♢♦︎♢

 

 

 

バシャッ!!!

 

俺は頭から水をかけられ目を覚ました。

 

「おう。目ぇ覚ましたか?もうすぐで全員終わるところだ。」

どうやらギュメイが水をかけて起こしてくれたようだ。

隣には体をおさえるゴレオンと、俺と同じく気絶しているゲルニックがいた。

 

「クソ!!!体がまだビリビリしやがる!!!」

「アパ…アパパパアパパパパパ…」

 

そこでようやく最後の一人が終わったらしく、ヘムズ監督官がやってきて話しだした。

 

「数人死んだが…まあいい。貴様らはこれからこの国のために働いてもらう。まずは、列順に5人1組作れ。全部で6班できるはずだ。」

 

俺とギュメイたちは最後尾にいるので、あとは前の一名で班が完成した。

お互いに話す間もなく、次の隣の場所へ移動することになった。

 

「まあ、ここにきた時点で気づいていると思うが、貴様らは魔族との戦場に駆り出される。それも最前線でな。こちらも貴重な兵士たちを失いたくないんだ。だから、貴様らは我々の肉壁になってもらう。」

 

俺達がついたのは武器庫だった。

この国が魔族と戦争をしてるので、薄々そうではないかと思っていたが、当たっていたようだ。

 

「ここでは貴様らの武器を選んでもらう。すぐに死なれても困るからな。魔族や魔物でも道連れにしてから死んでくれ。それと、これは武器でもあり貴様らが自害する時の道具でもあるから、慎重に選ぶがいい。」

 

うっすら笑いながらそう言い、また兵士の後ろへ戻って行った。

 

 

 

♢♦︎♢

 

 

 

しばらくして、皆一通り選び終わったらしく、またヘムズ監督官が出てきた。

 

「選び終わったか。ではしばらくここで待機しておけ。…逃げようとしても無駄だからな。」

 

そう言ってヘムズ監督官は部屋を出て行った。

 

とりあえず、班で集まり、新しくきた1人と顔合わせをする。

そいつは何故か、頭にだけバケツを逆さまにしたような防具をつけ、下はふんどしの奇妙な格好をしていた。

 

うわぁ…めちゃくちゃ話しかけづれぇ…

 

俺を含むみんなが話を切り出せずに、しばらく沈黙の時間が続いたが、急にそいつがゆっくり立ち上がり、腕を"Y"のポーズに伸ばしてこう言った。

 

「俺はソラール。見ての通り、太陽の神の使徒だ。」

 

…もっと話しかけづらくなっちゃったよ……

 

こいつの変な自己紹介によってまた沈黙の時間が続いたが、しばらくしてギュメイが口を開いた。

 

「俺はギュメイだ。それで…太陽の神の使徒ってなんだ?」

「貴公、よく聞いてくれた。太陽の神の使徒とは、神と太陽の名の下に仲間を守り、剣を振るう、光の騎士だ。」

「そ、そうか…。ほ、ほらお前らも自己紹介しろよ。」

「…ゴレオンだ!」「…ゲルニックです。」

 

「ニトだ。よろしくな。」

 

と、それぞれ自己紹介をしていく。

 

「ああ。よろしく頼む。ところで、貴公らはどの武器を選んだんだ?俺は直剣と盾だ。」

 

ここでソラールが武器の話を持ち出した。

ソラールの直剣や盾を見てみると、刃こぼれがあったり、亀裂があったりなど、お世辞にも良い武器とは言えない。

 

「俺はこいつだ。「太刀」、俺が決闘で使っていたやつよりかは短いし、かなり昔に誰かが使ったのかずいぶんボロボロだが、研げば十分使える。」

 

とギュメイは言い、太刀の刀身に指をなぞらせた。

 

「俺のはこの鉄球だ!!!何かをぶん回すのは俺の得意技なんだ!!!はやくこいつで魔物どもを粉砕してやりたいぜ!!!」

 

ゴレオンは棘のついた鉄球だ。正直様になっていて、かなり威圧感がある。

 

「私は杖ですねぇ。近接戦なんて野蛮なこと、私にはできませんので。」

 

まぁ、ゲルニックはそうだろうなと思った。

 

「俺はソラールと同じ、直剣と盾だ。こっちの方が使い慣れてる。」

 

俺は村でもこのサイズの木剣で練習していた。

重さは違うが、やはり今まで使っていた武器の方が安心する。

 

と、そこにヘムズ監督官がやってきて、次の指示を出してきた。

 

「ガナン帝国領北部の大森林に、魔物の群れが確認された。貴様らにはそこへ向かい、到着次第我らの兵と入れ替わりで魔物の殲滅を行なってもらう。…貴様らには『隷属させる魔法』により、「反逆」「投降」「逃走」をした場合、自害するよう命令している。逃げようとしても無駄だ。」

 

そうして俺達は、配られた身を守るには物足りなさを感じる防具をつけ、兵士たちに連れて行かれた。

 

 

 

♢♦︎♢

 

 

 

ガシャンッ!!

 

「着いたぞ。全員降りろ。」

 

その指示に従って、みんな馬車から降りていく。

 

「ここからは班ごとに分かれて、魔物を見つけ次第殺せ。退却する時はこの大笛で合図を出す。それまではここに戻ってくるな。」

 

そう言って兵士は去っていった。

そして、他の班がそれぞれ別の場所へ行き、俺ら6班も森の中へ向かった。

 

しばらく森の中を歩いていると…

 

「…前方20メートル先に複数の魔力反応があります。魔力の大きさから、中型の魔物かと思われます。」

 

とゲルニックが皆に伝えた。

 

「分かった。まず俺とソラールが先行する。その後に続いてくれ。」

 

そのギュメイの指示に、皆頷く。

 

「いたな。狼型の魔物だ。…せっかくだから、俺のとっておきを見せてやろう。」

 

そう言って、ギュメイが魔物の横に飛び出すと、目に追えない太刀筋で魔物に向かって太刀を斬り下げる。すると、太刀から2つの斬撃が出現し、魔物を切り裂いた。

 

「これが俺の技…"はやぶさ斬り"だ。」

 

「おお、貴公…その体捌きもだが、かなり強いな!俺も負けてられない!」

 

と、ソラールももう一体の魔物に斬りかかった。

 

敵は残り5体。ソラールとギュメイが3体押さえてくれているが、後ろの2体はこちらに向かってきた。

その一体が俺に向かって爪を振りかぶってきたが、それを盾で防ぐ。すかさず右手に持った剣で斬りかかり、魔物の横腹を斬る。しかし、目の前の魔物に集中しすぎて、横からくるもう一体に気づけなかった。

 

「ギャウゥ!!!」

 

「ぐあぁ!!」

 

右手を噛まれた。牙はかなり鋭く、腕がちぎれるかと思うほどに痛かった。

 

「は、な、しやがれぇ!!!」

 

俺はそいつの顔を盾で殴りつける。それに怯んだのか、口が少し緩んだ。その隙に腕から振り落とし、剣で突き刺す。だが、俺が横腹を斬った魔物が既に起き上がり、こちらへ飛びかかっていた。そこへ、炎の球が魔物めがけ直撃し、魔物の体が消滅する。

 

「『火球を出す魔法』!ふぅ…危なかったですねぇ。」

 

「おい!!見せてみろ!!!」

 

と噛まれた右手をゴレオンに引っ張られた。ゴレオンがそのまま俺の右手に手をかざすと、緑色に輝き右手の傷が治っていく。

 

「!?あなた…そのなりで僧侶だったんですか?合わなさすぎて気持ち悪いです。」

「怪我をしても安心しろ!!!おれは前線を張れる僧侶だからな!!!」

「ゴレオン…ありがとう。」

「ああ!!!」

 

…どうやら前の2人も魔物を倒し終わったようなのか、こちらへ向かってくる。

 

「俺とソラールは終わったぞ。そっちも大丈夫そうだな。…お前、僧侶だったのか。意外だなぁ。」

「太陽万歳!!!」

 

ギュメイもソラールも無傷で倒せたようだ。2人とも息切れを感じさせず、かなり強いことがわかった。それに比べ、自身は怪我を負ってしまい、かなり落ち込んだ。

 

「ハァ、俺って弱いな…。」

「そんなことないさ。貴公も俺も、これから幾千の戦場を駆けるんだ。いやでも強くなるさ。」

「…それはそれで嫌だな。」

 

そう言って話を切り上げ、また皆で森の奥へ進んでいった。

しばらく経って、3、4回戦闘した後に、大笛の音が聞こえた。

 

「…撤退の合図だ。きた道を戻るとしよう。」

 

そうギュメイが言って引き返し、みんなもその後に続く。行きよりも魔物との接敵が少なく、1回しかなかったので楽に馬車のところまで戻れた。

しかし、あたりを見ると、明らかに人数が少ない。しばらく待っても一向に来る気配がなく、その間に兵士たちの撤退準備が終わった。

 

「2班と5班が全滅、3班と4班に戦死者1名ずつか。よし、引き上げるぞ。」

 

城までつくと、俺達はすぐに全ての武器を没収、牢屋に入れられた。

牢屋の中で、ギュメイたちと今日のことについて話す。

 

「誰も欠けなくてよかったな。しかし、正直ここまでバランスのいいパーティは奇跡じゃないか?」

「そうですねぇ。僧侶がいるのはありがたいです。」

「ガハハ!!そうだろ!!!怪我なんてへっちゃらさ!!!」

 

確かに俺も怪我を治してもらったし、強い前衛がいるのもありがたい。だけど、仲間に頼り切りにはなりたくない。俺自身も強くならないと…

でも、このパーティなら不思議となんとかやっていける気がした。

 

「ニトよ。貴公も、俺と同じように太陽の戦士にならないか?」

「…遠慮しておく。」

 

この珍妙なやつに邪教のようなものに勧誘されつつも、久しぶりに楽しい時間を過ごした感じがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ダクソからソラールが緊急参戦しちゃったけど許して。
長くなっちゃった。
読んでくれてありがとう
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