〜20年後〜
初めて戦闘に駆り出されてから20年。あれからかなりの戦場に出されたが、誰1人欠けることなく俺達は生き抜いた。魔物の他に、魔族との戦闘も多々あり、かなりの魔族を殲滅してきた。
自身の体も成長が止まり、今では身長がギュメイと同じくらいに伸びた。まあ、自分でも高身長になったなと思う。真っ黒な髪は切るのが面倒だったので後ろに結ってある。
「よぉ。…はぁ、お前は相変わらず鍛錬ばっかだな。」
「ギュメイか。少しでも強くなりたいんだ。まだまだ足りないくらいさ。」
「俺にはもう充分強くなったように見えるんだがな。」
ギュメイの言うように、ここ20年間ずっと自分が強くなるために研鑽した。ギュメイやソラールから剣技と盾の扱い方を教わり、ゲルニックとゴレオンには魔法の仕組みを教わった。
それによって剣と盾の扱いはかなり上達したが、魔法の方は仕組みはわかるが、ゲルニック達と同じ魔法が使えなかった。なので、似たような魔法を一から作ることにシフトチェンジした。
「ソラール達と一緒じゃなかったのか?」
「ああ、今抜けてきたんだ。あいつらはまだ酒場にいる。お前こそせっかくの"解放日"を無駄にするのは勿体無いぞ?」
俺達の戦績と隷属魔法の効果が加味されたのか、月に1回だけ路銀を持たされ街に出られるようになった。そのことを、牢屋から解放される日と言う意味で、"解放日"と呼ばれている。
「別にいいさ。来月もあるんだし、その時に羽目を外すよ。」
「…お前はいつもそう言ってずっと鍛錬してるだろう?」
「あはは…」
そう言われて俺は苦笑いしかできなかった。
しばらくギュメイと談笑していると、外から鐘の音がけたたましく鳴り、騒がしくなった。
「…なんだろう?」
「…はぁ。今日の解放日は丸潰れだな。」
ギュメイが何か知っているような反応でつぶやいた。俺がギュメイに何があったのか質問しようとしたその時、部屋の扉が思いっきり開き、息を切らした兵士たちが入ってきた。」
「はぁ、はぁ、お前たち、魔族どもがこちらに向かって侵攻している!!大至急武器を持って城門前に集まれ!」
そう言って兵士たちはでていき、しばらくの静寂の後、ギュメイが口を開く。
「はぁ。あの鐘はこの国になんらかの危機が迫っている時にしかならないんだ。この時期だと魔族絡みだろうと思ったが、当たりだったか。」
「侵攻……」
どうやら魔族達が本格的にこの国を潰しに来たようだ。今までの魔族はどれもバラバラでこちらに攻撃していたが、もしかすると…
「大魔族が動いたのか…」
「だろうな。ニト、急ぐぞ。」
そう言って俺達は武器を持ち、城門前に向かった。
♢♦︎♢
大魔族「堕天のエルギオス」……たしか、聞いた話によると『生物を魔物に変える魔法』を使うらしい。今まで俺達が倒してきた魔物も、エルギオスによって魔物に変えられた動物だとか…。だったら今回攻めてきた敵の数も納得できる。
「…おいおい嘘だろ…。」
ソラールがぼやく。おそらく、ここにいる全員が思っていることだろう。はるか前方の丘一面に魔物や魔族が見えるからだ。
「…今回ばかりは死ぬかもな。」
と、いつになく弱気なギュメイが言う。
「いーや!!!俺らは不死身の6班!!!今回も生きて帰るぞ!!!」
「そうですねぇ。まだまだ魔法の研究をし足りないですから。」
「…ああ。生きて帰るぞ!!」
そう言って俺らは信仰を食い止めるため、魔族と魔物の軍勢に向かっていった。今回は総力戦で、こちらもこの国の全兵力が揃っている。敵もこちらに気付いたようで、こちらに向かって走ってくる。
「いくぞぉ!!!」
ー さみだれ斬り ー
その掛け声とともに、ギュメイが横に大きく切り払うと、広範囲の斬撃が飛び出し、前方にいる多くの魔物を切り裂く。それを合図に俺達も後に続いて敵に斬りかかる。
ゴレオンは鉄球を振り回し周りにいる敵を蹴散らし、ゲルニックは後方から得意の炎魔法を放っている。俺とソラールは背中合わせで周りの魔物を倒していく。
「俺の背中、貴公に任せたぞ!!」
「ああ!お前も死ぬなよ!!」
そう言って俺は剣に魔力を通す。そして、剣を触媒に炎魔法を発動、刀身を炎で覆う。
ー かえん斬り!!! ー
そして横一文字に斬る。刀身から放たれた炎を纏う斬撃に前方の複数の敵が斬り裂かれ燃え上がる。
「ギャウァ!」
ー シールドアタック!! ー
その隙に俺の横に迫っていた魔物をソラールが盾で殴り飛ばす。
「油断は禁物だ、貴公。」
「悪い!ありがとう!!」
しばらく、俺達は順調に魔物を倒していった。今の所こちらが優勢だと思われるが、徐々に魔族がちらほら現れてきた。
「下等生物どもがぁ!!楽に死ねると思うなよぉ!!」
「魔族はいちいちうるさいな。」
魔族の厄介なところは固有魔法を持っているところだ。まずはどんな魔法を使うか見極めてる。
「いくぜぇ!!!」
そう言って魔族は己の爪を伸ばしてきた。俺はそれを盾で受けたが、魔族の爪は盾を貫通し、顔の横を通っていった。すぐに盾を捨て、魔族と向き合う。
速い!それにあの貫通力…剣で受け流すか避けるしかないか…。
「どおしたぁ??近づけねぇだろぉ?そのまま串刺しにしてやるぜぇ!!」
今度は全ての爪が俺に向かって伸びてきた。それを剣で受け流し、魔族に迫る。さらに足の爪が伸びてきたが、飛び上がり魔族の額に剣を突き刺す。
「ぎゃあああ!!!死にたくないぃぃ!!!」
そう言って魔族は消滅していった。
魔族相手は神経を使うな…。だけど、今回は魔族が多く攻めてきている。これくらいで弱音は吐けないな。
その証拠に、目の前には新たに2体の魔族がこちらを笑いながら見ていた。俺は剣を前方に構え、いつでも対応できるようにする。
「大人しくしてくれたら、楽に殺してあげるわよぉ〜。」
「それはダメだ。この俺が楽しめん。」
「うるさい。来ないならこちらからいくぞ。」
そう言って俺は2体の魔族に向かって駆けた。
♢♦︎♢
…もう何体魔族を斬ったか分からない。だが、魔族どもも少なくなっているような気がするので、もうちょいで勝てるかもしれない。
そう思っていたら、前方から兵士たちの叫び、そしてゴレオンとゲルニックの声が聞こえた。
「ぐわああああああ!!!!」
「なんだこいつ!!!めちゃくちゃ強い!!!」
「まずい、まずいですよぉ!!」
っ!!ゴレオン達の声、何かあったのか!?はやく向かわないと!!
そう思い、ゴレオン達のところ向かおうとするが、前方に道を塞ぐように魔族が現れた。
「お〜っとぉ!俺の相手してくれよ兄ちゃん〜!」
本当にこいつらは蛆のように湧く……
「どけぇぇ!!!!」
♢♦︎♢
目の前の魔族を切り裂き、ゴレオン達の下へ急ぐ。辿り着くと、そこには豹のような頭の人型の魔物と、そいつの刀で胸を貫かれたゲルニックがいた。すぐそばには、ゴレオンの首が転がっていた。
「な…なんだよこれ…」
「に、にげ、て…くだ、さ…
ズルッ………ドサッ!!
そいつはゲルニックを刀から引き抜くと、横に投げ捨て俺に向かって迫ってきた。そして、上から振り下ろされた刀を受け止め、振り払う。そのまま俺は後ろへ跳び、距離を取る。
くそがぁ…!!叩っ斬ってやるぅ!!!!
俺は剣を上から振り下ろし、二つの斬撃を放つ。ギュメイから教えてもらった技の一つ、"はやぶさ斬り"だ。それを分かっていたかのように相手も二つの斬撃を放ち、相殺する。
な!?はやぶさ斬り!?もしかして模倣の魔法か…?だったら…模倣よりも技を強くすればいい!!
「『攻撃力を上げる魔法』!!」
魔力が多いとは言えない俺は、攻撃魔法よりも消費する魔力が少ない補助魔法を開発しようと躍起になった時期があった。その時にできた三つの補助呪文のうちの一つがこの魔法だ。効果は単純、攻撃力を「2倍」にする魔法だ。
そのまま俺は豹の魔物の前に向かい、剣を振り上げる。その刀身に赤い雷を纏わせて。
「死ね。」
ー 魔人斬り ー
かいしんのいちげき!!!
その剣は受けた刀を叩き折り、豹の魔物を肩から下に斬り裂いた。そのまま豹の魔物は折れた刀を手放し、こちらに倒れてきた。
「…強、く…なった…な…」
「え…?」
豹の魔物はそう言い残した後、息絶えた。俺はなぜ豹の魔物がそう言ったのかわからず、困惑していると、後ろからパチパチと拍手が聞こえた。
「そいつを倒してしまうとは…我の最高傑作だったんだがな。」
「褒美に教えてやろう。我が名はエルギオス!!幾千の時を生きた、偉大なる大魔族だ!!」
…エルギオス…生物を魔物に変える魔法を使う魔族…てことは…
「…ん?そいつと知り合いだったのか?確か…ギュメイと呼ばれていたか…。」
っ!?お、俺が…俺が殺した…?ギュメイを…?
「フハハハハハ!!知人を迷いなく刃で叩っ斬るとは!冷酷な奴だ!」
…フハハハハハ…
そんな大魔族の高笑いも耳に入ってこない程、俺の心は絶望に沈んでしまった。
ぶえぇぇええええええ!!!
疲れたよーーー!!!
読んでくれてありがとう。