魔法少女リリカルなのはInnocent ~デュエルの王女様~ 作:ラモン
「……よし、入部届けの記入事項に漏れはないな。後で私から生徒会に渡しておこう」
「わかりました! お願いします!」
「スバルうるさい」
なんやかんやと騒動のあった、スバル達が初めてブレイブデュエル部の部室を訪れた日の翌日。渡された入部届けに必要な事を記入したスバルとティアナは、改めてブレイブデュエル部の部室を訪れていた。
本当ならその場で記入して提出したかった2人であったが、海聖高校は進学校としても有名な学校で、部活動をするには保護者の許可が必要となるのだ。その関係でスバルもティアナも入部届けを持ち帰り、保護者の許可をきちんと貰って本日改めてここに来ている。
「これで2人は正式に我がブレイブデュエル部の新入部員だ。
昨日も言ったが、改めて……歓迎するぞ。2人とも」
「はいっ! 全国優勝目指して頑張りますっ!」
「またアンタはそうやって難しいことを平気で……」
2人分の入部届けをファイルに入れて自分のカバンに入れるチンクの言葉に、スバルは両手で小さくガッツポーズをしながら抱負を語り、ティアナはやれやれと溜息を吐く。
と、そこでティアナはふと気になった疑問をチンクにぶつけてみた。
「あの、スカリエッティ先輩」
「チンクで良いぞ。どうしたランスター?」
「あ、じゃあ私もティアナでいいです。えぇと、他の部員の人たちはどこに?
もしかしてどこかのショップで練習中……とかですか? 昨日もみなかったので、気になって」
昨日は休みか何かかと思ったが、今日もブレイブデュエル部の部室には昨日と同じく隼人とチンクの2人だけしかいなかった。なにせブレイブデュエルの公式大会は、一部を除いてその殆どが5人1組でのチーム戦だ。
2人ではどう足掻いても大会に出れる人数ではないし、自分たちを入れたとして4人。逆立ちしても大会に出れるはずがないし、人数が足りていないならば新入部員獲得にもっと必死になっている筈だ……とティアナは考えた。
だがチンクはティアナの質問を聞くと、ダラダラと汗を流しながら視線を泳がせ「あぁ~……その事か」と引きつった笑みを浮かべながら震えた声を漏らす。
「え、と……どうしました? チンク先輩」
「いや、うん。その事なんだがな……」
「どうせすぐわかるんだから誤魔化すなよチンク。ティアナとスバル、明るい未来を想像している君たちに良いお知らせと悪いお知らせがあります。どっちを先に聞きたい?」
どうしようと言葉を濁すチンクに代わり、窓際で携帯ゲームをいじっていた隼人が呆れたようにそう助け船を出した。しかしその言葉はチンクにとって助け舟ではなかったのか、彼女は渋い顔をして隼人を睨む。
一方選択を迫られたティアナとスバルは、嫌な予感をひしひしと感じながらも、とりあえずは疑問に対する答えを聞こうとお互いに目配せすると一度だけ頷き――
「悲しいお知らせが先で、お願いします」
――悪いお知らせを先に聞く覚悟を決めた。
「よろしい。んでは俺から悲しいお知らせを2人にお伝えしよう。
我が海聖高校ブレイブデュエル部の部員数は、現在お前ら2人の新入部員を加えて――4人だ!」
「ええええええええっっ!?」
「よっ、4人だけですか!?」
「おうよ! だから高校生大会なんて参加できねぇぜ! やったね!」
「何もやってないですよ!!」
まさかすぎる事実に悲鳴を上げる1年生2人。それもそのはず、4人しかいないのではブレイブデュエルの公式大会のほとんどに参加できない。もちろん全国の高校が参加している高校生大会にもだ。
しかも部長、副部長である隼人とチンクはどちらも3年生。来年にはスバル達2人きりになってしまう。
海聖高校ブレイブデュエル部の凋落ぶりは知っていた2人であったが、いくらなんでもティアナ、スバル共にここまで酷いとは予想すらしていなかった。
「ど、どうするんですか! 急いで部員集めないと……」
「そこで嬉しいお知らせです! 君たちが入部したことで4人、あと1人いれば大会に出れる訳です! つまり!」
「……つまり?」
「皆であと1人、新入部員を見つければいいんだよ。簡単な話だな」
あっけらかんと告げる隼人であったが、それが出来たら苦労はしない。
そもそも入部希望者がいないからこそ4人しかしない訳で、しかも今は部活の勧誘をする時期はとっくに終わった後でほとんどの生徒は何かしらの部活動に入ってしまっている。
部活に入っていない生徒は、基本的には勉強に力を入れている人間だ。そうそう入ってくれるとも思えない。
「お前はまたそうやって簡単に……この時期に集まると思うのか?」
「集まると思ってるぜー。なんせ去年は0だったのに、今年はいきなり2人も新入部員きたんだし。
これはブレイブデュエル部大増員! 希望の明日へレディ・ゴー! への前触れと見たね!」
「……はぁぁぁぁ」
けらけらと笑って心配した様子も見せない隼人を見ながら、チンクは頭を抱えて盛大な溜息を吐く。呆れきった顔をしているものの、それでも強く反論しないのは諦めているのか彼女も同じように考えているからなのか。
その思惑はどうあれ、とにかく勧誘をしないことには始まらない。
「わかった。じゃあ今日はもう放課後だから諦めるとして、明日からそれぞれ勧誘することにしよう。
私は妹達を当たってみよう、2人ほどブレイブデュエルをやっているからな。ティアナとスバルには、1年生でまだ部活に入っていない者の勧誘を任せても良いか?」
「わかりました」
「頑張って勧誘します!」
「隼人、お前もきちんと勧誘しろよ。いいな」
「へーい」
これは頑張らねばを気合いを言える隼人以外の3人と、チンクに念を押されても欠伸混じりで緊張感の欠片すら見せない隼人。そんな部長の姿に言い知れぬ不安を覚えながらも、ティアナとスバルは明日からどうやって勧誘しようかと考えるのであった。
●魔法少女リリカルなのはInnocent ~デュエルの王女様~
第2話『集え! 海聖高校ブレイブデュエル部!』
明けて翌日。
昼休みを告げるチャイムが鳴ると同時に、スバルとティアナは動き出していた。
なにせ学校生活で勧誘ができる時間といえば、やはり昼休みを置いて他にはない。放課後になってしまえば部活に入ってない生徒はすぐに帰ってしまうし、ティアナ達としてもやはりブレイブデュエル部に顔を出したい。
そのため、必然的に昼休みに頑張って勧誘しよう……という話になったのだ。
「よし、とりあえず中学の時の知り合いのいるクラスで、まだ部活に入ってない人の事は聞いておいたわ」
「おお~、さすがティア。用意がいいね!」
「副部長に負担をかけたくないもの。部長は置いといて」
「……あはは」
すでに彼女の中ではチンク>隼人という信頼形式ができているようで、スバルはフォローしようと思って自分もおんなじだなぁと気づき、笑って言葉を濁す。
「とはいえ、どうやって誘うかまでは考えてないんだけどね。時間もなかったし」
「大丈夫! 方法はあたしが考えてきたよ!」
「スバルが?」
自信満々にむふー! と胸を張るスバルに、ティアナは一抹の不安を覚えた。中学の頃から、この子がこういう顔をした時はたいていアホな事を言い出す。どこかの司令官が「私にいい考えがある」と言いだすくらいのフラグなのだ。しかし時たま……本当に時たまいい提案を言うこともあるので、ティアナは不安を抱えつつもとりあえずスバルの方法を聞いてみる事にした。
「……どんな方法?」
「あたし達がブレイブデュエルをしているのを、皆に見て貰えばいいんだよ!」
「どうやって?」
「頑張って!」
「アホかーっ!」
無邪気な笑顔でアホな事をのたまうスバルの頭を、どこからか取り出したハリセンで思い切りひっぱたく。そもそも、その見せるための人をどう集めるかという話をしているのに、集まった後の話をしてどうするというのだろうか。ああやっぱり聞くんじゃなかったと後悔する半面、それはそれでいい案だなと思ってしまう自分もいて、ティアナは頭を抱えて溜息を吐く。
「もー、アホな事言ってないでまずは入ってくれそうな人を探すわよ!
デュエルしてるところを見て貰うのはそれから! いい!?」
「はぁ~い」
やれやれとスバルの事を窘めて、改めて部員勧誘に向かおうとしたティアナ。
だが、彼女の勢いを挫くようなタイミングで、後ろからスバルとは違う声がかけられた。
「あの……ちょっといいかな?」
「ひゃあ!?」
「わぁっ!? びっくりした」
突然背後から声をかけられ、可愛い悲鳴を上げながらティアナが慌てて後ろを向けば、そこには自分を眼鏡越しに見つめる空色の瞳を丸くして自分を見つめる少女の姿。ブラウンの腰まで伸びたロングヘアーが美しい彼女は目を丸くしていたものの、すぐに苦笑を浮かべて口を開く。
「あはは、驚かせてごめんね~。ブレイブデュエルの話してるみたいだったから、つい声かけちゃった」
「え?」
「ブレイブデュエル、知ってるんですか!?」
少女の口から出てきたブレイブデュエルという単語に色めき立つティアナとスバル。新入部員候補が、勧誘活動を始める前に向こうから現れてくれたのだ、喜ぶなという方が無理がある。
「うん。私もブレイブデュエルやってるから」
まだまだ初心者だけどね、とはにかむ眼鏡の少女。それを見てティアナはこれは好機と喜ぶ。
勧誘する前提として、まずブレイブデュエルに興味を持ってもらう必要がある。勧誘する上でそれをどうするかと頭を悩ませていたティアナだけに、経験者というのはその前提を満たしているのだからありがたい。
「あの――」
この人を逃す訳にはいかない……ギラリと目を光らせながら、ティアナは口を開いた。
◇◇◇◇◇
「あー、どうすっかなぁ」
一方その頃、ブレイブデュエル部部長である高峰隼人は、昼休みに食べる予定だったパンを片手に物憂げな表情でブラブラと屋上へ続く階段を上っていた。
もちろん部員勧誘をサボろうとしている訳ではない。隼人なりにアレコレ考えて、部長らしく新入部員を獲得しようと思った。問題は、思ったはいいが実際行動してもロクな成果が無かったということで。
「やっぱ知り合いいねぇと辛いわー」
1年生の教室まで行ってみたものの、誰を誘うべきか悩んでいるうちに時間は過ぎ、部活に入っていない人間を強引に勧誘しようにも時間が足らず結局昼休みまで成果はゼロ。
このままでは、本人はまだあると思っている部長の威厳が失われてしまう。
そう考えた隼人だったが、やはり知り合いでもない3年生にいきなり部活に入れと言われて、はいわかりましたと頷いてくれる1年生は少ないだろう。
「ちっ、何が『遠慮しておきます』だっつーの。先輩の言う事には無条件で絶対服従だろうが畜生め」
暴君も真っ青な理屈をぶつくさと呟きつつ、隼人は屋上に行くための扉を開く。
「うへー、さみぃー。早いとこいつもの場所へ~っと」
もう4月になったとはいえ、まだ屋上に吹いている風は肌寒い。その風にさらされた隼人は体を軽く震わせ、障害物となる屋上入口の蔭へと小走りで駆けて行った。
そこは隼人が昼食を食べる時の定位置で、今日もそこでパンを齧りつつ部員獲得の事でも考えよう。
そんな風に思っていたのだが。
「ん?」
「え?」
「あっ」
本日、彼の定位置であったそこには先客が2名ほど既に座って、昼食であろう弁当を広げていた。2人の見つけた隼人が声を上げると、そこにいた2人もまた隼人を見上げて小さく声を漏らす。
「…………なーんで小学生がここにいるん?」
想定外の遭遇にしばらくお互い見つめ立っていた隼人とその2人であったが、沈黙していた隼人は2人をマジマジと見つめてから心底不思議そうに首を傾げてそう尋ねてみた。
隼人の定位置で食事をしていたのは、燃えるような赤い髪と鮮やかなピンク色をした髪の少年と少女。
どちらも海聖高校指定の制服を着てはいたが、見た目はよく見積もっても中学1年生から小学校高学年。そんな2人が目の前にいたのだから、隼人の疑問にも頷ける。
「しょ、小学生じゃないです!」
「私達、この高校の生徒ですっ!」
「えー? ……あぁ、そういや飛び級で入学した奴がいるって話を聞いたな」
海聖高校の生徒だと言い張る2人を見て、ふと隼人は以前チンクがそんな事を言ってたなと思い出す。なるほど、飛び級なら実際小学生くらいの年齢なんだろうと1人納得し、隼人は思考するために上げていた視線を2人に落とした。
「なるほど、悪かったな小学生とか言って。で、ここで何してんだ?」
「何って、ご飯を食べてますけど……」
「え、エリオ君。もしかしてコレ、クラスの人が言ってたカツアゲってやつなんじゃ……」
「えぇ!? キャ、キャロ! 僕の後ろに!」
普通に話していたつもりだったが、何やら物騒な勘違いをされてしまったようで、エリオと呼ばれた赤い髪の少年が慌てて怯えているピンク髪の少女――キャロを背中に庇う。
まぁ隼人は金髪ではあるし、基本的にものぐさなので制服もだいぶ着崩している。
その上常に眠そうな半眼であるため目付きもあまり良くはなく、一見すればなるほど不良に見えない事もない。
「待て待て、別にカツアゲじゃねーよ。俺も飯を食いにきただけだ」
「そ、そうなんですか?」
「そうだよ。ホレ」
「あ、ホントだ……ごめんなさい、早とちりしちゃって」
「いや分かってくれたんならいーよ別に……ん?」
やれやれと溜息を吐きつつ手に持っているパンを見せれば、納得して貰えたのか2人の空気が緩む。どうやら誤解は解けたようだと隼人もまた安心してじゃあとりあえず飯でも食おうかと思った――のだが。
(待てよ?)
この男、この状況をそれで済ますタマではないのだ。
「……つかぬことを聞くが、2人は部活とか入ってるか?」
少年少女、2人に向かって問いかけた隼人の顔には、それはそれは悪い笑みが浮かんでいた。
◇◇◇◇◇
そして放課後。一足先に説得した自分の妹達を連れて部室へとやってきたチンクは、部室の椅子に座っている妹達へと飲み物を渡していた。
「すまないな、姉の我がままに付き合ってもらって」
「別に気にすることないッスよ~」
「そうだよチンク姉、あたしらもちょうど入ろうかどうかって考えたんだし」
彼女の言葉に答えるのは2人の妹――どちらも鮮やかな赤い髪を、先に答えた少女はポニーテイルに纏め、後からそれに続いた少女はショートカットで短く揃えている――だ。
名前はポニーテイルの少女がウェンディ、ショートカットの少女がノーヴェという。
「そうは言ってもな。姉が無理を言って入ってもらった感は否めまいよ」
自分の誘いに二つ返事で乗ってくれた2人に感謝はしているものの、自分に気を使って入りたい部活に入れなかったのでは? とチンクは2人がここに来てからずっと心配し続けている。
妹達はそんな事は無いと言い続けているのだが、どうにもチンクは心配性のようだ。
「もー、チンク姉は心配しすぎッスよ! あたしらはチンク姉と一緒に楽しくブレイブデュエルがしたいんッス!」
「そうそう! だから気にしないでくれよ」
「……ありがとう。ノーヴェ、ウェンディ」
チンクの心配を大声でかき消す妹達に頬笑みかけ、チンクは何度目になるかわからない礼を述べた。
そしてチンク達の話が終わるのを待っていたかのようなタイミングで、部室のドアが開きやる気のない顔をした隼人と2人の少年少女、そしてティアナとスバル、眼鏡をかけた少女がわいわいと騒ぎながら中へと入ってくる。
「うぃーっす。……お、チンクの方も上手くいったみたいだな」
「ああ。妹達が快く引き受けてくれたよ、お前とティアナ達も上手くいったようでなによりだ」
先頭に立って入ってきた隼人は、部室で椅子に座っているノーヴェとウェンディの姿を見てチンクに笑いかける。それに対してチンクもまた、隼人達に続いて部室に入ってきた顔見て安堵したように微笑む。
隼人とティアナ達が連れてきた少年少女が入部すると確定した訳ではないが、まぁとりあえず妹達が居れば今年はなんとかなる。そして今年ある程度の成績を収められれば、来年度になって今年と同じという状況にはなるまい……などとあれこれ考えたチンクであったが、まずはお茶でも出そうと頭を切り替えて自前で部に持ってきて置いたお茶入れ道具一式の元へと歩く。
「よっし、そんじゃまずは全員自己紹介な。俺が部長の高峰隼人、好きな物は大きな胸です。
貧乳死すべし、慈悲はない。しめやかに爆発四散!」
「皆、そこの馬鹿は放っておいて構わないぞ。今茶を用意するから、座れそうな椅子に座っててくれ」
誰に言われるでもなく部室の上座にある部長用の椅子にふんぞり返る隼人にずさんな対応をしてから、まだ立ったままのティアナ達に座るようにと促すチンク。もちろん今出してある椅子だけでは足りないので、そこは各自で部屋の隅に立てかけてあるパイプ椅子を準備。
いまだどこぞのニンジャスレイヤー気どりの隼人をよそに、それぞれに顔を見合わせて自己紹介を始める。
「んじゃ最初はあたしから。名前はノーヴェ=スカリエッティ、チンク姉の妹で1年F組。
ブレイブデュエル歴は……あー、だいたい3年くらいかな」
「次はあたしッス! ウェンディ=スカリエッティ。このノーヴェの双子の妹で、同じく1年F組ッスよ!
ちなみにブレイブデュエル歴は、ノーヴェよりも長くて5年目ッス!」
最初に口火を切ったのはノーヴェとウェンディの2人。チンクから妹を連れてくると聞いていたティアナとスバルは、2人を見て「ああ」と納得した声を漏らした。なお隼人は2人を見て一言。
「お前ら姉ちゃんから養分吸いすぎだろ……少し返してやれよ」
と余計な事を言ってチンクにボールペンで頭を刺された。
まぁ、実際小学生にしか見えないチンクと比べ、ノーヴェ達は普通にスタイルも良く身長もだいぶ上なのだから、隼人の感想も完全に的外れと言う訳ではなかった。言っていい事と悪い事があるというだけで。
「えっと、じゃあ次は私がいこうかな」
隼人のせいで何とも微妙な空気になった中、そう言って続いたのはティアナ達と共に来た眼鏡と茶色いロングヘアーの少女だ。
「1年A組のシャリオ=フィニーノだよ。ブレイブデュエルはまだ始めて1年も経ってないけど、せっかく海聖高校に入ったんだからってことで、入部しようと思ったの。よかったらシャーリーって呼んでね、よろしくー」
朗らかに笑いながらそう締め括ったシャーリーに、ティアナとスバルはいい人を勧誘できたと自分達の幸運を神に感謝した。なにせ部長がアレなのだ、常識人はいくら居ても足りるという事はあるまい。
入部して1週間も経っていないが、2人はすでに隼人に色々と期待するの諦めつつあった。
そしてシャーリーに続く形でティアナとスバルもそれぞれ自己紹介を終え、最後にこの場で最年少であろう、隼人の連れてきたエリオとキャロに全員の視線が集まる。
「……えっと、1年E組のエリオ=モンディエルです」
「エ、エリオ君と同じE組のキャロ=ル=ルシエです……あのぉ」
期待と好奇の混じった視線を受け、ちびっ子2人は戸惑いの声を漏らしつつ口を開く。
2人以外の1年生全員が、どんな自己紹介なのかと期待に胸を膨らませて次の言葉を待った。しかし、その口から語られた言葉は――
「ここって、何の部活なんですか? ブレイブデュエルって、私達知らないんですけど」
「え?」
「私達、高峰先輩に『まずウチさぁ……ブレイブデュエルあるんだけど、寄ってかない?』
って連れてこられただけで、何がなんだか全然わかってないんです……」
「ふぁっ!?」
誰もが……もとい、隼人以外の誰もが予想すらしていない言葉だった。
当たり前と言えば当たり前で、シャーリーもノーヴェもウェンディも、全員がここがブレイブデュエルをするための部活で、そのために入部しにきている。部長である隼人が連れてきた子達なのだ、そういった説明は当然されていると思っていたのだろう。
このあたりはティアナ達も同じ思いだったのだが、まだまだ部長である隼人に慣れていないのが窺える。
「……だろうと思ったよ」
「いやほら、百聞は一見にしかずって言うじゃん?」
エリオとキャロの言葉に動揺を見せなかったのは、当人である隼人とその問題児と付き合いの長いチンクのみ。どうやらあの後隼人は、エリオ達が何も知らないのをいい事にあれこれ吹き込んで強引に放課後この部室へと来るように仕向けたようだ。
ホイホイ着いてきてしまう2人も2人だが、飛び級で高校に入ってきたばかりの無垢な子供相手に詐欺まがいの事をするあたり、隼人という人間がいかにクズなのかが窺える。
「別にまだ正式に入部って訳でもないしよ。見てから決めてもらおうと思ってな」
「お前は……」
全く悪びれる様子すら見せない隼人に疲れたような溜息を吐いて、チンクは視線を困惑した顔で所在なさげにキョロキョロと周りを見回すエリオ達に向けた。
「すまないな、2人とも。この馬鹿が迷惑をかけてしまって。
こいつは馬鹿なんだが、悪気のある馬鹿というか、救いようのない馬鹿というか……」
「チンク姉、それフォローになってないッス」
「……ごほんっ。まぁそれはそれとして、こうして会えたのも何かの縁だ。
どうだろう? もしこの後用事がないのなら、少しブレイブデュエルを体験していかないか?」
たとえ隼人が騙して連れてきたとはいえ、部員候補は部員候補。チンクとて新入部員の数が多くて困ることはないし、あの馬鹿についてきてくれる奇特な人間を逃すつもりも毛頭ない。
そのため、隼人の詐欺まがいの勧誘を謝りつつ、それとなくブレイブデュエルに興味を持たせる方向へと誘導していく。このあたり高校3年間隼人に付き合ってきたからこそのフォローであり、その手口はとても鮮やかだ。
「あ、えっと……僕は大丈夫ですけど」
「私も大丈夫だよ、エリオ君。今日はこのあとお家に帰るだけだから」
お互いの事を気にしながら大丈夫だと答えた2人に、チンクは嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。ちなみに隼人は相も変わらずへらへらと笑いながら「大丈夫だっつったろー?」などとのたまっている。そのうち殴られるだろう。
「さて」
とまぁ、諸々の話が終わったところで区切りをつけるように軽く手を叩いて隼人が口を開く。
「んじゃまー、話もまとまったところで練習しますか。全員移動すっぞー」
「え?」
「移動って、ここで部活動するんじゃ?」
「んなわきゃねーだろ。こんな狭くてボロいとこで何するってんだ」
自分の部室に対して散々ないいようだが、まぁ確かに言う通りボロい部室で何もないのでここで練習ができるわけもない。じゃあどこでやるのか、とチンクを除く全員が隼人に疑問の視線をぶつけた。
すると隼人は楽しそうに口の端を持ち上げて――
「そんじゃ移動だ、保健室までな」
――部室以上に部活動とは無縁そうな場所の名前を口にするのであった。
書いてて思ったけど隼人ってクズだね(確信
どうも、ラモンです。
という訳で部員集め回でした。
面子をどうするか本気で悩みましたね~。エリキャロは入れたかったけど年齢的に……と思ったら原作でも飛び級あったしいけるやん!
って事でエリキャロ加入。チンクの妹枠はノーヴェとウェンディに担当してもらいました。
キャラ選択の決め手は戦力バランス。
そして最後の1人はシャーリー。StSとかじゃロングアーチだったけど、こっちではブレイブデュエルプレイヤーとして参戦してもらいます。
さーて次回は顧問の先生紹介+始めての実戦かなぁ。
まぁ隼人がチートして終わるんですがね(ネタバレ
それではまた、次の話で。