魔法少女リリカルなのはInnocent ~デュエルの王女様~   作:ラモン

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第4話『部長の正体 2』

 

 

 

「とりあえず、まずは全員のポジションを確認しましょ。あたしはセンターガード……の、ややディフェンダー寄りって感じかしらね。得意なのは射撃戦」

 

「次はあたしかな? あたしはフォワードだよ! 得意なのは接近戦!」

 

 

 作戦会議を開くにあたって、まずはティアナとスバルが自分のポジションと得意技を告げる。ポジションとはそれぞれがデュエルにおいてどのような仕事をするかを指し示すモノで、チーム戦とやる時には特に重要となってくる。

 ちなみにセンターガードは中央に陣取り、他のポジションの指揮を執るのが主な役目である。非常に難しいポジションのため、このポジションをやるにはある種の才能が必要とさえ言われている。

 

 対してスバルのポジションであるフォワードはまさに攻撃の要。最前線へと突撃して敵を倒すのが主な仕事だ。

 簡単そうに見えるが、その実チームの攻撃を一手に担っている部分があるので、成すべき責任は非常に大きい。

 

 

「えっと、じゃあ次は私が言おうかな」

 

 

 そしてティアナとスバルに続いて、シャーリーが口を開いた。

 

 

「私は一応ディフェンダーをやっているよ。とはいっても、どちらかというとサポートメインで、あんまり戦術指揮とかはできないかな。得意なのは防御と阻害、それ以外はてんでダメかなぁ」

 

 

 少し恥ずかしそうに笑うシャーリーであったが、ディフェンダーは非常に重要なポジションでもあるのだ。チーム全体を見回すポジションで、チームの防御補助や相手チームの行動阻害、場合によっては戦場指揮などやるべき仕事の多いポジションだ。

 センターガードに次いで才能の必要となるポジションとも言われ、ディフェンダーの出来がデュエルの勝敗に大きく関わっているとも言われている。

 

 

「んじゃ次はあたしッスねー。ポジションはワイドウイングのフォワード寄りッス。

 得意なのは射撃戦と、移動しながらの高速射撃戦ッスよ!」

 

「あたしはそっちのと同じくフォワードだよ。得意なのも同じく接近戦」

 

 

 溌剌と答えるウェンディと、まだ隼人の態度が気に入らないのか仏頂面で不貞腐れているノーヴェ。

 ウェンディのポジションであるワイドウイングは、主に遊撃を担当することの多いポジションだ。フォワードとセンターガードの中間ほどに位置取り、場合によってどちらかの援護をすることが主な仕事となっている。

 

 

「……前衛が2人に、中衛2人、そして後衛の5人。バランスは完璧ね」

 

「狙ったみたいに完璧な布陣だね~。とりあえず、指揮はティアナに任せていいのかな?」

 

「あたしは別にいいですけど……他の皆はそれでも良いの?」

 

 

 ポジション的にはティアナかシャーリーが指揮をするのが一般的だが、一応確認しなければとティアナは他のメンバーに問いかける。ごく稀にではあるが、フォワードが指揮を執るという場合もないわけではないからだ。

 もし自分以外にも指揮経験がある人物、またはやりたい人間がいるのならきちんと話し合っておかないといけない。

 

 ここで話し合いをおろそかにしてしまえば、いざデュエルが始まってから「自分が!」と言いだして、連携が取れなくなってしまう可能性だってある。ただでさえ即席チームなのだ、指揮系統が混乱してしまえばそれだけで十分致命傷になり、そのまま負けるのは必至。

 

 

「あー、あたしらはそーゆー頭使うのは無理だから気にしなくていいぜ」

 

「そうそう。頭使うことはチンク姉にお任せだったッスからね~」

 

 

 どうやらその心配はなかったようで、ティアナも一安心だと息を吐く。

 まぁ自信満々に頭悪いと公言するのはさすがにどうかと思わなくもないが、今は考えないでおこう。

 

 

「それじゃあ、今回はあたしが指揮をさせてもらうわね。

 ……とはいえ即席チームだから、あんまり難しいこともできないか」

 

「そうだね~。いきなり難しい事しろって言われても、たぶん対応できないよね」

 

「セオリー通りが一番ッスかねぇ。ノーヴェとスバルさんの2枚前衛で、あたしが遊撃、ティアナさんが中衛と指揮を担当。んでシャリオさんがサポートって感じで」

 

「呼び捨てでいいわよ。これから一緒にやっていく仲間でしょ?」

 

 

 さんづけがくすぐったかあったのか、何とも言えない苦笑を浮かべてティアナがそう告げる。シャーリーとスバルも同じ意見らしく頷いて「よろしくね」と笑う。

 初対面ということもあり同級生でも遠慮があったノーヴェとウェンディだったが、相手方が全員呼び捨てでいいと言っているのに逆らうのも空気が読めていないか、と笑ってそれに答えた。

 

 

「それならあたしらも呼び捨てでいいよ。よろしく頼むぜ、ティアナ」

 

「ええ。よろしくね、ノーヴェ」

 

 

 短く挨拶をした5人は、再び作戦会議へと戻る。

 とは言っても作戦らしい作戦を立てられるわけでもない。先ほど言ったように5人は今日チームを組んだばかりで、連携らしい連携を取れる筈もなく、いきなり細かい作戦を立てたところで上手く動けるわけもない。

 

 

「5対1なんて本来勝負にもならない戦力差よ。だから戦力差を考えたら、高峰部長はあたしたちの連携の隙をついてくるはず……というか、それしかする事はないと思うの」

 

「なら、私たちは変に連携を取ろうとせずに、お互いが自分のポジションのやるべき事をやるって感じかな?」

 

「そうね。とりあえずお互いに離れすぎない事、どんな状況でもあたしの指示には従う事。

 これだけ守ってもらうようにして、あとは全員好きに動くって感じにしましょう」

 

「オーケー、単純明快でわかりやすいぜ」

 

 

 きちんと状況が見えているティアナの指示に、これは頼りになる指揮官が出来たと笑うノーヴェ。

 そうして5人は細かな確認をして、それぞれがシミュレーターへと向かう。

 

 

「はやくしろよー。今日は帰ってからモンハンしてーんだからよー」

 

 

 まるで緊張感のない隼人が待ち構えている、シミュレーターへと。

 

 

 

 

●魔法少女リリカルなのはInnocent ~デュエルの王女様~

 第4話 『部長の正体 2』

 

 

 

 

「あの……」

 

「うん? どうした、何かわからないところがあったか?」

 

 

 一方その頃。シミュレーターのあるこの地下室の片隅で、ブレイブデュエルの初心者講座を行っているチンクに、その講座を受けているエリオが問いかけた。

 

 

「チンク先輩は、部長さんとは一緒にやらないんですか?」

 

「ふむ。5対1はさすがに無理だろうと?」

 

「あ、はい。僕はブレイブデュエルの事は全然知らないですけど、さすがに……」

 

 

 普通に考えて、5対1というのはかなり無茶な数字だ。ブレイブデュエルは素人のエリオだったが、スポーツに例えて考えてみれば5対1がどれだけ無茶なのかは容易に想像できる。

 例えば格闘技で5対1ともなれば、それはただの苛めにしかならない。

 だから、エリオの心配は至極妥当であるし、むしろ心配していないチンクや隼人が変とも言えるだろう。

 

 

「まぁ、確かに普通なら無謀だろうな」

 

「なら、先輩も一緒に……僕たちの事は、後でもいいですから」

 

「大丈夫だよ。あいつは強いからな……おっと、そろそろ始まるようだな。

 せっかく本当のデュエルが見れるのに初心者講座を受けているのもつまらないだろう。ほら、2人ともこっちだ」

 

 

 心配そうなエリオをよそに、チンクは微笑んだまま短くそう答える。そうしているうちに、隼人とティアナ達のデュエルが始まる合図を告げるようにシミュレーターの電源が入り、やや薄暗かった周辺を証明が照らす。

 それを見たチンクはエリオ達に向けて開いていたブレイブデュエル初心者講座を切り上げ、2人をシミュレーターの前――デュエルを正面から見ることができる場所へと連れて行く。

 

 

「楽しんで行くといい。あいつのデュエルは、本当に凄いぞ」

 

 

 エリオとキャロが椅子に座ったのを確認してから、チンクがシミュレーターを見て楽しそうに呟く。そしてそれを合図にしたかのように、シミュレーターの証明が辺りを真昼のように照らし出した。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 ブレイブデュエルとひとくちに言っても、いくつか競技の種類がわかれている。今回隼人たちが行うのは、現在ブレイブデュエル高校生大会で採用されている、5対5のチームバトルロイヤルだ。

 全員がそれぞれにライフポイントを持ち、攻撃などによってそれを削りあい、0になった時点で脱落。

 最終的に相手チーム全員を脱落させるか残り時間が無くなった時点で、より多くメンバーの残っている方の勝ち……という単純明快なルールである。

 

 もちろん細かいルールなどもあるが、基本的にはよほど卑怯な手段でも使わない限りは何をやっても良い。ある意味過激ではあるが、これで意外と人気のある競技だったりもする。

 

 

「さて、と」

 

 

 シミュレーターの中に映し出されたアバター姿――背中に『天下無敵』という文字の入った白いロングコート姿の隼人が、今回対戦するフィールドを見回しながらそう呟いた。

 このバトルロイヤルで使われるフィールドは、特定の場合を除いてランダムなのが通常だ。

 なので開始までの短い時間でも、こうして見回しておく事は戦略上非常に重要である。

 

 

「今回は荒野か……うーむ、どうせならもうちょい賑やかな場所の方が見栄えよかったのに」

 

 

 今回選ばれたのは、どこまでいっても岩と土しか見えない荒野。

 戦いやすいフィールドではあるのだが、どうせならもう少しいい場所でもと思わなくもない隼人であった。

 

 

「ま、いいや。場所が地味だってんなら、デュエルをド派手にして盛り上げりゃあいいもんな」

 

 

 子供のように笑いながらどう戦うのかを考えてクスクスと声を漏らす隼人。はたから見ればどうやっても不審者だが、それを気にしないのが彼らしさと言うべきか。

 そうして隼人がアレコレ考えて笑っているうちに、ティアナ達のアバターが少し離れた場所に現れた。

 ティアナとスバルの2人は白いジャケットと黒いインナーが特徴的で、ノーヴェとウェンディは全体的に黒で統一されたジャケットとインナーが特徴的な服だ。おそらくこの4人は、それぞれが中学時代にパートナーとしてブレイブデュエルをしていただけに統一感が出ているのだろう。

 

 そして――

 

 

「……うぅん」

 

 

 ――最後の1人。シャーリーの格好を見た隼人は思わず言葉を失ってそう唸ってしまった。

 それもその筈、シャーリーは事務員が良く着ているようなスーツ姿。しかも茶色の上着とスカート、そして白いワイシャツと非常に地味だったのだ。

 

 

「そういや、シャーリーもまだ初めて1ヶ月くらいだっけな」

 

「す、すみません。何か私だけ地味で」

 

「気にすんな気にすんな。楽しけりゃなんでもいーんだよ」

 

 

 スバル達や隼人に比べて地味な衣装が恥ずかしいのか頬を染めてうつむくシャーリーに、隼人はそう言いながら笑う。衣装――バリアジャケットととも言われるそれは、ブレイブデュエルの中でも大きな割合を占める重要な要素だ。

 たかが衣装と思うかもしれないが、これはその人の防御力や攻撃力、速度にさえ影響を与えるもので、これを持っているのといないのとでは戦略に大きな違いが出てくる。

 

 とはいえ、ブレイブデュエルのカードはランダムでしか出てこないので手に入れられるかどうかは完全に運。

 シャーリーは1ヶ月前から始めたのだから、今着ている衣装……レアリティで言うならノーマルの服しか持っていないのも当たり前と言えるだろう。

 

 

「さって、それじゃあさっそく始めるとすっか! そっちの準備は?」

 

「できてます」

 

「いつでも!」

 

「よーしいい返事だ。おーいチンクー! こっちは準備いいぜー!」

 

 気を取り直してそう尋ねた隼人に答えるのは、5人の中で先頭に立っていたティアナとスバル。その返事を聞いて満足そうに頷いた隼人は視線を上げ、シミュレーターの外にいるチンクの名前を呼ぶ。

 すると、その声に応えて隼人の視線の先にチンクが映っているモニターが開いた。

 

 

『そうか、なら時間もあまり無い。早く始めるとしよう。審判は私がするか? それともセルフジャッジにするか?』

 

「チンクに頼むわ。お前が審判だと安心だからな」

 

『了解だ。ティアナ達もそれで構わないか?』

 

「あ、はい! お願いしますチンク先輩!」

 

 

 全員から肯定の言葉が返ってくると、チンクは了解したと笑って気を取り直すようにコホンと可愛らしく咳払いをひとつして、少しだけ表情を引き締めて高々を宣言する。

 

 

『それではこれからデュエルを開始する! 全員構えて!』

 

 

 モニタ越しに聞こえる彼女の声に、ティアナ達がまず反応して隼人から一斉に距離を取って構えた。

 それぞれの手には銃や鋼鉄の籠手、杖やボードといったそれぞれのデバイス――バトルを補佐してくれる機械――が握られている。

 さすがにシャーリーがまだ初心者に近いとはいえ、全員がそれなりの経験を積んでいるだけあって構え方は堂に入ったものだ。各自が一斉にそれぞれのポジションが居るべき位置に移動できているのも中々に評価が高い。

 

 ……と、隼人は彼女たちの動きを見ながらそんな風に頭の中で一人語りをしていた。

 だがすぐに楽しそうに笑うと、両手を軽く上下に振る。すると彼の両手に金と白のフレームで形作られ、その中心に赤と青の宝石が浮いている2本の杖が握られていた。

 

 

「ブレイブハート、今日の調子は?」

 

《 いつも通り、何の問題もありません。マスター隼人 》

 

「クロスハートの方はどうよ?」

 

《 私も姉様と同じく、問題ありませんよマスター 》

 

 

 それは彼のデバイス。左手に握られた赤い宝石を持つ杖がブレイブハート、右手に握られている青い宝石の杖がクロスハートと言う。隼人は自分のデバイスにそう話しかけ、2本の杖を構えながらティアナ達の前に仁王立ちになる。

 そして――

 

 

「オーライ、そんじゃあ今日も楽しくいこうぜ2人とも!」

 

《 あまり無茶はしないでくださいね。マスター隼人 》

 

《 言うだけ無駄だと思いますよ、姉様 》

 

 

 ――獲物に飛びかかる前の肉食獣のような、獰猛な笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

「前衛2人! 高峰部長のデバイスの形からして、接近戦はないわ! 突っ込んで!」

 

「わかってらぁ!」

 

「任せて!」

 

 

 最初に動いたのは、数に勝るティアナ達。自分たちは数で勝っているのだから、わざわざ先手を隼人に譲ってやる必要などなく、初手で流れを掴みそのまま一気に畳みかけるつもりだった。

 隼人のデバイスを見たティアナの指示に従い、ノーヴェとスバルが一気に隼人との距離を詰める。

 ある程度の例外はあるが、基本的にデバイスの形状はその持ち主がどのポジションを得意としているかの証明でもある。接近戦が得意なら剣や槍など武器の形をしている事が多く、中距離なら杖や銃といった形状、そして援護ならばグローブなどの武器の形ですらない物が多い。

 

 ゆえに、一瞬で隼人の得意な距離を中距離と見定め、その距離を潰すためにノーヴェとスバルを突撃させたティアナの判断は至極妥当なものだと言えた。

 

 

「フフーフ、甘い甘い。甘すぎるぞ、小娘共が!」

 

《 新入部員様達とマスター隼人とでは、2歳しか違わないと思うのですが 》

 

《 姉様、マスターは何となくで言っているだけと思いますよ 》

 

 

 しかし隼人は焦らず騒がず、不敵な笑みを浮かべて自分のデバイスからのツッコミは無視して吠える。

 

 

「クロスハート! ハルバードモード!!」

 

《 Yes Master. 》

 

 

 隼人の声に応えてクロスハートがその形状を、杖から斧と槍を足したようなもの――ハルバードへと変化させた。

 まさか近接武器に変化するとは思っていなかった前衛2人だけでなく、ティアナ達5人全員が驚きに目を開いてクロスハートを見つめる。

 とはいえすでにノーヴェとスバルは隼人の目前……間合いで言うなら長物であるハルバードよりも、ナックル型のデバイスを使う彼女たちの方が圧倒的に有利な間合いだ。

 だから2人は、驚いて逸らしていた視線を戻し、気にする事は無いと勢いそのまま隼人へと突っ込んでいく。

 

 

「貰った!」

 

「うおりゃあっ!」

 

 

 そうして隼人の目の前へと迫った2人は隼人を挟み込むように移動し、両側から彼めがけて拳を振り下ろす。

 隼人もクロスハートを振るおうと動くも、それより早くスバル達の拳が彼を捉える――筈であった。

 

 

「なっ!?」

 

「にゃあっ!?」

 

 

 スカを食らう、という言葉がある。確実に自分の手に返ってくる筈の、当たる感触。

 それが全く伝わってこない事に、スバルとノーヴェは思わず声を上げていた。避けられる筈が無い距離で、避けられる筈のないタイミングで繰り出した自分の拳が当たらない。

 そこにあった筈の隼人の姿は霧散し、彼が持っていたクロスハートだけがカランと音を立てて地面に転がる。2人にとって、それはまさに想像の埒外の出来事であった。

 

 

「ど、どこに!?」

 

「えっ? えっ?」

 

 

 まさに文字通り霞の如く消えてしまった隼人を探し、ノーヴェとスバルはもちろんティアナとウェンディ、そしてシャーリーも全員が隼人の姿を探して見回す。

 

 

「おいおい誰を探してるんだい?」

 

「そりゃあ高峰ぶちょ……ぅええええ!?」

 

 

 果たして、探すまでもなく隼人の姿はすぐに見つかった。

 スバルとノーヴェ、ティアナとウェンディという壁に守られた最後尾――シャーリーの真横で。

 

 

「なななな、なんでここに!?」

 

「いつから俺があそこにいると錯覚していた……という訳で、スキルカード:パワードレイン」

 

「ふにゃ……」

 

 

 慌てふためくシャーリーに笑いながら答え、隼人がブレイブハートでシャーリーに触れる。するとシャーリーは全身に虚脱感を感じてその場に膝から崩れ落ちた。

 パワードレインは名前の通り相手の魔力――ゲーム風に言うならばMPだろうか――を吸い取るスキルだ。

 とはいえブレイブデュエルはRPGのようにHPとMPが分かれている訳ではなく、MP=HPという公式なのでパワードレインで魔力を吸い取られるというのは、直接体力を吸い取られ事になる。

 

 

「シャーリー!」

 

「フフーフ、魔力いっただきー。そんじゃ次は……」

 

「やらせないッスよ!」

 

 

 驚きで固まるティアナ達の中で、隼人が次の行動を起こす前に動けたのはウェンディだった。

 大きな盾のような形をしたデバイス――彼女のデバイスであるライディングボードと呼ばれるそれに乗り、隼人に向かって全力で突撃していく。

 

 

「ライディングボード! このまま部長めがけて射撃ッス!」

 

《 了解した 》

 

「何それ酷い。こっち乗り物ないんですけどー!」

 

「知らないッスよ!」

 

 

 サーフィンのようにライディングボードを操り、隼人の周りを円を描いて回りながらボードの先端から隼人を撃っていく。ライディングボードの速度はスバルやノーヴェよりも更に早く、そこから間断なく撃たれる射撃はどこから来るのかを予測するのも難しく、避けるのは非常に難しい。

 

 

「うおぉ速ぇ!? なにそれすごい! これ避けられない!」

 

「ふっふーん! このまま終わらせてもらうッスよ!」

 

「ウェンディナイス! ノーヴェとスバルも一緒に……」

 

 

 彼女の高速移動と射撃のコンボは、隼人ですら防御一辺倒になるだろうと思われた。だからティアナはその隙に最初隼人が居た地点まで突出していたノーヴェとスバルを呼び戻し、追撃に当たらせようと指示を出そうと口を開く

 ――が。

 

 

「これ乗るの難しいなぁ……あ、でもサーフィンのゲームだと思えば」

 

「なーーーーーーっ!?」

 

 

 気付いた時には、隼人はもう立ってはおらず高速で動くライディングボード――というかウェンディの後ろにくっ付くようにして立っていたのだ。

 そうなってしまえば避けるも防ぐもない。その攻撃が発射される地点にいるのだから。

 

 

「いつの間にどうやって!?」

 

「企業秘密です。というわけで、てい」

 

「にゃーっ!? あばばばばばば……!」

 

 

 大慌てのウェンディだったが、後ろを振り向くよりも先に隼人に背中を押されてバランスを崩す。元々高速で動くボードの上に立っている不安定な状態なのだから、そうなってしまえばバランスを取り直すのは難しく、そのままウェンディはボードから転げ落ちて悲鳴と共に地面をゴロゴロと転がって行った。

 

 

「ウェンディ!」

 

「ノーヴェダメ! 今突っ込んでいっても無理よ!」

 

「くっそ……」

 

「いやぁ交通事故みたいな転がり方だったなぁ。よ……っと」

 

 

 そうして転がって行ったウェンディを眺めつつ、隼人は器用にボードを止めて地面に降り立つ。

 

 

「くくくく、ウェンディがやられたか……だが奴は我ら四天王の中でも最弱。

 あんな奴にやられるとは、四天王の面汚しよ……」

 

「いやそれ言うとしたらこっちですよね!?」

 

「大体あんたあたしらのチームじゃねーから、我らっておかしいだろ!」

 

「しかも四天王って、あたし達5人ですけど!」

 

 

 なぜか悪役風の笑いを漏らす隼人に、残った3人が続々とツッコミを入れて叫ぶ。そんな事をしている場合ではないのだが、何故かツッコミを入れずにはいられなかった。ある意味隼人の人柄のなせる業と言えるかもしれない、決して誇らしくはないが。

 

 

「さて、これで3対1。どうするよ?」

 

「何言ってるんですか、ウェンディはまだ戦闘不能じゃないですから4対1ですよ。

 シャーリーだって、時間が経てば魔力は回復します。まだあたしたちの有利は……」

 

 

 言いかけたティアナの目が見開かれる。

 彼女の視線の先にいる隼人の手には、いつの間にか再びクロスハートが握られていた。ブレイブハートも当然握られており、再び二本のデバイスを構えていたのだ。ティアナ達は彼から目を離していないというのに。

 

 

「数の有利、それがお前らの勘違いなんだよなぁ……」

 

《 マスター隼人、やめてください 》

 

《 姉様とぶつかって痛いです 》

 

「お前らうっさい」

 

 

 両手に持ったブレイブハートとクロスハートを肩に担ぎ、トントンとそれで肩を叩く隼人。ちなみに丁度先端が交差する形になっているので、デバイスの先端が思い切りガツンガツンぶつかり、そのせいでデバイスに怒られすぐに両手を下ろした……なんとも恰好がつかない。

 

 

「ったく、水差すなよ。せっかくカッコよく解説しようとしたのに」

 

《 マスター隼人、自分のした事を悠々と語るのは負けフラグですよ 》

 

「なん……だと……」

 

《 まずは勝利してから、ゆっくりと解説をすればよろしいかと 》

 

《 マスターはいつも詰めが甘いですからね 》

 

「うっせうっせ!」

 

 

 唐突に始まった漫才にどう対処したものかと、ティアナ達は動かないまま眉を寄せた。

 攻撃してもいいのだが、また気付かぬうちに裏を取られるのではという警戒があったからだ。だからティアナはどうせならと、隼人を見ながら今後の作戦を考える。さっきまでの隼人が何をして、それを防ぐにはどうしたらいいかを。

 

 

「ごほん。えーでは気を取り直して……ってかまぁいいや、終わりだ終わり」

 

 

 ティアナが思考していると、デバイスからのツッコミを鬱陶しそうに声で遮って隼人がティアナ達に向き直る。

 

 

「まだ負けてません! ノーヴェ、スバル、3人で行くわよ!」

 

「了解!」

 

「オッケー! 任せて!」

 

 

 まだウェンディとシャーリーを倒しただけなのに、すでに勝ったとばかりの態度を取る隼人にティアナが叫び、同時に彼女の後ろからノーヴェとスバルの2人が飛び出してきて、ティアナもそれに合わせて3人で隼人へと走りだす。

 高速移動かどうかはわからないが、隼人はとにかく一瞬であちこちに動けるのだろうと考えるティアナ。

 しかし、とりあえず現在戦えるのは自分を入れて3名。このまま自分も一緒に前へ出れば、さっきまでとは違い全員が一か所に密集している形になり、隼人がどう動こうとすぐに対応できる。

 

 

「これなら、ちょこまか動いても無駄ですよ!」

 

「……なるほどな。ティアナ、お前いいセンターになれるわ」

 

 

 一瞬で自分が何をしたのかを想像し、最適解に近い行動を即座にしてみせたティアナに隼人は感心したと声を漏らす。

 だが、それだけだ。隼人はまだ10分も経っていないこの勝負がもう終わる事、勝つのは自分である事を何の疑いも無く確信していた。

 

 

「ブレイブハート、クロスハート。チャージは?」

 

《 完了していますよ。マスター隼人 》

 

《 いつでもどうぞ、マスター 》

 

「あいよ。んじゃまぁ新入生諸君には悪いが、これでフィニッシュです」

 

 

 自分めがけて突っ込んでくる3人を眺め、短くそう宣言して2本のデバイスを合わせるようにして両手を前に出す。その手の先――デバイスの先端には、いつの間にかはち切れそうな程に収束された赤い魔力の球が浮かんでいる。

 おそらくは先ほど自分のデバイスを漫才をしている時に溜めていたのだろう。

 

 無駄な漫才だったのではなく、全てが勝利への布石。

 彼の起こした行動に無駄なものなどなくただ全てがこれへの布石だったのかと、ティアナは戦慄した。

 

 

「ツインバスターライフル発射、なんちゃって」

 

 

 そしてティアナ達が回避・防御行動を取るよりも早く、その光は一方の巨大な光線となって彼女たちを飲み込んだ。

 

 

 

 

 




デュエル短っ!?
いや、まぁ主人公最強なんでこのくらいにする予定ではあったんですがw
解説を挟む暇もなく隼人の勝利でした。

まぁ次からはもうちょいちゃんとした試合になると思います。
試合だけで2、3話使うくらいになる筈です。ええ。
次回は今回隼人が何をしたのか、隼人は何者なのかを書いていくつもりです。


それではまた、次の話で。
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