魔法少女リリカルなのはInnocent ~デュエルの王女様~ 作:ラモン
「ふわぁ……」
「すごい……」
目の前のスクリーンに映っている光景を見て、エリオとキャロの2人は目を輝かせながら声を漏らした。
それはさながら物語のヒーローを見ているような顔で、2人は年相応らしい表情で食い入るようにフィールドでコートを翻し、2本のデバイスを持ったまま唯一人立っている隼人を見つめている。
そんなエリオとキャロを見つめ、どこか嬉しそうに笑いながらチンクが2人に話しかけた。
「どうだ? 短かったが、凄いものだろう?」
「はいっ!」
「部長さん、すごくかっこよかったですっ!」
その問いかけに対し、2人は興奮した声でスクリーンからは目を逸らさないまま頷く。
視線の先では隼人が勝ち誇った顔で観客であるエリオ達に向かってピースサインをしているところであり、それに対してエリオ達はヒーローショーを見ている子供のように歓声を上げていた。
『いえーい! 大勝利ー!』
「はしゃぎすぎるな、まだ試合終了の合図は出していないぞ」
『っと、そういやそうだったな。ここで気ぃ抜いて負けたら恥ずかしいってレベルじゃねーわ』
チンクに言われて気を引き締める隼人だったが、すでに相手であるティアナ達は全滅。特に隼人の砲撃魔法をモロに食らったティアナ、スバル、ノーヴェの3人はバリアジャケットもボロボロになって目を回している。
油断も何も勝負ありという状況だが、審判であるチンクが試合終了を宣言しない限りは戦いは終わらない。
ここでもしティアナ達の中で動ける誰かが隼人を攻撃し、ラッキーパンチで倒してしまえば隼人の敗北だ。さすがにそれは色々と恥ずかしい。
「さて……ふむ、ティアナ達新入生チームの全ダウンを確認。勝者、高峰隼人」
『ふははははは! やっぱ俺ってばさいっきょー!!』
「うるさい、はしゃぐな。子供かお前は」
『なんだよチンク。別に喜ぶくらいいいだろー』
子供のように口を尖らせる隼人だったが、チンクはそんな彼の言葉には耳を貸そうともせずにシミュレーターのコントロールパネルへと移動して、試合終了のボタンを押した。
するとモニタが暗転するのと同時に、シミュレーター自体を照らしていた照明も全て落ち、辺りはまた控え目な部屋の照明に照らされるだけの空間へと戻る。
「ふいー。いやー快勝快勝!」
「お疲れ……という訳でもなさそうだな」
それと同時に隼人がスッキリした顔でシミュレーター用のポッドから顔を出す。彼の顔を見たチンクは、半分呆れたような顔で笑って肩を竦めながら隼人を迎える。
「ま、あっちが油断してくれたからな~」
「そこまで計算だったくせに、よく言えたものだ」
「俺は悪くありませんー。5対1だからって油断した方が悪いんですー」
「子供か」
隼人の胸元に裏手で軽くツッコミを入れつつ嘆息するチンク。とはいえ、隼人のこういう物言いはいつもの事なのでチンクもそこまで本気で相手にはしておらず、半分聞き流しながらのツッコミである。
と、そこで観客席に座っていたエリオとキャロの2人が目を輝かせながら隼人の傍へと駆け寄ってきた。
「すっごくカッコ良かったです、高峰先輩! 私、ちょっと感動しちゃいました!」
「僕も見てて凄く楽しかったです先輩! 先輩って凄い人だったんですね!」
「うおぉ、なんだなんだ」
突然自分の周りにひっ付いてきた2人に最初は戸惑っていたものの、2人の言葉を聞いて気分が良くなったのかニヤニヤと頬を緩めて鼻高々と胸を張る。
「まーなー! 俺ってばホラ天才じゃーん!? もっと誉めてくれていいのよ!?」
「……お前ほど単純だと、人生は楽しいのだろうな」
「あの、先輩。僕も先輩みたいに強くなれますか?」
チンクが心の底から呆れたところで、エリオが隼人にそう尋ねた。
どうやら、少なくともエリオは今の隼人対ティアナ達のデュエルを見て、ブレイブデュエル部への入部をほぼ心に決めているようだ。ここで隼人がきちんとした返答をすれば、間違いなく入部してくれるだろう。
だからこそチンクも隼人に大人の対応を求めたのだが――。
「もちろん強くなれるさ。ブレイブデュエルってのは可能性のゲームなんだ。
楽しんで、強くなろうって気持ちがありゃ誰だって強くなる事ができるゲームなんだからよ」
「そ、そうなんですか」
「ああ。まぁ俺には勝てないだろうけどな!」
「……」
――高峰隼人にそれを求めるのがいかに難易度の高いミッションであったのかを、いやという程に思い知らされるチンクであった。
「あははは! 先輩って負けず嫌いなんですね」
「ふふ。高峰先輩、子供みたい」
まぁ、予想外に2人揃って好感触だったのが唯一の救いだろうか。
ともあれ。こうして海聖高校ブレイブデュエル部が行った初めてのデュエルは幕を閉じたのであった。
●魔法少女リリカルなのはInnocent ~デュエルの王女様~
第5話 『部長の正体 3』
楽勝で勝てる、とはティアナ達も思っていなかった。彼よりもよっぽど部長に適性があるだろうチンクを差し置いて部長という椅子に座っているのだから、相応の実力があるのだろうとは考えていた。
負けはしないまでも、かなりの苦戦はするかもしれない。そんな風な予想はしていたつもりだった。
しかし、まさか攻撃をする間もなくあっという間に全滅させられる――そんな予想は、終ぞしていなかった。
「……何なんだよ、あの部長」
「強いなんてモンじゃないッスよ……」
シミュレーターの中で呆然と呟くのは、ノーヴェとウェンディの2人。
自分たちの実力に相応の自信を持っていた2人は、何もできずに負けたことがまだ信じられないようだ。そしてそれはティアナとシャーリーも同様で、お互いの顔を見合せたまま何も喋らず呆けたような顔をしている。
「デバイス二刀流、白いバリアジャケット、そして高峰……」
唯一違う反応をしていたのは、おそらくこの中では一番ブレイブデュエル歴が長いだろうスバル。
何かを思い出そうとしているのか、顎に手を当てて先ほど見た隼人の特徴を呟いている。5対1で相手を瞬殺できるだけの実力者であるのだから、公式大会に出て有名になっていてもおかしくはない。
実際、スバルは過去に彼の名前とその姿を見た覚えがあった。
ただそれは最近の事ではなかったため、こうして思いだそうとしている訳だ。
「うーむむむ……」
「ちょっとスバル、うるさい」
あーだこーだと記憶をひっくり返し、それこそ頭から煙が出そうな程に脳をフル回転させているスバル。悩む彼女の声がうるさいと抗議するティアナの声にも答えず、彼女は自分の記憶を掘り返した。
それは非常に昔の事で、それこそ彼女がまだブレイブデュエルを始めたばかり……その頃の記憶。
「……あっ」
と、暫く唸っていた彼女の頭にようやくひとつの映像が浮かぶ。
それは彼女がブレイブデュエルを始めて、まだ1年か2年しか経っていない頃。おおよそ3度目くらいになるだろうブレイブデュエルの全国大会、その表彰式。
高町なのは、フェイト=テスタロッサ、八神はやてを始めとした現在ブレイブデュエル界では知らぬ者がいないだろう数々のプレイヤーと共に、どこか不貞腐れた顔をしていた少年。
「思いだした!!」
「うわっ!?」
「び、びっくりしたッス」
その映像で見た少年の姿と名前、そして隼人とが一致した瞬間、スバルは大声で叫んだ。
「高峰隼人! そうだよ、第3回ブレイブデュエル全国大会で、チームじゃなく個人で参加した子だ!
確か準決勝と3位決定戦には負けて4位になったけど、たった1人でその成績はすごいって事で話題になったんだ!」
「はぁ?」
「あの2本のデバイスと白いバリアジャケット、あと背中の文字もあの時テレビで見たもん!」
「ちょっと待ってスバル、いきなり何の話?」
「部長だよ! 部長の話!」
鼻息も荒く両手を振って説明するスバルだったが、突然すぎる事でティアナ達は頭に疑問符を浮かべるばかり。そもそも、スバルが言っている大会の頃はティアナ達は10歳になっているかいないかという頃だ。しかもまだブレイブデュエルをやっていたかどうかも定かではない。
そんな時期にやっていた大会――しかも優勝したわけでもない人の話をされても、わからないのが当然だろう。
「わー! 高峰部長って凄い人だったんだー! サインとか貰えるかなー? あ、でもどうせなら写真とかも一緒に」
「ストップ、ストーップ! ちょっと落ち着きなさいスバル!」
話について行けない自分たちを置いてけぼりにして一人ヒートアップするスバルを、ここは自分がと思い立ったティアナが慌てて止める。
「いきなりそんな話をされても、あたし達全然わからないから。まず落ち着いて、一から説明してくれる?」
「えっ、嘘!? 皆知らないの!? ティアも!?」
「優勝したならともかく、その頃はブレイブデュエルやってなかった子もいるんだから当然でしょ」
「むー。あんなに話題になったのにー」
口を尖らせてぶーぶーと文句を垂れるスバルであったが、実際そこまで話題になった訳ではない。
当時はまだブレイブデュエルが有名になり始めたばかりであったため、そこまで大々的にテレビで取り上げられた訳ではないのだ。せいぜい地方局のニュースでチラッと話題が出るくらいであろうか。
そんな事を覚えているのは、それこそその頃からブレイブデュエルにどっぷり漬かっていたスバル位のものだ。
とはいえ知らないから説明しろと言われれば、この凄さを分かち合って欲しいスバルからすれば喜ばしい事で、すぐにわかったと腰に手を当てて語り出す。
「えーとね。ブレイブデュエルの全国大会って、基本的には5人チームの参加が大前提だよね?」
「そうね。だからあたし達も部員集めしたわけだし」
「うん。ただ、そんなブレイブデュエルの全国大会で、一度だけ個人で参加が認められた子がいたんだよ。
その子の名前が高峰隼人。5対1っていう不利な状態なのに、全国の予選を勝ち上がってきた猛者をものともせずに勝ちぬいて、最終的に4位入賞したの」
「え、でも個人での参加ってできないんじゃねーの?」
スバルの解説に疑問を挟んだのはノーヴェ。
それもその筈で、そもそも5人チームでなければ全国大会は愚か地区予選にも参加はできない筈なのだ。
「それはそうなんだけどね。その当時はまだそこまで規制が厳しくなかったのと、どうせ1人でやってもすぐ負けるだろうからって事で、特別に許可されたらしいんだ」
「……案外いい加減だったんだな」
参加できた理由があまりにいい加減な理由だったので、ノーヴェは思わず呆れた顔で呟いてしまった。
今であればそれこそ厳しい規定によって参加以前の問題になるのだから、彼女が呆れるのも仕方ないことか。
「まぁ、そんな感じで一時期すごく有名になったんだけど、その後は全然大会に出なくなっちゃってね?
一説には負けて引退したーとか、既にショッププレイヤーになってるーって噂にもなってたんだよ」
「へぇ……って、それ本当に高峰部長なの?」
「間違いないよ! だってデバイスを2つ使う人なんて、あたしが今まで見てきたブレイブデュエルの中でも、あの時に見た子だけだったもん!」
胸を張って宣言するスバルに、ティアナは彼女がそういうならそうなのかも知れないと納得する。ノーヴェ達はまだ半信半疑といった様子だが、付き合いの長いティアナはスバルがいわゆる『マニア』と言われるレベルでブレイブデュエルに詳しいのを良く知っている。
何せ有名なプレイヤーなら名前から生年月日、果ては3サイズまで完璧に把握しているのだから。
一時期ちょっと友達やめようかな、と思ってしまったのは内緒だ。
「おう、なんだ負けて沈んでるかと思ったら意外と盛り上がってるな」
「あ、部長」
すると、スバルの解説が終わるのを待っていたかのようなタイミングで隼人が彼女らの元へとやってくる。
今までの流れからして隼人に向かって突撃しかねないと警戒したティアナだったが、時すでに遅し。
「部長! 部長ってもしかしてあの高峰隼人さんですか!?」
「ふぁっ!? 何の話だよいきなり……ってかどの高峰隼人か知らんけど、それは俺の名前だよ!」
「やっぱり! やっぱりあの高峰隼人さんだったんだぁ~! うわぁ、感激だなぁ!!」
「何? 何が感激なの? なんかちょっと怖くなってきたんだけど!?」
話が噛み合っていない事にも気付かず、恍惚とした表情でなんだか遠いところへ旅立ってしまうスバル。ティアナはそれを見てやっぱり友達付き合いを考えようかと思いつつ、スバルがこれだけ興奮している理由――つまりは隼人が5年ほど前に行われた第3回ブレイブデュエル全国大会に個人で出場し、活躍したかどうかというのを尋ねた。
「それでスバルは、高峰部長がその凄い人だからって興奮してるみたいです」
「なるほどな。ってかよく知ってんなぁ、俺その大会に出た後は一回も大会出てなかったのに」
「一時期とはいえ、かなり有名になったからな。知っている者がいても不思議はないだろうさ」
「マジで? 俺有名人? サインした方がいい?」
「いらん」
隼人のあとからエリオとキャロを連れてきたチンクも合流し、混乱から回復して調子に乗り出した隼人に鋭いツッコミを入れる。そしてチンクの言葉に続き、ノーヴェとウェンディもそれぞれ隼人に対して問いかけた。
「なぁ先輩。なんでそんな有名人なのに、今はこの部活の部長やってんだ?」
「ん? どういう意味?」
「えっと、言い方悪いんッスけど……この部活ってかなり寂れてるじゃないッスか。
そんな有名なプレイヤーだったら、強豪って言われてる学校のブレイブデュエル部にも入れたんじゃ?」
「あぁ、そういう事か」
言われて確かにと納得したのか頷いて、それから少し自嘲気味に笑う隼人。
「まぁ、簡単に言うなら『その方がブレイブデュエルを楽しめる』からだろうなぁ」
「楽しむ……ッスか?」
「そうそう。昔は俺も捻くれててなー……特に一番酷かったのが、さっき話題になってた第3回ブレイブデュエル全国大会の頃だった訳よ」
昔の事を思い出しながら、しみじみと隼人が語り出す。その表情に寂しさを滲ませて、懺悔でもするように。
今日隼人に会ってから一度も見た事が無い彼のそんな表情に、ノーヴェ達は聞いてはいけない事を聞いてしまったのかと、思わず謝りそうになる。だが、それをチンクがさりげなく制して「とりあえず話を聞いてやれ」と促した。
「ブレイブデュエルをやってた理由が、そもそも『勝つのが好き』だったもんなぁあの頃。
そりゃー楽しくなかったぜー? ボッチでずーっとやってた訳だしさ。地元じゃ負けなしだったし、ちょっと遠くの方まで行ってデュエルしても負けなかった。そうなりゃ当然天狗になる訳でよ」
スバルの言っていた通り、隼人は強かったし凄い少年であった。
地元であれば常勝無敗。ブレイブデュエルを始めてから、子供はもちろん大人にだって負けた事はなかった。そんな彼にとって、ブレイブデュエルは『楽しいゲーム』ではなく『自己顕示欲を満たすための手段』となっていたのだ。
ブレイブデュエルをやっている人を見かければ勝負を挑み、例えそれが初心者相手でもボコボコにぶちのめす。
そしてその事で抗議されれば『弱い奴が悪い』と見下したような言葉を吐きかける。
そんな隼人は、当然ながら地元ではかなり嫌われていた。誰かれ構わず勝負を挑んだ挙句に嫌われるような言動ばかりしていたのだから、本人もそれを疑問に思った事はなかった。
だが、その認識が変わったのが彼が12歳の時。第3回ブレイブデュエル全国大会での事。
「地区予選でも地方予選でも、俺の相手になる奴はいなかった。それは全国大会でも同じで、それこそ準決勝に行くまではほとんど相手にもならなかったんだな、これが」
それが隼人が注目された理由。
当時2本のデバイスを操るというプレイヤーはいなかったし、何より個人でチームを相手に圧勝し続けてきたのだ。テレビなどのマスコミはこぞって彼をもてはやした。
隼人自身それに気を良くし、あれやこれやと大口を叩きもした。
――が。
「準決勝で俺は負けた。その後の3位決定戦でもな」
隼人が負けたチームはT&Hエレメンツと八神堂――今でも現役プレイヤーとして活躍中の、全ブレイブデュエルプレイヤー憧れのチームだった。
「しかも普通に負けたんじゃなくて、今までの活躍が嘘みたいなボロ負け。いやー思い出してもありゃ酷かったわ」
当時の事を思い出し、かんらかんらと笑う。
ちょうど今日のティアナ達のように、隼人はその2つのチームに手も足も出ずに完敗した。それは、当時の隼人にとってあまりにも屈辱的で、悪い夢でも見ていたかのような出来事だったのだ。
「んで、俺が初めて敗北した時に、T&Hエレメンツの高町なのはって人にこう言われたのさ。
『隼人君は、なんだかとってもつまらなそうにデュエルするんだね』って」
「なのはさん!?」
「うお、ビックリした」
隼人の口から洩れた有名人の名前に、夢の国から帰還したスバルが食いつく。高町なのはは、現役プレイヤーの中でもトップクラスの有名人だ。当然スバルが知らない訳もない。
……のだが、とりあえず話の流れを止めるのはよろしくないと、ティアナに引きずられて退場していった。
「やーん! あたしもなのはさんのお話きーきーたーいー!」
「だったら静かにしなさいよバカスバル! あんたのせいで雰囲気台無しじゃない!」
「うえーん! ティアが叩いたー!!」
「えーと……ごほん。ま、そんな事を言われた瞬間。そういやそうだなって思ったのさ、俺は」
スバルの乱入でグダグダになりそうだった雰囲気を戻すために咳払いをひとつ挟み、隼人は言葉を続ける。
「んで、その後にこうも言われたんだよ。『ブレイブデュエルは楽しまなきゃ!』ってな。
ガキだった俺には衝撃だったぜ? そんな事言われたのも、考えたのもそれが初めてだったからな」
「……それで、部長はその言葉に素直に従ったって事ッスか?」
「ま、自分に勝った奴らが全員揃って馬鹿みたいに楽しそうにデュエルしてるのを見せられたら、そりゃーなぁ」
その時の事を思い出したのか、隼人は楽しそうに笑う。実際、当時の隼人にとってそれはあまりに衝撃的な事だった。
それまでの彼にとって、ブレイブデュエルは楽しむものではなく、自己顕示欲とストレス解消のための道具でしかなかった。そうした方が強くなると思っていたし、楽しんでいたら勝てないとも考えていた。
しかし、自分が初めて負けた相手は、そんな自分の考えを否定するかのように心の底から楽しそうにデュエルをしていたのだ。それを見た隼人の驚きは、推して知るべしと言ったところだろう。
「で、まぁ単純すぎて自分でも笑えてくるけど、俺はその人達に憧れた。
あんな風になりたい。あんな風に、勝っても負けても『楽しめる』ような人たちに……ってな」
「へぇ……」
「あれ? でもそれとこの高校にいるのとは関係ないんじゃ?」
「いやー、これが意外と関係あるんだなぁ」
挟まれた疑問にチッチッと指を振って、何故かちょっと得意げに答えを返す。
「強豪校ってのはさ、程度の差があっても『勝てればいい』ってプレイスタイルなんだよ。
それじゃ、俺が憧れてるあの人達には届かねぇ。勝てばいいって考えてるうちは、あの人達みたいになれねぇ。
で、どこに入学するか悩んでた時にこの海聖高校の話を聞いたんだよ。高町なのはさん達が、ここの卒業生だったって話をな」
さっきまでの、どこかふざけた表情ではなく。恐らく今日ティアナ達に会ってから初めて見せる、真面目な表情。
思わずそこにいる全員が見惚れてしまうような表情で、隼人は語る。自分が憧れた人に近づくために、以前に負けた人達に今度は勝つために、ここにいるのだと。
「ま、俺が入った時には思ってたよりも海聖高校ブレイブデュエル部の状況は深刻でな。
それでも先輩達は楽しくデュエルをやってた。俺も、そういう先輩達と一緒にやってくのが凄い楽しかったのさ。
とまぁ、単純すぎる理由だけどこれが俺がここで部長やってる理由だな」
「……な、なんか思った以上に真面目な理由だったッスね」
「そ、そうだな」
「高峰部長が凄い人だったってのも驚いたけどね」
ウェンディ、ノーヴェ、シャーリーの3人がそれぞれ顔を合わせて微妙な表情でそう呟いた。
まぁ確かに今までの彼のキャラから考えて、そこまで真面目な理由があるとは思ってもいなかったのだろう。
「だからお前らも勝ち負けにこだわりすぎず、全員で楽しくやっていこうぜ。
楽しまなきゃそもそも頑張ろうって気にもならねーし、何より長く続けていくなんてできないからよ。
その上でどうやって勝つか、それを一緒に考えていこうや」
人懐っこい笑みを浮かべ、隼人はそう締めくくる。
そこまで話を聞いて、チンクは『珍しく真面目に話したな』と妙な感心をしていた。いや、まぁ長年彼のおふざけに付き合っていた彼女だからこその感想と言えるのだけれど。
「よーっし、それじゃあとりあえずこれから歓迎会の続きってことで飯でも食いにいくか!
安心しろ今日は俺が全部奢っちゃる!」
「マジで!?」
「やったー! 高峰部長大好きー!」
「さすが部長、太っ腹ッスねー!」
とりあえずこれで話は終わりと、隼人は話を切り替えた。
時間も既に夕方の6時を過ぎており、そろそろ帰らなければいけない時間だ。だから帰りに部員同士の親交を深める目的も兼ねて、食事に行こうという事らしい。
しかし、そこで思わぬ人物から待ったが入る。
「ちょ、ちょっと待て隼人! ノーヴェとウェンディは結構食べるんだ!」
「スバルもかなり食べますよ先輩! 奢りなんて言ったらさすがに……」
「だいじょーぶだいじょーぶ! こないだちょっと臨時収入あったからかなり懐は潤ってますのことよ!」
かなりの大食漢だからと心配するチンクとティアナだったが、隼人は大丈夫大丈夫とまったく意に介さない。
なおも言い募ろうとする2人だったが、結局隼人がそれを聞き入れる事はなく、隼人の奢りという事でブレイブデュエル部は帰り道にファミレスで食事をしていく事になったのであった。
「……知りませんよ、どうなっても」
「はぁ……仕方ない。途中でATMにでも寄っていくか」
チンクとティアナのそんな呟きを残して。
◇◇◇◇◇
そして数時間後。
そこには、泣きながら会計カウンターで食事代金を支払う隼人の姿があったという。
すでに投稿しているつもりになっていた馬鹿です(´・ω・`)
どうも、ラモンです。
まぁ最強設定とはいえ、負ける時は負けます。
なのは達は一応主人公ですから、オリ主とはいえそうそう勝てません。
次回からは日常パートが続くと思います。時々練習がてらデュエルをしつつ、あとはのんびりまったりって感じですかね~。
たぶん今年の更新はこれがラストになると思います。
それではまた、次の話で。