魔法少女リリカルなのはInnocent ~デュエルの王女様~   作:ラモン

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第7話『1に特訓2に特訓、3・4も特訓、5も特訓!!』

 

 

 

「まぁ、まずシングルは隼人で決まりだろう」

 

「んー……そうねぇ。高峰君はできれば、あまり順番を固定したくないんだけど」

 

「とはいえ、私はあまりシングル向きではないからな。

 ノーヴェ達の成長にもよるだろうが、とりあえず隼人のシングルで確実な一勝が欲しいところだ」

 

 

 ブレイブデュエル大会運営から公式な重大発表があった翌日の昼休み。

 保健室に集まった隼人、ノーヴェ、そして保険医であるウーノはそれぞれ自分の食事を食べながら、大会に向けて今後どうするかについて話し合っていた。

 話し合ってるとはいうが、隼人は自分の食事に夢中で参加はしていない。おもに話し合っているのはウーノとチンクである。部長とは何だったのか……。

 

 ともあれ、最低5人――補欠要員を考えても7人程度いればいいと思っていたのに、チーム・ダブルス・シングルスの計8人が必要になってしまったのだ。人数だけを見れば現状ブレイブデュエル部は9人だが、そのうち2人は昨日ようやくカードの登録をしたばかり。

 約3ヵ月後から始まる大会まで戦力に数えるようになるかと問われれば、できない事はないが難しいだろう。

 

 

「チンクにはタッグ戦の1人を担当してもらおうかしら。貴女なら、誰と組んでもそれなりで出来るでしょう?」

 

「まぁ、前衛と組ませて貰えればなんとか勝ちは拾ってみせるさ」

 

「地区予選を突破すれば、次の県予選まで1ヶ月。そこも突破できれば地方予選までまた1ヶ月。

 最終的に全国大会まで行けたと想定すれば、時間は結構あるわ」

 

「地区予選の間は、チーム戦は経験を積むものと割り切る作戦ですね。

 確かにそうすれば、エリオ達も気負わずに参加できるか……」

 

 

 チンクとウーノの2人はチーム戦を捨てて、負け前提でエリオ達にチーム戦の経験を積ませるようにと考える。

 ティアナ達の成長具合にもよるが、チーム戦で確実に勝つのは難しいと言えるだろう。チーム戦は、どうしてもタッグ戦や個人戦よりもチームとしての総合力を問われる。

 エリオ達が大会までの3ヶ月で実力を伸ばしたとしても、チームとしての連携まで覚えるのは難しい。

 ならば、実戦の場で負けながら経験を積んだ方がいい。彼女たちはそう判断したのだ。

 

 

「えー。俺そーゆーの嫌いだなー」

 

 

 しかし2人の判断に対して、隼人は口を尖らせ不満の声を漏らす。

 

 

「初心者だからって最初から諦めてどうするよ。負けの経験なんかより、勝ちの経験の方が絶対いいって」

 

「いや、簡単に言うがな……お前はエリオ達が地区予選までに勝てるようになると思うのか?」

 

「余裕だろンなもん」

 

 

 簡単そうに言われた言葉に眉を寄せて聞き返したチンクだったが、隼人はその問いに当然だろうと返答した。

 

 

「ブレイブデュエルは頭の使い方さえ分かれば初心者でもプロに勝てるゲームだぜ?

 経験なんてのは、その頭の使い方をスムーズにするためのモンだよ。3ヶ月も練習すりゃ十分すぎらぁ」

 

「あら、随分とやる気ね高峰君」

 

「そりゃあね。やるからには勝ちしか狙いませんよ、俺は」

 

 

 目を細めて楽しそうに微笑むウーノに、口の端を釣りあげて得意そうに笑い返す隼人。

 その笑顔を見て、チンクは隼人が本当にエリオ達を大会が始まる3ヶ月までに一人前にするつもりなのだと悟り、大仰に溜息を吐いた。それは呆れから来るものではなく、やる気をだしたこの少年に今日から大会の直前まで、廃人ゲーマーの謎理論で振り回されるエリオを始めとした1年生全員への同情の溜息だった。

 

 

「じゃあ、1年生の指導には高峰君も混ざってもらおうかしらね。

 でもいきなりフレーム数の話とかしちゃダメよ? さすがに理解しきれないと思うから」

 

「いや、いくら俺でも最初からはしませんって。最初は常識的な部分からいきますよ」

 

「あらそう? 確か以前、チンク相手にいきなりそんな話をしていたような……」

 

「あの時は俺も若かったので」

 

「2年前の話だろうが」

 

 

 ツッコミを入れつつ、これは自分がきちんと監視をしなくてはと決意を新たにするチンク。

 どうにもこの隼人という少年は、ゲームが好きすぎるあまりに暑くなると周りが見えなくなってしまう。そういった時に止められるのは、現在チンクとウーノだけなのだ。

 そしてウーノは養護教諭である以上、顧問とはいえ毎回指導に参加はできない。となれば必然、自分が隼人のブレーキ役になるのだろう。

 

 

「……慣れてはいるんだが、やれやれ」

 

 

 苦笑を浮かべて頭を振りつつ、まずは1年生が自力で隼人を止められるようにしようと考えるチンクであった。

 

 

「目指せ! 地区大会で俺の出番なし!」

 

「……お前、実はただ自分がサボりたいだけじゃ」

 

「ちげーし! 別に大会始まるくらいに発売予定のゲームがやりたいから、大会とかやってる場合じゃないよねって訳じゃねーし!」

 

「そうかそうか。それじゃあ大会が始まったらゲームはすべて私が預かってやろう。

 そうすれば、心おきなく大会に集中できるぞ。良かったな隼人」

 

「ひでぇ! ひでぇよ! お前には心ってモンがねぇのか!?

 鬼! 悪魔! 貧乳!」

 

「わかった戦争がしたいんだな、いい度胸だ表へ出ろ」

 

 

 

 

●魔法少女リリカルなのはInnocent ~デュエルの王女様~

 第7話 『1に特訓2に特訓、3・4も特訓、5も特訓!!』

 

 

 

 

 そして放課後。

 物置……もといブレイブデュエル部の部室に全員が集まったのを見て、隼人が口を開く。

 

 

「さて、昨日の今日ではあるが重大発表がいくつか。

 まずエリオとキャロが正式に我がブレイブデュエル部の部員になったぞ!」

 

「仲間が増えるッスよ! やったねたえちゃん!」

 

「おい馬鹿やめろ」

 

 

 すかさずネタを挟んできたウェンディとツッコミを入れた隼人は別として、残りの全員が口々にエリオ達を歓迎する。

 エリオとキャロは気恥ずかしいのか、はにかみながら「ありがとうございます」と声を返した。本来ならまだ小学校に通っている年齢という事もあって、年上にあれこれ構われるのに慣れていないらしい。

 

 

「やーん、照れてるー。かーわいいんだぁ~」

 

「やめてくださいよぅ」

 

「これからよろしくねー、キャロちゃん。エリオ君」

 

「あ、あの! シャーリーさん! 抱きつくのやめてください!」

 

 

 エリオとキャロの反応が楽しいのか、もともと人に絡むのが好きなスバルやシャーリーは頬をつついたり抱きついたりと、あれこれやりたい放題である。エリオちょっとそこ変われ。

 ともあれ話はこれだけではないので、盛り上がる後輩を制するようにチンクが軽く手を叩く。

 

 

「ほら、まだ話は終わっていないぞ。静かにしないか」

 

「あ、はい。ごめんなさい」

 

「ごめんなさーい」

 

「よろしい。それでは続きを頼むぞ隼人」

 

 

 チンクに促されて一瞬「あれ? こういう時のまとめ役って部長の役目じゃ……」と思いつつ、隼人はまぁいいかと気持ちを切り替えて口を開いた。

 

 

「あー……昨日の今日でも知ってるヤツもいるかも知れんが、ブレイブデュエル高校生大会のルールに変更があった。

 今までは5人のチーム戦のみだったんだけどよ、今度の大会から5人のチーム戦、2人のタッグ戦、そしてシングル戦の3戦方式になったらしい」

 

「あ、やっぱりそれ本当だったんですか」

 

 

 大会のルール変更を告げられ、シャーリーがやっぱりと声をあげる。

 他にもティアナ、ノーヴェの2人も「知ってました」と続き、スバルとウェンディ、そしてエリオとキャロの4人は知らされた事実に驚きの表情を浮かべて顔を見合わせた。

 

 

「お、何人か知ってる奴もいるな。情報収集は大事だぞ、感心感心」

 

「あれ? っていう事は、最低でも8人必要になるから……」

 

「そうだな。俺たちは9人しかいない以上、エリオとキャロにも出て貰う必要がある。

 さすがにシングルを任せたりはしないけど、チームかタッグのどっちかには出て貰わなきゃだなぁ」

 

「えぇ~っ!?」

 

 

 心構えもなく出場決定を告げられ、エリオが目を丸くして大声を出した。キャロに関しては驚きすぎて言葉もないようで、目を丸くしたまま放心状態である。事前にルール変更の情報を知らなかったスバルとウェンディもまた、目を丸くして空いた口がふさがらない、といった様子だ。

 まぁ、普通いきなり昨日始めたばかりの人を大会に出そうと言ったら、誰でも驚く。

 

 

「ぼ、僕まだ昨日始めたばっかりですよ!? なのにいきなり大会ですか!?」

 

「私も大会なんて無理ですよぉ~!!」

 

「落ち着け落ち着け。何も明日いきなり大会に出てくれって話じゃねーんだ。

 大会があるのは3ヶ月とちょっと後。それまで俺やチンク、あとウーノ先生がきちんと指導するさ」

 

 

 やや涙目になりながらにじり寄ってくる2人を手で制しつつ、苦笑いをしながら説明する隼人。

 大会は4月から行われる訳ではなく、7月の終わりから始まり全国大会は9月頃になる。まったくの素人のままエリオとキャロが大会に出るというわけではないのだ。

 

 

「もちろん目標としちゃ全国大会だけど、途中で敗退したとしても特に文句を言うつもりもない。

 こっちは無理を言って2人に出て貰うわけだからな。もちろん、2人にも楽しんでもらえるようにするつもりだ。

 そりゃまぁ、多少は不安もあるかも知れないけど、何事も経験だって。な?」

 

「う、う~……そう言われると……」

 

「大会に出られるっていうのも、ちょっと憧れますし」

 

 

 珍しく真顔できちんと説得してくる隼人に、エリオとキャロもそれならばと考えてみる気になったようだ。

 突然の事で驚いたとはいえ、元々そういうのも込みで部活に入ったのだ。きちんと大会まで指導をしてくれるというのなら、強く断る理由もない。

 

 

「それに今年なら、何かあっても俺とチンクでなんとかフォローできるからな。

 頼れる先輩がいるうちに失敗しておくのも経験だ!」

 

 

 頼れる先輩かどうかは置いておいて、確かに隼人の言うとおり失敗できる余裕があるうちに大会の空気に慣れておくというのも重要だ。来年になれば自分たちも先輩となり、後輩と一緒に大会に出るかもしれない。

 そうなった時に先輩が大会未経験というのは、少しばかり具合が悪いだろう。

 

 

「なるほど……確かにそうですね!」

 

「わかりました! 頑張ります!」

 

「よし。話がまとまったなら、さっそく練習を始めるとしようか。

 エリオとキャロは私と一緒に近くのショップへ行くぞ。あそこは初心者が多いから、2人のちょうど良い練習相手も見つかるだろう」

 

 

 隼人による詐欺、もとい説得が終わったところで、チンクが自分のカバンを持って立ち上がる。

 ティアナ達と一緒に練習をするものだと思っていた2人は少し驚いた顔をしたが、言われてみれば確かに経験者と一緒の練習メニューをこなしても、初心者の自分たちには付いて行けないと思い至ったのか席を立って、チンクと同じく自分の荷物を持った。

 2人が用意し始めたのを合図をしたように、隼人も立ち上がってティアナ達に声をかける。

 

 

「よーし。んじゃ残りの1年は俺と一緒に地下のシミュレーターで特訓だ!」

 

「え゛!? ウ、ウーノ先生と部長の2人でですか!?」

 

 

 鼻息荒く立ち上がった隼人の言葉に露骨に嫌そうな顔をしたのはスバル。

 なにせ昨日ウーノから『隼人がいかに指導者に向いていないか』を聞かされたばかりだし、ウーノ自身の厳しすぎる指導も受けたばかりだ。その2人がタッグになるというのだから、嫌な顔をしてしまうのも無理はないだろうか。

 しかし隼人からすればそれは与り知らぬ事な訳で。

 

 

「当然! 部長として俺のすばらしい指導力を見せてやるぜ!

 まずはスキルごとのフレーム数の暗記からだな!」

 

「うわ、ホントにウーノ先生が言ってた事言い始めたッスよ」

 

「やっぱり廃人ゲーマーだったんだね、部長ってば」

 

 

 昼休みにウーノやチンクと話していた事はなんだったのかと言いたくなる発言ではあるが、どうやら彼の中ではこれくらいは常識レベルの話であったらしい。これは、廃人の常識レベルを甘く見ていたウーノとチンクの失態だろう。

 ともあれ、さすがに先輩である彼にこう言われては後輩であるティアナ達は強く拒否する訳にもいかない。

 これが隼人個人が得をする主張であれば反論もしたろうが、あくまで彼はティアナ達、ひいてはブレイブデュエル部のために頑張ろうとしてくれている。それを無下にするのはさすがに良心が咎めた。

 

 

「大丈夫だ。姉さんがある程度は抑えてくれるから、そこまで心配はしなくていい」

 

 

 やる気満々の隼人にちょっと絶望した顔をしていたティアナ達だったが、そんな彼女たちの側にチンクが駆け寄り小声でそう付け足した。どうやら、事前にウーノとチンクで示し合わせていたようだ。

 安定の信頼のなさである。

 

 

「ホントかチンク姉? あたし、さすがにフレームの話ばっかされるとか嫌だぞ?」

 

「多少は諦めろ。あれはもう病気だからな……」

 

「病気って……それとウーノ姉も厳しすぎるから、できればそっちも何とか……」

 

「無理だ」

 

「はやっ!?」

 

 

 ボソボソと小声でやりとりするティアナ達とチンク。

 隼人はまだ何とかなるが、ウーノは姉という事もありチンクにもどうにもできないらしい。

 

 

「ま、まぁとりあえず心配事は一つ減った訳だし良しとしましょ」

 

「そうだねぇ。部長もあんなに張り切ってるし、嫌だなんて言えないもん」

 

「ウーノ先生のは諦めるしかないか……頑張ろうね、皆」

 

 

 とりあえず回避は無理だと諦め、心配事がひとつ減っただけマシだと自分たちに言い聞かせながらティアナ達も立ち上がる。

 ちなみに隼人はと言うと、いつの間にやら部室のドアの前まで移動しており目をキラキラさせながら待機中。

 そこまで期待されたら……という感じで、ティアナ達もまた渋々ながら席を立つのであった。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 結論から言うと、ティアナ達は自分の判断を心の底から後悔せざるを得なかった。

 なぜあの時、もっと強くチンクに一緒に来てくれるように頼まなかったのか。なぜあの時、せめて隼人だけでも断っておかなかったのか。

 地下シミュレーターでの特訓が始ってから、彼女たちの頭にはそんな言葉しか浮かんでいない。

 なぜならば……。

 

 

「反応が悪いわよノーヴェ、貴女とナカジマさんが攻撃の要なのだから攻撃に対する反応をもっと早くなさい?」

 

『いや、これで限界だってのウーノ姉!』

 

「ノーヴェ、私はできるかどうかは聞いてないの。やりなさい、と言っているのよ」

 

『いくらなんでも酷すぎない!?』

 

 

 シミュレーターの中を映すモニタを眺めつつ厳しい言葉を飛ばすウーノ。

 激しい攻撃にさらされながら反論するノーヴェだったが、さらに厳しい言葉を返されるだけ。ちなみに相手は昨日と同じく隼人の思考を模したコピーが3体。

 それを相手に延々と模擬戦をやらされているのだ。

 

 

「ナカジマさんもよ? ほら、そこでガードなんかしていたら撃ち落とされるわ」

 

『む、無理ですよぉ~!!』

 

「高峰君はできるんだもの、無理じゃないわ」

 

『一緒にしないでくださぁぁぁぁい!!』

 

 

 それはスバルも同じで、泣きそうになりながら抗議の声を上げるもウーノは取りあう事もなく、あっけらかんと短い言葉を返すだけであった。いやウーノ先生、いくらなんでも廃人ゲーマーと普通のゲーマーを同じレベルで語るのはいかがなものなのだろうか。

 しかも全く的外れな意見では無いから余計にタチが悪い。

 

 そしてティアナ達はと言うと――

 

 

『ほーれほれ、スタン属性の弾はガードしちゃダメだぞー。当たるのは論外だけど、ガードしてもガード側が不利になるからな。なるべく……っつーか基本的に避けるように』

 

『ちょっ! ちょっとタンマッス! いきなりそんな事言われても無理ッスよぉ!!』

 

『ていうか、指示出しながらめちゃくちゃ濃い弾幕張るのやめてください! 避けるとか無理ですから!!』

 

『はーいそうこう言ってる間にどーん!』

 

『きゃーっ!!』

 

 

 こちらはまずティアナとウェンディの2人が、スバル達とは別の場所で驟雨のように降り注ぐ隼人の弾幕から必死になって逃げていた。

 隼人曰く『とりあえず弾は避けれるようになろう』との事だが、避けれる隙間もない弾幕を張っておいて避けろもクソもないだろう。

 

 

『と、とりあえず待って欲しいッスよ! 避ける練習するにしてももうちょい段階ってものが!!』

 

『だから一番簡単なのからやってんじゃん?』

 

『これで!? いや、廃人の部長のレベルで話さないで欲しいッスけど!!』

 

『バーロー! 一般論だ一般論!』

 

『絶対それ違うッスからーーーー!!』

 

 

 飽和状態の弾幕に押し潰されたティアナの横で、ボード型の自分のデバイスに乗りながら弾幕の隙間を涙目になって逃げ続けるウェンディ。ティアナよりも機動力があるお陰で今はなんとか避けれているが、すぐにティアナの二の舞になるのは目に見えている。

 しかし隼人はそんな事で弾幕を薄くしてくれる程気のきいた性格ではないのだ。

 

 

『避けれてるんだからいけるいける! 頑張れ! 頑張れ!』

 

『ちょ、も、無理ッスにゃーーーーっ!!??』

 

 

 言っている側から、ウェンディもまた悲鳴を残して弾幕に飲み込まれていった。

 2人が弾幕の前に沈んだのを確認した隼人は弾幕を止め、己のデバイスであるブレイブハートとクロスハートを肩に担いで大仰な溜息を吐く。

 

 

『なんだなんだ、だらしないぞ2人共!』

 

《 ……マスター。さすがにやりすぎです 》

 

《 貴方の基準で考えてはいけませんよ、マスター隼人 》

 

『えっ、何? なんでいきなり俺怒られてんの?』

 

 

 呆れ声でたしなめてくる自分のデバイスに驚く隼人はさておき、ここにはいない残りの1年生――シャーリーに視点を移そう。彼女はシミュレーターでの訓練には参加しておらず、地下シミュレーター室の片隅に用意された椅子に腰かけ、携帯ゲーム機を前に唸り声をあげていた。

 

 

「……むむむむむむむ」

 

 

 彼女に課された訓練は『隼人厳選のリアルタイムシミュレーションをクリアする事』だ。

 ただし、やっているゲームは難しすぎてクリア不可能だと話題になったゲーム。しかも初めてやるというのに、そのゲームの最高難易度をやらされているので、彼女が唸り声をあげてしまうのも当然と言える。

 

 

「ぐぬぬぬぬ……こ、これなら……ってもう先回りされてるー!?

 しかも、いつの間にやらこっちが包囲されてるしー!! 何このAIちょっと優秀すぎない!?

 ぎゃー! そう来るなら動かさなければよかったー!!」

 

 

 やることなす事すべてが裏目に出て、涙目になって携帯ゲーム機をぶんぶんと振り回しながら叫ぶシャーリー。

 そんな彼女の手元を覗きこむようにして背後からウーノが声をかける。

 

 

「フィニーノさん、調子はどうかしら?」

 

「あぁ、ウーノせんせぇ~! これ無理! 無理ですよぉ!!」

 

 

 その声に天からの助けとばかりにシャーリーが泣きつく。

 なにせここにきてから既に2時間弱、延々とこのゲームをやらされているのだ。しかもあまりに難しくてステージ1すらクリアできていない。

 

 

「こんなのブレイブデュエルと関係ないじゃないですかぁ~。うぅ、私もシミュレーターやりたいよぅ」

 

「あらあら」

 

 

 涙目になりながらウーノに詰め寄るシャーリー。彼女には、ブレイブデュエルとこのゲームがどう繋がるのかが全くわからないでいた。なにせ特訓と言うからには、自分もティアナ達と同じようにシミュレーターを使った訓練をすると思っていたのに、まさか違うゲームをやらされるとは思ってもいなかった。

 なのに実際にやらされたのは関係のないゲーム。文句のひとつも言いたくなるというものだ。

 

 

「でも、高峰君が意味のない事をさせると思う?」

 

「部長ならやりかねません」

 

「……否定はしないけれど、ことブレイブデュエルに関してだけなら、高峰君はいつだって真面目よ?

 そのゲームだって、私にはわからないけど、貴女に必要だと彼が判断したからやらせてるんだと思うわ」

 

「そうでしょうか……」

 

 

 口を尖らせて不満たらたらであると言いたげなシャーリーの表情に、ウーノは苦笑を洩らす。

 彼女の言うとおり、このゲームをやらせる事にどういう意味があるのかはウーノにも分かっていない。けれど、ウーノはこと『ブレイブデュエルに関して』のみ、隼人を誰より信頼していた。

 その彼がやれと言ったのだから、そこには必ず何かしらの真意があるのだろう、と。

 

 

「まだ日が浅いから心配だろうけど、あの子のブレイブデュエルに関する情熱を信じてあげて?

 大丈夫。普段はふざけていても、ブレイブデュエルに関して間違った指示は絶対にしない子だから」

 

「せ、先生がそこまで言うなら……頑張ります」

 

 

 ウーノの言葉に納得したというよりは、彼女の隼人に対する全幅の信頼を信じたというところだろうか。渋々といった様子ではあったが、シャーリーはもう一度持っている携帯ゲーム機へと視線を落とした。

 それを確認したウーノは、にっこりと笑って視線を上げる。

 

 

「ほらノーヴェ、そこはもっとギリギリで避けないと」

 

『無茶言うなよウーノ姉ぇ!!』

 

「ナカジマさんもよ。避けられないならせめて叩き落としなさいね?」

 

『無理ですってばぁ!!』

 

 

 そうして再び鋭い指示を飛ばすのであった。

 

 

 

 

 




月一投稿できなくて申し訳ないです。
どうも、ラモンです。

さあ、いよいよ始まりました特訓回。
次回とその次くらいは、こんな感じの地味な特訓になると思います。
退屈な部分かもしれませんが、どうかお付き合いくだされば幸いです。

それではまた、次の話で。
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