魔法少女リリカルなのはInnocent ~デュエルの王女様~   作:ラモン

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第8話『ライバル登場!? いや特にそういう訳でも……』

 

 

 

 

 海聖高校ブレイブデュエル部が大会に向けて練習を開始してから1週間が経とうとしていた。

 エリオとキャロの2人もブレイブデュエルに慣れてきたようで、最近ではショップで初心者同士の対戦ならば勝率は5割程度になってきた。チンクの教え方がいいのか、2人のセンスが良かったのかは置いておくとして、これならばそろそろティアナ達と一緒に練習しても――とチンクも考えている。

 ちなみにエリオとキャロの練習は、基本的にチンクが常に付き添うようにしている。というのも、初心者の2人を隼人に任せるのはさすがに不安すぎるし、かといってウーノは養護教諭なので基本的には学校内にいなければならない。

 

 なので自然の流れでチンクが付き添う形でショップにきている。

 彼女は説明上手で、エリオ達がショップで初心者を相手に簡単なデュエルを行った後で、わかりやすく問題点などを指摘してくれると好評だ。きちんと相手のレベルに合わせた指摘をしてくれるので、エリオ達の腕が上がっているのはチンクの功績が大きい。

 

 

「チンク先輩! 勝ちましたー!」

 

「見ててくれましたか、先輩!」

 

「うむ、見ていたぞ。よくやったな、2人とも」

 

 

 今日もまたショップに来ていたチンクに、ちょうど対戦を終えたエリオとキャロの2人が笑顔で駆け寄ってくる。

 ここ暫くの間、ずっと世話を焼いてくれた彼女にエリオとキャロはよく懐き、今では部長である隼人よりも信頼を預けているようだ。

 

 

「だが、最後の方でエリオは少しキャロから離れすぎたな。せっかくタッグでやっているんだ、キャロの事をもう少しカバーしてやれるように動くといいぞ」

 

「う……ご、ごめんなさい」

 

「何、初心者のうちは誰でも自分の事で精一杯さ。慣れてくれば、意識せずともそういう動きができるようになる。

 それからキャロは攻撃をしようしようと思いすぎて、サポートへの意識が薄くなってしまっていたな。お前はサポートなのだから、あまり攻撃は気にしなくていいんだぞ?」

 

「あぅ。でも、エリオ君1人に任せちゃうのも悪いかなって……」

 

「任せていいんだ。そのための前衛なのだからな、だから――」

 

 

 とまぁ、このような感じで1戦ごとにチンクが注意点を短く指摘していき、次の対戦でそこがどの程度改善されたかを見る、というのが3人の練習スタイルだ。

 ちなみに当然だが、ショップではデュエルするにも順番待ちが発生するので、主にその待ち時間をこういった指導や質疑応答の時間に充てている。時間の使い方も上手いチンクはなかなかに優秀な指導員だと言えるだろう。

 

 

「……なぁ」

 

「何だ?」

 

 

 しかし今日はチンク以外にもう1人、この場に指導役として来ている人間がいた。

 

 

「俺はいつまで黙っていればいいんだ? いい加減アドバイスとかしたい」

 

「私が『良し』と言うまでだ、その条件で付いてきたんだろうが」

 

「とか言いつつ既にここにきて1時間なんですけどー。ソシャゲやるのも飽きたー」

 

 

 誰かと問われれば、チンク以外に当てはまる人間は隼人だけなので言わずもがな隼人である。

 なぜ付いてきているのかと言えば、エリオやキャロからチンクがどれだけ頑張って教えてくれているかを聞いて、「羨ましいから俺も付いていって先輩風吹かせたい」というアホ丸出しの理由だったりする。

 

 当然それをチンクもウーノも許すわけもなく思い切り否決されたのだが、隼人は床に転がって全力でじたばたして駄々をこねるという、17歳がやってはいけないレベルの強引さを見せて無理やり説得をした。

 その結果、先にチンクが言った『自分が良しと言うまで発言は禁止』という条件で動向を許された訳だ。

 

 

「喋りたいなら、まずは初心者にもわかりやすく解説できるようになってこい」

 

「わかりやすいじゃん! フレーム数からドット単位まですっげーわかりやすいじゃん!」

 

「自分を基準にするなと言ってるんだ。お前の常識は私たちの非常識なんだよ」

 

「ムキー! 誰が非常識じゃ誰が!」

 

「お前しかいないだろう? さてエリオ、キャロ。さっきの反省を意識してもう一度だ」

 

 

 子供のように声を上げてチンクに詰め寄る隼人だが、チンクは軽く受け流してエリオ達を順番待ちの列に並ばせる。一週間の間に部室で何度も似たような光景をみたせいかエリオもキャロも慣れたもので、苦笑を浮かべながらチンクの指示に従う。

 

 

「お前から見て、どうだ? 問題はありそうか?」

 

 

 2人が順番待ちの列へと並んだのを確認してから、チンクがそう尋ねた。

 先にも述べたように彼女はそろそろティアナ達と練習をさせてもいいのでは、と考えている。けれど部長であり、なにより彼女の知る限り最高クラスのプレイヤーである隼人から見れば、もしかしたら何か問題があるのではと思ったのだろう。

 

 

「無いんじゃね? 1週間であんだけ動けてるのは凄いわ。

 やっぱ俺の目に狂いはなかったようだ、流石だ俺! 凄いぞ俺!」

 

 

 質問の答えとして、隼人はなぜか自分の手柄のように胸を張って高笑いを返す。確かに見つけてきたのは隼人だが、この1週間ずっと教えていたのはチンクなのに。

 しかしそれもチンクは慣れたもの、はいはいと適当に流して言葉を続ける。

 

 

「来週あたりからは、少しずつティアナ達と練習させてみようと思っている」

 

「だな。チーム戦とタッグ戦の練習もしなきゃならんし、いろいろと組み合わせ考えないとなぁ」

 

「そうだな、まぁその辺りは姉さんとも相談してみよう」

 

「あとはシングル向きかどうかも考えて――っと」

 

「きゃっ」

 

 

 立ちっぱなしでは邪魔になるからとモニタのある観客席側へと移動しながら、2人は今後について話し合う。しかし話し合いに夢中になってしまったせいか、隼人は自分の前から歩いてくる人物に気づかず、真正面からぶつかった。

 隼人とぶつかった相手は、可愛らしい悲鳴を上げて尻もちをつく。

 

 

「っとと、悪い。大丈夫……」

 

「あ、はい。大丈夫です……」

 

 

 少しよろける程度ですんだ隼人が謝りながら手を差し出し、相手もその手を取ろうと顔を上げる。

 そして2人はお互いの顔を見つめ――

 

 

「あれ、オリヴィエ?」

 

「隼人じゃないですか!」

 

 

 驚きに目を開きながら、同時に相手の名前を呼んだ。

 

 

 

 

●魔法少女リリカルなのはInnocent ~デュエルの王女様~

 第8話 『ライバル登場!? いや特にそういう訳でも……』

 

 

 

 

「わぁ、こんなところで会うなんてすごい偶然ですね!」

 

 

 隼人とぶつかった人物――オリヴィエを呼ばれた少女は、赤と碧のオッドアイを喜びで輝かせながら彼の手を取って立ち上がる。隼人は隼人で、嬉しそうに目の前のオリヴィエに笑いかける。

 

 

「確かに偶然だな。それと悪いな、怪我は?」

 

「ありませんよ、お気になさらず」

 

「ま、それもそうか。オリヴィエの頑丈さはピカイチだもんな」

 

「む。そんな言い方は感心しません! 乙女心が傷つきます!」

 

「お前のような肉体派な乙女がいるか!」

 

 

 可愛らしく頬を膨らませるオリヴィエの頭にチョップを叩きこんでツッコミを入れる隼人。女の子の頭に何をするんだと文句を言いそうになったチンクだが、オリヴィエ自身が楽しそうに笑っているので怒るに怒れず言葉を飲む。

 というかチンクはオリヴィエとは初対面でお互い名前も知らず、しかし話しかけるタイミングを逃してしまった以上なにかを言う事もできず、どうしたものかと首をひねる。

 

 

「隼人はデリカシーがありません! クラウスの事を少しは見習ってください!」

 

「やーですー! あんなフェミニストの真似したらアレルギー反応でますー」

 

「……よく考えたら、クラウスみたいになった隼人は気持ち悪いですね。撤回します」

 

「おう喧嘩売ってんなら買うぞコラ」

 

 

 本当ならば隼人に紹介して貰いたいのだが、当の本人はオリヴィエとの会話に意識を取られてチンクの事をすっかり忘れてしまっている。これでは、それこそ会話が終わるまで長い時間妙な疎外感を感じている事になるので、仕方ないかと溜息をつきながらチンクは隼人の袖を引っ張った。

 

 

「隼人、歓談中のところを悪いがちょっといいか?」

 

「ん? なんだよチンク」

 

「私はそちらの方とは初対面なのでな。知り合いなようだし、よかったら紹介してくれないか?」

 

「…………あ、そういやそうか」

 

 

 言われてようやく気付いたらしい隼人は彼女の言葉に頷くと、オリヴィエとチンクを向かい合わせるように体を移動させて、まずはチンクに向かってオリヴィエを紹介し始めた。

 

 

「あー、こっちはオリヴィエ。俺の幼馴染の一人で、聖シュトゥラ学院の3年だ。

 んで俺らと同じくブレイブデュエル部に所属してて副部長をやってるぞ」

 

「オリヴィエ=ゼーゲブレヒトと申します。お見知りおきを」

 

「んでもってオリヴィエ、こっちはチンク。うちの3年で我がブレイブデュエル部の頼もしい副部長だ」

 

「チンク=スカリエッティです。よろしく」

 

 

 隼人に紹介されてお互いに簡単に挨拶をし、とりあえず居心地の悪さは何とかなったと安堵の息を漏らすチンク。

 

 

「しかし聖シュトゥラ学院ですか。最近の活躍は聞いていますよ、ブレイブデュエル全国大会の常連校だとか」

 

「あとアレよ、金持ちが通う学校で学校の施設がすげーの。今時ガチでごきげんようって挨拶すんだぜ?」

 

「いや別にそこはどうでもいいんだが……お前がシュトゥラの学生と知り合いだったのが意外でな」

 

「俺も自分でそう思う」

 

 

 そしてオリヴィエや彼女の通う聖シュトゥラ学院について話し合う2人を見て、オリヴィエはチンクと隼人の関係をどう誤解したのか、ハッとした顔をした後にチンクの手を取って、額に汗を滲ませながら勢いよく話し始める。

 

 

「違いますよスカリエッティさん! 私と隼人は、決して恋仲という訳ではありません!

 貴女のような素敵な恋人がいるのに浮気なんてありませんから、安心してください!」

 

「は!?」

 

「ちょ、何言ってんだよオリヴィエ」

 

「いいえ大丈夫です。わかっています! せっかくのデートだというのに、私と隼人が話しこんでしまったので御不快にさせてしまったんですよね? 申し訳ありません……というか隼人も隼人です!

 こんな素敵な方とお付き合いしているのなら、そう言ってくれればぷぎゅっ!?」

 

 

 暴走機関車も真っ青という勢いで捲し立てるオリヴィエは言葉では止まらないと判断したのか、隼人は無言でオリヴィエの頭に拳を落とした。

 割と本気で殴ったらしく、オリヴィエの頭から鈍い音が響き渡り、オリヴィエ本人は頭を抑えて悲鳴と共にその場にうずくまる。

 

 

「いたたたた……な、何するんですか!」

 

「お前が話を聞かねーからだよ。相変わらず変なとこで暴走すんなぁ、おい」

 

「暴走ってなんですか。隼人の恋人さんに不快な思いをさせてしまったから、謝ろうと……」

 

「それが暴走だっつの。俺とチンクは別に付き合ってねーよ。

 今日ここに来たのも、部の後輩の練習を見に来ただけでデートとかじゃねーっての」

 

 

 溜息と共に諭すようにそう言われ、オリヴィエは思わず「え!?」と驚きの声を上げて、それから確認するようにチンクへと視線を送る。その視線を受け取ったチンクも、苦笑交じりに隼人の言葉を肯定するように首を縦に振った。

 それでようやく自分が勘違いをしてアレコレ言っていた事を理解したのか、オリヴィエの顔がみるみる赤くなる。

 

 

「そ、そそそれはとんだ失礼を!」

 

「いやいやお気になさらず」

 

「まったく、お前俺が女子と一緒だとすぐそういう勘違いすんだからよぉ。

 毎回毎回訂正する方の身にもなってくれってんだ」

 

「うぅ……面目ありません」

 

 

 体を小さくして蚊の鳴くような声になるオリヴィエの様子が楽しいのか、くすくすとチンクが笑う。

 と、そこでふと気になった単語を聞いた事を思い出して、チンクはオリヴィエと隼人の2人を見比べて問いかけた。

 

 

「そういえば幼馴染と言っていたが……」

 

「おう。俺とオリヴィエ、あとここにはいないがクラウスって奴の3人で幼馴染」

 

「お家がご近所で、子供のころからずっと一緒だったんですよ」

 

 

 ねー、と声を顔を見合わせる隼人とオリヴィエ。なんだお前ら、女子か。

 いや片方は女子なのだけど。とまぁそれはさておき、その説明で得心がいったのか、チンクは大きく頷いた。

 

 

「なるほど。道理で隼人のあしらい方が堂に入っていると思いました」

 

「ああ、スカリエッティさんも隼人で御苦労なされていたんですね。わかります、凄く」

 

「わかってくれますか……あぁ、それから私の事はどうぞチンクと」

 

「それじゃあ私のこともオリヴィエとお呼びください」

 

 

 どこかお互いに似たようなところ――主に隼人関係で――を感じたのか、あっという間に打ち解けて互いのアドレスまで交換し合う2人。とまぁ、それで話はひと段落したという事で、オリヴィエが新たな話題を持ちかけた。

 

 

「そういえば部の後輩を言っていましたが、今年は新入部員が入ったんですか?」

 

「おうよ! 聞いて驚け、なんと7人も入ったのだ!」

 

「まぁ。それじゃあ、今年は海聖高校もブレイブデュエルの大会に?」

 

「出るぞ。そっちも当然出るんだろ?」

 

「もちろんです」

 

 

 問いかけ直され、オリヴィエは胸を張ってそれに答える。ちなみに海聖高校に隼人が入ってからは、1年の時が地区大会の2回戦で敗北。2年生の時は人数不足で参加できず、といったさんざんな成績だ。

 まぁ隼人が真面目に集める気が無かったというのもあるが、そもそもが既に古豪であり過去の亡霊でもあった海聖高校ブレイブデュエル部には、人を集めあれるだけの知名度が無かったというのも原因だ。なにせ海聖高校の在学生にその存在を聞いたとしても、9割以上が「え? そんな部活あったの?」と言うくらいなのだから。

 

 

「なら、地区大会で対戦する事になるかもしれませんね」

 

「そうだな。組み合わせ次第だとは思うがトーナメント方式だ、勝ち上がってきゃどこかで対戦するだろうよ」

 

 

 ま、最終的には俺らが勝つけどなと自信たっぷりに隼人が笑う。

 対してオリヴィエもまた、いいえ私たちが勝ちますよと不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「全国大会の常連校だからって油断してると、足元すくわれるぜ?」

 

「大丈夫です。クラウスも私も、もちろん他の皆さんも油断なんてしませんから」

 

「クラウスなぁ……そういや今日は一緒じゃねーの?」

 

「ええ。今日は新入生さん達の指導をしています。私はちょっと別件で」

 

「今回のルールならシングルはあいつだろ? 対戦すんの楽しみにしてるって伝えといてくれよ」

 

 

 心から待ち遠しいとばかりに笑う隼人を見て、チンクは小さく驚きの声を上げた。

 しつこくなるが、彼女の知る限り隼人は文句なしにトップクラスのプレイヤーで、1対1で彼とマトモに対戦できる相手などほとんど居ない。だからだろうか、本人は意識していないだろうが対戦する度にどこかつまらなさそうにしているのをチンクは知っていた。

 その隼人がここまで対戦するのを期待しているのだから、相手の実力は推して知るべしといったところか。

 

 

「ふふ、わかりませんよ? 新人さん達にも強い人は一杯いますし」

 

「それならそれで楽しみにしとくよ。ま、俺に勝てるとは思わねぇけどな」

 

「そういう自信過剰なところも相変わらずですねぇ。

 ……チンクさん、隼人はこんなですから色々とご迷惑をおかけしますが、どうかよろしくお願いします」

 

「いえ、もう慣れましたから」

 

 

 得意げに身をそらす隼人をよそに、チンクとオリヴィエは完全に保護者目線でのやり取りである。チンクに至っては半ば諦めモードまで入っているあたりが悲しい。

 

 

「あ、と。私そろそろ戻りませんと」

 

「おお、気づいたら結構時間経ってたな。俺らもエリオ達を見に行かなきゃならんわ」

 

「そうだな、いい加減順番待ちの列も消化されただろう」

 

「では私はこれで、隼人、チンクさん。ごきげんよう。

 大会で会えたらお互い悔いの残らないデュエルにしましょうね」

 

 

 最後にお嬢様学校の生徒らしく優雅に礼をして、オリヴィエはショップ出口へと向かっていく。それを見送ってから、隼人とチンクも最初の目的地であった観客席へと移動を開始した。

 そしてその道すがら、チンクはオリヴィエの前では聞けなかった疑問を口にする。

 

 

「……お前から見て、勝算はあると思うか?」

 

「現状なら俺まで回る確率は2割ってとこかねぇ……オリヴィエもクラウスも、幼馴染っつー身内贔屓を無くしたとしても、それこそトップランクのプレイヤーだしよ」

 

「お前がそこまで言うからには、相当なのだろうな」

 

「オリヴィエとクラウスはどっちもアタッカーで、バリバリの格闘系。

 近接に限定するなら俺よっか強いかもしれんなぁ。んでもって厄介なのは、どっちもシングルプレイヤーとしてだけじゃなく、指揮官としてもとびっきりに優秀ってこった。

 俺ほどじゃないにしても、あいつらがチームかタッグで出たとしたら……正直ティアナ達には荷が重いかね」

 

 

 彼我の戦力差を訥々と語り肩を竦める隼人。

 まだチームとして動き出したばかりの1年生達と、全国常連校のプレイヤーを比べるのも可哀想だが、そこはきちんと把握しておかないと対策の立てようもない。

 

 

「ふむ、そこはまぁチームとして動いてきた年季の違いだから現状は仕方あるまいな。

 暫く経験を重ねれば、それこそ互角以上に戦えるようにもなるだろう」

 

「なるさ。なんたって俺が教えんだぜ? それこそ全国レベルの奴らにだって負けないようにしてやんよ」

 

「頼もしい限りだ。ゲームに関してのみだがな」

 

「カッカッカ、言うじゃねぇか。ま、地区予選じゃ聖シュトゥラが一番のライバルだろうな。

 序盤で当たらない事を祈るばかりだよ。どうせやるなら、決勝で派手にやりたいし」

 

 

 最終的には、このままティアナ達を一生懸命育てるのが一番だという結論で話し合いは終了。しかしチンクはここにきて、「そういえば」とまだ聞いていない質問があった事を思い出す。

 

 

「お前はさっき『ティアナ達には』と言ったが、私の場合はどうなのだ?」

 

「ん? 何、チンクが指揮やった場合って話か?」

 

「うむ。私も一応サポート兼指揮をやる身だから、気になってな」

 

「そらチンクが指揮やるなら、文句なしでこっちの勝ちだろ。何聞いてんのいまさら」

 

 

 あっさりと即答されて思わずチンクは声を失った。隼人の実力は彼女自身が何よりも知っていて、その彼が認める相手と比べようとしたのだ、さすがに否定的な意見が来るかもう少し悩むものだと思っていたからだ。

 しばし呆けた後に気を取り直して理由を尋ねれば、彼は何言ってんだという顔をして再び即答した。

 

 

「お前、高校2年間誰と一緒に練習してたと思ってんだよ。俺だぞ?

 この俺が、信頼できね―奴に指揮なんて任せるかよ。俺の知ってる限り、お前は最高の指揮官だよ」

 

「そ……そうか、うん。ならいいんだ」

 

「そりゃまぁ戦闘面まで含めるとさすがにクラウスやオリヴィエに軍配が上がるけど、こと指揮官っつー分野なら、お前の右に出る奴なんで俺はそうそう知らないね。自信持っていいんだぜ、チンク?」

 

 

 そこまでベタ褒めされるとは思っていなかったらしく、首筋と耳をうっすらと赤く染めて俯くチンク。言った本人は当然の事を言ったまでと気にする様子もなく、頼りにしてるぜと彼女の肩を叩く。

 

 

「わかった、わかったからもういい。ホラ、ちょうどエリオ達の試合も始まったぞ」

 

「ンだよ自分から聞いてきたくせに……まぁいいや。今は見る方に集中して、悪いとこ探してやらんとな」

 

「そうしてくれ……まったく、恥ずかしい事を言う奴だ」

 

 

 聞かなければ良かったと後悔をしつつ、顔を手でパタパタと仰ぎながら呟くチンク。

 しかし、正直なところ悪い気はしないのだ。彼女もブレイブデュエルプレイヤーなのだ、自分が認める最高峰のプレイヤーに、こうして心から信頼してもらえる事が嬉しくない筈もない。

 

 

「私も、きちんと鍛えておかねばな。部長殿の期待に応えてやるためにも」

 

 

 誰にともなくそんな言葉を漏らしてから、逸らした視線をモニタに戻す。

 まだ先の話ではあるが、いつか必ず対峙する事になるであろう聖シュトゥラ学院との戦いでどう立ち回るか、そんな事を考えながら。

 

 

 

 

 




まだ、まだ3/31の午後28時台だからセーフ! とか見苦しい言い訳をしてみる。
どうも、ラモンです。

登場させてしまいました、聖王オリヴィエ様。
ちなみに会話でも出てきましたら覇王様もいらっしゃいます。
どの2人がこの先どう絡んでくるのかなど、諸々楽しみにしていてくださいね。


それではまた、次の話で。




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