ほっこり気味だす
イオリかわいい
深夜2時、ゲヘナ自治区。とある駅前に一台のタクシーが止まった。
ガチャッ
「…………」
(ふん………この匂い、イオリだな)
「お客さんどちらまで?」
「○○自治区の××川まで頼む」
「了解しました………」
(ふむ………バレてないかな?)
※※※※※
とある日はシャーレの先生。そしてまたとある日はタクシードライバー。そんな男がこの私、『先生』だ。そんな私は今、ロボット系市民が動物系市民に変装する時に使うパーティグッズを使いタクシードライバーの副業をしている。絶対に私は無事故無違反を突き通し、個人タクシーの権利を連邦生徒会から手に入れる。
「お客さん、本当に××川でいいんですか?あそこには何もありはしませんよ?」
「うるさいな………黙って運転してくれ」
イオリの様子……心配だな。少し話を聞いてみよう。あ、ちなみに今の私は羊の顔をつけている。目がクリクリで可愛い方の。
「私は、この仕事を始めてかれこれ30年でね?たくさんのお客さんを乗せてきたんですよ」
「は?いや、あんた私どう見ても私と同じぐらいだろ。さすがに私でも相手の歳ぐらいわかるぞ」
「えっ、あいや。すいません、3年って言いたかったんですよ。3年って」
あれ?動物の方々の歳とかって普通に分かるものなの?みんな同じにしか見えないんだけど……あの人たちの年齢は見分けられたのか。
「ハァ……それで?何が言いたいの」
「なにかお悩みがあるんでしょう?話すだけで楽になるかもしれませんよ?」
「別にそんな………いいよ」
突然だが、心理学にこういうものがある。本人から聞く自分の評価より、第三者から聞いた話の方が信じやすいという心理現象だ。
「お客さん、有名な風紀委員のスナイパーでしょう?確か………最近ではついに不良グループの中核の逮捕にこぎつけたとか」
「いや、それは委員長が……」
「それに、シャーレの先生が1番気に入ってる生徒さんって話じゃないですか?」
「……誰が言ってたんだよ。そんなヘンな事」
「そりゃもちろん、先生ご本人ですよ」
今この私が言ってるよね!!
「先生が……これに乗ったことがあるのか?」
「ええ、もう何回も乗ってますよ?多分一番この車が乗せてる人じゃないですかねぇ」
運転手なんだからそりゃ一番乗ってるに決まってるよね!
「でも、やっぱり先生がそんなこと言うなんて信じられない」
「どうしてです?」
「だって先生、いつも私の足と髪と匂いの話しかしないんだよ……」
「え?良いことでは?」
なんだろう?どうして足と髪と匂いの話をしたらダメなんだ……?理解出来ぬ。理解出来ぬ。
「それってさ………私の体しか好きじゃないんじゃないかな……」
「あー………なるほど?」
何を言うだ!そんな訳ない!イオリの体と心と足の味全てを愛するのがこの私だ!イオリに先生の印象改善を促さなければ!!
「考えてみればおかしいんだ………最初からいきなり足を舐めてきたりして……尻の軽そうな女だと思われてたんだきっと」
「いや〜そんなことはないと思いますけどね…………」
「なんでそんなこと言えるんだよ」
「ん〜………まぁ、旧知の仲レベルのアレですからねぇ?私と先生は。よく笑いあってますよ、はい」
「ホントかよ…………あっ」
イオリが、なにか思いついたように眉を上げた。バックミラーを覗きながら、イオリの一挙手一投足に注意を配る。特に足。
「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」
「なんです?」
「先生が欲しいものとかって………わかる?」
窓の枠に肘を置き、街灯りの灯る窓の外を見つめながら問うイオリ。
「う〜ん。そういう物はやっぱり自分で決めた方がいいんじゃないですか?ここで私が口を出したら、私からのプレゼントみたいになっちゃいますしね」
というか生徒のお金でものを買ってるようなものになっちゃうし……。
「い、いや別に贈るとはまだ一言も………」
「ははっ、言ってるようなもんですよ」
「おまえ腹立つな………まぁ、いい。それより!行き先変更だ!場所は────」
その前に、『先生』じゃ聞けない質問をしておこう。
「あっ、最後にひとついいですか?」
「なんだよ………めんどくさいな」
「どうして急に先生にプレゼントを?」
「はぁ?あんたには関係ないだろ?早く行ってくれ」
「了解しました………」
※※※※※
早朝8時、シャーレのインターホンが鳴り響いた。
「は〜い!今開けます!」
ほんの少しの期待感と、抱えきれない上機嫌な気持ちを胸に、ゆっくりとドアを開けた。
ガチャッ
「やっほ、先生」
「イオリ、どうしたの?こんな朝から」
「まぁ、その話は中でいいか?」
イオリを中へと快く招き入れ、軋むイスが哀愁漂ういつもの仕事場でテーブルを囲むように座った。そのテーブルの上に、ひとつの箱がある。
「…………イオリ?」
目を開いて斜め下を見つめているイオリに声をかける。髪に隠れたパッチリとしていて、かわいらしながらもキリッとした左目がチラリと流し目を送ってくる。
「先生、はいこれ」
「これは……?」
下を向きながら、イオリの手が伸び、ひとつの箱が差し出された。
「いや、別に。先生がどんな反応するかなって」
「へぇ…………開けていい?」
「うん、いいよ」
そこに入っていたものは、私が喜ぶもの、役立つものを考えたのであろう品が入っていた。
「さすがイオリ…………最高だよ」
「ふん、まぁな」
赤く染まった耳を隠そうとしてか、髪を何度も耳にかけている。私たちの間に流れる暖かい雰囲気に、溺れてしまいそうになる。ここら一体が、このまま止まればいいのに。そう本気で思ってしまった。
※※※※※
「そういえば先生、先生にも友達っているんだな。生徒としか話せないロリコンかと思ってたぞ」
「あぁ、羊の彼のこと?気のいい人でしょう?」
「は?いやいや…………正直うざったい?気の知った仲じゃないくせにやけに教師ヅラして変なやつだなって」
「おっ」
「あ、ごめん先生。せっかくの友達のこと悪く言っちゃって」
「いや………大丈夫だよ」
プレゼントの中身は想像に丸投げします。二次創作なんだから、首に巻き付けるクッションかもしれないし、イオリの髪の毛かもしれないし、靴下かもしれないんだ。
そして、勘違いを防ぐためにイオリのアドバイス羊野郎に対する好感度は低いということを伝えるためラストに差し込みました。脳破壊。