ホロライブ・オルタナティブver.IF正式版~メインストーリー事変~ 作:天野空
グランドジョブの元に来たあなたは、偶然にも【新世代first】の1人を見つける。
果たしてあなたは、無事にグランドジョブへと挑戦できるのだろうか?
その人だかりはまるで波のようだった。
最奥で歌う彼女の動きに合わせて動く人だかり。
推しては惹いて推しては惹いて。
揺らめく動きに光る棒は、ある意味綺麗で怪しくもあった。
「彼女が4人目の【新世代first】なんですね」
「そう、歌が好きでそして上手。
ここ数日前にぱっとここに現れて、歌い始めたかと思ったら、瞬く間にこの人だかりを作ったんだよ」
(歌で魅了してるのは、彼女の実力だろう。
でも、彼女が【新世代first】なら、このままサヨウナラは無理だ。
彼女達には1種の呪いのようなものがあるから)
俺が彼女の方を見ていると、いきなりゾクッとした感覚に教われる。
俺はその感覚が何かがすぐに分かった。
彼女だ。
彼女は歌いながら、俺の方を見ている。
いや、睨んでいる。
そして、歌が終わった。
「今日はこれで終わるね!
おまえら、来てくれてありがとう。
また、ライブする時はお願いね~」
歩道というステージの上で観客に手を振る彼女。
観客からは残念な声と称賛の声が入り交じっていた。
「歌、終わったみたいだね」
わためちゃんが彼女を見ながら言った。
「はい、相手は俺を見つけてるみたいですし、俺、行ってきます」
俺は隣にいるわためちゃんに返事した。
しかし、返事は返ってこない。
それどころか…
(なんだ?
周りが暗い?)
さっきまで夜と言えど、明かりがあって明るかった。
しかし、今は完全な闇だ。
(それにこの暗さは外じゃない。
この暗さは室内か?)
「まさか、特殊領域!」
「せいか~い」
その言葉と同時に辺りに眩しい明かりがつく。
「く」
俺は腕で目を覆う。
「せっかくだからね。
招待したから」
目が慣れてきて俺は辺りを見る。
(これってライブスタジオ?)
そこまで広くないスタジオ。
ステージに立つのは彼女、音乃瀬奏。
その人たった。
「キミが、そうだよね?」
奏ちゃんは、笑顔で俺に聞いてくる。
でも、目が笑ってない。
「たぶん、そうだよ」
俺はアイテムボックスの中の鬼切丸を掴む。
「そっかぁ」
奏ちゃんは、腕をダランと下ろして天井を見上げた。
そして、こちらにゆっくりと向いた。
「なんか気乗りはしないんだ。
奏はね、みんなで楽しく騒いだりするのが好きなのね。
だけど、やっぱりこれには逆らえないから」
奏ちゃんは、そう言って胸を片手で押さえた。
「構わないよ。
それはこっちのせいでもあるし」
俺は少し安堵してアイテムボックスから鬼切丸を取り出す。
(彼女はいい人だ)
そう、俺は確信した。
「ありがとう。
なら、始めよう」
奏ちゃんが少し腰を落とす。
俺はバックステップで距離をとり、鬼切丸を構えた。
「でも、その前に」
奏ちゃんはそう言って体をおこし、部屋の端を見る。
俺もつられて見てしまった。
そこには腕組みをして壁にもたれ掛かる1人の人物がいる。
「先輩はどうするんですか?」
奏ちゃんはその相手に聞いた。
「ん?
2人っきりの世界に入っちゃって悪いかなぁって思って気配消してたのに、ばらしちゃうなんて」
その人物はゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「ちなみに覗き見してた訳じゃないから、わため悪くないよね」
そう言って可愛くウインクするわためちゃん。
「わためちゃんも来てたんですね」
隣に並ぶわためちゃん。
「うん、クランドジョブのところまで案内するのが、わためのやる事だから」
「それで、わため先輩もやります?」
奏ちゃんはわためちゃんを見る。
「ん~
やめとく」
わためちゃんはそう言ってにこっと笑った。
「へぇ、どうしてか聞いていいです?」
意外という顔の奏ちゃん。
「だって、キミくんは1度この世界を救ったんだよ?
負けるわけないと思うけど?
ねぇ」
こちらに向いて微笑むわためちゃん。
(いや、相手はチートなんですけど)
と俺は思いながら苦笑いを返す。
「だから、頑張ってこ~い」
バシンと背中をわためちゃんに叩かれる。
「いて!」
わためちゃんはそんな俺を見てくすっと笑って、壁の方へと戻り、さっきのようにもたれかかった。
「じゃ、そろそろやろう」
奏ちゃんの言葉に俺は鬼切丸を構える。
奏ちゃんは黒い手袋をはめてから構える。
「徒手空拳?」
「そう、奏が得意とするのは【舞闘術】」
(確か、アキちゃんやねねちゃんが得意とする…)
「だから、今回はこれだけで相手するよ」
(相手が獲物を持ってないとしても油断は出来ない。
ホロメン相手だって覚悟を決めないと)
「覚悟を決めたその目、奏は好きだよ」
そして、目の前から消える奏ちゃん。
(いや、違うこれは!)
俺は咄嗟に刀を立て防御する。
ガン!
低い体勢から一気に間合いを詰めてのストレート。
(なんとか止めれた)
「やるぅ」
奏ちゃんはそう言ってまた、眼前から消える。
(次は)
咄嗟に俺は左手を上げた。
ドゴ!
「うぁ!」
奏ちゃんの勢いあるバックハンドブローを受けて、部屋の壁に打ち付けられた。
(攻撃までのスピードが早すぎる)
ドン!
そして、間髪いれずに間合いを詰めて放たれた蹴りを、俺はどうにか柄で止めた。
「はぁはぁ」
「すごい、この攻撃だけでも、普通ならリスポーンしてるよ」
(確かに、奏ちゃんのいう通り、チートキャラの攻撃をここまで受けれるなんて)
そう思った俺の耳に何かが聞こえる。
奏ちゃんも気づいたのか、驚いた顔である場所を見る。
それは歌だった。
「わため先輩!」
奏ちゃんはその歌を遮るかのように大きな声を出したが、歌は途切れない。
わためちゃんを見るとウインクして返してくれた。
(わためちゃん、力を貸してくれてたんだ)
背中がポッと暖かくなる。
「おりゃ!」
「きゃ」
刀で奏ちゃんの蹴り足を押す。
奏ちゃんは慌てて体勢を戻しながらこちらを見る。
しかし、そこに隙が生まれた。
「おりゃ~!!!!」
俺は鬼切丸を勢いよく振るい続けた。
ガン、ガン、カキン
その全てを奏ちゃんは拳で防いでいるけど、お構いなしだ。
俺は軽くなった体でその勢いを止めなかった。
ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。
まるで刀が体の1部になったように、俺は攻撃する。
奏ちゃんは反撃出来ずに押されている。
(これもわためちゃんの力のおかげ)
歌はまだ続いている。
(この歌が終わるまでに俺は!)
上から振り下ろした刀で、奏ちゃんの両腕を下げる。
(ここだ!)
俺はそのまま鬼切丸を、奏ちゃんの喉元に向かって伸ばした。
「やらせるかぁ!」
奏ちゃんの叫びが響く。
そして…
俺の刀は奏ちゃんの喉元で止められていた。
「決着かな」
いつの間に側に来たのか、わためちゃんは刀を上から軽く掴んで俺達の横に立っていた。
そして、わためちゃんの反対の手は、奏ちゃんがいつの間にか持っていた包丁を同じように掴んでいた。
「まだ、やれます」
奏ちゃんは、わためちゃんを見る。
「でも、これ出しちゃってるし」
わためちゃんは手に掴んでいる包丁を見た。
「う…
分かりました、奏の負けでいいです」
「うん、素直が一番」
そう言って奏ちゃんの持つ包丁が消え、わためちゃんも刀から手を離した。
「しかし、あれってるしあちゃんと同じような物ですか?」
俺は鬼切丸をアイテムボックスに入れながら、奏ちゃんに聞く。
「え!
るしあ先輩の?
もしかして【死屍累々】の事ですか?
いや、違う。
あの呪いの武器を使いこなすなんて、奏には無理」
(いや、使いこなせてるようには思えないけどなぁ)
「奏のは普通の武器だよ」
そう言って奏ちゃんは包丁を右手に出現させる。
「ただ…」
奏ちゃんは包丁を振り上げそのまま、俺に斬りかかる。
ガ!
しかし、包丁が当たった場所は切れるどころか、傷1つなかった。
「え?」
「この包丁の名前は【ぶっさし】
切る事を捨てて、刺す事に特化した武器だよ。
切れない代わりにどんな物でも貫く」
そう言って微笑む奏ちゃんがちょっと怖い。
「それにしても、胸のもやもやがどうも消えないなぁ」
奏ちゃんは胸を押える。
「あ、それはたぶんこよりちゃんのせいかと」
俺はこよりちゃんが【新世代first】に付与した効果を伝える。
「はぁー」
大きなため息の奏ちゃん。
その横でわためちゃんは笑っている。
「なるほどね。
それより、奏達に会うのって奏が初めて?」
「いや、他に3人に会ってる」
「え?」
俺はその3人の事を伝える。
「おでんちゃんにばんちょう、しゃちょーそれに奏かぁ。
誰か1人でも一緒にいたら、こんなに拗れる事もないのに」
奏ちゃんは何かを考えている。
「という事は後1人かぁ…
よし、奏も別行動で」
「え?
さっき一緒にいたら拗れる事ないって」
「だって、最後の1人だけ何もなく終わるのって、面白くないじゃん」
パンと奏ちゃんが手を叩く。
するとそこはさっきまでのメイン通りだった。
「それじゃ、何かあったら手助けしてあげるから、奏はまだ歌いたいんだ」
奏ちゃんはそう言って荷物を背負うと、さっと人混みに紛れて行った。
「あ、ちょっと」
俺はそれを止める事ができなかった。
「ま、なるようになるって」
わためちゃんが笑いながら、俺の肩を叩く。
「はぁ~」
「それより、本番でしょ?」
わためちゃんに言われて、俺は反対側の歩道を見る。
そこには、まだグランドジョブの路上ライブが続いていた。
「はい。
そうだ、さっきはありがとうございました」
「ん?
何が?」
不思議そうな顔のわためちゃん。
「さっきの戦いの時、ずっと歌で守ってくれてたんですよね?」
俺の問いにわためちゃんは笑って手を振る。
「違う違う。
歌は好きで歌ってただけ。
歌のスキルはわためは持ってないから。
キミを守ってたのは、始めに超能力で薄い膜を作ってキミに纏わせてたの」
「そうだったんですか?」
(全然気付かなかった)
「それでも、ありがとうございます」
俺はわためちゃんにお礼を言う。
「いいって事よ。
それじゃ、わためは行くね」
「え?
一緒に行ってくれるんじゃ?」
「わための役割はキミをグランドジョブのところに案内する事。
実は今からわためも路上ライブするんだぁ」
「ええ、それは見に行きたい」
「だ~め、キミはキミのやるべき事があるでしょ?
早く終わってまだわためのライブしてたら見に来てよ」
そう言ってわためちゃんも、手を振りながら人混みへと消えていった。
ポツンと残された俺。
でも、やる事は決まっている。
俺はグランドジョブのライブの方へと向かう。
次はグランドジョブに挑戦する時間だ。
お待たせしてすいません。
無事更新となります。
今回は【新世代first】の4人目、奏ちゃんの登場です。
路上ライブでは、沢山の人集りを作る彼女。
実際も沢山のファンの方に囲まれて歌っているでしょう。
次はもう1人の歌い手。
あなたは果たして無事に魔集石を手に入れられるのか?
では、また次回に語りましょう。