ホロライブ・オルタナティブver.IF正式版~メインストーリー事変~   作:天野空

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音乃瀬奏と戦い、何とか協力関係を結べたあなた。
そして、角巻わためは、役目を果たしあなたと別れる。
あなたは1人次の相手へと目を向ける。
そこにはグランドジョブ、奏手イヅルの姿があった。


第18話 奏でる歌は草原に響く~グランド・大楯~

俺は静かにその路上ライブが終わるのを待っていた。

俺の周りのみんなは笑顔で音楽にのって楽しんでいる。

そんな中、黙ってある人物をじっと見つめる俺は、かなり場違いのような気もした。

奏手イヅル。

俺は彼に会う為にここに来たのだ。

 

「ありがとうー!」

彼の路上ライブが終わる。

路上ライブを楽しんだ人達は、それぞれ友人と感想を言いながら帰っていく。

1人で来た人も、歌を口ずさみながら、この場を去っていく。

俺は路上で片付けをしている彼を見守る。

原則として、路上ライブを行った人には終わった後に接触しない事になっているようだ。

そして、俺の他に誰もいなくなった後、俺はゆっくりと彼に近づいた。

「すっごい視線送ってたよね」

イヅルくんは下を向いて片付けながら俺に言った。

「普通は路上ライブ演者に終わった後に、接触するのは禁止なんだけど」

そこでイヅルくんは顔を上げてこちらを見る。

「わためちゃんと一緒にいたって事はそういう人物なんだよね、キミは」

イヅルくんは立ち上がり、荷物を肩に背負った。

「ついてきなよ」

イヅルくんは路地へと向かう。

俺がぼうっと立っていると、路上へと入る入り口で立ち止まりこちらを向く。

「こっちだって」

そう言って路地裏へと入っていった。

俺は慌ててイヅルくんを追った。

少し先を歩くイヅルくん。

俺はその背を見失わないようについていく。

どのくらい歩いたのか、突然視界が広がった。

「え?

なんで」

俺はいつの間にか広い草原に立っていた。

「ここは、俺のプライベート空間だからね。

普通はプレイヤーが入れる場所じゃないよ」

イヅルくんはこちらに振り向き言った。

俺は自分の背後を確認する。

さっきまでの路地裏もない。

「さて、キミの用事は?」

イヅルくんが笑顔で聞いてきた。

「俺はメインストーリーを進めに来ました」

「メインストーリー…ね。

それにしては、ホロメンがキミを手伝ってるのが不思議だな」

(わためちゃんと一緒のところを見られてるんだったな)

「それに、その肩に乗ってる人。

眷属じゃないよね」

俺は肩のセレスを見る。

(確かに彼女は分け見だが、ホロメンだ)

「確かにそれだけじゃないです。

もう1つの目的は魔集石の回収」

俺が言うと同時にイヅルくんは、パッと手の平を広げると、その上に赤黒い色の魔集石が浮かんでいた。

「あ、それは」

俺は慌てて声をかける。

「大丈夫だよ。

見た感じ、やばそうだったから、俺のスキルで封じてる。

最近、いきなりこの草原に浮かんでてね。

すぐに処理した」

「ふぅ、それならよかった」

安堵のため息。

「これってもしかして、ヤゴー王の王冠にある石?」

俺はイヅルくんにここまでの事を話した。

「なるほどね。

他のみんなはこれに操られたって訳か」

イヅルくんは手の平の上にある魔集石を見る。

「変な気は起こさないで下さいよ」

「分かってるって、俺だって好きなようにこの体使われるのはごめんだからね」

イヅルくんはポイと魔集石を背後に投げた。

魔集石は地面に落ちず空中で何かに置かれるように止まった。

「それでキミはこの魔集石回収とグランド・大楯である俺にジョブレベル上限解放を求めに来たんだよね」

俺は頷く。

「なら、話は簡単だ」

イヅルくんはギターゲースからギターを取り出した。

「俺の試練は1つ。

俺の楯を越えてみなよ!」

イヅルくんがギターをかき鳴らすと、イヅルくんを守るように青白いエネルギー体の大楯が現れた。

(グランド・大楯の作り出した楯を破る?

本当に出来るのかそんな事)

「あ、ちなみに普通に来たプレイヤーには、こんな無理難題じゃない。

キミは特別だ」

ニヤリと笑うイヅルくん。

(無理難題って)

俺はアイテムボックスから鬼切丸を取り出した。

「へぇ、いいもの持ってる」

イヅルくんが驚いたように言った。

(まずはやれるだけの事をやってみる)

「そうです、その意気ですよ」

俺が前に出ようとした瞬間に声をかけられる。

「え!」

慌てて前のめりになりながら止まり、後ろを振り返ると、そこには意外な人物が手を振っていた。

「ルイちゃん?」

「はい」

彼女は笑顔で返事をした。

「ちょ、ちょっとタンマで」

俺はイヅルくんに言う。

イヅルくんは笑顔で頷いた。

「なんでいるんですか?」

俺はルイちゃんの方を向く。

「実はある人物に言われまして、様子を見に来ました」

ルイちゃんは笑顔で答える。

「いや、見に来たって、ここイヅルくんのプライベート空間」

「ま、その辺はこよりもいます」

(某ロボット猫か?

こよりちゃんは)

「それで、様子って、もしかして助っ人とかですか?」

「え?

あぁ、別にそういうのではないので、キミは頑張ってやっちゃって下さい。

応援はしときます」

そう言っていつの間にか両手にボンボンを持つルイちゃん。

「え、あ、はい」

少し残念な気持ちになりながら俺は、イヅルくんの方へと振り返った。

「お待たせしました」

「いつでも」

俺はきを取り直して、イヅルくんへと向かう。

前にはイヅルくんより大きい青白い楯。

(まずは普通に)

「はあ!」

俺は楯に向かって鬼切丸を振り下ろす。

ガ!

鈍い音と共に刀が弾かれる。

(エネルギー体なのに、固い何かを攻撃した時のような感じだ)

俺は1歩引いて直ぐ様、次の攻撃に転じた。

「【五花閃】」

侍のジョブに変えて覚えた技。

1行程で5回の攻撃を放つ技だ。

しかし、楯に攻撃が当たり火花が散って終わる。

イヅルくんはこちらを楽しそうに見ながらギターを鳴らしていた。

俺は大きくバックステップをする。

そして、刀をイヅルくんに向けた。

後ろから「ガンバレ、ガンバレ」と声援が聞こえる。

後ろを振り向くとちゃぶ台でお茶を飲むルイちゃんとセレス(いつの間に)

そして、SD型のルイ人形が応援していてくれていた。

(ご本人じゃないのね)

気を取り直し、俺は刀に眠る力を解放する。

「我願う 大いなる神々に」

詠唱するのは久しぶりだ。

「我は欲す 神速で敵を貫く葬槍を」

自分以外から力が流れてくるのを感じる。

そして、俺は刀に宿る力を元に巨大な力をイヅルくんへと解き放った。

「喰らえ、サンダートライデント」

刀から、紫の稲妻が三叉槍となって、イヅルくんの楯へと襲いかかった。

ズドン!

凄まじい音と爆煙が辺りを包む。

そして…

俺の前には何事もなかったように青白い楯が存在していた。

「げほ、ごほ」

楯の向こうでイヅルくんは咳き込んでいたけど、無傷のようだった。

「これもダメか」

(いよいよ、手段がなくなってきた)

「後はこれだけだ」

俺は1日2回使える刀の魔力を使い、紫電を纏う。

もちろん、刀にも纏わせている。

「力比べだ!」

俺はそのまま刀を構えて楯へと突撃した。

紫電が横へと走る。

ドガァ!

楯に激突して、その場に止められる。

しかし、俺はそのまま魔力と力で押し続けた。

全ての魔力を使い続ける。

魔力は膨れ上がり、纏う紫電も大きくなるが、楯はびくともしなかった。

「くそう」

刀を持つ手が痛くなる。

前には優しい目で俺を見ているイヅルくんがいる。

(「約束は守るよ」)

え?

そんな中、俺の頭に直接誰かの声が響いた。

(「左手を」)

言われた通りに俺は左手を刀から離す。

そして、その手はいつの間にか包丁を握っていた。

(これって)

見覚えのある包丁。

「!!」

イヅルくんがその武器を見て驚く。

「そう、これは【ぶっさし】」

俺はそのまま包丁を大楯へとぶっさした。

パリン!

いとも容易く砕け散る大楯。

そして、俺は塞き止められた魔力が溢れ出すようにそのまま、前へと向かった。

「うわぁ」

咄嗟に避けるイヅルくんの上を俺は通りすぎて、地面に激突。

爆音と爆煙を放った。

「あ~あ」と、ルイちゃんの方から声が聞こえたような気がした。

 

「大丈夫?」

「え!」

俺は体を起こした。

イヅルくんとルイちゃんが俺を見ている。

「えっと?」

俺は両手を見る。

右手には鬼切丸。

左手には何も持ってなかった。

「夢か?」

(ゲームの中なのに?)

「ま、普通は夢じゃないよな」

イヅルくんが笑う。

「勢いよく地面に激突して、少しだけ気を失って増したよ」

ルイちゃんが教えてくれた。

「それより、まさかあそこであの包丁出してくるなんて。

どこで手に入れたんだい?」

イヅルくんは不思議そうに俺を見る。

「あれは借り物みたいなものです」

俺はそう言って立ち上がった。

「そっか。

ま、どちらにせよ。

合格だね」

イヅルくんがそう言った。

「次は魔集石」

俺は浮かんでいるはずの魔集石を見た。

魔集石は相変わらず何もない場所で浮かんでいた。

しかし、なんか赤黒い気が膨れ上がってる気がするですけど」

俺は見たまんまの事をイヅルくんとルイちゃんに言う。

「あ!

やば、さっき驚いて避けた時にスキルが切れてる」

「え!」

赤黒い気がもう一回り大きくなって、その気から触手のような赤黒い気がこちらに向かって迫る。

「わ!」

「うお!」

俺達、3人は慌ててバックステップでそれを避けた。

触手は魔集石を中心にうねうねと動いていた。

「はぁ、やっぱりこうなりましたか」

ルイちゃんがその状況を見てため息。

「分かってたんですか?」

「ま、イヅル先輩がアレを封印していたので少しは安心してましたけど、概ね言われた通りになりました」

(そう言えば、ルイちゃんは誰かに言われて来たって)

俺はルイちゃんの顔を見る。

ルイちゃんはそれに気づいたようでこちらを見て微笑んだ。

「この世界で私に命令できるのは1人しかいませんよ」

そう言ってルイちゃんは魔集石の方へ向いた。

(ラプ様…)

俺はチョコバナナを美味しそうに頬張るラプ様を思い浮かべた。

(「なんで、その姿なんだよ!」)

いきなり声が聞こえる。

(回想まで入らないで下さいよ)

俺は心の声で声の主に突っ込んだ。

「あれって何?」

イヅルくんはギターを構えて魔集石を見る。

「あれに似ているのは知ってます。

しかし、ソレは私達が全て浄化したはず…」

「人の悪意が集まったモノかな」

俺は今まで聞いてきた事を考えて言う。

「悪意か」

イヅルくんは苦い顔をした。

「確かにそれなら、コメント集に似ていても不思議はありませんね」

「コメント集?」

ルイちゃんの言葉に俺は聞く。

「ええ、人々の中傷的なコメントが集まって出来たモノです」

「なら、あれもそれと同じ酷いモノかもしれない」

俺は思う。

(アレは確実に何かに対して悪意を持ったモノだ。

マルチプレイのゲームには絶対にある、自分以外の人への妬み、恨み、嫉妬。

そういったモノを集めてしまってるんだ)

「さ、これからが後始末ですよ」

ポンとルイちゃんが俺の肩を叩く。

「イヅル先輩もよろしくお願いしますね」

「分かってる。

俺の後始末でもあるからな」

俺は鬼切丸を構える。

ルイちゃんはそれを見て頷き、隣で杖を持ち魔集石を見る。

イヅルくんも俺の横に並び立った。

「さぁ、始めよう」

イヅルくんの声に俺達は力強く頷いた。




お待たせしました。
4人目のグランドジョブの登場です。
今回は魔集石には取り憑かれていない状態でしたが、あなたの強さに驚いて、イヅルくんは封印を解いてしまったみたいですね。
さぁ、ルイちゃんが参戦し、あなた達3人で魔集石を浄化する事が出きるのか?
では、また次回をお楽しみに
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