ホロライブ・オルタナティブver.IF正式版~メインストーリー事変~ 作:天野空
自分の今のジョブが侍である事、武器も刀であった為、奏手イズルから薬師寺朱雀の元へ行くように言われた。
近くまで鷹嶺ルイに送ってもらったあなたは、今一度薬師寺朱雀に会いに行くのであった。
俺は森を通り抜けて1本の道に出る。
(ここを歩くのも久しぶりな気がする)
「ここも懐かしい気がします」
肩に乗るセレスも俺と同じように感じたようだ。
「そうだな」
俺はそう返事をして、幻刀境へと向かった。
今回はいろはちゃんには会えなかったが、道には迷わなかった。
朱雀さんのところに行く途中、あの刀鍛冶のおじいさんに挨拶に行った。
刀を見てもらい、「まだまだ使いこなせとらんな」と笑いながら言われた。
俺は「精進します」と気合い新たに返事をした。
(そういえば、新しい鬼切丸は絆を紡いだ相手に力を借りられるんだったよな)
俺はその事をすっかりと忘れていた。
(それもきちんと活用できたら、1人でももっと戦えるかもしれない)
俺はそう考えながら、朱雀さんのいる竹林へと向かった。
「この竹林も久しぶりだな」
俺はそうセレスに言うとセレスはうんうんと頷いた。
そのまま竹林に入り、奥へと進む。
しばらくすると1件の家があった。
俺は前と同じようにその家の裏庭に回った。
すると、縁側に予想通りの人物が座って、ニワトリに餌をやっていた。
俺の気配が分かったのか、その人物がこちらを向いた。
「来たか」
「久しぶりです、朱雀さん」
俺の言葉に朱雀さんはにこっと微笑んだ。
「話は聞いてるよ」
そう言いながら、朱雀さんは俺に縁側に座るように促した。
俺は縁側に座る。
「それで、何やら俺達に一矢報いたいんだってな」
「え?
いや、そんな事では…」
慌てて手を振る。
「はは、冗談だって。
あれから俺も色々と情報を集めたけど…
確かにおまえが相手にしようとしているやつは、チート級、いや、それ以上の相手だな」
朱雀さんは、餌を庭に撒く。
それをニワトリが食べていた。
「はい、ですから、朱雀さんが編み出した裏秘奥義を教えていただきたいです」
俺は朱雀さんの方を見る。
朱雀さんは黙って餌を撒いていた。
「『斬鉄剣』
それが俺の持つ裏秘奥義の名だ」
ポツリと朱雀さんが答えた。
「威力は聞いた通り、当たればチートを瀕死に出来る。
そして、代償としてレベル低下が起きる」
「はい」
俺は頷く。
「イズルも言っていたかもしれないが、諸刃の剣だ」
朱雀さんが、こちらを見る。
「だから、教える前に、今一度自分の持つチートに通用しそうなものはないのか確認しろ」
そう真剣な目で朱雀さんは言った。
(チートに通用しそうなもの)
俺は考える。
アイテムボックスを開く。
「これですかね」
俺は鬼切丸を取り出す。
「これはこの村の刀匠のおじいさんに打ち直してもらったものです」
「ああ、あのじいさんか」
朱雀さんが微笑む。
「はい、絆を紡いだホロメンの力を借りれるようになるそうです。
俺も朱雀さんの時だけ使って、後は忘れてました」
「そうか?
多分それは忘れてたわけではなくて、無意識に使っていたんじゃないか?
今まで出来なかった事が出来てた事はないのか?」
そう言われて俺は考える。
(そう言えば、1日2回しか使えない紫電の魔法を2回以上使っていた時があった)
「何か思うところがあったか?
なら、おまえはそれを自然に扱えていると言うことだ。
だったら、意識をすればもっと有用に使えるな」
「はい」
「他にはないのか?」
俺はアイテムボックスを探す。
(これは?)
俺はそのアイテムを取り出して、朱雀さんに見せた。
「おいおい、とんでもないもの持ってるんだな」
朱雀さんがそれを見て驚く。
それは前回、ココさんから受け取った小手、赤竜帝の小手。
(これには以前たくさん助けてもらった。
でも、あの戦いの後、この小手を使う程の事が無かったから、すっかりとアイテムボックスの奥にしまい忘れてた)
俺は赤竜帝の小手を装備する。
(何か温かい感じがする)
俺は立ち上がって、赤竜帝の小手の力を解放した。
小手は大きくなり、竜の腕へと変わった。
「へぇ、初期段階は出来てるんだな」
「え?
初期段階?」
(この小手は赤竜帝の力、すなわちココさんの力を少し借りれるアイテムだから、これで全て解放してるんじゃないのか?)
「ああ、それを本当に解放したら、普通にチートとやりあえるだろ」
「ほ、本当ですか?」
「ただし、長くはもたないな」
「MPの消費が激しいとか、効果時間のせいですか?」
「いや、脳への負担が激しすぎる」
「え?」
「おまえ達、プレイヤーは頭にギアを被ってゲームしてるだろ?
だから、今、自分を動かしているのは脳で直接操作しているという事だ。
で、チート級の動きや力を使えば、その処理は今の数百倍以上になる」
「…」
「それを続かせば、リアルのおまえに多大な悪影響があるんだよ」
「そういう事ですか…」
俺の顔をじっと見てくる朱雀さん。
「でも、おまえ、その話を聞いても限界まで使いそうだな」
(見破られてる)
「だろうから。
少し慣れとけ」
そう言って朱雀さんは立ち上がり、庭に3本の線を書く。
「中央の線に立ってみな」
「は、はい」
俺は言われたように立った。
「反復横飛びって知ってるか?」
「はい、知ってます」
「じゃ、今からそれのフル解放の仕方教えるから、フル解放した状態でやってみなよ」
「は、はい」
(どうやってフル解放するんだ?)
「いくぞ」
ガキン!
朱雀さんの一撃が俺の体に当たる瞬間、俺は全身に赤い鎧を纏っていた。
「え?
え、え?」
俺は自分の体を確認する。
「やっぱり、本気で消滅させようとすると、発動するな」
そう言って笑う朱雀さん。
「しょ、消滅って」
「俺もこの世界を担う1人だからな。
プレイヤー情報を削除する力は持ってる」
「え?」
「普通だろ?
他のネットゲームだって、違反者とかは運営にキャラデータ削除とかされるだろ?」
「え、いや、確かにそうですけど」
「ま、そういう力だ。
無闇に使うと、運営から言われるけどな」
そう言って意地悪そうに笑う朱雀さん。
「それより、そのフル解放を覚えておけよ」
「は、はい」
「1度解放して、感覚を覚えれば次からは任意で解放出来る」
「分かりました」
俺はステータスを確認する。
装備スキルにフル解放の欄が増えていた。
(なるほど、1度解放出来れば、いつでも使えるようになるのか)
赤い竜騎士のような格好の俺。
(これが赤竜帝のフル解放)
「ほら、さっさと反復横飛びやってみろ」
朱雀さんは地面にトンと刀を突いた後、縁側に座ってこちらを見る。
「分かりました」
俺は中央の線に立ち腰を落とす。
(いくぞ。
まずは右から)
そう思って動いた瞬間。
俺は何かにぶつかり転けていた。
「???」
「ははは、大丈夫か」
朱雀さんは俺を見て笑ってる。
(何が起きたんだ?)
「おまえは今、右にすごいスピードで動いて、止まれず躓いて転けたんだよ。
俺が左右に壁を作ってなかったら、そのまま吹き飛んでたな」
朱雀さんは笑いながら教えてくれた。
「それじゃ、反復横飛びがきちんと出来るようになるまで、がんばってみな。
あ、休憩は忘れるなよ。
続けすぎるとバカになるぞ」
そう言って立ち上がる朱雀さん。
「朱雀さんはどこに?」
「ちょっと野暮用だ」
そう言って朱雀さんはどこかに行ってしまった。
(戻って来る前には、出来るようになっとかないとな)
そして、俺はセレスが見守る中、反復横飛びが出来るように練習した。
「お、やってるな」
あれからどれくらい時間がかかっただろうか?
俺は休憩を入れながら反復横飛びを続けていた。
「しかし、かなりのものだな」
朱雀さんは庭を見て苦笑した。
「す、すいません」
「いや、頑張ったって事だろ?」
朱雀さんは微笑む。
朱雀さんの庭は壁の近くの地面がかなりえぐれている。
それもそのはずだ、俺が何度も激突したのだから。
「それで、出来るようになったのか?」
縁側に座る朱雀さん。
俺は真ん中の線へと移動する。
そして…
「へぇ、やるじゃないか」
端から見たら俺は1歩も動いてないように見えただろう。
しかし、チート級の朱雀さんなら、俺が反復横飛びで1往復したのを見えたはず。
「だいたい半日か。
さすがは元世界の答えだな」
「ありがとうございます」
俺はフル解放を解除する。
「それで、後は何かあるか?」
朱雀さんに言われて、自分のアイテム、装備を確認する。
「後は足に装備しているアルティメットフットですかね」
俺はそう言ってアルティメットフットの擬装を解く。
普通の革靴からメカメカしいロングブーツが現れた。
「おいおい、まだ隠し持ってたのか?」
「いただいたロボ子さんから、擬装しとくように言われたので」
朱雀さんは近寄って来て、俺の足装備を見る。
「へぇ、これもチート級の装備だな。
さっきのフル解放と同時に使用すれば、俺達を凌駕出来るんじゃないか?
ただ、そんな事したらおまえが廃人になってしまうかもだけど」
そう言って俺を見る朱雀さん。
「ま、使い方も分かってるだろうし、フル解放も使えるようになってるから、その装備に振り回される事もないだろう。
さて、以上か?」
俺は朱雀さんに頷く。
「よし」
朱雀さんは俺と向かい合うように距離を取って立つ。
朱雀さんは刀をトンと地面に当てる。
すると一瞬で荒れていた庭が元に戻り広さが倍以上に拡張した。
その現象に驚いている俺を尻目に
炎が走り、俺達を囲む。
それはまるで炎で作られた土俵の様だった。
「さ、やるか」
朱雀さんの言葉に俺は戦いに気持ちを切り替える。
「おいおい、いきなり戦闘態勢に入るなよ」
朱雀さんは笑いながら俺に近づいてきて、ポンと頭に手をのせた。
その瞬間、俺の頭にある情報が流れ込み閃く。
「こ、これって?」
「理解できたか?
そう、それが俺の裏秘奥義『斬鉄剣』だ」
「これで使えるようになったんですか?」
驚く俺に笑いながら朱雀さんは、俺と一定の距離をとる。
「まさか、そんな簡単には覚えられないさ。
今は仮習得ってとこだ。
この炎陣の中のみ、技が使える。
きちんと使いたかったら、今からの試練を越えろ」
朱雀さんが腰に刀をさした。
俺は鬼斬丸を構える。
「条件はこの前と同じだ。
ただし、さっきの装備の力は使うな。
その鬼斬丸の力は使っていい。
俺に『斬鉄剣』を入れれば、その技はおまえのものになる」
ぶわっと朱雀さんの気が膨れ上がるのを感じる。
「前と同様に、この炎陣の中でやられても、アイテムロスなく、すぐにその場でリスポーンするから安心しろ」
そう言って朱雀さんはニヤリと笑った。
「必ずものにします」
俺は刀を1度強く握って力を抜いた。
(力を入れたまま戦える相手じゃない。
脱力して相手の動きについていかないと)
「いや、そのままでは無理だろ?」
「!」
(くそ)
目の前がブラックアウトする。
すぐそこで朱雀さんが刀を納刀しながら、くるりと背を向ける姿が見えた。
お待たせしました。
前回の続きになります。
チート級のグランドジョブ達が、暇潰しに作ったどえらい技。
あなたは無事に習得する事ができるのか?
それでは、また次回に語りましょう。