ホロライブ・オルタナティブver.IF正式版~メインストーリー事変~ 作:天野空
世界の壁で、何者かの妨害により儒烏風亭らでんと別れてしまったが、儒烏風亭らでんの言葉の通り先に急ぐあなたなのであった。
シャー
【バーチャル】の世界を俺は自転車で走りながら、辺りを見回す。
景色はそれほど変わってはいなかった。
ま、空は相変わらず真っ暗だが、その他は前と同じだ。
建物が崩壊し、そこに植物が生えている。
リアルの世界も崩壊して何十年もたてばこうなるのかもしれない。
俺は前を見てひたすら自転車をこいだ。
目指すは【バーチャル】の始まりの街。
あの大都会に、誰かいてくれればいいのだけど。
俺はそんな願いをこめて先を急いだ。
【バーチャル】の始まりの街。
たくさんのビルやお店が建ち並ぶ大都会。
リアルにそっくりなその場所は、今は音もないゴーストタウンになっていた。
(怖いな)
俺がすぐにそう感じた。
プレイヤーは言わずもがな、NPCも動物さえもいない。
しかし、街に明かりはあるし、信号も正常に動いている。
「本当に気味が悪い」
俺は自転車を降りる。
自転車は役目が終わったように、崩れて消えた。
俺は無人の街を歩く。
(本当に誰もいないのか?)
ふと、俺は視界に違和感を感じた。
(なんだ?
何かおかしい)
俺は目を凝らして辺りの風景を見る。
初めは気づけなかったが、その違和感は確かにそこにあった。
それは人だ。
(いや、プレイヤーがいない、今のこの世界だからNPCか?)
俺はビルを見た。
普段はあり得ない場所をNPCが歩いてこちらに向かっている。
ビルをまるで地面を歩くように横に立ちながらこちらに来る人物。
そして、俺ははっきりとその人物を見た。
「やはり、ここに来たでござるか」
その人物はビルの壁面に立ちながらこちらを見下ろす。
「いろはちゃん?」
(そう、その人物の顔ははっきりといろはちゃんだと分かる。
しかし、格好は違う。
その格好は…)
「ふ、私は風真いろはであって、風真いろはではない。
私は皆が、もし風真いろはが忍者だったらと言う心の奥底にある思いが生んだ存在。
風魔忍者の末裔、風魔いろは…
風真いろはDEでござる」
「な!」
(風魔忍者の末裔?だと)
「完全に忍者になってるじゃないか」
俺はすぐさま鬼切丸を取り出し構える。
(確かに姿は忍者衣装に背中には巨大な手裏剣を背負っている)
「それが今の私のアイデンティティーでござるからな」
いろはDEがニヤリと笑う。
「さぁ、世界の答えになってない、元世界の答え殿は、どのくらいの強さなのでござるかな?」
ゾク
俺は一瞬その笑顔に恐怖を感じた。
「はは、いいのでござるか?
その姿は長くもたないのでござろう?」
「え?」
いろはDEに言われて俺は一瞬自分の腕を見る。
「な、なんで?」
俺は自分の手に赤い竜の手甲をしているのを見た。
(いや、これは手甲だけじゃない)
頭は装備してないが、俺はいつの間にか赤竜帝の小手の力をほぼフル解放していた。
そんな俺をにやにやしながら見下ろすいろはDE。
その姿は普段のいろはちゃんとは全くの別人だ。
「では、行くでござるよ」
タン
いろはDEがビルから飛び、地面に向かう。
「まずは小手調べ」
しゅ!
風を切る音と共に、無数の手裏剣がこちらに放たれる。
「これくらい!」
俺は左手の手甲を大きくし、盾のようにしながらもう片方の鬼切丸で手裏剣を斬り落とす。
「ま、それくらいはできるでござろうな」
「!」
背後で声がする。
俺はすぐに振り向き手甲を構える。
その上から蹴り飛ばされる。
(くそ、いつの間に背後に!
それに見た目と全然違う威力)
「はは、まだまだいくでござるよ!」
追い討ちのように放たれる手裏剣。
(く)
俺は手甲で防御しようとした瞬間、それは間違いだと気付く。
(ただの手裏剣じゃない!
爆弾付き!)
「ご名答」
俺の思考を読めるのか、いろはDEは笑った。
ドドドドド!
無数の手裏剣爆弾が、手甲に当たり爆発する。
「ぐぁ~」
俺はその爆発を受けて地面に叩きつけられる。
「く、くそう」
なんとかその場に立とうと体を起こそうとするが、起こせない。
片ひざを地面につけて俺は肩で荒く息をする。
「弱いでござるな」
そんな俺を見下ろし、軽蔑するような目を見下すいろはDE。
(赤竜帝の小手を使ってもここまで差があるのか)
「ふ、面白くもない。
ミオDEを降した者がどれほどか楽しみにしていたでござるが、こんな者とは。
もういいでござるよ。
消えろ!」
背中の巨大な手裏剣を振り上げ、いろはDEは容赦なくそれを俺に振り下ろした。
ガン!
「!」
一瞬目を瞑った俺は状況が分からなかった。
いろはDEは距離を取りこちらを睨んでいる。
俺の目の前には1人の女性が立っていた。
金色の長い髪をなびかせて、赤いリボンが風に揺れる。
「な、なんで…?」
その人物を俺は知っていた。
ゆっくりと振り返る。
「こんなところでなにやられようとしてるの?」
そう言った人物、音乃瀬奏はにこりと笑った。
「奏ちゃん」
「ほんと、キミさぁ。
ちょっとは頑張ろうよ。
おでんちゃんから慌てて連絡来たから急いで来たけどさぁ」
そう言って奏ちゃんは俺に何かを投げる。
俺がそれを受け取るのを見ると、奏ちゃんはいろはDEを見た。
(メルちゃん印の回復薬。
助かる)
俺はそれを使って立ち上がり奏ちゃんの横に並ぶ。
「今はそれ切っとき」
奏ちゃんは目線を反らさず言う。
俺は頷き、赤竜帝の力を解く。
(正直頭がかなり痛かった)
「へぇ、あなたがイレギュラーの1人でござるか」
いろはDEは奏ちゃんを見て言う。
「ま、そう言う事になりますかね」
「それで?
1人増えたぐらいで何も変わらないと思うでござるが?」
いろはDEは余裕の表情だ。
(確かDEはホロメン達を遥かに越える力を持っている)
「まぁね、そんなのおでんちゃんから聞いてるから、きちんと対策はしてきたよ」
「対策?」
「ひと~つ、人様の姿を勝手に使い~」
「え?」
どこからともなく声が響く。
「な、なんでござるか?」
「ふた~つ、不埒なその姿」
「な、なんだ?」
俺も辺りを見回すが、誰もいない。
しかし、声だけはどんどん近づいてきている。
俺は奏ちゃんを見た。
奏ちゃんは少し苦笑いを浮かべている。
「みっつ、醜いその姿…
斬って捨てよう!」
バ!
突然いろはDEの背後で布が空中を舞う。
そして、現れたのは…
「いろはちゃん!?」
「かざまは侍だーーーーーーー!」
いろはDEの背後から容赦なく振り下ろされるチャキ丸。
「うわぁ!」
ギャン!
その強烈な一撃は、運良く?巨大な手裏剣に当たる。
驚きながらいろはDEは俺達を飛び越えて行く。
「待て!!
逃げるなでごさる!!」
それを追ういろはちゃん。
「例えエイプリルフールが許しても、かざまは絶対許さないでごさる!!」
逃げるいろはDEに向かって斬撃を放ついろはちゃん。
(完全に暴走してる)
飛んでいく斬撃は建物に当たると、その建物が真っ二つになっていく。
「な、何ですかあれ」
俺はいろはちゃんを追いかけながら、隣を走る奏ちゃんに聞く。
「な、何だろうね」
苦笑いの奏ちゃん。
どんどん破壊されていく街。
「と、止めないと」
「えっと、奏じゃ無理」
あははと笑う奏ちゃん。
「まてぇ!」
逃げるいろはDEに容赦なく飛んでいく斬撃。
(このままだと街が壊滅する)
「ああ、あれは侍ジョブの奥義の1つ【斬鉄斬】だねぇ」
「へ?」
いきなりの声に俺は奏ちゃんとは反対を見る。
「はぁい」
そこには浮かんだまま俺達と並走するAZkiちゃんがいた。
お待たせしました。
第2の刺客、風魔忍者の末裔風真いろはDEの登場です。
人の心の奥に潜む思いによって生まれたDE。
いろはちゃん本人は完全に倒す気満々で現れましたが果たして、あなた達は勝利する事はできるのか?
そして、暴走しているいろはちゃんを止める事ができるのか?
それは彼女、並走する歌姫にかかってたり、かかっていなかったり…
では、また次の記録でお会いしましょう