ホロライブ・オルタナティブver.IF正式版~メインストーリー事変~ 作:天野空
ラプラスDEとの真の決着の物語。
「なるほど、これが特殊領域ですか」
ルイは辺りを見回す。
ルイ達とラプラスDEを囲むようにそびえ立つビル郡。
人の気配はない。
この領域を展開しているのは、ルイの後ろに控える莉々華によるものだ。
「これで周りには被害は出ないって感じですね」
「はは、ある程度はですけど」
ルイの言葉に莉々華は苦笑いで答える。
確かに別の世界と言っていい場所だが、あまりにも大きい力だと、領域を維持できなくなる可能性があった。
「ま、大丈夫でしょう。
所詮紛い物が相手ですから」
ルイはそう言って意地悪そうに笑いラプラスDEを見た。
「また言ったな!
吾輩が紛い物だと!」
怒りじたんだを踏むラプラスDE。
「紛い物を紛い物と言って何か?」
ルイは不思議そうに首を傾げる。
「潰す!」
ラプラスDEは、自身の目の前に巨大な紫の球を出現させてルイに放つ。
明らかに当たれば致命傷を受けるであろう、その巨大な球は凄まじい勢いでルイに向かった。
しかし、ルイはそれを軽く避ける。
その時、一瞬ラプラスDEの口の端が上がったようにルイには見えた。
バシィ!
ルイは杖で紫の球を空へと打ち上げる。
「な!」
驚くラプラスDE。
それはそうだ。
1度避けた球、ルイを通りすぎ背後の莉々華に向かっていた球を、ルイは瞬間移動のように球の横に移動して球を打ち上げたのだから。
「な、なぜ」
「え?
なぜ?ですか?
いえ、避けた瞬間にあなたの顔がにやけたように見えたので、どうしてかと思案した後、狙いが私ではなく莉々華なのではないかと思い、空へと打ち上げたまでです」
ルイは淡々と答える。
程なくして頭上彼方で爆発する球。
「な、思案した後だと!
避けてから一瞬だったぞ」
「はぁ、1秒あれば私は十分に思案できますよ」
呆れたように答えるルイ。
それが気に入らなかったのか、ますます怒るラプラスDE。
「くそ!
消えろ!!」
ラプラスDEは自分の影から紫の手を無数に出現させてルイへと放つ。
それはかなたに放った津波のような勢いのある技。
ルイは小さくため息をした後、ゆっくりと津波へと歩を進めた。
「ル、ルイ先輩!?」
驚き声をかける莉々華。
その声にチラッと莉々華の方を見たルイはニコッと笑った。
そして、ルイは津波へと到達する。
瞬間。
ルイの目の前の紫の津波が消えていく。
杖を持つルイの手が見えない程動いていた。
「な、なんだ?」
ラプラスDEは驚愕する。
津波はルイを囲むように襲いかかるが、ルイには到達できていない。
「お、おまえは何者だ!」
ラプラスDEの叫びにルイは答える。
「私は鷹嶺ルイ。
あなたの抑止力ですよ」
スバババババ!
ルイがもう1つの手に杖を出現させる。
2本の杖で津波と化した紫の手を叩き潰し始める。
ルイの前へと進む速度は落ちていない。
まるで何もないところを歩くようなスピードだ。
「あ、あ、あ」
ラプラスDEは目の前の光景が信じられなかった。
自分はラプラスの全解放状態を元に生まれた存在だ。
そして、DEとしてオリジナルを上回る力を付与されている、はず。
それが、たった1人のホロメンに打ち砕かれていく。
バン!
ルイが両手を広げた。
津波は消え、ルイの目はラプラスDEをとらえた。
「ひぃ」
その目を見てラプラスDEが小さく悲鳴を上げる。
その目はまさに鷹が獲物を狙う目だった。
ダン!
ルイがラプラスDEへと迫る。
咄嗟にラプラスDEは両手に紫の剣を出現させた。
キン、キン
ルイの杖の攻撃をラプラスDEはその剣で防ぐ。
目にも止まらぬ早さで2本の杖がラプラスDEへと襲いかかる。
しかし、ラプラスDEは両手の剣でそれを防いでいた。
攻撃を防ぎながら後退するラプラスDEだが、相手の攻撃を防げている事に、少し安心していた。
(まだ、負けていない。
あちらの攻撃は吾輩には届かない)
ラプラスDEは自信を取り戻しつつあった。
何合目になるだろうか、一瞬ルイは後ろを確認した。
「好きありだ!」
ラプラスDEはその瞬間を見逃さず、打ち込んだ。
ブン
空を斬るラプラスDEの剣。
「!」
「外れです」
背後から冷たい声と共に、ラプラスDEはいつの間にか空へと飛ばされていた。
「くそう!」
下を見るラプラスDE。
地上には笑顔のルイがラプラスDEを見上げていた。
そして、ある場所を指差している。
ラプラスDEはそちらを向いた。
「!!」
そこには信じられないものが出現していた。
腕組みをして地上に立つ莉々華の背後に、巨大な戦艦が横向きで立っていた。
下は海ではない。
地面だ。
それなのになぜ、あんなものが立っているのか?
ラプラスDEには理解できない。
ただ、その戦艦の砲門がゆっくりとラプラスDEへと向けられている。
「全砲門開け!
目標ラプラスDE!」
莉々華の声が響く。
全ての武装がラプラスDEへと向けられた。
「戦艦大和!
撃てぇ~~~!」
莉々華の声に呼応して、戦艦大和の全ての武装が火を吹いた。
45口径46cm3連装砲塔。
60口径15.5cm3連装砲塔。
40口径12.7cm連装高角砲。
25mm3連装機銃。
25mm単装機銃。
13mm連装機銃。
それから放たれた弾丸は、空を覆い尽くすようだった。
それら全てがラプラスDEへと向かう。
「!!」
ラプラスDEは慌てて自身の前にバリアを貼った。
ただの弾丸でやられる筈はないがこの量だ、多少のダメージは受けてしまう。
凄まじい爆発音がラプラスDEのバリアに当たった弾丸から生じる。
だが、バリアは保てている。
このまま相手が撃ち尽くすまで耐えればいいのだ。
そう、このまま…
「両手でバリアを維持できればですけどね」
ラプラスDEの背後で声がする。
ラプラスDEはぞっとする。
今1番聞きたくない声。
ズバ!
その瞬間、ラプラスDEの左腕が斬り落とされた。
左腕は宙を舞い光の粒子に変わって消える。
「くそう!
鷹嶺ルイ!!!!!」
ラプラスDEのバリアが破られ、弾丸がラプラスDEを捉え爆発する。
「いいですね、その叫び声」
ルイはニヤリと笑い、弾丸の雨の中空に立つ。
凄まじい弾丸が降り注いでいるのに、ルイには当たらない。
それはゲームでよくある同士討ち無効というものではない。
ルイはそれを全て避けているのだ。
爆発の中、ラプラスDEは地面へと叩き落とされた。
ルイは背後を向いて莉々華に笑顔を向ける。
座り込んだ莉々華は背後の大和を還した後、ルイに笑顔を返した。
「はぁはぁはぁ」
荒い息をしながら爆発が収まった場所に左腕があった場所を押さえたラプラスDEが立っていた。
体はぼろぼろ、見るに耐えない。
ルイはそんなラプラスDEを見てくすっと笑う。
「お、おまえは自分の総帥のこんな姿を見て苦しくないのか!」
ラプラスDEはルイに叫んだ。
偽物だが外見は本物そっくりだ。
ラプラスDEの言いたい事は分かる。
だが、ルイは笑顔で答える。
「私がこの抑止力の役目を受けるに当たって、1つ条件を出しました。
暴走したラプの止めかたは、私に一任してもらう」
ルイは恍惚な表情を浮かべる。
「いいじゃないですか?
もっと聞かせてもらいたいくらいですよ、ラプの悲鳴」
ルイの言葉にラプラスDEは恐怖を覚える。
「こ、このサディストが!」
「いやいや、勘違いしないでください。
私はサディストなんかじゃないですよ。
ただ、可愛いラプの普段聞けない声が聞きたいだけです」
「それがサディストって言うんだ!」
マジで突っ込むラプラスDE。
「くそう!
こうなったらおまえ達も道連れだ!」
ラプラスの内に巨大なエネルギーが溜まり出す。
そのエネルギーは外へと漏れだしている。
「はぁ、自爆ですか?
所詮、紛い物ですね。
ラプなら最後まで悪あがきしますよ」
ルイはトンと自分の胸を叩く。
すると胸から1本の柄が出現した。
ルイはその柄を握りゆっくりと抜き出す。
「な、なんなんだそれは」
怪しく光るその剣を見て、ラプラスDEの声が震える。
「これですか?
これは私が抑止力として力を振るう時にだけ使える剣です。
普段は自分の中に封印してますけどね。
名前は聞いた事ありますか?
はかぶさの剣と言います。
そして…」
ルイは胸元にあるholoXの紋章を触る。
「私の紋章の力は【絆】」
はかぶさの剣が紫の気に覆われる。
「ラプラスの力」
ポンと音がなってルイの左手に丸底フラスコが現れる。
中には黄金の液体が入っていた。
「【願望の薬】こよりの力」
ぐっとその薬を飲む。
ルイが光に包まれ、姿が変わる。
それは有名な竜の勇者の姿だった。
「後はクロヱ、いろはの力と私自身の力」
ふっとラプラスDEの目の前から消えるルイ。
「!」
ザ、ザン!
続けざまに斬撃音。
1度の攻撃で二連撃。
ラプラスDEの右腕と胴が分かれた。
「侍奥義【一刀両断】」
ラプラスDEの背後で静かにルイは言う。
そして、背後からラプラスDEの頭を抱いた。
右手でゆっくりとラプラスDEの瞳を閉じる。
「こういう世話をやかせないでください」
ルイは静かにそう言って腕の中で光の粒子に変わっていくラプラスDEだったものを強く抱きしめた。
地面に落ちている魔集石を優しく拾い上げるルイ。
顔を上げれば領域は解かれていた。
もう一度手にある魔集石を見る。
姿はいつもの格好に戻っていて、はかぶさの剣も消えていた。
ふと、気配を感じてそちらを向く。
そこには勝利した仲間がいた。
ルイはそちらに笑顔を向ける。
(抑止力としての戦いは終わった。
後は彼らに任せよう)
ルイはそう思い、ふと肩の力を抜いた。
あの戦いの後、魔王城にて…
「どうだった?」
玉座に足を組んで座る、ラプラスは斜め後ろに控える人物に問いかけた。
「ま、あれが本当に暴走したラプなら何も問題ないですね」
控えていた人物はそう答える。
「ふん、暴走した吾輩があの程度のわけないだろ」
ラプラスは少し不満げに言う。
「なら、その時を楽しみに待っていますよ、ラプ」
控える人物、ルイはそんなラプラスを見てくすっと笑い答えた。