ホロライブ・オルタナティブver.IF正式版~メインストーリー事変~ 作:天野空
すると何やら怪しい人達と出会い続ける事になる。
そして、その怪しい人物がついに正体を表す。
その人物は【新世代first】の1人、儒烏風亭らでん。
博衣こよりのいたずらでキラー対象にされているあなたは、儒烏風亭らでんと戦う事に。
そして、戦いの最中、あなたの危機に頼もしい助っ人が登場して戦いは何とか収まるのであった。
「それじゃ、案内するね」
アキちゃんはそう言って俺をグランドジョブの元へと案内してくれる。
「そういえば、ここにいるグランドジョブの情報ってどこで手に入るんですか?」
なかなか手に入らなかったグランドジョブの情報をアキちゃんに聞いてみる。
「ん?
情報といえばやっぱり酒場じゃない?
キーアイテムを手に入れてから、ここの酒場の店長やウェイトレスさんに聞けば教えてくれるよ?」
「あ、あ~」
「ん?」
歩きながら頭を押さえる俺を、不思議そうに見るアキちゃん。
(なるほどなぁ、全部らでんちゃんにやられた。
酒場に入ってから、個室に案内してくれたのも、ウェイトレスも全部らでんちゃんだったもんなぁ)
「あ、らでんちゃん?」
何かを察したのかアキちゃんが聞いてくる。
俺は、ははっと笑いながら誤魔化した。
(ま、らでんちゃんも元はと言えば、こよりちゃんがキラー対象なんか設定するから俺を狙ったんだしな)
俺はアキちゃんと一緒に、始まりの町の側にある住宅街に来た。
ここは、プレイヤーが自分の家を購入して建てれるエリアだ。
「まさか?」
「そう、そのまさか」
俺の驚く顔を見て嬉そうにアキちゃんは住宅街に入った。
基本的に住宅街はプレイヤーの土地と言ってもいい場所だ。
それがイベントに使われてるなんて。
「なかなか盲点でしょ?」
アキちゃんと住宅街を歩く。
基本イベントキャラのアキちゃんは、他の人から見えないが、なんか住宅街を一緒に歩いてるのはすごく違和感ある。
「確かに、ここはプレイヤーの領域だと思ってました」
「ま、基本そうだよね?
ただ、ここのグランドジョブだけは、ここを使ってるの。
キーアイテムを持って、ある家に向かうと会える事ができる」
「ちなみにここのグランドジョブって?」
「ここにいるのは、グランド・符術士。
札を使って魔法や召喚をする事ができる職業だよ」
「札を使って?」
「そう。
分かりやすいところでいうとカードを使ってかな」
(カードから魔法や召喚?
なんかどこかで聞いたような)
俺の頭に、カードから白くて青い眼をした龍を呼ぶ誰かの姿がよぎった。
「符術士って案外なるには難しい職業なんだよ。
条件とかがいろいろあって…ちょっと待って」
話途中でアキちゃんが小さな声でそう言って立ち止まる。
俺も一緒に立ち止まり、アイテムボックスに手を入れた。
(何かあったのか?)
俺は鬼切丸を握る。
アキちゃんは眼を閉じて何かを探っているようだった。
「やっぱり…」
アキちゃんはそう小さい声で呟いた。
「ごめんね。
少し用事ができちゃった。
後はここをまっすぐに行けば着くから」
アキちゃんはそう言って手を振りながら、元来た道に戻っていった。
「何か忘れ物かな?」
「違うと思うけど」
肩のセレスがポツリと言う。
「ま、場所も分かったし行ってみるか」
俺の言葉にセレスはこくんと頷いた。
俺が着いたところは綺麗な一軒家だった。
家の周りには木々が植えられており、まるで森の中に家が立っているようだ。
「かなり目立つのになぁ」
そう、他の家とはかなり違う。
なのにまばらではあるけと、行きゆく人は誰も気にならないようだ。
「たぶん、これもイベントエリアみたいなものなのかな。
しかし、この家気に入った」
何故か嬉そうなセレス。
(やっぱ、自然の番人だからか?)
「それじゃ、行くよ」
肩の上で頷くセレスを見て、俺は玄関の呼び鈴を鳴らした。
リーン
高くそして澄んだ音が響いた。
しばらくして、扉がゆっくりと開く。
「あれ?」
中から赤髪の男性が顔を出す。
頭に花飾りを着けている。
「あ、あのう。
グランドジョブの方ですか?」
「え?
あ、はい、そうですが」
俺の問いにその男性は頭の上に?マークが出るような不思議な顔で答えた。
「あなた、何者ですか?」
(えっと…)
「確かに僕はグランドジョブですけど、なぜ僕のところに?」
(えっと言ってる意味がよく分からないんだけど)
「この世界では初めまして」
肩のセレスが男性に声をかける。
「あ、はい。
この世界?」
「今はこんななりだけど、名はセレス・ファウナといいます。
ここは素晴らしい家ですね」
「え?
セレス?
セレス・ファウナ?
あの【議会】の?」
「はい」
セレスは男性に聞かれて頷き答えた。
「な、なんで【ホロライブワールドEN】の大物がここに?
本当にあなた何者ですか?」
「はははは」
俺はその問いに頭をかきながら笑うしかなかった。
ここは男性、グランド・符術士である花咲みやびさんの応接間。
あれから、俺は自分の境遇を話、なんとか理解してもらい部屋にあげてもらえた。
みやびさんが言うには、この家は普段ただの森のように見え、メインストーリーを受けたプレイヤーは、横にあるイベント用のみやびさんのところに行くらしい。
(俺にはとなりは空き地に見えたけど…)
「はぁ、まさかそらさんの虹色ダーツを持っているなんて。
それに元とは言え【世界の答え】とは…」
みやびさんは薄目で俺を見ている。
「そ、それでメインストーリーの前に1つ聞きたい事がありまして」
俺は魔集石の事を聞く。
「え?
魔集石ですか?
それはヤゴー王が持っているのでは?
いつの間にか仕様が変わった?」
ヤゴー王の事は詳しく話してないから、暴走した件は知らないようだった。
「あ、すいません、俺、よく分かってなくて」
俺は誤魔化しながら謝る。
「いえいえ、大丈夫ですよ」
目を細くして笑うみやびさん。
「では、メインストーリーの場所に案内しましょう」
そう言って立ち上がったみやびさんは、部屋にある入ってきた場所とは違うドアを開ける。
「こちらに」
みやびさんはドアに入った。
俺も慌てて机の上で花見団子をパクつくセレスを、肩に乗せて後に続いた。
「すげぇ~」
ドアを通りすぎた先は草原だった。
涼しい風が草原を駆ける。
「ここが、メインストーリーのイベントエリアです」
少し離れた場所に立つみやびさん。
「さて、メインストーリーを初めても?」
頷く俺。
「では、始めますね。
ここに来る前にグランドジョブのところには行きましたか?」
「はい、朱雀さんのところに」
「そうですか。
なら、やり方はほぼ同じです。
僕に一撃を入れるか、あなたが諦めるかです」
(勝つには一撃を入れる。
リスポーンしても何度も立ち向かえ、諦めなければ終わりはないか…)
「分かりました」
「ま、僕は虚弱体質なので、戦うのはこちらですけどね」
みやびさんがいつの間にか札を握っている。
その札を前に投げると札から煙が出て、軽鎧を身につつみ、槍を持ったみやびさんが現れた。
「僕の分身を相手してください。
ただ、弱くはないですよ」
そう言って笑うみやびさん。
「望むところです」
俺は鬼切丸を構える。
「では、勝負!」
みやびさんの声で俺は前に飛び出した。
ガン、ギン、キュイン!
「はぁはぁ」
始まってからかれこれ数十回は斬り合っている。
(くそ、むこうは分身、こちらは生身。
どうしても息が上がる。
本当、ゲームなのになんで、ここは本物を追及したのか)
俺は呼吸を落ち着かせながら愚痴る。
「どうしました?
息が上がってますよ?
止めます?」
分身の奥から本物のみやびさんが叫ぶ。
「大丈夫です。
まだ、行けます!」
俺は呼吸を整え、眼前の相手を見る。
(まだ、いけてる。
【紫電・纒】を使えば一撃は入れられる)
作戦が決まった俺は、槍持ちのみやびさんへと飛び出した。
「隙だらけですね」
「え?
ぐぁぁあ!」
突如アキレス腱に痛みが走り俺はその場で倒れた。
(な、なんだ)
俺は自分の足首を見る。
(な、なんだ?)
俺の両足に、イバラの様な植物が絡んでいる。
そして、背後に立つみやびさん。
「な、いつの間に」
俺は反対側を見るとそこにもみやびさんが2人いた。
「え、どういう…」
「単純ですよ。
はじめから僕本人があなたを、いえ、たかがプレイヤーなんて相手してないんです」
「な!」
薄目でこちらを見下ろすみやびさんの顔は、かなり冷たい印象だった。
(セレス)
俺は一瞬肩に目を向ける。
しかし、そこには誰もいない。
「ああ、あの化け物ですか?
まだ、さっきの部屋で団子でも食べているでしょう」
みやびさんはふんと笑う。
「いや、俺は確かに肩に」
「あなたの肩に乗ってたのはそれですよ」
みやびさん少し離れた場所を指差す。
俺は指差された方を見る。
そこには藁人形が落ちていた。
「な、いつ」
「僕がドアをくぐった後に、認識阻害の札を発動させときましたよ」
「あ、あんた、何者だ」
俺は背後のみやびさんに聞く。
「は、今さら何を?
自己紹介したでしょう。
僕はグランドジョブ。
グランド・符術士 花咲みやびだと」
「さぁ、それじゃ、リスポーンしてください」
ゆっくりと俺に近づいてくる槍持ちみやびさん。
「それじゃ、これでさようならです」
みやびさんは俺に背を向けて部屋の入り口へと向かう。
「ま、待て。
俺はまだ諦めてない」
「ははははははは、まだそんな事を言ってるんですか?
終わりなんですよ。
あなたはそれで」
こちらを一瞥してみやびさんは部屋へのドアへと進む。
そして、無情にも動けない俺に、槍持ちのみやびさんの槍が振り下ろされた。
「な、なんですか?
ここは?」
「え?」
俺は目を開ける。
(やっぱり、リスポーンは怖い。
思わず目を瞑ってしまったけど)
槍を見る。
その槍は空中で回転する何かに止められていた。
そして、俺の足に絡み付いていたイバラはなく。
俺は畳の上で倒れていた。
(畳?)
ギャン!
回転するそれは、槍持ちのみやびさんを押し返す。
下がる槍持ちみやびさん。
そして、回転するそれはある方向へと飛んでいく。
パシッ
それは黒いゴスロリ衣装だった。
掴んだ扇で顔を隠し、その人は立っている。
「だ、だれだ!」
みやびさん(本体)は叫ぶ。
俺は立ち上がりながら槍持ちへと鬼切丸を構えながら、その人物を見る。
(でも、なんで来てくれたんだ?
それに、なんで助けてくれたんだ?)
「名乗るほどではごさいませんが、聞かれたからにはお答えしましょう。
【ホロライブワールド】に突如と現れた怪人、奇人数多にあれど、その中でも飛び抜けて奇抜な超新生。
新世代firstが1人。
儒烏風亭らでんとは、私の事です」
パシンと扇を閉じる。
そして、能面を着けた顔が現れた。
「新世代first?
まだ、実装されてないはずじゃ」
みやびさんが驚き後ずさる。
「それが何の因果か、実装されてしまったんですよ」
トンっと軽く跳ねるらでんちゃん。
そして、いつの間にか俺の横に現れた。
「なんで助けてくれたんですか?」
俺は横のらでんちゃんに聞く。
「本当になんででしょう?
らでんは別に助けたくなかったんですけど、ある人に言われました。
自分の獲物が誰かにとられてもいいの?と」
その言葉でふと頭によぎる人物。
(そっか、だからあの時に…)
「会ったらお礼を言わないとね。
舞姫に」
俺は今はどこに行ったか分からない、金髪ハーフエルフを思い出す。
「共闘してくれるでいいんだよね?」
俺はらでんちゃんを見る。
「今回だけですけど」
らでんちゃんはそう言ってそっぽを向いた。
(ははは、照れてるのかな?
でも、心強い味方には変わりない)
「く、なんでこんな事に」
みやびさんがこちらを睨むように見ている。
ま、糸目だから本当にこちらを睨んでいるかは分からないけど。
「それより、そろそろ正体を現したらどうですか?」
らでんちゃんがみやびさんを見て言った。
「みやび先輩は別に糸目キャラじゃないですよね?」
みやびさんはそれを聞いて突然笑いだす。
「なんだ、君は僕の事知ってるんだ」
「当たり前です。
らでんのオリジナルはホロメンですから」
「な~んだ。
それじゃ、隠す必要ないか」
ゆっくりと開かれるみやびさんの目。
その目は暴走した朱雀さんと同じ血の色のような真っ赤だった。
「なぜ?
暴走状態に」
俺はみやびさんに言った。
「暴走状態?
僕はいたって正常だよ。
このオリジナルから受け継いだ虚弱体質なんて、弱い体を治す為に、僕は利用したんだ。
コレを!」
みやびさんが右手を開いてこちらに向ける。
そこには赤黒く光る魔集石。
「自分で埋め込んだんですか?
体に」
らでんちゃんは軽蔑の目でみやびさんを見る。
「そうさ、この石を見ていると力が沸いてきた、だから、埋め込んだ。
今はすこぶる気分がいいよ」
妙にハイなみやびさん。
「まずはそちらの2人任せますよ。
先輩の相手はらでんがしておきます」
らでんちゃんが俺に背中を預けてくる。
「分かった」
俺もらでんちゃんと背中を合わせる。
「さっさと倒してこちらに来てください。
倒すのはあくまであなたですから」
「了解!」
俺は返事と同時に飛び出した。
らでんちゃんもみやびさんへと向かったようだ。
(今はらでんちゃんの心配より、託された事をなす)
槍持ちのみやびさんに攻撃。
受け止めるみやびさん。
そのみやびさんの背後から、援護の札を放つみやびさん。
みやびさんばかりで分かりにくい。
槍持ちがみやびさん1。
その後ろの符術士がみやびさん2にする。
なんとか札を避ける。
(しかし、味方も構わずか)
札はみやびさん1の腕に傷を与えながら俺を狙ってきている。
(やっぱり、人形みたいなものなんだな)
斬られた傷口からは何も出ていない。
みやびさん1の突き攻撃。
それを俺は掴む。
赤竜帝の小手を装備している今の俺の握力は普段とは違う。
絆の再取得の時に、ココさんから託された小手。
(「もう失くさないでください」と言われたっけ。
ココさん、力を借ります)
俺の想いに答えたように小手全体が赤く光ったような気がした。
「おらぁ!」
俺はそのまま、片手でみやびさん1をみやびさん2に向かって投げた。
そのままぶつかる2人。
俺は鬼切丸を2人に向ける。
「我は願う 絆を紡ぐ親愛なる者達に
我は欲す 神速で敵を貫く葬槍を」
鬼切丸に埋め込まれた宝石が輝き、凄まじい力が刀身に集まっていく。
「喰らえ!
サンダートライデント!」
放つ力ある言葉。
しかし、力ある言葉にノイズが走る。
それは紫雷のようだった。
書き替えられる力ある言葉。
そして、現れる新たな言葉。
(サンダーバニッシュ)
「逝け、サンダーバニッシュ!」
俺の言葉に呼応して、鬼切丸から放たれた紫雷のレーザー
それはみやびさん2人を飲み込み消滅させた。
(すごい。
これが絆の力…)
俺は暴走みやびさんの方を向く。
みやびさんとらでんちゃんの間で札と扇が飛び交っている。
(次は暴走を止める!)
俺はらでんちゃんの方へと向かった。
バシュ!
俺は剣撃を飛ばし、札を斬る。
戦士で覚えた新しい技【飛斬】。
「意外と早かったですね」
「らでんちゃんに呼ばれていたので」
「それは後で誉めてあげないとですね」
らでんちゃんは軽口を言いながら、扇を休みなく投げ続けている。
それは向こうも一緒だが。
しかし、らでんちゃんの手数のせいで、札を投げる事しか出来ていない。
(ここはチャンスだけど、手のひらにある石をどうやって外す)
「深く考える必要はないですよ」
らでんちゃんが俺を見る。
「倒してしまえばいいんです」
「ええ、みやびさんを?」
「もちろん、ただし、止めはあなたがしてくださいね」
「ど、どうして?
俺が?」
飛んでくる札を斬る。
「ここは今、らでんの【特殊領域・寄席】になっているけど、元の設定は変わってない。
ここの設定はプレイヤー以外にやられたら、キャラデータが崩壊するに変えられています」
「な」
(それは暴走した朱雀さんと同じ)
「だから、俺が」
「ご名答」
「分かった」
俺はみやびさんを見る。
「オリジナルAIでもリスポーンはあるよな」
「もちろん」
(今助けます、みやびさん)
「なら、覚悟を決める!」
「その言葉待ってました。
それでは、一席もうけましょう!!」
パシッ
らでんちゃんが扇を閉じる。
「な、なんだ!!」
空間に無数に浮かぶ大小様々な能面。
「まっすぐな道はご用意出来ませんよ」
俺はらでんちゃんの前に立ち頷く。
鬼切丸をアイテムボックスに入れる。
ガンと両手に装備した赤竜帝の小手を鳴らす。
(ココちゃん、行きます!)
「赤竜の力解放!」
赤竜帝の小手が大きく竜の腕の姿に変わる。
(普通ならここまでだけど…)
しかし、赤竜帝の小手の変化は止まらなかった。
竜の鱗が体全体を覆う。
頭に竜の頭のような装飾が現れる。
俺は赤い竜の鱗のライダースーツを着たような姿に変わった。
「すごい、らでん達のような変身」
「いけるよ、らでんちゃん!」
「オッケー
では、いってらっしゃいませ!!」
らでんちゃんが扇を振り下ろす。
俺はそれと同時に走り出す。
俺の変身を見たみやびさんは、狂ったように札をこちらに投げてきている。
空中の能面が口を開いて乱雑にレーザーを撃ち出した。
しかし、乱雑に見えるレーザーは確実に札を潰している。
(確かにまっすぐな道じゃないな)
俺はそのレーザーを避けながら、みやびさんに向かって走る。
体のすぐ横に放たれるレーザー
しかし、恐れない。
俺は今、ココさんと共に走っている。
赤い雷のようにジグザグにみやびさんへと俺は落ちていく。
そして。
「みやびさん、今助けます!」
俺の両手がみやびさんへと届く。
「【赤竜咆哮】!」
両手を竜の口のように合わせたところから、赤いエネルギーが放たれた。
それはみやびさんの体を貫き空へと向かう。
「がはぁ!」
その勢いで後ろに吹き飛ばされるみやびさん。
ドサッと仰向けに倒れたみやびさんに、俺は急いで駆け寄った。
「まさか、たかがプレイヤーに…」
俺が駆け寄った時、そう言葉を言い残してみやびさんは光の粒になって空へと上がっていった。
残ったのはみやびさんが付けていた花飾りと、光を失った魔集石だけだった。
「終わりましたね」
ゆっくりと近づいてくるらでんちゃん。
俺は花飾りと魔集石を持ってらでんちゃんの方を向いた。
「決着をつけますか?」
「よしておきます。
それはあの人が望むところではないので」
らでんちゃんは顔に手をやる。
そして、ゆっくりと能面を外す。
(綺麗だ)
俺はらでんちゃんの素顔を見てそう思った。
綺麗な青い水晶のような瞳に吸い込まれそうになる。
「仕方ないので、これからは私、らでんはあなたの味方になりましょう」
「え、本当に?
じゃ、一緒に…」
ばっと手のひらを俺に向けるらでんちゃん。
「ただし、共には行きません。
らでんもこの世界を楽しみたいので。
もし、ピンチになったその時は、必ず駆けつけます」
そう言って笑う。
「ありがとう、それだけでも助かるよ」
俺はその笑顔に笑顔で返した。
ぶわぁっと風が吹く。
いつの間にか草原に戻っている。
髪を押さえて空を見上げるらでんちゃん。
そして、こちらを見る。
「では、また」
「うん」
「さよならでん」
最後に最高の笑顔を残して、らでんちゃんは現れた時のように消えた。
(頼もしい仲間ができたかな)
俺はらでんちゃんの最後の笑顔を思い出して笑ってしまった。
ふと草原に立つ扉を見つけた。
(確か、入ってきた扉だよな?)
俺はその扉を向かい、開けて中に入った。
くぐり抜けるとそこは、元の場所だった。
机の上にお腹をポコンと膨らして、仰向けに寝ているセレスがいた。
(はぁ~
幸せそうだなぁ)
ピーピーと突然アイテムボックスから音が鳴る。
(なんだ?)
アイテムボックスを見ると花飾りが光っている。
俺はアイテムボックスから花飾りを取り出した。
すると、すごい光を放つ花飾り。
「うわ、なんだ」
俺は思わず花飾りを離した。
ドサッっと大きなものが落ちた音がする。
「いったたた」
「ん?」
目が慣れてよく見ると床に1人の男性が座っていた。
「え?
あれ?
みやびさん?」
「あ、助かったよ。
ありがとう」
そう言ってみやびさんは立ち上がる。
「改めまして、グランド・符術士をさせてもらってる花咲みやびです」
みやびさんは笑顔で手を出してきた。
「それでは、お世話になりました」
「いやいや、こちらこそ本当に助かったよ。
今度、何かあった必ず力になるから」
俺は笑顔でみやびさんと別れて、一度始まりの町へと戻った。
あの後、俺はみやびさんから、符術士のレベル上限突破と絆を受け取り、事の顛末を教えてもらった。
ある日突然、自分のところに魔集石が現れた。
魔集石は禍々しい気を放っており、かなりヤバイと悟ったみやびさんは札で召喚した自分の分身に魔集石を取らして、封印しようとした。
しかし、魔集石を取った分身が石を触った瞬間暴走。
逆に花飾りに姿を変えられて、立場を乗っ取られていたらしい。
なので、俺が最後倒したのもみやびさん本人ではなく、分身だったって事だ。
「はぁ、本当に手を掛けてなくてよかったよ。
いくらリスポーンするって言っても目覚め悪い」
俺はみやびさんから預かった魔集石を見る。
「しかし、本当にヤバイ品物だな」
光を失った魔集石をアイテムボックスに入れる。
「今回はお疲れさまでした」
肩の上で澄ました顔のセレス。
「はい、お疲れさま」
(今回、ぜんぜん活躍してないんだけど…)
「あなたが成長する為です」
「本当かぁ?」
俺はセレスに突っ込みを入れながら、ひとまず一休みをする為に宿屋に向かった。
大変お待たせしました。
第7話になります。
構想はできているのですが、なかなか文章に出来なく遅くなってすいません。
さて、注意事項として前回と同様、らでんちゃんが名乗る口上は私が勝手に作っているものなので、ご本人とはまったく関係ございません。
ですので、その点をご理解の上お楽しみください。
それでは、ここで少し語れなかった裏話を。
途中で別れたアキちゃんですが、実は去っていったと思われた、らでんちゃんが、密かに隠れながらついてきているのを知り、あなたを助けるように説得に行ってくれていました。
アキちゃんも各地で舞を納める事で、各地の歪みの修正をしているので、説得した後はそのまま次の目的地に向かったようです。
2人目のグランドジョブも制覇したあなた。
次なる場所はどこになるのか?
なるべくスムーズに更新できるように頑張りますのでよろしくお願いします