多分(読むの)めんどくさい。
適当書きなので誤字があればご一報お願いします。
「はい、次の方」
一世代か二世代昔の話になる。
その昔、魔法が人を滅ぼした。
何もかもができたがために、何もかもを失った。
「失礼します。」
「やぁユウシさん。久しいね。またイドラ使ったのか。何度も言ったけど、アレの天候の際はバスタード化が───」
「別に構いません。自分、そのために働いてるんで」
「ハァ・・・貴方程の赤頭巾配達員はそう滅多に現れない。局長からもあなただけは長く生かせと言われているんだ、それじゃあ今まで通りに検診していくよ」
「よろしくお願いします。」
かつて言語によって存在を脅かされた神が言葉を分けたとされる神話の如く。世界は人々から「電波」を取り上げる事で一度、人々は分断された。
「,,,うん、心音、心拍数も正常。背中からも・・・イドラを使った上にでかい怪我があったにしては随分穏やかだ。だが、」
言葉を運び、情報を運び、声を運べば物も運ぶ方舟の喪失はあまりにも絶望的な事であった。
いつまでも古くさいアナログな生き方をしていた人間だけがあまり苦のない世界となってしまった。
「内側の最深からダメになってる時の音がある。差し詰め神経系の部分だな。毎回僕のところへチェックしにくる度に君の音はほぼ死人同様なんだよ。」
「死人同様、ですか。」
「とにかく一週間は点滴で過ごしてくれ。後は神経系の薬を今日から定期的に打つことにする」
波を飛ばして迎え入れる。ではなく点と点を線で繋げる。アンテナは意味を成さなくなり、電波という言葉自体が時代のいざこざの中で古びた化石のようになっていく。
「はぁ,,,私はあなたが公務で多忙じゃなければ今すぐにでも大病院へ放り投げたい。実際、最近死亡するにつれ死亡時間が延びてきてるだろう?」
「・・・はい。記録を見たら心停止から回復までのスパンが前回から+43秒の3分43秒です。」
「死んだ時に三途の川は渡りかけるのは?」
「相も変わらずと言ったところです。体感で三十分程、宙を漂った後に光の束にまたしても弾かれて目が覚めました。」
だがしかし、人間というものは手を替え品を替えしぶとく文明を築く物であり、それが一種の本能であるため自身に眠る叡知をフル活動させ始める。
「なるほど、まだ幻覚を見るか。いや、案外幻覚とも言えないのかもしれないが。にしても災難だね、あなたの人生は。死と生を何度も繰り返して得れる物は給料だけ」
「それでもこの仕事は好きです。」
「自分に手紙が届くのが嫌でしょうがないのに?」
「はい。」
時代の時計を大きく戻した生活スタイルへの変換は若者達の不満や怒りを募らせ、奇しくも前世紀の若者たちによる過激派運動と変わらない騒動、社会問題が再発した。
「まだ、あの症状も治る見込みはなさそうか?」
「はい。」
人はまるで成長していない。
何がダメだったかを百年単位くらいでしか学べないとも言おうか、三歩歩けば物を忘れる鳥の如く三年後位には失敗を忘れる。
故に世界はどうなったか?
「1度、精神科の方も受けてみるといい。紹介状も書いといてあげる」
「いえ、結構です。」
「そうかい?三途の川に関しても何か分かるかもしれないだろう。人の脳機能は心理学からある程度読み解くことができる」
「それでも結構です。自分でしか分からない物は人へ共有したくないので。」
瞬く間に荒廃した。人々が放棄した街には緑がコンクリを侵食し始め、広大な大地に無数の穴が空き、放棄された電子機器の数々はひび割れ、黄ばみ、希に爆発を繰り返す。電波がなければここまでも世界は物理的にも政治的にも生活的にも全てがめちゃくちゃになるかと皆絶望していた。
されどそんな枯れた世界でも「生きていたい」という本能。生の渇望が絶望した人々へ鞭を打つ。
「届ける事のみを喜びとした生活、か。命の危機に冒してまで続ける生活なのか?」
「そうです。」
「なるほど。私も、あなたに救われた人の一部。これからも君の異変は全て正常に正させてもらうよ。一週間医局で入院してくれ。局長には私が通しておく。」
「拒否する事は?」
「現医局長である私からの命令だ。逆らわないでくれたまえ」
「,,,,了解です。ありがとうございました。荷造りしてきます。」
「部屋はの空きは・・・あったあった、4階4023室になる」
「わかりました。失礼します。」
「お大事に」
まず電波に溢れた古き時代を求める上澄みの人間は武力を持って襲いかかり捕らえては処刑する。現状を生き抜くためにはいらない思想と渇望だから排除していく。邪魔な物は徹底的に。これは数世紀も前に行われ続けた野蛮行為の焼き増しである。
「よう、サミュエル」
「どうも、シガラさん。」
「具合はどうだったって?」
「一週間の入院を宣告されました。」
「ほぉそいつぁよかったな、ふってわいた休暇じゃないか。」
「はい。しかし在宅の扱いを通す予定ですので依頼に関する書類は全部自分のみで行います。」
だが違う点はある。いくら古くさい生活やテクノロジーへと後退したとはいえ、アナログのためのパーツは現代のまま。いわば最先端のまま。軽量かつ丈夫で高スペックを維持できる優れもの。そのおかげか、上澄みだった人間は情報の伝達が間に合い半分近くが逃げる事に成功した。これから両陣営の情報通信での正確性は互いに進捗は違えどいくらか保たれる。ただ遠距離で隠密に意志疎通するための手段は電波無き今、有線での電信や原始的な紙とペン。電信だって線を傍受されればどこからでも丸聞こえになる上に言葉だけの記録となるため、伝達や秘匿という観点から見れば価値はない。ならば秘匿すべきだが確実である情報は紙による交換が一番となる。
「入院してなお働く、か。お前ほどの労働ゾンビはうちの若いのにも見習わせたい物だ」
「やることがないのが嫌なだけなので。」
「趣味が仕事ってやつか?」
「あまり分からないですが、おそらくそうでしょう。」
故に郵便が再興した。
片やただ激情と本能に身を任せ民衆の戦いのため、もう片やあらゆる荒事から国という形を守る公務のため。黒と白、虎と龍の如く両流が同じようで真反対の志の元に再建された経緯を持つが、郵便という文化が勢力、もしくは勢力にあまり興味の無い民の生活にとって必需になる事はこの時代退行なご時世にとって当たり前な事ではあった。
「そうかそうか、次はそろそろ過労死でもしてまで仕事してくれよ」
「しません。長期作業中において死ぬ前後の時間が非効率です。」
「はは、お前ならそういうと思ったよ。じゃあな、明日くらいに病室寄るから見舞いの品を期待しといてくれ」
「はい、ありがとうございます。」
「あ、忘れてた忘れてた。そういやお前のこと局長が呼んでるんだよ。急いで行ってこいよ」
「わかりました、失礼します。」
郵便の仕事は前時代よりもかなり過酷で血みどろな仕事となった。情報の横取りや諜報を阻止するために互いに防衛・攻撃手段として武装し始め、人々の間では「警察や自警団でさえまともに止めれない野蛮な仕事」と言われていたりする。上流階級も貧民層もいくら自分達のためとは言え荒事の渦中へ巻き込まれるのは心のどこかで迷惑だと感じている。しかし革命の火種は暴力を薪としてくべれば激しく燃え上がり、自陣を巻き込みながら全てを壊す火事とな始め、暴力以外の燃料を受け付けない。だから革命の火事に対して国はもっと強い暴力という消火栓からの放水で鎮火する他あるまい。
「あら、シガラさん。」
「やぁエミー、おっリップ変えた?可愛い唇しちゃって」
「やぁんシガラさん、そんなとこ気づいちゃうなんてセ・ク・ハ・ラですよ」
「笑顔で怖いこと言っちゃうエミーも良い。これだから君に話しかけるの辞めらんないんだよね」
武装する習慣をつけた仕事は双方の価値観において大きく反比例が起きる。貧民にとっては悪と戦える英雄だと称えられ、上流にとっては犯罪者の仕事と詰られる。
「褒め方が下手ですね。折角お茶でも誘おうと思ったのに」
「あらそれは損な事しちゃった。ならさ、代わりにこれから僕とデートでもしない?赤ずきん案件で」
「赤ずきん?あぁ、サミュエルさんの件についてですか?」
「そ、お上さんが久々の国家間一大プロジェクトの親善大使にサミュエルの奴を引っこ抜こうってタチらしいぜ」
「まぁ!じゃあ今日はうちの部署で飲み会ですね」
「残念ながらあいつは一週間の調整が入るそうだ。だから、一週間までにコイツを処理してやろう」
これが白と黒、虎と龍の所以。
人災後、どこまでも続く因縁の鍔迫り合いの理由はただ一つ、すべての拮抗状態を覆せる程の権限を持った過去の遺産を手中に収めるがため。
「その手紙は・・・あぁ!この前の秘匿案件の報告書ですね」
「ご名答。」
「確か届け先は貧民街のパン屋でしたよね?確かバスタードの幹部がお気に入りの」
「そう。だから大分前からスパイ置いてたのだけど、これの件でそいつが間諜なのバレて体をバラされてしまったとの事。」
「かわいそうに・・・でもそのおかげで大規模な武具の密輸は防げたのですよね」
「いや、局長達の話じゃまた何かしらもう一騒ぎあるっぽいよ。」
「だからここにデートしに行こう、公費で。」
「はぁ・・・いっつも私を危険な事に巻き込んで、しょうがないですね。そのデート、喜んで受けましょう。」
「あぁなんて寛大な郵便局代三課の姫様。ならばこちらも張り切ってエスコートしないと」
これから語られるそれは罪人と罵られる仕事を喜んで従事する、
「張り切ってくださいね。一応私、爵位持ちの家ですから」
「それだったら俺も爵位持ちだ。後一、二年お利口にしてたら男爵にもなれてた」
「私たちの仕事にタラレバは禁句ですよ。」
「そりゃそうだな、なんせ俺らは」
哀れなる若者達が憐れなる若者だった者達の思惑に乗せられる物語である。
「郵便配達員だからな」