遠月学園の宿泊研修は富士山と芦ノ湖を望み高級別荘地として名高い地に存在する。
「「………でけええけええええ」」」
ソーマと俺はその圧倒的な大きさに二人して驚愕していた。
いやだってさ、いくらなんでもこれはすごいよ。
山2つぶんくらいの大きさがある。
「この辺りのホテルと旅館全部遠月が母体だぜ」
おおう、解説ありがとう伊武崎。
ソーマと俺は頬をひきつらせながらなんとか返事をする。
「ああ、そうもう何も驚かねえわ」
「金持ちはすごいなぁ」
「……十数件の宿を遠月リゾートってブランドで経営してて学園卒業生もこのリゾートの料理部門とかに就職することも多い。この時期だけ客を入れないで合宿のたむに使うんだ」
引き続き解説は伊武崎くん。お前解説キャラだったんだな。
そういうのは丸井とかのポジだと思ってたわ。
「普通に利用したら一泊八万円くらいらしい」
………デリヘル何回呼べるんだろうな。
遠月リゾートホテル「遠月離宮」大宴会場
………なんかみんな緊張してるみたいで雰囲気がピリピリしてます。
ん?俺? 俺今肉魅ちゃんと喋ってます。
なんでって?それはすぐあとに話そう。
「肉魅ちゃんってすごいスタイルいいよなー」
「いきなり話しかけてきたと思ったらそれかよ。…………まぁありがと」
…結論から言うとどうやら俺は肉魅ちゃんフラグを立てきれなかったようなのだ。
人生万事が万事うまくいくとは限らないと言うがまさにそれだ。
前回の食戟のときにきちんと励ましたのに、原作のソーマのようにはいかなかったのである。
だからこういう暇な時間に会話をすることで少しづつでもポイントを稼いでいるのだ。
それから暫くの間、肉魅ちゃんと喋っているとどこかで聞いたような笑わない料理人の声が聞こえてきた。
「おはよう諸君。ステージに注目だ、これより合宿の概要を説明する」
長ったらしい話を要約するとこうだ。
日程は五泊六日
連日料理の課題
課題の内容はそれぞれ違う
初日は約千名を二十のグループに分ける
説明の終了後にそれぞれ指定された場所に移動
そして講師による評価が一定ラインを下回った時点で退学
………全部しおりに書いてあることですよね。
30分くらいかけて話してたけど……。
「審査に関してだがゲスト講師を招いている。多忙の中今日のために集まってくれた遠月学園の卒業生たちだ」
きたアアアアアアアア。日向子しゃん水原しゃんだお。
できればフラグ、リョーマ狙います!
颯爽と現れる卒業生たちに俺はいつの間にか呑まれていた。
……これが遠月を勝ち抜いた料理人か…。レベルの差を感じさせられるような貫禄だ。
「ん…?前から9列目、眉の上に傷がある少年、いやその隣だ。お前退学」
おおう。いきなり1人目の退学者か。それにしても四宮先輩鼻いいよね。
退学を言い渡された名も知らぬ一年生がくってかかっている時、俺は血の気が引いていくのを感じていた。
四宮先輩は先程の生徒の整髪料に料理の香りを霞ませるものが入っていたため退学にした。
もちろん俺は無臭の整髪料をつけているためそんな愚行は犯さない。しかし、俺にも料理の香りを霞ませるかもしれない匂いがしているのだ。
栗の香りだ。
男ならわかるだろう。五泊六日も同室の奴がいるせいでヌクことが出来ないことは死活問題だ。
要するに俺は昨日、というか今日の朝もやり過ぎていたのだ。
それこそ鼻の良いものなら気づくレベルでだ。
もしかしたらここで落ちるかもしれない。
そんな絶望に支配されそうになる。
「ん? 前から八列目のやたらとイケメンな少年」
はい、俺のことです。絶望的ぃてやつです。
この時の俺はきっと顔面蒼白だっただろう。
俺はただ下される死刑判決を待っていた。
「…………栗の匂い?生臭い匂い…?………あっ!!!!…………まぁお前らくらいの年なら仕方ねえよな。皆そうだったしよ。いや別にいいわ。まぁ、その、ほどほどにしとけよ」
希望が降ってきた。それどころかアドバイスまで貰っちゃったよ。気を使わせちゃったよ。
「」
声も出ないとはこのことか。
もう四宮先輩には足向けて寝れねえっすわ!
その後も先輩たちの挨拶は続いた。
日向子しゃんや水原しゃんも来ていたが、四宮先輩への感謝の気持ちが溢れんばかりだったせいでろくに聞いていなかった。
……ほんと生き残れて良かったわ。
合宿一日目前半 了
またリョーマが四宮先輩からの慈悲を頂いたとき、それぞれ違う種類の気持ちがこもったため息をついたものが二人いた。
1人は褐色の肌をもつスパイスの達人
「…朝からオス臭いとは思ってたよ。あのあほ」
そしてもう1人は薬膳料理のエキスパート
「……ふぅ、よくわからんが助かったようだな。……良かった。…………って違うぞ!違うんだぞ良かったなんて思ってないぞ!」
そして笑みを浮かべる少女が1人
「ふふっ良かったわ♪ ここで消えてもらったら拍子抜けだものね。中條リョーマくん♪…ところでりょう君、生臭いとか栗の匂いとかなんのことかしら?」
「お嬢は知らない方がいい…」