ただ朝彼を見てどうしても書きたくなりました。
あと、全話けっこう変えていってます。
最初の方の主人公のうざさがひどいという意見があったので。
秋の選抜予選 Aブロック
幸平創真と葉山アキラの激突の後、すでに場内は自然ともう予選は終わったかのような雰囲気で満たされていた。
それは幸平創真と葉山アキラもまたそうであった。
「――てことはこのままだと、4位タイの丸井と伊武崎のふたりで決戦投票になるな」
「今度はもめねーといいけどな」
そう返答した幸平創真の後ろからヌッと這い出た影は、ぶつかるようにして光の元へ現れた。
「お、悪いね。見えなかったよ編入生」
大きな体躯。厳つい顔立ち。有り余る個性を持ちながらも、そこにいることを気付かせないほどの存在感の虚無さ。
彼、美作昴の登場とその料理の品は波乱を呼ぶ。
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声も出せない。空気がはりつめたようであった。
やっとの思いで出せた声は絞りかすのごとくか細い、だが場内に響き渡るような悲鳴じみた声だった。
「最後の最後に……伊武崎と丸井を……蹴散らしやがったーー!!?!」
91点
電光掲示板に出されたその点数を見て、丸井善二は動揺をかくすことが出来ずに思わず眼鏡をさわる。伊武崎峻もまた声を失っていた。
だがそれとは対照的に笑みを浮かべるものが二人。美作昴と遠月第9席、叡山枝津也であった。
どよめきが穏やかならざる予感を孕んでいる。
秋の選抜「本選」へと進む。
8人の料理人が出揃った!!
「あのー、すいません。僕まだなんですけど」
緊迫した空気が弛緩していく。
そこにいる全員が目を向けた先には、どう見ても怪しいフードを被った男がいた。
その姿から読み取れる情報はただ物凄く背が高いことだけだった。
そのはずだった。
薙切えりなは目を見開いた。聞いていなかったのだ。彼が秋の選抜に参加することを。
一色慧は微笑んだ。彼らしい、ユーモアに満ちた登場の仕方だと。
叡山枝津也は舌打ちをした。予想外の事態が起きてしまったと。
フードの男が審査員に運んだのはココナッツカレーだった。
今まで見てきた粋を凝らした仰天の発想の品々とはうってかわった何の変哲もないもののはずだった。
だが審査員も、観客たちも選手たちも料理に関わる皆が皆、本能から理解していた。この続きには何かがあると。
「おっと、仕上げを忘れていました」
その言葉と共に懐から瓶を出し、カレーにどぼどぼとかけていく。
スパイスをふんだんに使ったカレーの持つ繊細さを壊しかねない行いに目を見張る創真だったが、スパイスのカリスマこと葉山アキラはそれを見て冷や汗をかいていた。
「あれは……あの香りは………………」
「何なんだよ葉山、俺お前みたいに鼻良くねーからわかんねぇ」
「…………オリーブオイルだ」
その葉山の声と重なるように審査員たちの声が聞こえた。
「うまい! うますぎる! なんだこの味は!?」
「オリーブオイルの旨味が上手くカレーに活きている……。いや違う、このカレーの旨味がオリーブオイルの中で活きているんだ!!」
「ああぁ。凄いわ!」
大絶賛。それに伴いざわめく観客。
そうして男は、被っていたフードを脱ぎ捨てた。
その瞬間、静寂が再び訪れた。
中から現れたのは、背が高く、スリムで、顔が小さく、足が長く、顔がかっこいい男だった。
「な……あの男は、あの男は……!」
誰かがそう言った。
それを聞いて、苦虫を潰すように叡山は呟いた。
「いつ帰ってきやがった。…………Mokomiti」
オリーブオイルの魔術師、ここに見参する。