νシン・アスカは伊達じゃない! 作:DestinyImpulse
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「再度確認しました。半径5000に、敵艦の反応は捉えられません。完全にこちらをロストした模様」
「アルテミスが、上手く敵の目を眩ませてくれたってことかな?だったら、それだけは感謝したいね」
敵が此方を見失った事は嬉しいがマリューの表情は暗い。
「ローラシア級がロストしてくれたのは幸いだけど…こちらの問題は、何一つ解決していないわ」
今のアークエンジェルはギリギリの状態だ。弾薬に食料、何よりも水が足りない。このままじゃ先に音を上げるのはこちらだ。
「はぁー……」
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「おい!そっちの部品、早く持ってこい!」
格納庫では慌ただしい声が響き整備士達がマードックさんの指示の元、汗水流して作業していた。
ストライクとメビウス・ゼロの整備。そしてアストレイの改修作業だ。
アルテミスの時に無傷で持って帰ったブリッツの右腕を移植する俺の案は無事にマリューさんに認めてもらい、すぐに作業を開始。
マードックさんによれば、接続部を切っただけで他は無傷なので問題なく移植できるとの事らしい。
「ふー…これなら無事に終わりそうですね先輩」
「う、うん」
作業服に着替えてマードックさん達を手伝っていた俺とキラ先輩も一息ついていた。汗を拭ってキラ先輩の隣に座ると……距離を置かれた。
「え……?」
「………///」
露骨な行動にショックを受ける。キラ先輩は顔を背けているし……。
「お兄ちゃん!」
何とも言えない空気を感じていると同じく作業服を着たマユが私怒ってますと言わんばかりの雰囲気でいた。しかも露骨に距離を取っている……お兄ちゃん泣いちゃいそう。
「ごめんねキラ先輩。お兄ちゃん女心なんてさっぱりだから…」
「ううん…。……そ、そのねシン…」
「……?」
「き、昨日…シャワー浴びられなかったから……近くに来られると、は、恥ずかしくて…」
頬を赤らめて距離を取るキラ先輩とマユに俺はようやく理解した。現在のアークエンジェルは水制限が掛かっており。飲料水はもちろん、シャワーや手洗いの水も制限されてる有様だ。
機体のパーツ洗浄機もあまり使えなくて手間がかかってイライラしていたのだが、女の子にとっては毎日シャワーが浴びれないのは死活問題なのだろう。
「おいおい坊主。そんなんじゃ嬢ちゃんとお嬢ちゃんに愛想つかされちまうぞー」
そんな俺をニヤニヤ笑いながらマードックさんが背中を叩いてくる。
「艦長には言っとくから嬢ちゃん達はシャワー浴びてこい」
マードックさんの言葉に目を輝かせた二人はすぐさま格納庫を飛び出していった。そんな二人……いや、マユの姿を俺は見ていた。
あのアルテミスの一件の後、マユは俺やキラ先輩が近くに居る場所から離れない様になった。余程、あの時の事が怖かったのだろう。特にフレイ先輩の近くには絶対に行かず、近くに居る時は俺やキラ先輩の側から離れない。
あの後、フレイ先輩が謝りに来たのだが…多分、サイ先輩に言われたからで、言わなきゃ絶対に来なかった。
だから、俺やキラ先輩がよく居る格納庫にいる為にマードックさんにお願いをして見習いとして格納庫に居させてもらってる。
「…ありがとうございますマードックさん。マユの我儘を聞いてくれて」
「しょうがねぇさ…あんな事があったんじゃな。戦闘になったら坊主や嬢ちゃんは勿論。あの子達までブリッジ行っちまう」
戦闘になれば俺やキラ先輩はMSに乗って、ミリアリア先輩達はブリッジに行ってしまう。そうなればマユは一人だ。俺としてもフレイ先輩に任せたくはないし、ブリッジに行くのはマリューさんはともかく、ナタルさんが絶対に許さない。
「坊主達を気遣って何も言わねぇが、心細いに決まってる」
だから見習いとして格納庫でマードックさんが面倒を見てくれる。マユもマードックさんには特に怯えてもいないし、ありがたい。
「大人として、あんな小さい子をほっとく訳にはいかねぇからな」
……本当にありがとうございます。
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「そう言えば彼女が君の婚約者だったな」
「あ、はぁ…」
プラント最高評議会に呼び出されたクルーゼとアスランはプラント最高評議会会議室に向かうエレベーターの中で“ユニウスセブン追悼一年式典”のニュースを見ており、不意にクルーゼから話を振られたアスランはモニターに映る桃色の髪をした可憐な少女に視線を向ける。
彼女の名は【ラクス・クライン】。
プラント最高評議会議長である、シーゲル・クラインの娘であり。プラント国防委員長であるパトリック・ザラの息子である、アスラン・ザラの婚約者だ。
「ラクス嬢は今回の追悼慰霊団の代表を務めるそうじゃないか。素晴らしい事だな」
「はい」
「ザラ委員長とクライン議長の血を継ぐ君らの結びつき、次の世代にはまたとない光になるだろう。期待しているよ」
「………」
そんなクルーゼの言葉にアスランは心に棘が刺さった様な感覚を感じていた。確かにラクスは自分の婚約者だ。付き合いも良く、素晴らしい女性だとアスラン自身思っている。
(……キラ…)
しかし……しかし、どうしてもラクスの事を考える前に幼馴染であるキラの事を考えてしまう。
優秀だけど、ボーっとしてて、ほっとけない、仲の良かった幼馴染。そんな彼女は自分達が追う地球軍の艦に乗っている。
ナチュラルに利用されてMSに乗せられるキラ…
「……ッ!」
それを思うと怒りが込み上げてくる。
「…………ありがとう……ございます」
「……………ほう…」
それを飲み込み、感謝の言葉を口にしたアスランを見てクルーゼは仮面の下で興味深そうに笑みを浮かべていた。
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「補給を?」
「受けられるんですか?どこで!」
「受けられると言うか…まぁ…勝手に補給すると言うか…」
補給を受けられる。その言葉に期待を込めたトールとサイの言葉にムウは何処か後ろめたく答える。
「私達は今、デブリベルトに向かっています」
「デブリベルト?って…」
「ちょっと待って下さいよ!まさか…」
マリューの言葉で行き先が何処か分かってしまったサイの戸惑いの声に、ムウがほうと唸る。
「君は勘がいいねぇ~」
「デブリベルトには、宇宙空間を漂う様々な物が集まっている。そこには無論、戦闘で破壊された戦艦等もある訳で……」
「まさか…そっから補給しようって…」
何をするのかを察したシンの言葉にトールが嫌悪感を示す。気持ちはわからないわけではないが、好き嫌いを言ってる場合でもない。
「仕方ないだろ?そうでもしなきゃ、こっちが保たないんだから…」
「あなた達にはその際、ポッドでの船外活動を手伝ってもらいたいの」
マリューの言葉に、サイ達はさらに嫌そうに顔をしかめる。やろうとしてる事は墓荒らしとそう変わらない。
「あまり嬉しくないのは同じだ。だが他に方法は無いのだ。我々が生き延びる為にはな…」
「シン……」
「お兄ちゃん……」
隣に居るキラとマユがシンに顔を向けるが……シンも悲しそうに目を伏せ首を振る。ナタルの言う通り他に方法がないのだ。
「喪われたもの達を漁り回ろうと言うんじゃないわ。ただ……ほんの少し、今私達に必要な物を分けてもらおうというだけ。生きる為に…」
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「……マユを連れて来なくて良かった」
そう言って俺はアストレイのコクピットで嘆いていた。気は進まないがデブリベルトで撃沈した戦艦などから必要な物を集めようとしていた俺達の目の前には大陸と見間違う程に巨大な建造物の残骸……
ユニウスセブンがあった。
ナチュラルとコーディネーターが本格的戦争を始めたきっかけとも言える悲劇。“血のバレンタイン”。
唯の農業用のプラントだったユニウスセブンに地球軍が放ったと思わしき一発の核ミサイルが全てを滅ぼした。
推定死者数、24万3721名。
これはC.E.の歴史を語る上で決して忘れ去られる事はないだろう。
俺は正直に此処に来た事を後悔している。
ナタルさんの指示の元で、必要な物がないか探して扉を開けたその先には……
「「キャァァァァァァー!!」」
マユよりも幼い子供を抱いて宇宙の冷たさに凍りつき、ミイラなって物言わぬ身体となった女性の死体があったのだから。
ミリアリア先輩とキラ先輩の悲鳴が響く。トール先輩がこれ以上見せない様にミリアリア先輩を抱きしめ。
「うっうっ……シン」
「…ッ…クソ」
キラ先輩も耐えられないのか俺に寄ってくる。震えるキラ先輩を抱きしめた俺の視界には幼い子供の物と思わしき千切れたクマのぬいぐるみが浮かんでいた。
「あそこの水を!?本気なんですか!?」
そうして探索から戻って来た俺達。ブリッジでキラ先輩の批判の声が響く。
「あそこには、一億トン近い水が凍り付いているんだ」
ある意味で当然だ。ユニウスセブンは農業用のプラントで、莫大な水が氷となっていても不思議じゃない。にしたって少しは申し訳なさそうにしてくれよ……人の血が通ってるのか疑いたくなる。
「でも!…ナタルさんだって見たでしょ?あのプラントは何十万人もの人が亡くなった場所で…それを…」
「水は、あれしか見つかっていないの」
キラ先輩の言葉をマリューさんが無慈悲に遮る。そう、他にも探したが……水はユニウスセブンでしか見つかってない。
「誰も、大喜びしてる訳じゃない。水が見つかった!ってよ…」
「…………」
「誰だって、できればあそこに踏み込みたくはないさ。けどしょうがねぇだろ。俺達は生きてるんだ!って事は、生きなきゃなんねぇって事なんだよ!」
ムウのおっさんの言葉が俺達に深く重く、心に響いてくる。
「………先輩」
「……シン」
悲しそうで、今にも泣き出しそうなキラ先輩の肩に手を添える。
…………呪われても文句言えねぇな俺達。
そうしてユニウスセブンの氷塊回収作業が決定した。しかしその前にやるべき事がある。
「お兄ちゃん、キラ先輩。次は私達の番だよ」
ユニウスセブンの大地に降り立った俺達。警戒の為に乗ってきたアストレイとストライクから降りた俺達は宇宙服を着たマユの元へ向かう。
両手に折り紙の花を持って。
大勢の人が亡くなったユニウスセブン。そこから水を取る……自己満足かもしれないけど、無断で行うのではなく、今自分達ができるせめてのもの葬いをしたい。
キラ先輩やミリアリア先輩の言葉で、アークエンジェルクルーや避難民達、総出で折り紙の花を作る事にした。
そうして作った花を数チームに分けて、ユニウスセブンに添える。次は俺とキラ先輩とマユの番だ。
「やろう。お兄ちゃん、キラ先輩…」
「ああ…」
「うん…」
そして両手に持った花をユニウスセブンの大地に添える宇宙空間なので宙を漂う折り紙の花々を見ながらそっと目を閉じ黙祷する。
貴方達が眠るこの地を騒がせてごめんなさい。
貴方達の水をとってごめんなさい。
ただ俺達にはどうしても水が必要なんです。
許してくれなんて言いません。
でも、俺達は決して貴方達を踏み躙る為に此処に居る訳じゃないんです。
「………行こうかマユ、キラ先輩」
そっと目を開けてアストレイの元へ戻ろうとした時に………
『素敵なお花をありがとう!!』
……後ろから声が聞こえてきた。
「……ッ!」
「シン?」
「お兄ちゃん?」
思わず後ろを振り返るが……当然其処には誰も居ない。……まさか、いやガンダムの世界だしありえるのか…?
「………いいや、なんでもない」
とりあえずキラ先輩とマユの所に戻る。次のチームが待ってるしな。
「………ありがとう」
誰にも聞こえない俺の呟きは、そっとユニウスセブンの宙域に溶けていった。
ガンダムの世界ですし、シンはカミーユキャラなので…