νシン・アスカは伊達じゃない!   作:DestinyImpulse

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09. PHASE-09【敵軍の歌姫】

 

 

 どうしてこうなった…!

 

 俺は…いや、この場に居る大多数がそう思っているだろう…。

 

 葬いが終わり、弾薬と氷塊の回収作業をしていたアークエンジェルだったが途中で壊れた民間船を見つけた。それだけならデブリベルトなので珍しくはないが、その船はまだ新しい。

 

 しかもその近くでは強行偵察型複座のジンが居た。こんな所で戦闘なんかしたくない、しかし回収作業をしていたアークエンジェルの作業機であるミストラルがジンに見つかり、攻撃されたのでやむなく撃破した。

 

 キラ先輩にやらせなくてよかった…。そんな事を考えているとキラ先輩が救命ポッドを拾ったのだ。

 

 落とし物を拾うのが好きだな、と皮肉を言うナタルさんをよそにマードックさんがポッドを開ける。

 

「あらあら、まぁ…これはザフトの船ではありませんのね?」

 

 其処には桃色の髪を腰まで伸ばした可愛らしい少女。

 

 ……プラントの歌姫、“ラクス・クライン”が乗っていた。

 

 ナタルさんとマリューさんのため息が聞こえる。これは間違いなく厄介ごとだ…!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

〈ヴェサリウス発進は、定刻通り。搭乗員は12番ゲートより、速やかに乗艦〉

 

 プラントの艦船用ターミナルの放送を聴きながら、アスランは心に焦りを抱いていた。自分の婚約相手であるラクスが行方不明になったのだ当然だ。

 

 キラの事でさえ頭が一杯一杯なのに…ふと、顔を上げると、ターミナルの入り口から隊長であるクルーゼと、父親であるパトリックが見えた。

 

「アスラン。ラクス嬢のことは聞いておろうな」

 

「はい。しかし隊長…まさかヴェサリウスが?まだ何かあったと決まったわけでは……民間船ですし…」

 

「公表はされてないが、既に捜索に向かった、ユン・ロー隊の偵察型ジンも戻らんのだ」

 

 えっ、とアスランは溢れるように声を漏らした。偵察型とは言えMSだ。それが落とされた…?

 

「ユニウス7は地球の引力に引かれ、今はデブリ帯の中にある。嫌な位置なのだよ。ガモフはアルテミスで足つきをロストしたままだ」

 

 まさかキラが?……いや、あのシンとか言う奴かもしれない。その思考でアスランは顔をしかめる。そんなアスランにパトリックは肩へ手を置いた。

 

「ラクス嬢とお前が、定められた者同士ということは、プラント中が知っておる。なのに、お前の居るクルーゼ隊がここで休暇という訳にもいくまい。彼女はアイドルなんだ。頼むぞ、クルーゼ、アスラン」

 

「は!」

 

 クルーゼとアスランの敬礼に満足したのか、パトリックはターミナルを後にしていく。

 

「……彼女を助けてヒーローの様に戻れと言うことですか?」

 

 そんなアスランの苦虫を噛み潰したような表情と言葉に、クルーゼはふむと考えた。

 

「……おいおい、冷たい男だな君は。ラクス嬢は君の婚約者だろ?」

 

 アスランの問いに、クルーゼはいつものように表情が見えないマスクの下で笑みを浮かべた。

 

「それとも……他に心に決めた女性でも居るのか?」

 

「ッ!隊長!?」

 

 そんなクルーゼの言葉にアスランは思わず声を荒げる。そんなアスランを興味深くクルーゼは見ていた。

 

「すまない、笑えんジョークだったな。ラクス嬢という素晴らしい婚約者が居ながら他の女に夢中になるなんて、ある筈がない。そうだろうアスラン?」

 

「……うっ、失礼いたします」

 

 クルーゼの言葉に何故か居心地の悪さを感じたアスランは逃げる様にヴェサリウスの中に入っていく。

 

「……キラ・ヤマト」

 

 そんなアスランの後ろ姿を見ながらクルーゼはヘリオポリスの後の事を思い出す。無断で出撃したアスランの事情聴取をしている時にアスランの口から出たその名にクルーゼは聞き覚えがあった。

 

「……まさか彼女が生きていたとは」

 

 そして彼女は自分達が追うアークエンジェルに忌々しいムウと共に乗っている。

 

「くくく、難儀な物だなアスラン」

 

 アスランの反応からして彼はキラ・ヤマトに好意に近い感情を抱いている。しかしそのキラ・ヤマトは敵。

 

 

 アスランは地球軍に騙されていると言っていたが……

 

 もしもキラ・ヤマトが利用されているのではなく、自らの意思で戦っていたら?

 

 その場合、果たして彼女はアスランの手を取るのだろうか?

 

 

 彼女がアスランではなくストライクのパイロットと聞かされた、シンの手を取ったのなら……彼はその心に宿した醜い感情に支配されるのだろうか、父親と同じ様に…

 

「もしそうなら、親が親なら子も子もだな、と笑いが止まらないのだがね。まったく、その存在故か……罪な女だなキラ・ヤマト君」

 

 まるで新しい玩具を見つけたかの様に笑みを浮かべてクルーゼもヴェサリウスに乗り込んだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「嫌よ!絶対嫌!!」

 

 ユニウスセブンを離れてしばらくして、キラ先輩とマユと一緒に通路を歩いていたら食堂の方から声が聞こえてきた。何事かと思って見てみるとフレイ先輩が何か叫んでいる。

 

「どうしたの?」

 

 キラ先輩がカズイ先輩に尋ねるとカズイ先輩は気まずそうな表情を浮かべた。

 

「ああ、キラが拾ったさっきの女の子の食事をミリィがフレイに持っていくように言ったらフレイが嫌だって……」

 

「食事持っていくだけでですか?」

 

「うん」

 

 ……意味不明だと思った、いくらプラントの人だからってそれくらいであんなに拒絶するなんて……まるで人間と思ってないみたいだった。

 

「私はやーよ!コーディネイターの子の所に行くなんて……怖くって」

 

「フレイ!!」

 

「あ、も、もちろんキラ達は違うわよ、それは分かってる!でもあの子はザフトの子でしょ!コーディネイターって頭いいだけじゃなくて、すごく強いって言うし、何かあったらどうするのよ…ねぇ!」

 

「え…うっ…」

 

 なんでそれをキラ先輩に聞くんだよ…!

 

「まぁ、誰が強いんですの?」

 

 キラ先輩とマユを連れて食堂を出ようと考えていたら、不意に後ろからおっとりとした声が聞こえた。

 

 それは今のアークエンジェルのある意味で悩みの種であるラクス・クラインが居た。

 

 …………え?

 

「っで、ってちょっと待って!?」

 

「鍵とかってしてないわけ…?」

 

「ガバガバセキュリティじゃねぇか…!」

 

「え、やだ!なんでザフトの子が勝手に歩き回ってんの?!」

 

 各人各様の反応を見て、ラクスさんは可愛らしく小首を傾げた。

 

「あら?勝手にではありませんわ。私、ちゃんとお部屋で聞きましたのよ。出かけても良いですかー?って。それも3度も」

 

「何やってんだー!!?」

 

 そう叫んだ俺は決して悪くない。こんなセキュリティだからG兵器が盗まれるんだよ!

 

「それに、私はザフトではありません。ザフトは軍の名称で、正式にはゾディアック アライアンス オブ フリーダム…」

 

「な、なんだって一緒よ!ザフトはザフトで、アンタはコーディネイターなんだから!」

 

 フレイ先輩の狼狽ぶりを見て、ラクスさんの表情は少女らしいものではなく少し真剣みを帯びたものに変わった。

 

「同じではありませんわ。確かに私はコーディネイターですが、軍の人間ではありませんもの」

 

 その言葉に、フレイ先輩が目を見開いて反応する。それをお構いなくと言った風に、ラクスさんは手を差し出した。

 

「貴方も軍の方ではないのでしょう?でしたら、私と貴方は同じですわね」

 

 彼女は敵意剥き出しのフレイ先輩に優しく接するけど、それでもフレイ先輩の表情は嫌悪に歪んでいた。

 

「ちょっとやだ、やめてよ!冗談じゃないわ!なんで私があんたなんかと握手しなきゃなんないのよ!」

 

 ………おい…!

 

「コーディネイターの癖に馴れ馴れしーー「やめろ!!」ーー……ッ!」

 

 気づけば俺は叫んでいた。サイ先輩の彼女だろうが関係ない!アンタには見えないのかよ!化け物みたいに扱われて泣きそうなマユが!学友の彼女から心無い言葉を言われて苦しそうなキラ先輩が!

 

「……行こう、マユ。キラ先輩も…」

 

 マユとキラ先輩にこの場を去る様に告げてラクスさんの食事を持つ。

 

「………すみません。部屋に戻っていただいてもいいですか?」

 

「………分かりました、ご迷惑をおかけしましたね」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「間違いないの!?」

 

 時を同じくして、その吉報はアークエンジェルにも届いていた。

 

「間違いありません!これは地球軍第8艦隊の暗号パルスです!解析します!」

 

〈こちら…第8艦隊先遣…モントゴメリー…アー…エンジェル…応答…〉

 

 その音声を聞いたマリューは立ち上がって笑みを浮かべて叫んだ。

 

「ハルバートン提督の部隊だわ!」

 

 その言葉に、アークエンジェルのブリッジからは惜しみない歓喜の声で湧きあがった。

 

「探してるのか!?俺達を!」

 

「位置は!?」

 

「まだかなりの距離があるものと思われますが…合流できれば…!」

 

「ああ!やっと少しは安心できるぜ!」

 

 そう言って、肩を組んだり、ハイタッチをしたり全員が安堵する。この長い旅路もようやく終わろうとしているような気がした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「先程は本当に申し訳ございません、私がココを出たばかりに……」

 

 俺達が部屋に着いて開口一番にラクスさんは俺達に謝罪してきた。

 

「あ、謝らないでください、私は別に……」

 

 キラ先輩が遠慮がちに答える。さすがにプラントのアイドルの前だけあって緊張しているようだ。

 

「あまり勝手に出歩かないほうがいいですよ。ココは連合の戦艦です。サイ先輩達はともかく、コーディネイターを嫌っている連中も結構いますので」

 

 とりあえずこれ以上変な真似しないように釘は刺しておこう。

 

「……貴方方は優しいですのね」

 

「え?そ、そうですか?」

 

「ええ、とっても」

 

「……俺たちもコーディネイターですから」

 

 こんな状況だ、コーディネイターの俺達が近くに居た方がいいだろう。

 

「でも、貴方方が優しいのは貴方方だからでしょう?」

 

 そう思っていたんだが……予想斜め上の返答が返って来た。この人にとってナチュラルもコーディネイターも変わらないって事か…。……俺も少しアルテミスやフレイ先輩の事を引きずり過ぎたな。

 

「…それにしても私も皆様とお喋りがしたかったですわ…」

 

 残念そうに言うラクスさん……気持ちは分かるが、もうちょっと立場を考えてくれ。

 

「あ、あのだったら歌ってくれませんか?歌姫なんですよね?私、聞いてみたいです!」

 

 ちょっと呆れていたら、マユが意を決してラクスさんに懇願する。そんなマユにラクスさんは笑みを浮かべて…。

 

「えぇ、勿論。……静かな〜♪この夜に〜♪」

 

 歌ってくれた…。とても綺麗で安らかな歌を…。

 

「……素敵だね」

 

「…えぇ」

 

 気づけば俺もキラ先輩もその歌を黙って聴いていた。成程…現実でも人気になる訳だ。

 

 ここのところ嫌な事が多かったし、この安らぎをもっと感じていたい……そんな俺達の思いを現実は許してくれなかった。

 

 

〈総員第一戦闘配備!総員第一戦闘配備!〉

 

 艦内に放送が響き渡る。

  それを聞いた途端、俺もキラ先輩も意識を切り替えて部屋を出ようとする。

 

「戦闘配備って…まぁ、戦いになるんですの?貴方方も戦われるのですか?」

 

「えぇ……大事なモノを守りたいから」

 

 ラクスさんの問いかけに寂しそうにそれでも覚悟を持ってそう答えたキラ先輩。俺はマユとラクスさんを交互に見て。

 

「マユ、ラクスさんとこの部屋で待っててくれ。マードックさんには俺が言っとく」

 

「え、…う、うん」

 

 こんな状況で部屋から出られたら色々と問題だし、マユに見ていてもらおう。

「行こう、シン!」

 

「はい!」

 

 そうして俺達は今度こそ部屋を飛び出した。

 

「キラ!シン!」

 

 そうして格納庫に向かおうとする俺達の後ろからフレイ先輩の声が聞こえてくる。

 

「あっ…」

 

「すみません、時間がないんです!」

 

 止まろうとしたキラ先輩の腕を掴んで格納庫に向かう、タダでさえラクスさんとの会話で遅れたんだ。これ以上遅れる訳にはいかない!

 

 何かを叫ぶフレイ先輩を尻目に俺達は格納庫へと駆け出した。

 

「遅いぞ坊主!嬢ちゃん!」

 

 急いでパイロットスーツに着替えて機体の所に来た俺達をマードックさんが叱咤する。

 

「すみません!」

 

「悪ぃ!マードックさん!後、マユはラクスさんの所に居るから大丈夫です!」

 

「分かった、アストレイの改修も終わってる!これでガツンとやってこい!」

 

 マードックさんの言葉に俺はアストレイを見上げる。そこにはパワーアップしたアストレイの姿があった。

 

 右腕には回収したブリッツの右腕をそのまま取り付け、装甲はブリッツの右腕とミラージュコロイドに合わせて黒に染まり、エネルギーの消費の激しいビームライフルの代わりとして、ヘリオポリスで回収していたデュエルのバズーカ【ゲイボルグ】を左腕に装備している。

 

「はい!」

 

 笑みを浮かべてアストレイに乗り込み発進シークエンスが始まる。

 

〈敵は、ナスカ級に、ジン3機。それとイージスが居るわ。気を付けてね〉

 

〈キラ、シン!先遣隊にはフレイのお父さんが居るんだ。頼む!〉

 

〈え…!〉

 

 キラ先輩の息を呑む声が消える。今俺達はザフトに襲われた先遣隊の援護に向かう。その先遣隊にフレイ先輩のお父さんが居る。

 

(さっき、その事を言いたかったのか…!)

 

〈分かった!〉

 

〈はい!〉

 

 なら必死に戦うしかない!

 ムウのおっさんのメビウス・ゼロは先に出撃し、ストライクとアストレイがカタパルトへと運ばれていく。ストライクの背中には機動戦を重視したエールストライカーパックが装着された。

 

〈進路クリア!ストライク、アストレイ、どうぞ!〉

 

〈キラ・ヤマト、ストライク…行きます!!〉

 

〈シン・アスカ、アストレイ…行きます!!〉

 

 ハッチから見える漆黒の宇宙を睨み、俺達は戦場に飛び出した。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〈本命のご登場だ、雑魚にあまり時間をかけるなよ!〉

 

 アークエンジェルが来た知らせを受けてクルーゼは笑みを浮かべる。

 

〈はっ!しかし隊長自ら出る必要は…〉

 

 通信モニターに映るヴェサリウスの艦長アデスが渋る声でクルーゼに問いかける。クルーゼが今居る場所は自らのMSである白いシグー。

 

〈私も偶には戦闘を行わないと腕が鈍ってしまうからな。それでは部下に示しがつかない〉

 

 そう、クルーゼ自らこの戦闘に参加するつもりなのだ。もっともらしい理由を添えてクルーゼは獲物を見定める。

 

(さて、君の実力…計らせてもらおう。キラ・ヤマト君!)

 

 それは自らが嫌悪をするムウではなく……キラだった。

 





アスラン「キラはあの金ピカに乗っているんです!」

クルーゼ「ほう……」

アストレイ「あれ、おかしいな?次回は自分のパワーアップ回になる筈なのに寒気がするぞ?」



 皆さん待望のブリッツの右腕をつけたアストレイです。色は黒く染まり、実は回収していたバズーカを持って出撃です。

 普通なら、パワーアップ回で楽勝なのですが……誰かの勘違いのせいで…



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