νシン・アスカは伊達じゃない!   作:DestinyImpulse

16 / 41

 前回のクルーゼに対するコメントが多くて嬉しいです。
 やっぱり愉悦はみんな好きですよね!

 評価してくれた人が155人!

 本当にありがとうございます!


13. PHASE-13【目覚める可能性】

 

 あの後、俺達を待っていたのはナタルさんによる裁判だった。クルーゼの冷やかしからの温度差で風邪ひきそうだ。

 

 コルシカ条約4条やら特例項目Cやら訳の分からない事は右から左に流して、時が過ぎるのを待った。

 

 結果として弁護役のムウのおっさんと裁判長役のマリューさんが民間人だから適用されないとして、厳重注意で終わった。

 

「なんとか無事に済んで良かったですね先輩」

 

「……………」

 

 隣に居るキラ先輩に呼びかけるも、キラ先輩は顔を逸らして目を合わせようとしない。

 

「……シンのエッチ、スケベ…」

 

「いや、先輩の妄想を俺に言われても困るんですが……むしろ、エッチなのは先輩なんじゃ…」

 

 小さくそう呟いたのだがどうやらキラ先輩の地獄耳には届いた様で……

 

「っ〜!シン!」

 

「えっ聞こえた!?」

 

 顔を真っ赤に染めて俺を睨むキラ先輩……あ、可愛い……じゃなくて!

 

「えーと……アストレイの整備に行ってきます!」

 

「シーン!待てー!!」

 

 俺は格納庫に逃げだし先輩も追っかけてくる。止まったのは格納庫にやって来た俺達を見たマユとマードックさんに茶化されてからだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 同時刻、アークエンジェルから離れた宙域でザフト艦のガモフがアークエンジェルを追っていた。

 

「確かに合流前に追いつく事はできますが…これでは此方が月艦隊の射程に入る迄に10分程しかありませんよ」

 

「10分あるって事だろ?」

 

「臆病者の弱虫ニコルは黙ってるんだな。敵に右腕を取られた仕返しもできない玉無しめ」

 

 攻撃の危うさを説いたが逆にイザークの言葉に顔を歪める。あのアルテミスでの戦闘でストライクに右腕を奪われたブリッツは、戦闘力が無いに等しくなった。

 

 G兵器のデータは本国に送ったが、トリケロスの再現に手間取ってる様で試作ビームライフルとサーベルを使わなければならない。

 

 しかも報告によれば、奪われた右腕はあの金色のMS、アストレイにパワーアップとして使われている……屈辱だった。

 

「10分しかないのか?10分はあるのか?それは考え方って事さ。俺は10分もあるのにこのまま合流するあいつを見送るなんてごめんだけどね」

 

「同感だな。奇襲の成否はその実働時間で決まるもんじゃない」

 

「それは分かってますけど……」

 

「ヴェサリウスはラコーニ隊長の船にラクス嬢を引き渡したら戻ると言う事だ。それまでに足つきは俺達で沈める……いいな!」

 

「オーケー!」

 

「分かりました」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「何か?アスラン?」

 

 シンとキラによってヴェサリウスに引き渡されさラクスは目の前でボーっとしてるアスランへ問いかけながら微笑んだ。

 

 その微笑みにアスランは息を呑む。

 

「あっ…いえぇ…あ…ご気分はいかがかと思いまして……その…人質にされたりと、いろいろありましたから…」

 

「えぇ、私は元気ですわ。あちらの船でも、貴方のお友達や素敵な兄妹が良くしてくださいましたし」

 

 キラやシンは勿論、マユも自分の話し相手になってくれて楽しかった。

 

「……そうですか」

 

「キラもシンととても優しい方でした。そして、とても強い方」

 

 ラクスの言葉を聞いて、アスランは固く拳を握りしめた。

 

「あいつはバカです!軍人じゃないって言ってたくせに…まだあんなものに…あいつは利用されてるだけなんだ!友達とかなんとか…あいつの両親は、ナチュラルだから…だから…」

 

 悲しそうな顔に手を添えようとしても拒否されてラクスは悲しそうに口を開く。

 

「貴方と戦いたくないと、おっしゃっていましたわ」

 

「僕だってそうです!誰があいつと…」

 

 アスランは堪らずに心の縁から溢れた思いを口にする。戦いたいと思うものかーー。そこで、アスランはキラの言葉を思い返す。

 

 大切な人を守る為に戦う。単純かもしれないがこれ以上ないシンプルな答えだった。

 

 母をナチュラルに殺され、それに確かな憎しみを抱き、コーディネーターを勝者とするべく奮闘する父の力になるべくザフトへ入隊し、いつしかナチュラルを人と見れなくなった自分、しかしキラはナチュラルの友を守る為に、コーディネーターのシンと助け合って戦う、悲しみこそあれ、憎しみは抱いていない

 

 まるで、自分とキラには明確な壁がある様で……

 

「失礼しました。では私はこれで」

 

 そこで意識を切り替えて、アスランはラクスに敬礼を向け部屋を出ようとする。

 

「辛そうなお顔ばかりですのね。この頃の貴方は」

 

「ニコニコ笑って戦争は出来ませんよ」

 

 そう言ってアスランは部屋を後にした。ラクスは悲しげに目を伏せる。

 

「………アスラン、貴方が求めている人は私ではないのですね…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あの時はごめんなさいね」

 

 アークエンジェルの食堂で整備が終わり水を飲もうとやって来たシン達は目の前のフレイに驚く事しかできなかった。

 

「あの時は私…パニックになっちゃって凄い酷い事言っちゃった。本当にごめんなさい」

 

「フレイ…」

 

 それはシン達に憎悪の表情を浮かべていた時とはまるで違う。シン達について来たマユも前から食堂に居たサイも唖然としていた。

 

「貴方達は一生懸命戦って私達を守ってくれたのに…それにマユちゃんにだって暴力を働いて…本当にごめんなさい」

 

「え、……だ、大丈夫ですよ。気にしてません」

 

「…マユが良いなら、俺に特に言う事はありません」

 

 頭を下げるフレイに戸惑いながらもマユは素直に謝罪を受け取る。シンもマユが良いならと、一歩引く事にした。

 

「私にもちゃんと分かってるの、貴方達は頑張ってくれてるって」

 

「でも俺達は…フレイ先輩のお父さんを守れませんでした…」

 

 シンもキラも申し訳なさそうに顔を伏せる。何を言われようとも守れなかったのは事実だ。

 

「戦争ってイヤよね…早く終わればいいのに」

 

「ん?」

 

「…?」

 

 一瞬だけフレイの声が低くなる。その時の違和感を離れて聞いていたサイとマユが感じ取る。

 

「……そうだね」

 

 キラが悲しそうに答えた瞬間だった。

 

〈総員第一戦闘配備!!繰り返す!総員第一戦闘配備!〉

 

 それに反応してシン達は食堂から飛び出そうとするが……

 

「戦争よ!また戦争よー!!」

 

「っ!」

 

 廊下を走る女の子に気づいてシンは足を止める。ギリギリぶつかる事はなかったがバランスを崩してしまった女の子を後ろに居たキラが支える。

 

「大丈夫?」

 

「う、うん」

 

 シンも女の子に謝ろうとした時に横から割り込んでくる影があった。

 

「ごめんね、お兄ちゃん達、急いでたから…」

 

 割り込んできたフレイが笑みを浮かべて女の子の手を掴む。

 

「また戦争だけど大丈夫。このお兄ちゃんとお姉ちゃんが戦って守ってくれるからね」

 

「ホント?」

 

「うん、悪いヤツはみーんな、やっつけてくれるから」

 

 そんなフレイの言葉に何とも言えない感情を抱いたままシンとキラは格納庫へ向かった。

 

「そうよ……みんなやっつけてもらわなくちゃ」

 

 そんな二人の後ろ姿を見つめるフレイ、女の子の手を握っているにも関わらずに、何かを込めるかの様に力を込める。

 

「イッ…ター!?」

 

「あ、フレイさん!」

 

 当然、女の子は痛みを感じ残っていたマユが慌ててフレイと女の子を引き離す。痛む腕を摩る女の子を宥めながらマユがフレイに文句を言おうとした時……恐怖した。

 

 まるで魔女の様に冷たい微笑みでシンとキラを見るフレイの顔は、本当にさっきシンとキラに謝罪した人と同一人物なのか?

 

 そんなフレイにマユは兄とキラのこれからに不安を感じずにはいられなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〈キラ、シン。敵はローラシア級1、デュエル、バスター、ブリッツ!〉

 

「あの三機!」

 

「しつこい連中だ!」

 

 それぞれのコクピットに乗り込んだ二人はミリアリアの通信を聞いてしつこいと吐き捨てる。ストライクにエールが装備され発進準備が整う。

 

「キラ・ヤマト!ストライク、行きます!」

 

「シン・アスカ!アストレイ、行きます!」

 

 戦場へと飛び出した直後に三機のG兵器によって隠されたガモフの主砲がアークエンジェルを掠める。

 

〈機体で射線を隠すとは味な事をやってくれるじゃないか!〉

 

〈おっさんは敵の艦に行って、攻撃がアークエンジェルに向かわない様にヘイト役やってくれ!あの三機は俺と先輩で相手をする!〉

 

〈おっさんじゃない!ったく、艦を任せたぞ坊主、嬢ちゃん!〉

 

 メビウス・ゼロがガモフに向かう。それを見届けたシンは此方に近づくG三機を睨む。

 

〈ディアッカはストライクとかいう奴をやれ!俺とニコルで金ピカをやる!〉

 

 イザークの指示の元、ストライクにバスターが、アストレイにデュエルとブリッツが迫る。

 

 バスターの射撃を避けつつビームで牽制するストライク。一方でアストレイにはビームサーベルを持ったデュエルが迫る。

 

「金ピカァ!今日こそ!!」

 

「っ…!」

 

 振り下ろされるサーベルをシールドで受け流し反撃しようとするが……

 

「お前ぇ!よくも!」

 

 右腕を奪われ怒り心頭のニコルがビームを放つ。それをデュエルを足場にして回避する。

 

「俺を足場にだと……貴様ー!」

 

「ちぃ!」

 

 バズーカを放つがやはりフェイズシフト装甲には大したダメージにはならずにトリケロスからサーベルを展開して振るう。

 

 互いのサーベルがシールドに阻まれ、少しの間、互いに押し合い、やがて弾かれるように二機は同時に後退。

 

「イザーク!」

 

「ッ!」

 

 ブリッツも此方の背後に回り込む立ち回りをしており、中々決定打となる行動ができない。

 

「機体の性能が近ければ、こうなるか…。ったく、四機も奪われ過ぎなんだよ!」

 

 面倒な敵達にシンは吐き捨てデュエルのサーベルを弾き飛ばして、後ろから迫るブリッツの攻撃を躱わす。

 

「…シン!」

 

 その様子をストライクのモニターでキラは確認していた。二機に挟まれて中々、決定打を撃てないシンの援護に行きたいが……。

 

「えぇぃ!さっさと落ちろよ!」

 

 しかしバスターの相手で精一杯だ。肩部の220mm径6連装ミサイルポッドから放たれるミサイルをバルカンとビームライフルで迎撃する。

 

「うぅ…!」

 

 キラの脳裏にクルーゼの言葉が過ぎる。

 

『先の戦闘の君は凄まじかったよキラ・ヤマト君。彼を攻撃した私を絶対許さないと言うプレッシャーを感じた』

 

 

 あの時は色々と頭が回らなかったが、そもそもアストレイに乗ってクルーゼと戦っていたのはシンだ。

 

 自分はいつもシンに助けてもらって、気遣ってもらってばかりだった。

 

 アスランと戦いたくない自分を思って、アスランを引き受けてくれた。

 

 それに先のクルーゼの時だけではない、フェイズシフトダウンした時だって、アルテミスで下衆な笑みを浮かべた司令官に迫られた時だって、シンは自分を守ってくれた。

 

 もし今、自分がピンチになったらあの時の様に自分の損傷など考えずにシンは助けに来るだろう。

 

(………私が弱いから…!)

 

 戦いなんて嫌だ…それは今も変わらない。だけど嫌な事ばかりから逃げ続ける事はできないとキラはヘリオポリスの一件で悟った。

 

(……弱い私を庇って…シンが傷つくのは!)

 

 そして全ての人を守れる訳じゃないと、理解してしまって……。この世に絶対はなく、戦場に居る以上、自分も、アークエンジェルも…そしてシンも死ぬ可能性がある。

 

「へっ!もらった!」

 

 俯くキラ、それに連動してストライクの動きも鈍る。それを好機と見たディアッカが収束火線ライフルを前にガンランチャーを後に連結した高威力・精密狙撃モード“超高インパルス長射程狙撃ライフル”でストライクを狙う。

 

「…絶対に……絶対に嫌だ!絶対にアークエンジェルは……シンはやらせないっ!」

 

 キラは胸中で燻った恐れを振り払い顔を上げる。その時、キラは自分の中の何かが割れる音を聞いた。

 

 いま、この時をもって……遂に最強の遺伝子に眠る(可能性)が解放される。

 

「くらぇぇぇ!!」

 

「………!」

 

 “光の消えた瞳”でキラはストライクを動かす。

 迫り来る超高インパルス砲をシールドを犠牲にして受け流し手に持つサーベルを投擲する。高威力の一撃を射った直後でバスターは身動きできずに、両手に持つライフルとガンランチャーが貫かれ爆散する。

 

「何ぃ!?」

 

 唖然とするディアッカなど目をくれずにキラはシンの元に急行する。

 

「ッ!先輩!?」

 

「アイツ…いいだろう、まずは貴様からだぁぁ!!」

 

 それは見たイザークが笑みを浮かべてデュエルを向かわせサーベルを振り下ろす。

 

「……これで!」

 

 振るわれる光刃を、巧みなスラスター制御により最小限の動きで回避したキラは、ストライクの右手に握らせたもう一本のサーベルを大きく振るう。

 

「何!?…うぅっ!」

 

 その一撃はデュエルの左脇腹を大きく傷つける。

 

「お前ぇぇ!」

 

 それを見て慌ててニコルがブリッツにサーベルを握らせてストライクに仕掛けるが…今のキラにはお粗末なモノだった。

 

 ニコルが操作するよりも速くストライクの拳がブリッツの顔面を叩きつけて、続け様に蹴り飛ばす。

 

「う、うぁぁぁ!!」

 

「もらったぁぁ!!」

 

〈っ!先ぱーー〈大丈夫だよ、シン〉……えっ!〉

 

 ストライクの背後からデュエルが迫る。シンが援護しようとしたがキラからの通信で動きを止める。

 

 そうイザークの奇襲など今のキラには手に取る様に分かる。左手で腰部にマウントされたアーマーシュナイダーを取り出し……

 

「………もう私達をほっといて!」

 

 振り向き様に一突き!

 デュエルの一撃はストライクに掠りもせずに、逆にストライクの一突きが先の一撃で傷ついたデュエルの装甲を的確に貫いていた。

 

「うっ!…うぁぁ!?」

 

 大きな損傷を受けてデュエルのモニターが爆発を起こしイザークに襲いかかる。

 

〈イザーク!イザーク!大丈夫ですか!?…ディアッカ!イザークが!?〉

 

〈ニコル!〉

 

 動かなくなったデュエルを受け止めニコルが呼びかけるが反応がない。

 

「痛い……痛い…痛い!」

 

 デュエルのコクピットではイザークが悶えていた。爆発したモニターの破片がヘルメットを突き破りイザークの顔面に刺さったのだ。

 血を流し顔を押さえ子供の様に叫ぶイザークに先程の面影はなかった。

 

〈ディアッカ、引き上げです!敵艦隊が来る!〉

 

〈くそっ!!〉

 

 デュエルを抱えて撤退するブリッツとバスター。それを追う事なくストライクは動かなかった。

 

〈先輩…!大丈夫ですか…!〉

 

〈はぁ…はぁ…!…シン?〉

 

 モニターに映るシンにキラは“光の戻った瞳”で捉えて……

 

〈……よかった、無事で…!〉

 

〈…先輩のお陰ですよ。戻りましょう〉

 

 笑みを浮かべる。その笑みに釣られてシンも笑みを浮かべて共にアークエンジェルに戻る。

 

 第八艦隊との合流はすぐそこだ。

 

 

 

「……そうよ」

 

 同時刻、割り当てられた部屋でフレイは誰に言うまでもなく口を開く。

 

「みんなやっつけてもらわなくちゃ……でないと…戦争は終わらないもの…」

 

 その笑みは死人の様に冷たく……恐ろしかった。





アストレイ「君の右腕つかいやすいね!」

ブリッツ「ヤロウブッコロシャァァァ!!」

 今回はキラちゃんのSEED覚醒回でした!

 それではまた次回!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。