νシン・アスカは伊達じゃない! 作:DestinyImpulse
活動報告で沢山のご意見ありがとうございます!
これらの意見を参考にカナード参戦を練り上げていきます!!
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ありがとうございます!!
「180度回頭。減速、更に20%。相対速度合わせ!」
アークエンジェルと隣接して宇宙空間を飛ぶのは、アガメムノン級宇宙母艦。地球連合軍の中で最大級のサイズを誇る宇宙母艦である。
「しかし、いいんですかねぇ。メネラオスの横っ面になんか着けて…」
ブリッジでノイマンがそんなことをぼやいた。すると、いつもよりも緊張感の抜けたマリューがその疑問に答えた。
「ハルバートン提督が、艦をよく御覧になりたいんでしょう。後ほど、自らも御出でになるということだし。閣下こそ、この艦とGの開発計画の一番の推進者でしたからね」
一方、アークエンジェルの食堂では交代で休憩に入っていたミリアリアやトール達がテーブルの一角を占領している。
「民間人はこの後、メネラオスに移って、そこでシャトルに乗り換えだってさ。あ!でも俺達どうなるんだろ…?」
「降りられるに決まってるでしょう?こんなの着てたって、私達民間人だもの」
カズイの言葉に、ミリアリアはやれやれといった風に答えた。
アークエンジェルの周りには多くの地球軍の艦が配備され、この前にキラとシンにやられたザフト側も迂闊に手は出してこないだろうと安堵の溜息を吐く。
ここまで来ればもう大丈夫だ。
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「ストライクとアストレイの事、どうされるおつもりですか?」
とある用事でブリッジを出たマリューをナタルが追い、狭いエレベーターで会話が始まる。
「……アストレイについては閣下に報告済みよ。その事で閣下も話があるとおっしゃっていたわ」
忘れがちかもしれないが、アストレイはオーブがストライク達の技術を盗用して製造したMSだ。その詳しい処遇をG開発計画の推進者であるハルバートンと共にこの後行われる。
「そんな事は分かっています。………話を逸らさないでください。あの二機の性能だからこそ、彼等が乗ったからこそ…我々はここまで来れたのだという事は、この艦の誰もが分かっている事です!」
やはり、その話かとマリューは目を細める。
「彼等も降ろすのですか?」
「…………」
エレベーターが目的地に到着し扉が開く。廊下に出たマリューをナタルは追った。
「艦長!」
「………貴方の言いたい事は分かるわナタル。でも、キラさんもシン君も軍の人間ではないわ」
「ですが、彼等の力は貴重です。それをみすみす…!」
何処までも軍人として合理的なナタル。彼女の方が軍人として正しいかもしれないが、シンとキラを戦力としか見ていない言い方にマリューは話を終わらせようとする。
「力があろうと、私達には志願を強制する事はできないでしょ?」
その一言でナタルは何も言えずに、この場を去るマリューの後ろ姿を見つめるしかなかった。
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「艦隊と合流したってのに、なんでこんなに急がなきゃならないんですか!?」
メビウス・ゼロのコクピットから出て来たキラ先輩が近くで寝転ぶムウのおっさんに叫ぶ。慌てて飛び起きたムウのおっさんが口を開く。
「不安なんだよ!壊れたままだと!!」
「第八艦隊っつったって、パイロットはひよっこ揃いさ!なんかあった時には、やっぱ大尉が出れねぇとな!……その機材はあっちに運んでくれお嬢ちゃん!」
「は、はい!」
俺達は現在、先の戦闘で損傷したメビウス・ゼロを整備していた。キラ先輩がシステムを、俺が整備を、マユは機材運搬を、其々がマードックさんの指示の元で動く。
「それより、ストライクとアストレイは?本当にあのままでいいんですか?」
「え?んー分かっちゃいるんだけどねー」
ムウのおっさんは頭を掻きながらストライクとアストレイを見上げる。第八艦隊と合流し俺達の役目は終わった。後はオーブに帰るだけ。アストレイはこのまま地球軍に置かれるだろうし……。
「わざわざ元に戻してスペック下げるっつーのも…なんかこう…」
となれば俺とキラ先輩が設定した二機のOSをどうするか…あのまま他の地球軍の誰かが乗っても動かせる訳ないし…。
そんな事を考えているとある視線を感じた。感覚に従って視線を追うと自分達に向かって手招きをする人影を見つけた。
「ラミアス艦長…!?」
「あらら、こんなところへ」
メビウス・ゼロのセッティングを終えたムウが、キラ先輩に近づいていくマリューを見て呟いた。無重力の中を緩やかに進むマリューをキラ先輩は優しく受け止めた。
「ごめんなさいね。ちょっと、キラさん達と話したくて…」
「「??」」
互いに顔を見合わせてマリューさんの後に続く、場所はストライクとアストレイの目の前だった。
「ごめんなさい、キラさん、シン君。私自身、余裕が無くて…貴方達とゆっくり話す機会を作れなかったから。その…一度、ちゃんとお礼を言いたかったの」
「え?」
戸惑うような声を上げるキラ先輩。内心俺も驚いている。そんな俺達にマリューさんは心からの感謝と謝罪を込めて頭を下げてくれた。
「貴方達には本当に大変な思いをさせて、ほんと、ここまでありがとう」
いろいろ無理言って、頑張ってもらって、感謝してるわ、とマリューさんはいつもの緊迫した表情とは違った穏やかで優しい笑顔を俺達に向けた。
「いや、そんな…艦長…」
突然の感謝にキラは動揺してオロオロしてる……可愛いな…。そんな俺達にマリューさんは顔を上げにっこり笑い掛ける。
「口には出さなくても、皆貴方達には感謝しているのよ。…こんな状況だから、地球に降りても大変だと思うけど…頑張って」
マリューさんは手を差し出す。
少しの間、俺達は差し出された手を見つめてからまずは俺が、そして俺が離れてから続けてキラ先輩が、マリューさんと握手を交わしたのだった。
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アークエンジェルのドックには、メネラオスから発進した移送用のランチが着艦していた。
そこに現れる人物こそ、G開発計画の推進者たるデュエイン・ハルバートン提督。
彼は敬礼して出迎えるマリューに笑みを浮かべて近づく。
「ヘリオポリス崩壊の知らせを受けた時は、もう駄目かと思ったぞ。それがここで、君達と会えるとは…」
「ありがとうございます!お久しぶりです、閣下!」
クルー総出で出迎える中、ハルバートンは険しい航海をしてきたアークエンジェルのクルーを労わるように見渡す。
「先も戦闘中との報告を受けて、気を揉んだ。大丈夫か?」
ハルバートンの言葉に、他の乗組員の中から、何名かが前に出て敬礼を打った。
「ナタル・バジルールであります!」
「第7機動艦隊、ムウ・ラ・フラガ大尉であります」
「おお、君が居てくれて幸いだったな」
「いえ、さして役にも立ちませんで…」
ハルバートンの言葉にムウは心の奥底でキラやシンに頼りぱなしな事を悔いていた。
「そして彼らが…」
「はい、艦を手伝ってくれました、ヘリオポリスの学生達です」
おお、そうかとハルバートンはナタルを押しのけ、シン達に笑みを浮かべて近づく。その笑顔には軍人らしい強張った気配も、裏を抱えた作り物のような雰囲気もなく心から彼らに感謝をしているような、そんな笑顔だった。
「君達の御家族の消息も確認してきたぞ。皆さん、御無事だ!とんでもない状況の中、よく頑張ってくれたなぁ。私からも礼を言う」
家族の無事を聞いてキラ達の笑みが強くなる。シンも隣に居たマユの頭を撫でて無事な両親の姿を頭に浮かべる。
提督の側近であるホフマンが耳打ちするように声をかけた。
「閣下、お時間があまり…」
「うむ。後でまた君達ともゆっくりと話がしたいものだなぁ」
そう言って笑顔で挨拶を交わして、ハルバートンはマリューやナタル、ムウと共にハンガーを後にした。
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「ツィーグラーとガモフ、合流しました」
第八艦隊から遥か後方。先程、アークエンジェルと交戦したローラシア級ガモフに同じくツィーグラー。そして、ラクスを届けたクルーゼが指揮するナスカ級のヴェサリウスが集結していた。
「発見されてはいないな?」
クルーゼの言葉にアデスが頷く。
「敵艦隊は、だいぶ降りていますからねぇ」
二人は軌道計算をした第八艦隊の予想航路図を見ながら思考する。
「月本部へ向かうものと思っていたが…奴等足つきをそのまま地球に降ろすつもりとはな」
「降下目標はアラスカですか」
地球連合の司令部がアラスカ。新型艦のアークエンジェルとG兵器の生き残りであるストライク、そして謎のMSであるアストレイ。これ迄の戦闘データと共に司令部に持ち帰られるのはザフトからすれば、絶対に避けたい事態だ。
「なんとかこっちの庭に居るうちに沈めたいものだが…どうかな?」
不敵な笑みを浮かべるクルーゼに、アデスは現在こちら側が保有する手札を確認するように答える。
「ツィーグラーにジンが6機、こちらにイージスを含めて5機、ガモフもバスターとブリッツは出られますから」
合計13機…己の手札を確認してクルーゼは笑みを浮かべる。
「知将ハルバートン……そろそろ退場してもらおうか」
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アークエンジェルの艦長室に入ったマリュー達は、ハルバートンとホフマンの前に立ち。今後の方針をどうするかを話し合うことになった。
「しかし、まぁ…この艦一つとG一機の為にヘリオポリスを崩壊させ、アルテミスも壊滅させるとはなぁ」
「だが、彼女らがストライクとこの艦だけでも守ったことは、いずれ必ず、我ら地球軍の利となる」
「しかし、アラスカはそうは思ってないようですが」
ホフマンの指摘にハルバートンは悪態をつく。
「奴等に宇宙での戦いの何が分かる!ラミアス大尉は私の意志を理解してくれていたのだ。問題にせねばならぬことは、何もない」
「閣下…」
「このコーディネイターの子供の件は…これも不問ですかな?」
報告書を眺めるホフマンの目には、明らかな疑いと非難の色があった。その言葉に真っ先に反応したのはマリューだった。
「キラ・ヤマトは、友人達を守りたい。ただその一心でストライクに乗ってくれたのです。我々は彼女の力なくば、ここまで来ることは出来なかったでしょう。ですが…成り行きとはいえ、自分の同胞達と戦わねばならなくなったことに、非常に苦しんでいました」
マリューの記憶にあるキラは本当に心優しい、唯の少女だ。彼女は戦場なんかに居る様な子じゃない。だから、マリューは今自分にできることを進言した。
「誠実で優しい子です。彼女には、信頼で応えるべき、と私は考えます」
そう答えはマリューは続け様に口を開く。
「僭越ながら閣下。あのアストレイついては…」
アストレイ。G開発を共同で行っていたモルゲンレーテが地球軍の技術を盗用して製造したMS。とても見逃せる者ではない。
そして何より……
「パイロットのシン・アスカはこれまでアストレイを操縦していましたが、アストレイの製造については深い関わりのないヘリオポリスの民間人です。大切な妹や学友達を守る為に我々に力を貸してくれました。彼にもキラ・ヤマトと同様に信頼で応えてあげるべきです」
シン・アスカはアストレイの製造に何も関わりのない民間人であり、このまま妹と共に故郷であるオーブに帰すべきだと進言する。
「その事なのだかね……アストレイはオーブに送る事になった」
しかしハルバートンの言葉に驚愕する。パイロットであるシンはどうにか民間人としてオーブに送るつもりだったが、アストレイまでとはどういう事なのか?
アストレイは地球軍の技術を違法に盗用した物的証拠。それを押収する事なくオーブに送るなど…
「この前、大西洋連邦上層部とサハク家で話があった。上層部としてもサハク家の様な中立のオーブを此方側に傾かせる事のできる者とのパイプを手放すつもりはないらしい。まぁ、モルゲンレーテの幾つかの技術やアストレイのこれ迄の戦闘データと言った見返りはあるがな。性能も我らのGよりも劣る、差したる問題ではない」
アストレイは言わばストライク達G兵器のデッドコピーの様な物だ。フェイズシフト装甲もなくミラージュコロイドと言った特徴もない。
「パイロットのシン・アスカについてだが……これを後で彼に渡してくれたまえ」
そう言ってハルバートンが差し出したのは…
「おいおい……ジャンク屋のIDカードじゃないか。なんだって坊主の…」
シンの顔と名が描かれたジャンク屋のIDカードだった。
ジャンク屋とは、主に宇宙機器のデブリを扱う廃品回収業者である。回収対象は軍需品、民需品を問わない。扱う廃品には大規模な機動兵器等も多かったが、彼らは長らく独立した個人事業主で在った。
しかし、第1次連合・プラント大戦開戦に伴い、この業者達には自らの安全を守る必要が生じた。また、前線で破壊され帰還不能と為って各国が回収…つまり機器としてのリユース・リサイクルを必要とする兵器の量も激増する。この為、業界全体の統一された仕組み作りが必要に成った。
マルキオ導師と数名の有識者たちは、ジャンク屋達を業界団体「ジャンク屋組合」として纏め上げ、その業務規定、国際ルール作りを全ての国家の政府と話し合って回った。
その結果、ジャンク屋の有する業務上の特権や統一された業務内容が取り決められ、大規模な国内法改正を要するこの案件は、プラントを含む世界の全ての国家に国際条約として批准された。
また、従来バラバラで在ったジャンク屋事業者が組合として統合された事で組織体力が増し、事業規模も格段に拡大した。
国の企業の仕事を受ける事もあり、時にザフトや地球軍とも戦闘になる。そうなった時は自己防衛の為に戦闘も許可されている。
「学生でありモルゲンレーテが契約するジャンク屋だった彼は、ヘリオポリス襲撃に巻き込まれて、偶然見つけたアストレイに搭乗。その後は、自身や妹の身を守る為にザフトに自己防衛をした………と、言うのが向こうの言い分らしい」
実際、シンは向こうが攻撃してきた時に自己防衛として戦った。先遣隊を援護する時もあったが、アークエンジェルが戦闘に飛び込んだので、自己防衛の延長と言い訳はできる。
「つまり地球軍の軍服を着ているが、彼は地球軍ではない。……傭兵に近い物だな」
「でもいつの間に…」
「おそらく、ジャンク屋の知り合いに頼んでいたのだろう。モルゲンレーテは彼ら兄妹を手放したくはないらしい」
確かにシンはMS戦も強く、OS構築もキラと共にピカイチ。電子工学や整備の知識もある。手放すのは惜しい人材だ。
「僭越ながらハルバートン提督。まさか、こんな言い訳を了承するつもりではないですよね」
「だが筋は通る。なんの訓練を受けていない民間人の子供を我々に付き合わせる必要はない」
色々と言い訳になるが筋は通る。シンとマユをオーブに降ろせる事を内心、安堵するマリューとムウだったが、それを黙って聞いていたナタルが厳しい表情で異議を申し立てる。
「しかし、シン・アスカ、並びにキラ・ヤマト。彼等の能力は目を日張るものがあります。Gの機密だって知り尽くしています。このまま降ろしては…」
「ふん!既にザフトに四機渡っているのだ。今更、機密もない」
「しかし彼等の力は貴重です!できれば、このまま我が軍の力とすべきだと私は…」
ナタルの言葉にホフマンは興味深い表情をするがハルバートンは依然厳しい表情だ。
「だがラミアス大尉の話だと本人達にその意思はなさそうだが?」
「キラ・ヤマトの両親はナチュラルでヘリオポリス崩壊後に脱出し今は地球に居ます。それを軍が保護すれば…」
「ふざけた事を言うな!そんな兵がなんの役に立つ!」
保護と言っているが、両親を人質に無理矢理戦わせようとしているだけだ。ハルバートンが机を叩き怒りの声を上げる。
「っ、申し訳ありません!」
そんなナタルを見つめハルバートンは更に口を開く。
「……【煌めく凶星J】、名は君達も聞いた事あるだろう」
「……ええ、地球連合軍に所属しているコーディネイターですね」
パイロットとしてムウもその名を聞いた事はある。
【煌めく凶星「J」】…ジャン・キャリー。
地球軍に与する数少ないコーディネイターの一人であり、独自のMSを持たない地球連合軍は鹵獲したジンを白く塗り替えた機体を彼に与えている。
この白い塗装は、コーディネイターである彼を戦場で監視するために、わざと目立つようにしたものである。この白い機体が戦場で煌めいて見えたこと、コーディネイターでありながら地球連合軍で戦う自身を「ジョーカーのような存在」と評したことから、自身のイニシャルである「J」と重ね合わせて 【煌めく凶星「J」】の二つ名で呼ばれるようになった。
「コーディネイターである彼は所属する司令官に冷遇的扱いをされている……愚かな事だ」
「それがキラ・ヤマトとどの様な関係が……」
コーディネイターである彼女も冷遇されるから?しかしコーディネイターと戦っている地球軍だ、多少の扱いの悪さは致し方ないのでは……。
そんなナタルの考えをハルバートンは見当違いと吐き捨てる。
「分からぬのかね?Jの様な男性コーディネイターは戦闘でこき使えばいい。しかし彼女の様な少女の場合、戦闘以外でも使われるだろう………“遊び相手”としてね」
ハルバートンの言葉に三人は息を呑む。地球軍の多くはコーディネイターを憎んでいる。今はマリューやムウの様な、マトモな大人が居るアークエンジェルだから良いが…。
他の部隊。それこそコーディネイターを忌み嫌うブルーコスモスの思想に染まった所に彼女を放り込んだ場合……有無を言わさず殺されるか、“遊び相手”として純潔も尊厳も何もかも踏み躙られる。
「彼女の様な美しい少女を、若者を己の金と地位に利用するブクブクに肥え太った上層部のゲス共が手を出さん筈がない」
コーディネイターは遺伝子をコーディネートされてる関係上、必然的に整った容姿をしている。
しかし、その中でもキラは群を抜いている。彫刻家にデザインされたかの様な整った美顔に、透き通ったダークブロンドの髪に染みひとつない滑らかな肌。見る物を魅了する完璧な肉体プロポーション。
まるで全てが完璧にコーディネートされたかの様な美しさだ。
マリュー自身、そんな彼女にちょっと嫉妬した時がある程だ。故にそんなキラの肉体を求めて地球軍の上の人間が権力を乱用する可能性を理解した。
だって、地球軍でコーディネイターであるキラを気にかける物好きはそう居ないのだから。
「……閣下のおっしゃる通りですわ」
「艦長!?その様な行為を我が軍がする筈が!」
マリューが顔を俯かせるがナタルはハルバートンの言葉を未だ認めずに叫ぶ。軍に誇りを持ち、軍人として理想的な彼女だ、無理もない。
「……ナタル・バジルール少尉。軍は君が思ってる程綺麗ではないのだよ」
「…………」
しかし、提督にまで上り詰めたハルバートンの表情が全てを物語り、ナタルは黙るしかなかった。
「本人に意思がないなら彼女は軍から遠ざけるべきだ。………話がだいぶ逸れたな、過去ではなく、これからの問題に我々は向き合わねばならない」
「え?」
「この後、アークエンジェルは、現状の人員編成のまま、アラスカ本部に降りてもらわねばならん」
ハルバートンのまさかの言葉にマリュー達は再び、唖然と疑問の言葉を漏らす。
「補充要員を送った先遣隊も沈み。今の我々にはもう、アークエンジェルに割ける人員はないのだ」
「だがヘリオポリスが崩壊してしまった今、アークエンジェルとGは、その全てのデータを持って、なんとしてもアラスカへ降りねばならん」
しかしアークエンジェルは宇宙艦だ。今の人員のままで大気圏内での航海は……
「アレの開発を軌道に乗せねばならん!ザフトは次々と新しい機体を投入してくるのだぞ?なのに、利権絡みで役にも立たんことばかりに予算を注ぎ込むバカな連中は、戦場でどれほどの兵が死んでいるかを数字でしか知らん!」
目先の金や利権と引き換えに、戦場では家族や友人、地球のために戦う若い兵が次々と死んでいることが、ハルバートン提督には我慢ならなかった。
「……分かりました。閣下のお心、しかとアラスカへ届けます!」
ハルバートンの心からの叫びに真っ先に応えて敬礼で返すマリュー。
「アーマー乗りの生き残りとしてはお断りできませんな」
それにMA乗りとして、MSの恐ろしさを知るムウも応える。
「……頼む」
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「……相変わらず準備が良いんだな」
俺達、兄妹はMSを運搬できるシャトルの前に立っていた、どうやら上の連中が色々と話していたらしくアストレイはオーブに届けられる事になった。
「それ作ったのってエリカさんだよね?」
「だろうな……。あの人の事だ、ヘリオポリスが襲撃される事に勘づいていたんだろ」
マユが見るのは先程、マリューさんから渡された俺のジャンク屋IDカードだった。俺のザフトへの攻撃に対する自己防衛を正当化させる為の措置らしく、大方、エリカさんがジャンク屋の知り合いに頼んで用意させたのだろう。
「……キラ先輩達と一緒が良かったな」
マユが寂しそうに言う。このシャトルに乗るのは俺達だけで、ヘリオポリスの避難民やキラ先輩達は別のシャトルで地球に降りるそうだ。
「ははは、済まないねお嬢さん。向こうからの要請なものでな」
その時、突然背後から声が聞こえてくる。
その声は、つい先程聞いた事があり、心臓が飛び跳ねる様な感覚を覚えながら、俺達は振り返った。
「は、ハルバートン提督?」
「シン・アスカ君と妹のマユ・アスカ君だね。報告書を見て君達の事は知っているよ」
そこに佇んでいたのは、俺達の思った通りの人物だった。
デュエイン・ハルバートン提督。
彼は、優しい微笑みを携えながら、俺の隣へと歩み寄って来た。
「しかし…オーブが秘密裏にこんな物を作っていたとはね」
そう言ってハルバートン提督はシャトルに積まれたアストレイを見上げる。
「今や戦場を支配しているのはザフトのMSだ。それに対抗せん為にGを作り上げたが…オーブも必死と言う訳だな」
「あの?ブリッツの右腕を付けたままで大丈夫なんですか?」
アストレイについたブリッツの右腕。アレもオーブに持ち帰っていいのか?
「既にザフトに渡っていたのだ、もはや機密もない。データも君のお陰で手に入った。気にするな」
そんな風に分かるハルバートン提督に一人の士官がやって来て声を掛けた。
「閣下!メネラオスから至急お戻りいただきたいと」
「やれやれ…。君達とゆっくり話す間もないわ。この後、キラ君とも話したかったのだが…。そのシャトルはオーブに降りれる様に既に設定してある。それにMSを動かせる君なら操縦できるだろう」
確かに説明書を読んで動かし方は分かっている。
「ここまでアークエンジェルとストライクを守ってくれて感謝している。よい時代が来るまで死ぬなよ!」
「提督…」
こんな子供に敬意を示してくれるなんて、マリューさんが尊敬する訳だ。
「最後に老いぼれから、若者にアドバイスだ。意思のない者に何もやり抜く事はできん!その力で何を為すのかよく悩み、よく考えて生きたまえ!」
そう笑みを浮かべてハルバートン提督は行ってしまった。
「………良い人だったねお兄ちゃん」
「ああ……立派な人だな」
意思のない者に何もやり抜く事はできん…か…。
「とりあえず、時間はあるしシャトルの確認をするか。マユもちゃんと確認しろよ」
「はーい!」
そして確認してる内に避難民を乗せるランチの準備が始まり避難民達が次々とランチに乗り込もうとしていた。
「シン!マユちゃん!」
無論、そこにはキラ先輩も居る。笑みを浮かべて俺達が乗るシャトルに近づく。
「シン達はそのシャトルに乗って降りるんだよね?」
「ええ、行き先はモルゲンレーテ、このアストレイと共に降ります。多分、知り合いの主任が手を回したと思うんですけど」
「……キラ先輩達も一緒に乗れば良いのに」
シャトルは大きく、MS以外にも5、6人は乗れる。しかし乗るのは俺達兄妹だけなのでマユは不満そうだ。
「ふふ、こっちのシャトルも行き先はオーブなんだから、すぐに会えるよ。それよりシン、サイ達知らない?」
「? 見てませんが……一緒じゃないんですか?」
避難民の中にも居ないし……何処行ったんだ?
「あっ!」
その時、ランチに乗り込む避難民の中から小さな影が、キラ先輩の足元へ歩み寄ってきた。
「あっ…」
「君は?」
「エルちゃん?」
足元にたどり着いた少女は、ヘリオポリスの避難民の一人で、ユニウスセブンではキラ先輩やみんなと共に折り紙を折った女の子で、先の戦闘で出撃前にぶつかりそうになった女の子だ。
名前はマユが聞いてくれて、エルちゃんらしい。
そのエルちゃんがポケットから、あの時に折った折り紙の花を取り出し、キラ先輩と俺に差し出す。
「お姉ちゃん、お兄ちゃん…!今まで、守ってくれてありがと」
「あっ…!」
「っ!」
キラ先輩は、しばらく目を見開いてから、ゆっくりと屈んで笑顔で少女から花を受け取った。当然、俺も笑みを浮かべて受け取る。
「えへへ!」
そうすると少女は花のようにパッと笑顔を浮かべて、ランチの入り口で待つ母の元へと帰っていく。
「……無駄じゃなかったんだね」
「……そうですね」
母親と共に手を振るエルちゃんに俺とキラ先輩は胸に込み上げるモノを感じて手を振った。
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「ナスカ級1、ローラシア級2、グリーン18、距離500。予測、15分後!!」
それから数分後、ハルバートンが戻ったメネラオスがザフトの動きを察知した。
「こちらに向かってきているのか?」
「くそーこんな時に!」
そして、その一報は当然アークエンジェルにも届いていた。
「搬入中止、ベイ閉鎖!メネラオスのランチは?」
マリューの問いかけに、オペレーターは首を横に振って応えた。
「アストレイを乗せたシャトルは完了しましたが、ランチはまだです!」
その答えにマリューは焦りの混じった表情で次の指示を出していく。
「急がせて!総員!第一戦闘配備!」
運命の歯車はシン達を逃さず回り続けようとした。
νシン君に渡されたジャンク屋IDカードはエリカ・シモンズが外伝のプロフェッサーにお願いして作られた物でマユの分も用意してあります。
そして完璧にコーディネートされた美しさと表現されたキラちゃん…イッタイナンデナンデスカネー…
キラちゃんは身長が166㎝。体重は……飛ばして。正確なバストサイズはまだ決めてなくてステラと同じと書いたと思うのですが、神漫画であるワンピースのヒロイン?と言えるのか分かりませんがナミさんを参考にしようと考えまして…(因みに作者はルナミ派)。
B86 W57 H86
自分が調べて見た所、初期のナミさんがこのサイズらしいので…間違ってたらすみません。
キラちゃんのスリーサイズはB86 W57 H86に決めました!……そりゃνシン君も目が行っちまうよ…。
絵心の無い私ではキラちゃんやνシン君を表現できませんが、そこは想像力で補う事にしましょう!
それではまた次回!