νシン・アスカは伊達じゃない! 作:DestinyImpulse
原作開始、シンが乗り込むのはまさかの機体。
どうぞ、お楽しみ!
俺は転生者のシン・アスカ!!
序章や中盤の鬱展開の水星の魔女の結末に不安を感じていた俺は、大団円で終わる水星の魔女の最終回をリアタイで目撃した。前作の鉄血がアレだったから不安だったが無事にハッピーエンドを迎えた事に歓喜していた俺は、映画ガンダムSEED FREEDOMの発表に気づかなかった。
後からその事に気づき、SEEDシリーズを見ようとしたら……主人公の一人のシン・アスカになっていた!
ガンダム界一の不遇主人公と呼ばれるシンの人生を歩んだら、自分の命どころか、周りの人間にも危害が及ぶ。
助言してくれる奴など誰も居ない!とりあえずMSの知識を得る為に両親が勤めているモルゲンレーテに転がり込んだ。
たった一人の主人公を目指す!
見た目は不遇主人公!頭脳は転生者!
その名は、
真実は、いつもひとーー「お兄ちゃん、またくだらない事を考えているでしょ?」
教授の研究室に向かう為に自動自動車に乗りながらこれまでの事を振り返っていた俺に妹の鋭い視線が突き刺さる。
この身が主人公のシン・アスカである以上、間違いなく戦争に巻き込まれる。原作は知らないが、ビルド系を除きガンダムの世界とはそう言うモノだ。命の奪い合いに参加するなど冗談ではないが、何もできずに無様に死ぬのはもっとゴメンだ。
幸いにも両親がオーブの国策軍事企業であるモルゲンレーテの科学者だったので見学する傍でOSの組み立てや電子工学を学んだ。どうやらコーディネーターの俺は物覚えが良くて両親の仕事仲間のエリカさんからも太鼓判を押された。
そんな時に両親がオーブの工業コロニーであるヘリオポリスの支部に一時的に転勤になったので家族全員で宇宙へと飛び、俺とマユはヘリオポリスの工業アカデミーに通う事になった。
そこで知り合った先輩達と共に教授の手伝いをしているのだが……俺と先輩が優秀なのをいい事に次々と課題を押し付けてくる。まぁ、その分だけ単位を貰えるからいいけど…。
今度はどんな無茶振りなのか…。
そんな事を考えて目的の施設に入り教授の研究室へと足を運んだ時に……
「ーーッ!?」
まるで頭に電流が走った様な感覚になる。何かを伝える様な…そんな感覚。生まれて初めての事に思考が止まったのも束の間、突然響き渡る爆音と振動。
「きゃぁぁあ!」
大きな揺れに耐えられず崩れそうな妹を咄嗟に支えて、近くの壁に身体を固定して立て直す。
「な、なに…?」
怯える妹を抱き抱えながら辺りを見回す。周囲の人も何が何やら分からない様子だったが……
「アレは…!?」
窓から見える先程まで平和そのものだった風景を壊す存在……ザフトの代表的な
「ッ!避難するぞマユ!」
唖然とするマユの腕を決して離さない様に握り避難を始める。コロニーには隕石の衝突による崩壊を想定して避難用のシェルターがある。そこに向かえば安心だ。
「お父さんとお母さんは!?」
「父さん達も避難してる筈だ!」
父さん達が勤務している工場区にだって避難用のシェルターはある。それでも不安そうなマユを見て工場区に向かう事にした。幸いにもこの施設と工場区は繋がっているから時間はかからない。
そうして通路を走り抜く、もうすぐでシェルターがある格納庫だ!…無意識に走る速度を上げたその時、再び脳裏を電流の様な感覚が迸る。
「ッ!危ない!?」
何が何だか分からないがこの先は危険だ!そう判断した俺の体は反射的にマユを抱えて来た道に向かって飛ぶ。
次の瞬間、炸裂する爆炎と爆風と共に先程まで俺達が居た場所に人なんて簡単に押し潰せる瓦礫が雪崩れ込み通路の床に巨大な穴が……ん?
「……お兄ちゃん…これって?」
マユも気づいた様だ。通路に大きく開いた穴、そこには下に続く階段の一部が見える。入り口は近くにあるのだろう、降りられない高さじゃない。どの道、行く道は崩れたし後戻りができる時間もない。
「降りるぞマユ」
「う、うん」
先に降りて安全を確かめた後にマユを降ろす。そうして階段を降りて行くと其処には大規模な工場スペースがあった。
「……お兄ちゃん、此処って」
「……ああ、普通じゃないな」
通路の下に隠された階段にこの大規模な工場スペース。何度か先輩と一緒に見学に来ていたから分かる。此処にある機材はどれもモルゲンレーテで見る様な高品質、どう考えても表に晒す様な施設じゃない。
とは言え今はそんな事はどうでもいい。早く逃げなければ…襲撃の影響か光源が点いておらず薄暗いので携帯デバイスのライト機能を使って辺りを照らし…。
「なっ!?」
「え!?」
俺達は思わず息を呑んだ。
視線の先に、眠るように横たわる大きな影。
「
ザフト軍が主力兵器として正式採用している、人型の機動兵器。今の段階ではザフト軍しか保有していない人型兵器が其処にあった。
しかも驚いた事に目の前にあるMS達はザフトの物とは全くの別のフォルムをしているばかりか…頭部にはV字のアンテナにザフトのモノアイとは違うツインアイ。
正に前世で憧れた……“ガンダム ”だった。
「そうか…コレがあるから中立でもザフトが…!」
中立を隠れ蓑にMSの開発をしていた地球軍。それを察知したザフトが破壊もしくは奪取の為に攻撃してきた。
「……間違いなくオーブも関わってる」
「ほう、察しがいいな少年」
不意に後ろから聞き覚えのない声が聞こえた。反射的に振り返れば長い黒髪に如何にも貴族と言いたげな高貴な服装に身を包む人物。声的に男性だろう。
そして奴の右手には、禍々しく黒光りする凶器……拳銃が握られていた。
「ヒッ…!」
顔を真っ青にしたマユが無意識に俺に抱きついてくる。当然だ、簡単に人を殺せる画面の向こう側の世界の物だと思っていた凶器が此方に向けられているのだから……
「…じ、自分達はヘリオポリスの学生です。避難の途中に迷い込んでしまって…」
マユを抱き寄せる片腕とは別の腕を上げて敵対でなく、降伏の意思を示して相手の出方を伺う。下手に喚けば鬱陶しいと感じた相手に殺されるかもしれない…震える妹を強く抱き寄せる。
「ほう、状況を理解している様だな。いい判断だ、下手に喚き私の耳に雑音を入れた場合……その罪はお前達の命で償ってもらっていたぞ」
背中に冷や水を叩きつけられた様な寒さが全身を駆け巡り小さく震えていた。それでも相手から目を離す事なく思考を巡らせる。
「恐怖を持ちつつもヤケにならない。生殺与奪の権は私が握っていると正しく理解しているからか……ふはは、理想だけで刻一刻と変わる世界に目を向けず、のこのことヘリオポリスにやって来た馬鹿な姫にも見習ってほしいものだ」
「………………」
「さて、君はこう考えている。『自分達は見逃してもらえるのか?』……答えはーー」
ッ!?
「ーー……NOだ」
マユを抱き寄せたまま右に飛ぶ!その一秒にも満たない時の後に“パァン”と乾いた炸裂音が響く。
男が放った銃弾は俺の頬を掠め、俺達の後ろにあるフレームが金色のガンダム に当たる。
クソ!あの訳の分からない感覚が無ければあの世行きだったぞ!?こんな如何にもな秘密のMSを見た俺達を見逃さないとは思っていたが、14と9の子供でもお構いなしかよ!?
「避けた?…私が撃つ事を予測していた?」
一方で男は俺達が避けた事を意外そうに見つめていたがすぐに余裕の笑みに戻る。
「面白い少年だ。本来なら勧誘かもう少し遊んでいたが……生憎とザフトのせいで時間がないのでな。悪いがコレを見た君達には早々に消えてもらおう」
今度は外さないだろう……恐怖で震えて涙を流すマユが抱きつく。
(……?)
その時、マユと接触したズボンの左のポケットに違和感を覚えた。何かがポケットの中に入っている。何か打開策になるやつを…幸いにもマユの身体で隠れているのでそっと左手を動かしてポケットの中を探り、それが何なのかを確かめる。
くそ!これじゃ!
しかしポケットにあったのはこの状況をとても打開できる物ではない。当然だ、ただの学生の自分が拳銃を突きつけられた状況を打開できる様な物を普段から持っている筈がない。
どうする?どうするどうするどうするどうする!?このままじゃマユも死ぬ!こんな訳も分からないナルシストに!?ふざけるな……ふざけんな!!
走馬灯と言うべきか死を悟ったからか世界がスローに見える感覚の中で思考する俺。妙案がなく、無意味な思考が次第に怒りに変わった時……
………俺の中の何かが弾ける音が聞こえた気がした。
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「ぐおぉぉあああああ!!!??」
声を出せない程に怯えて、目の前の恐怖から目を逸らす様に兄の身体に顔を埋めていたマユ。
お父さん!お母さん!誰か助けて!
そんな現実逃避の思想をしていた彼女が耳にしたのは先程の銃声より一層大きな破裂音。それに続く様に男の悲鳴が響く。
「……?」
不思議に思ったマユはそっと兄に埋めた顔を向けると…男が右手に握っていた拳銃は銃身が先端から破裂し、もう二度と銃弾なんて撃てない。引き金を引いた右手は火薬が暴発したのだろう火傷に加え、砕けた銃の金属片が腕に突き刺さり満足に動かせない。
激痛に喚き、片膝をつく男。何故自分の右手がこれ程までの大怪我を負ったのか理解できない。
脳裏に過るのは自分が引き金を引く瞬間、此方に何かを投げるシンの姿……奴は何をした?
そんな男の鼻が何かの匂いを捉えた。暴発の熱で分かりづらいが…。
(これは……インクか?)
男は立場上、多くの書類を扱う機会が多い。故にインクの匂いは嗅ぎ慣れていた。それが分かった時男は理解した、目の前のシンが何をしたのかを。
(ま、まさか…奴は私が撃つ瞬間にペンを投げ銃身を詰まらせ暴発させたというのか!?)
信じられない…。しかしこの現象は銃身に何か詰まり銃弾と火薬が連鎖的に暴発した物だ。
小さな銃身に入る物などペンやダーツの矢の様な小さくて細長い物だろう、学生ならペンの一つや二つ持っていても不思議じゃない。
(あ、ありえん!?)
分かってしまえば理屈は簡単だが狙って起こせるものではない。それこそ、ザフトの赤服や最強の傭兵として名高いサーペントテールの叢雲劾ですら不可能だ。
奇跡でも起きたというのか…そう怒鳴りつけたい衝動に駆られた男がシンに視線を向けた時…息を呑んだ。
何かを投げた様な腕の姿勢のまま、“光のない瞳”でじっと此方を見つめておりそれを見た瞬間男は悟った。
(こ、こいつ!奇跡に縋ったのではない!この結末を狙ってやったのだ!?)
シンは恐怖などないかの様に不動であり、寸分の狂いもなく銃口目掛けてペンを投擲したのだ。失敗など考えず、奇跡とも呼べる行為を息をするかの様に行ったのだ。先程まで生殺与奪の権を持った自分に怯えていた者とはとても信じられない。
(お、怯えているというのか?この私が!?世界を統治する優れたこの私が!?)
先程の怯えた目から想像もつかない眼光で此方を睨むシンに男は無意識に後退る。まるで今度は自分が銃口を向けられた様だ。
「お、お兄ちゃん?」
まるで人が変わったかの様な兄の姿に恐怖で震えていたマユも恐る恐る声をかける。その時、上から強烈な衝撃が響いてくる。どうやら上の工場も限界を迎えて崩壊が近い様だ。
「……いくぞマユ!」
「え、キャァ!?」
それを悟ったシンはマユを抱えて後ろで仰向けで倒れているMSに飛び上がる。このままじゃいずれ崩壊する工場に押しつぶされて死ぬ、避難する時間もないなら選択肢は一つしかない。
「き、貴様!P01は私の!?」
シンが何をするつもりか悟った男が阻止しようとするが右腕の激痛で足を止める。右腕を満足に動かせないこの状況では…!己の劣勢を悟った男は屈辱に顔を歪めた後にこの場を後にする。
「……よし見つけた!」
一方でそんな男など気にも留めずにシンはMSの腹部にある端末を見つけ操作するとコクピットハッチが開き、マユを抱えて機体の中へと乗り込み周囲を見回す。
「お兄ちゃん……」
そんな時に抱き抱えていたマユが不安そうに自分を呼んでいるのに気づく。戦争や命の危機なんて遠い世界の話で自分には関係ないと思っていたのに、ある日突然、平和が壊されさっきまで命の危機に直面していたのだ。9歳の幼いマユが怯えるのも当然だ。
「……心配するなマユ、お前は必ず俺が守ってみせる」
そんな妹をシンは優しく撫でながら微笑みつつ何かに導かれる様に一つのボタンを押すとハッチが閉まり、そしてコックピット内で画面が輝きだす。
起動シークエンスが始まり。コックピット内が明るくなる、それを確認したシンは左右にある操縦桿を強く握る。
「いくぞ、お前だってこんな所で瓦礫に埋もれたくないだろ?」
そんなシンの言葉に応えるかの様に機体のツインアイが強く輝き、瓦礫が降り注ぐ工場スペースの中で立ち上がる。
フレームが金色に輝く機体。
それは本来の世界線では【アストレイ・ゴールドフレーム】と呼ばれた機体。
今、運命の少年を主人に王道でないガンダムは舞台へと乗り出そうとしていた。
νシン君達を襲った汚いカミーユは一体誰なんだー!
はい!
νシン君が乗り込んだのは、まさかのアストレイ!しかもゴールドフレーム!
因みにレッド、ブルーは別の所にあって、この後原作通りに持ち主に渡ります。