νシン・アスカは伊達じゃない!   作:DestinyImpulse

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21. PHASE-21【雷光は目覚めを待つ】

 

 街は火の海だった。

 タッシルは広がる砂漠の闇を照らし出す、巨大な松明へと変じていた。

 

「隊長!」

 

 ダコスタが戻り、助手席に乗り込むと、目を閉じて待っていたバルトフェルドが片目を開ける。

 

「……終わったか?」

 

「はい!」

 

「双方の人的被害は?」

 

「はぁ?あるわけないですよ。戦闘したわけじゃないんですから!」

 

「“双方”だぞ?」

 

「……そりゃまあ、街の連中の中には、転んだだの火傷しただのってのはあるでしょうが」

 

「……では引き上げる。ぐずぐずしてるとダンナ方が帰ってくるぞ!」

 

「それを待って討つんじゃないんですか?」

 

「おいおい、それじゃ卑怯だろ!!ダコスタくん、ボクがやつらをおびき出そうと思って街を焼いたとでも思ってるの?」

 

 心外そうに言われ、ダコスタは「はあ…」と力なくつぶやく。卑怯も何も戦争なんだからそういうものだろう……少なくともダコスタはそう思った。

 

「ここでの目的は達した!帰投する!」

 

 バルトフェルドは指示し、ダコスタはそれを各機に伝えた。やっぱりこの上官の行動を読むことは、自分には不可能だ…と思いながら。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 スカイグラスパーが、夜空を切り裂いて飛ぶ。タッシルはレジスタンスの拠点から東に数百キロの蝶動にあるが、行き先に迷う可能性はまったくなかった。

 

 百キロ先からでもこの灯りは見えるだろう。燃えさかる街に近づくと、ムウは気流に巻き込まれないよう注意しつつ、上空を旋回した。

 

「ああ……ひでぇな…」

 

 流石のムウも燃え盛る街を見て口調に苦いモノが滲むのを抑えられなかった。

 

「全滅かな、こりゃ……」

 

 無事に残っている区画は殆どなく残った場所も延焼の炎にのまれて灰と化すだろう。街に動く者の姿はなかった。その時、ムウの目が何かを堪えた。彼はへルメットの奥で視線を転じ、ふと虚を衝かれた表情になった。

 

 町はずれの小高い丘に人影が見えた。生存者が残っていたのだ。一人二人というより、殆どの住民が生き残っているように見える、人々は天を呪い、泣き叫び、あるいは呆然と立ちつくして燃えていく街を見ていた。

 

 ムウは通信回線を開いた。

 

「こちらフラガ……生存者を確認」

 

〈そう………よかったわ〉

 

「……ていうか、殆どの皆さんがご無事のようだぜ」

 

〈え?〉

 

「こりゃ、いったいどういうことかな?」

 

 ムウが困ったように言うと、マリューは身を乗り出す勢いで問いただす。

 

〈敵は!?〉

 

 当然そう考えるだろう。街を焼いたのは、自分達やレジスタンスを誘き寄せる作戦に違いないと。だが、敵の姿は何処にも居ない。砂の下に潜っているというなら別だが。

 

 そうこうするうち、レジスタンス達のバギーが砂煙を上げて近づいてくるのが見えた。彼らは車から飛び降り、家族の姿を見つけて駆け出す。

 

「父さん、母さん、無事か!?」

 

「あんたァ!家が…!」

 

「サーラ、サーラ!」

 

 あちこちで、妻や子供を抱きしめる者、夫にすがって泣き崩れる者、肉親の無事を確認する者の姿が見られた。そこへ、少し遅れてアークエンジェルのバギーも到着した。ナタルが降り立ち、すでにコックピットから出て家族達の再会を眺めていたムウに駆け寄る。

 

「少佐、これは......?」

 

 ナタルも、街の中身をそっくり移したような大量の避難民に、意外さを禁じ得ない。

 

「怪我人はこっちへ運べ!動ける者は手を貸せ!」

 

 サイーブはトラックから飛び降りると、さっそく指示を出しながら、避難民の中を歩き回る。

 

 後に続くカガリが一人の少年と、彼がつきそっている老人に気づき、「ヤルー!長老!」と、喜色を浮かべて声を上げると、サイーブも其方に目をやる。どうやら少年は彼の息子らしい。

 

「無事だったか、ヤルー。母さんとネネは.....?」

 

「シャムセディンのじい様が、逃げる時に転んで怪我したから、そっちについてる」

 

 少年が気丈な様子で答えると、厳格なレジスタンスのリーダーも流石に安堵の息をついた。

 

「そうか……」

 

 大きな手で褒める様に頭を撫でられ、ヤルーは気が抜けたのか涙ぐむ。だが、サイーブはすぐリーダーの顔に戻った。

 

「......どのくらいやられた?」

 

 問われて、長老と呼ばれた老人が、皺の多い顔を上げた。

 

「……死んだ者はおらん」

 

「どういうことだ?」

 

側に居たカガリが驚きの声を上げる頃には、ムウ達も事情を聞く為に彼らに近づいていた。長老は苦々しげにつづける。

 

「最初に警告があったわ。『今から街を焼く、逃げろ』とな……」

 

「なんだと!?」

 

 意外な言葉にサイーブが息を飲み、ムウは納得した。そうでもなければ、寝込みを焼き討ちされて、これほどの人数が助かるとは思えない。

 

「………警告のあと、バクゥが来た。そして焼かれた…家も、それに食糧、燃料、弾薬、全てな……」

 

 静かな憤りをこめて、長老は燃える街を睨み皺をさらに深めた。

 

「たしかに、死んだ者はおらん。今はな…。じゃが、すべて焼き払って、奴らは明日からワシらにどうやって生きろと言うんじゃ……!」

 

「ふざけた真似を……!どういうつもりだ、虎め……!」

 

 サイーブが拳を握りしめる。その時、怒りに沈んだ空気に横から淡々とした声が割り込んだ。

 

「だが、手だてはあるだろ?生きてさえいりゃさ…」

 

「なに!?」

 

 サイーブ達が険悪な表情で、言葉を発したムウを見やる。ムウはいまだ火勢の衰えないタッシルを眺めていた。

 

「どうやら虎は、あんたらと本気で戦おうって気はないらしいな」

 

「どういう事だ!」

 

「こいつはこの前の一件に対するお仕置き程度だろ。こんなことですませてくれて、随分と優しいじゃないの、虎は?」

 

「なんだとお!?」

 

 ムウの軽い言葉にカガリが飛び出し、胸ぐらを掴まんばかりの勢いで詰め寄る。

 

「『こんなこと』?街を焼かれたのが『こんなこと』か!?これのどこが優しい!?」

 

 ムウは彼女の勢いにたじたじとなる。身長差がなければ、キラやシンの様に出会い頭に拳が飛んできただろう。

 

「失礼、気に障ったんなら謝るけどね。けどあっちは正規軍だぜ?本気だったらこんなもんじゃすまないって事くらい、分かるだろ?」

 

 彼としては現実を知らせてやるつもりで言った言葉だ。バクゥの数機をもってすれば、この街の住民くらい、わずか二、三時間で虐殺することも可能だ。そうなればこうして家族と再び会うことも、『これから』のことを思って嘆く事もできなかった。

 

 だが彼の言葉は、逆にカガリの怒りに火をつけてしまったらしい。

 

「あいつは卑怯な臆病者だ!我々が留守の街を焼いて、それで勝ったつもり!?我々はいつだって勇敢に戦ってきた!」

 

 彼女は激昂し叫んだ。周囲のレジスタンス達も、それに賛同するようにムウを軽蔑の目で見る。

 

「だから臆病で卑怯なあいつは、こんなやり方で仕返しするしかないんだ!なにが『砂漠の虎』だ!」

 

 この前の奇襲が上手くいったのは連中がストライクとアストレイに気を取られていたからだ。ザフトにとってクルーゼが宇宙戦の英雄ならばバルトフェルドは地上戦の英雄、二度と同じ手には引っかかる馬鹿ではない。

 

 しかし、レジスタンス達の中ではすでに『虎は臆病者』、『自分達は勇敢に戦ってきた』というカガリの言葉が一人歩きをはじめていた。

 

「お前ら、どこへ行く!」

 

 サイーブの鋭い声に、一同はそちらに目をやった。レジスタンスのメンバー達が、手に手に武器を持ち、バギーに乗り込もうとしていた。

 

「やつらが街を出て、まだそう経ってない!今なら追いつける!」

 

「なにを……!」

 

 男たちの口論を聞き、ムウは思わず呟く。

 

「ちょっとちょっと、マジ?」

 

 そちらに気を取られていた彼は、ふとカガリや周りに居る女性陣が今にも灼き殺しそうな目で自分を睨みつけているのに気づく、心なしかナタルの目まで冷たい。ムウは冷や汗を流し大急ぎでごまかし笑いを浮かべた。

 

「あ……えー.....ヤなヤツだな、虎って」

 

「あんたもな!」

 

少女は彼の鼓膜を破る勢いで怒鳴ると、ぷいと仲間たちの方へ向かう。バギーの所では、サイーブと男達が揉めていた。

 

「街を襲った直後の今なら、連中の弾薬も底をついてるはずだ!」

 

「俺たちは奴等を追うぞ!こんな目に遭わされて黙っていられるか!」

 

 男達は口々に叫んで乗り込み、興奮した顔でエンジンをかけた。サイーブが慌て止めようとする。

 

「馬鹿な事を言うな!そんな暇があったら怪我人の手当てをしろ!女房や子供についててやれ!そっちの方が先だろう!」

 

 しかし、男達は倍の勢いで怒鳴り返す。

 

「それでなんになる!?見ろ!タッシルはもう終わりさ!家も食糧も全て焼かれて!なのに、女房や子供と一緒に泣いてろとでも言うのかよ!?」

 

「まさか俺たちに“虎の飼い犬”になれって言うんじゃないだろうな、サイーブ!」

 

 サイーブがぐっと詰まった隙を縫うように、バギーは走り出した。取り残されたサイーブは、どうしようもない苛立ちをぶつける様に砂を踏みつけたあと、一人の男に叫ぶ。

 

「……エドル!」

 

「おう!」

 

 その意味を心得た男はバギーに飛び乗りエンジンをかけ、それを見てカガリが駆け寄る。

 

「行くのか、サイーブ!」

 

 サイーブはエドルのバギーの助手席に、武器を構えて乗り込む。

 

「……放ってはおけん」

 

「私も行く!」

 

 続けて飛び乗ろうとしたカガリは、サイーブに払い落とされる。

 

「おまえは残れ」

 

 その言葉だけ残して、バギーが走り去る。カガリは彼の言葉の意味を考えもせず、砂煙にむせながら「サイーブ!」と恨めしげな視線を送った。その彼女の前にアフメドの車が停まる。

 

「乗れ!」

 

 すでに後部座席には、いつも影のようにつき従う大男の姿もある。カガリの顔が、ぱっと明るくなり、彼女はバギーに飛び乗ると、仲間達の後を追った。

 

「なんとまあ…風も人も熱いお土地柄なのねー…」

 

 ムウは彼らを見送り、深くため息をついた。ナタルは彼の詩的な感想など聞かず、レジスタンス達の暴挙とも言える行動に呆れる。

 

「全滅しますよ?あんな装備でバクゥに立ち向かったら!」

 

「だよねぇ……どうする?」

 

「わ、私に言われても!」

 

 ムウの問いかけに、そう返すナタル。変わらずイレギュラーには弱いな〜と思いながらムウはアークエンジェルと通信を行う。

 

〈なんですって!? 追っていった?なんて馬鹿なことを!なぜ止めなかったんです、少佐!>

 

「止めたらこっちと戦争になりそうだったの。それより、街の方もどうする? 食糧や何より水の問題もある。これだけの人数だからな。怪我人も多い」

 

 アークエンジェルと通信をしているムウの後ろでは、ナタルが怪我をして泣く子供に手を焼いているようだ。

 

「い、痛いのか?ほら、もう泣くな」

 

 明らかに子供をあやすのに慣れていない彼女は、泣きわめく五歳ばかりの男の子に向かって、ポケットからスナックを取り出して与えている。子供はぴたっと泣くのをやめ、夢中で菓子を頬張る。ナタルはほっとして笑ったが、それを見て集まってきた子供たちに気づいて顔を硬直させる。

 

「あ…そ、そんなにはないんだ。こ、困ったな…」

 

 ムウは横目でそれを見ながら、気づかれないようにニヤニヤする。汗をかいて子供の相手をしているナタルの姿など、そう見られるものではない。あとでマリューに話してやろう。

 

 そのマリューは通信機の向こうでため息をついた。

 

〈キラさんを行かせます。見殺しにはできません。そちらには、残った車両で水や物資を送ります>

 

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「隊長……もう少し急ぎませんか?」

 

ダコスタはノロノロと歩くバクゥを見てやれやれと言う。するとシートにふんぞり返ったバルトフェルドが片目を開けた。

 

「そんなに早く帰りたいのかね?」

 

「じゃなくて……追撃されますよ、これじゃ」

 

ダコスタの懸念をよそに、バルトフェルドは目を閉じた。暫くして、ぼそっと呟く。

 

「……運命の分かれ道だな」

 

「は?」

 

「自走砲とバクゥじゃ、ケンカにもならん……」

 

 バルトフェルドはふと目を開けて、そのまま空を見上げた。明るくなっていく空は微かに夜の名残をとどめ、涼しげな青に染まっている。

 

「……死んだ方がマシ…という台詞はけっこうよく聞くが、本当にそうなのかね?」

 

 そんなバルトフェルドに困惑しながらダコスタが答えようとした時、通信が入った。バクゥのパイロットからだ。

 

<隊長、後方から接近する車両があります。六……八、レジスタンスの戦闘車両のようです>

 

 ダコスタは思わず己の上官を見た。さっきから彼が独り言のように言っていたのは、この事だったのだ。彼はレジスタンスの反応を全て読んでいた。初めからバルトフェルドは、ここまで見越して街を焼いたのだろうか…?

 

 非戦闘員は殺さず、レジスタンスを待ち受けて討つような卑怯な真似もせず、しかも最終的には彼らを叩く。それは相手の選択によるものだ。挑発に負け、この前の奇襲に増長し明らかに戦力の違うザフト軍に追撃をかけるという、愚かな選択をしたのはレジスタンスの方だ。

 

 バルトフェルドは深く青い砂漠の空を見上げたまま、呟いた。

 

「………やはり、死んだ方がマシなのかねぇ?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「カガリ、アフメド!だめだ、戻れ!」

 

 バギーの上からサイーブが叫んだが、アフメドはそれを笑い飛ばした。

 

「はっ!あんな臆病者に背中を見せてたまるかよ!」

 

「ストライクもアストレイも居ないんだぞ!戻るんだ、アフメド!」

 

 流石にサイーブは、自分たちの力の程というものを弁えていた。正面からぶつかれば敵う筈がない。だが若いアフメドは、敵に煮え湯を飲ませたということで、有頂天になっていた。

 

「サイーブ!いつからあんたはそんな臆病者になったんだ!?」

 

「戦い方は幾らでもある!」

 

 アフメドは揶揄するように叫び返し、助手席のカガリも不敵な笑みを浮かべて手にしたランチャーを持ち上げて見せる。

 

 そのままアフメドはアクセルを踏み込み、サイーブの車を追い越した。サイーブはバギーが横を通過する瞬間、その後部座席にいる大男に向かって呼びかける。

 

「キサカ!!」

 

 キサカと呼ばれた男は彼を横目で見て、黙ったまま頷いた。

 

 砂丘を越えたところで、バクゥの機影とバギーをとらえた。先行していたレジスタンスはランチャーを肩に担ぎ上げて、のそのそと四本の足で歩くバクゥに向けて発射した。

 

「くらえー!」

 

 軽い音と同時にミサイルが放たれ、巨大な鋼鉄の獣に命中した。だがバクゥはそれをものともせず、ギラリと彼らに単眼を向ける。

 

「ジープを追え!砂漠の虎を倒すんだ!」

 

 ランチャーが今度は、無防備なジープに向けられた。射線を読み取ってジープはハンドルを切り、すぐ脇の地面が砂柱を上げる。

 

「いいぞー!もう一丁!」

 

 だが、次のミサイルは割って入ったバクゥの機体に当たり、目標を捉える事はできなかった。バクゥが迫り、巨大な前肢で前列のバギーを踏み潰そうとするところへ、カガリがランチャーを発射した。その砲撃はバクゥの顔面に命中し、カメラをやられたのか、動きが一瞬止まる。すかさず後部座席のキサカがバズーカを撃ち込み、他の車両も一斉に砲撃する。その何発かがバクゥの足に炸裂し、堪らずバクゥは膝を折った。

 

「やった!」

 

 アフメドが快哉の声を上げる。だが、彼らの善戦もここまでだった。爆発のせいでジョイント部が不調を起こした一機を除き、他の二機はどれだけ砲撃を受けてようが逆にレジスタンス達を追いつめる。

 

 一台、また一台と猫に潰される虫の様にレジスタンス達はその命を散らしていく。

 

「くそぉぉ!」

 

 それを見て激怒したアフメドがハンドルを切り、別のバギーを追う三機目に迫った。その巨大な肢をかいくぐって、腹の下に入る。カガリとキサカが武器を構え、真下からバクゥの腹部を狙った。

 

 ミサイルが炸裂したときには、また肢の間を抜けて走り去ろうとする。爆発でバクゥは一瞬動きを止めたが、その後、すぐさま反応する。

 

 それを見てこれまで黙りこくっていたキサカが、唐突に叫んだ。

 

「飛び降りろ!」

 

 助手席のカガリを片手で抱えて高速で走るバギーからキサカは勢いよく身を躍らせる。

 

「え……?」

 

 アフメドはその理由がわからず、唖然とする。その僅かな時間が、命運を分けた。

 

 バクゥの巨大な前足がアフメドがまだ乗っているバギーに叩きつけられる。鈍い音と同時に、バギーが大きく跳ね飛ばされた。キサカに抱かれて砂地に転がり落ちたカガリが、目を見張った。

 

「あ、アフメド……!」

 

 原型を留めない程に潰されたバギーと共に、高く宙を舞う少年の体がその目に映る。

 

「アフメドーーッ!」

 

 バクゥの単眼がギラリと此方に向く。だがその気を逸らす様にサイーブの放った弾丸が肩口に当たった。キサカはその隙に、呆然として動かないカガリを引きずって走る。

 

 バクゥは新たな標的に向きなおり、キャタピラに切り替えて突進をはじめた。サイーブのバギーがそれを避けて逃げようとするが、素早くターンして追いすがる。その速度は凄まじくバギーで逃げきる事など不可能だ。

 

「ちっくしょう!」

 

 サイーブが歯ぎしりしながらバズーカを構える。その時……一条のビームがバクゥの脇の砂を吹き飛ばした。

 

 カガリが、ハッと我に返り、空を見上げる。砂丘から顔を出した太陽に照らされ、此方に迫る赤、青、白の機体が鮮やかに目に焼きついた。

 

「ストライク!!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 明けの砂漠が独断で砂漠の虎を追ったという知らせは、アークエンジェル中に広がる。

 

 それを聞いて素直に明けの砂漠の連中を馬鹿と思った俺は果たして“人でなし”なのだろうか?

 

 街を焼かれた……その怒りは分かる。

 しかしレジスタンスの武器じゃ戦いの土俵にも立てない……蹂躙が始まる。

 

 連中の中にはカガリさんも居る。もしも、カガリさんが俺の想像通りの人だったらヤバいなんてもんじゃない。

 

 故にキラ先輩と共に救援に向かう!……事はできなかった。

 

 万全なストライクと違いアストレイはフレームの補強作業が終わったばかりで動かせない。

 

 ならばと俺が視線を移したのはムウのおっさんが乗ったのとは別のスカイグラスパー。

 

 前世でシン・アスカが小型の戦闘機に乗っている動画を見た事あるのでソードパックでも装備して救援に行こうとしたら……

 

 

キラ先輩とマユにブチギレられた。

 

 

 その剣幕にマードックさんが思わず震える程に……シャトルの操縦テストもしたし、MSの操縦技術も有れば問題ないと言おうとしたが……

 

 

『お願いだから無茶しないで…!』

 

 

涙目でそう言う先輩に何も言えず、“まさかキラ先輩を泣かせる訳ないよね?”と言いたげなマユの冷たい視線を受けて俺は待機するしかなかった。

 

「坊主の真っ直ぐな所は素直に好感だけどな、嬢ちゃんだって守られてばかりのお姫様じゃねぇ。時には信じて待つ事も男には必要だぞ」

 

 そう言って俺の肩を叩くマードックさん。俺は先程までストライクが居た場所を暫く見つめた後にある場所へ移動する。

 

 何かをしなければ、今すぐにも先輩を追いかけてしまいそうだったから。今回は先輩を信じて待つ事にするが、やっぱり指を咥えて見てるなんて、このνシン・アスカには似合わない。

 

 ならば、次の戦闘でも出撃できない事がない様にアストレイを仕上げる。

 

 足を止めた俺の目の前にはフレームの補強作業が終わりデュエルの脚部が移植されたアストレイと、その隣にある、“ある物”があった。

 

 アストレイはデュエルの脚部を移植した事で後で細かな調整も必要だ。

 

 そしてアストレイの隣にある、“ある物”。それは、簡単に言えば黒い戦闘機の様なシルエットだ。

 

 しかしコレは戦闘機ではない。アストレイの件でモルゲンレーテが謝礼代わりに譲渡した、ストライクとアストレイの強化兵装。

 

 

 “ライトニングストライカー”だ。

 





 モルゲンレーテが送ってきた“とっておき”はライトニングストライカーです!

 砂漠編の最終バトルでアストレイの第三形態をお見せできると思います!!
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