νシン・アスカは伊達じゃない!   作:DestinyImpulse

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 キラ&カガリの誕生日という事で投稿します!

 砂漠編がもう少しで終わるので、そしたら毎日投稿を再会するのでもう少しお待ちください。


23. PHASE-23【プライドと狂気と誤ちと…】

 

 

「それは大事な薬だから落とさずに置いといてよ」

 

「は、はい」

 

 時はキラが戻ってくる少し前、明けの砂漠の救助が完了し警戒体制が緩和されクルーが各々の役割や休息に時間を割く中、フレイは雑務をこなしていた。

 

 CIC担当のサイ達と違いフレイにはまだ役割が与えられていないが、志願したフレイが一人だけ何もしないのは戴けないと荷物運びを任されていた。

 

 クルーから言い渡される指示にフレイは若干の不機嫌さを感じていた。軍に入って最初のまともな仕事が雑用とは不本意なのだろう。

 

 薬が入った箱を持って医務室に入り、指定された場所にしまう。今頃キラは明けの砂漠の救助の為にザフトと戦っている。

 

 戦って殺すのだ……コーディネイターを…!

 

 

「おい、いつまでこんな所に縛り付けるつもりだ!」

 

「っ!?」

 

 その時に横から聞いた事ない声が聞こえて思わず振り返ると其所には両腕を拘束されベッドに寝かされたイザークの姿があった。

 

 目を覚ましたイザークは後遺症がないかを調べる為に医務室に拘束された状態で運ばれ、タッシルの難民達の治療に行った軍医がもう少しで帰ってくるので放置されていた。

 

「あ、あんた…」

 

「ん?…ふん!なんだその貧弱そうな顔は。こんな奴が軍人とはナチュラルは人材不足なんだな」

 

 フレイとイザーク。方やコーディネイター嫌いのフレイ、方やナチュラルを見下すイザーク。友好な会話など起こる筈もない。

 

 縛られているにも関わらずに目の前にコーディネイターが居る事に怯えるフレイを見てイザークは貧弱な奴と嘲笑う。

 

 しかし、そんな貧弱な奴が居るアークエンジェルに捕らえられた事に憤りを募らせる。

 

 できる事なら今すぐにでも、この傷をつけたストライクや、あの金ピカのMSのパイロットを引き摺り出してやりたい。

 

 だが今の自分は捕虜であり下手な事はできない。せめて、評議会の一人である母の弱みにならない為に家名だけは、絶対に口にしてはならない。

 

 怒りとイザーク・ジュールとしての責務に挟まれ複雑な心境のイザークはフレイを視界に入れない様に壁側に寝転んだ。

 

「はぁ…はぁ…!」

 

 一方で恐怖や嫌悪から後退るフレイは医務室から出ようとして軍医の机にある引き出しが半開きになっており“拳銃”が蛍光灯の光で輝いて居る事に気づく。

 

「……………………」

 

 脳裏にはコーディネイターが父親の乗った艦を射った光景が過ぎる。

 

 どうしてパパを殺したコーディネイターが此処に居るの?なんで確実にやっつけない(殺さない)の?コーディネイターを殺して死ぬのがシンとキラ(アンタ達)の役目でしょ?

 

 捕虜に暴行は禁じられている?何でコーディネイターにそんな配慮しないといけないの?

 

 

 何でパパは死んだのにコイツ(コーディネイター)は生きてるの?

 

 

「ん?…なっ!貴様!?」

 

 今だに居るフレイを鬱陶しく思い怒鳴り声でも上げようかと考えていたイザークだったが、後ろから僅かに聞こえてきた“カチャ”と言う音と嫌な予感から思わず振り返ると…。

 

「……ッ!!」

 

 ガタガタと震えながら銃を構えて澱んだ目で此方を見るフレイの姿があった。

 

 その様子からフレイが拳銃を持った事もないど素人なのは理解できるが、今のイザークは両腕を縛られている状況だ。辛うじて身動きは取れるが絶体絶命なのは変わらない。

 

 突然の命の危機にイザークを冷や汗を流す。

 

「コーディネイターなんて…!コーディネイターなんて!みんな死んじゃえばいいのよ!!」

 

「……クッ!」

 

 胸の内から溢れるドス黒い感情に一切逆らう事なくフレイは引き金を引いた。

 

 

 パァン!!

 

 

 乾いた音と共に放たれ凶弾は……イザークには当たらなかった。難を逃れたイザークは目の前に現れた“栗髪の少女”見て唖然としていた。

 

 

「……何を…やっているんですか…!」

 

 

 フレイに横から抱きつく様に飛び込んだ“マユ”の間一髪の行動により狙いが外れ銃弾はイザークに当たる事なく医務室の壁に減り込んでいる。

 

 大好きなキラがもうすぐ帰ってくると聞いて格納庫に向かっていたマユは通り過ぎようとしていた医務室からイザークの叫び声が聞こえ足を止めた。このアークエンジェルに居て初めて聞いた声に戸惑った次の瞬間、聞こえてきたフレイの叫び声。

 

 まるでラクスを人質にしようとしたあの時の様な余裕の欠片もないヒステリックな声にマユは医務室に飛び込んだ。

 

 そして今まさに拘束されてマトモに動けないイザークを撃とうするフレイを見て。マユは思考する事なく即座にフレイに横から抱きつく様に飛び込みイザークが撃たれる事を防いだのだ。

 

「………」

 

 その様を唖然と見つめる事しかできないイザーク。そしてフレイも初めて人を撃とうとした事、引き金を引いた事、放たれた銃音や衝撃は自分の想像以上だった事……幾つもの“初めて”が重なり愕然としていた。

 

「シン、今の音!…マユちゃん!?」

 

「ッ!?マユ!?」

 

 

 その時、イザークが居ると聞いて医務室に向かっていたキラとシンが聞こえてきた銃声に只事じゃないと医務室に飛び込んでくる。

 

 そこで目に映るのは拳銃を持って横向きに倒れるフレイと近くでへたり込むマユ。そしてその二人…厳密にはマユを唖然と見つめるイザークの姿があった。

 

 

「…お兄ちゃん…!キラ先輩…!」

 

「ッ!マユちゃん!」

 

 まさかの光景に愕然とするが、震えるマユを見てキラが慌てて抱きしめる、咄嗟に動いたが、いざ実感すると恐ろしかったのだろう。マユも縋る様に腕をキラの腰回して抱きつく。シンはそんな二人の前に立ってイザークとフレイの様子を伺っていた。

 

「……何するのよ…!」

 

「……フレイ…」

 

 すると立ち直ったフレイがマユを睨んだ。憎悪と怨嗟が籠ったフレイの目からマユを守る様にキラはマユを抱きしめたまま背を向ける。

 

「なんで邪魔するのよ!……コイツはキラやアンタの兄の敵なのよ!?」

 

 イザークを指差して叫ぶフレイ。一方のイザークは現れたシンとキラを観察する。特にキラはパイロットスーツを着用しており、彼女の美しい髪に激しい戦闘で生まれた汗が輝いていた。

 

 まさかコイツ等が…!?

 

 しかし今のイザークにそれを問い詰める余裕はなかった。しかし次のフレイの言葉で更に驚愕する事になる。

 

 

「やっぱりアンタ達…自分もコーディネイターだから!だから本気でコーディネイター(コイツ等)殺そう(やっつけよう)としないんでしょ!?」

 

 

「なに…!?」

 

 このイかれた女は今なんと言った?コーディネイター?誰か?コイツ等が!?

 

 自分を助けた少女が、あの二機のパイロットと思わしきこの二人が…自分達と同じコーディネイター?

 

 それが何故地球軍に、こんなイかれた女の様なナチュラルの味方をする?

 

「おい!一体何の騒ぎだ!?」

 

 目の前で起こった事、聞こえてきた声に思考の渦に飲まれたイザーク。すると、此処までの騒ぎを聞いて駆けつけたクルーが医務室に飛び込んでくる。

 

 入り込んできたクルーがシン達を怒鳴りつけ、自分に厳しい視線や銃を向けられてもイザークは思考の渦から抜け出す事はなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 其処から先は大騒ぎだった。

 

 再び移動させられる捕虜のイザークを尻目に騒ぎを聞きつけてやってきたマリューさんや戻ってきたらムウのおっさん、ナタルさんからの事情聴取が俺達三人に行われた。

 

 しかし俺とキラ先輩は事が済んでから現場に駆け込んだので詳しい事情は分からない。故にキラ先輩に抱きつきながらマユが語り出す。

 

 通り過ぎようとした医務室から聞こえてきた叫び声に只事ではないと思い部屋に入ったらフレイ先輩が満足に動けないイザークに拳銃を構えていて咄嗟に掴み掛かった……らしい。

 

 やっぱり、フレイ先輩がイザークを撃とうとしたのか……。

 

 詳しく調べる内に、雑務を任されていたフレイ先輩が薬の整理の為に医務室に入った事、其処にはもう少しで来る軍医に見せる為にイザークが拘束された事、フレイ先輩が使った拳銃は軍医の机の引き出しにあった物で、その引き出しは半開きになっていた。

 

 話が進むにつれてマリューさんが頭を抱え、ナタルさんの眉間に皺が増え、ムウのおっさんも“あらら〜”と苦笑いを浮かべている。

 

 マリューさんの監督不足だとナタルさんが言うけど、鍵の無い引き出しに銃を置き、尚且つそれを半開きにしている軍医もどうかと思うし、そもそも捕虜に非人道的行為は禁じられており、その話はマリューさんやムウのおっさん、ノイマンさんに俺達はよく言われた。

 

 もしあのままキラ先輩がイザークにシャトルの事を問い詰めて手が出そうになったら止めるつもりだった。

 

 捕虜を勝手に撃とうとしたフレイ先輩や、銃の管理を怠った軍医の詳しい処遇を決める為に話し合うらしく、事が起こった後に入った俺とキラ先輩や、フレイ先輩の暴走を止めたマユに厳罰がある筈もなく、俺達は解放された。

 

「………とりあえず部屋に戻りますか」

 

「…そうだね。行こうマユちゃん」

 

「……うん」

 

 やる事もないし、顔を俯かせてキラの服を掴むマユを見て部屋に戻ろうと、俺達は部屋に向かって足を運ぶ。

 

「お、いたいた!」

 

 部屋に向かって歩いていると後ろから声をかけられて振り返ると、あの騒動の後にイザークを牢に運んでいたブリッジでレーダー探索担当のパルさんが此方に近づいてくる。

 

「パルさん、どうかしたんですか?」

 

「それが…牢に戻した時にあの捕虜がお前達と話がしたいって突然言い出してきたんだよ」

 

 まさかの呼び出しに俺達も言葉が詰まり、言い出したパルさんも戸惑いを隠せなかった。

 

「目が覚めた時は狂犬か!って程に暴れてたのに急に大人しくなって…不気味でしょうがないよ。まぁ、どうするかは自由だけど、もし行くなら十分に注意してくれよ」

 

 これからブリッジの仕事があるのだろう、そう言い残して去っていくパルを見ながら俺はキラ先輩とマユに視線を移す。

 

 元々キラ先輩と一緒に会いに行くつもりだったのだ、向こうから指名してくるなら是非もない。

 

 先輩も異論はない様で頷いている。

 

「とりあえず、マユを部屋に戻してからですね」

 

「…そうだね」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…………………」

 

 薄暗い牢屋の中でイザークは叫ぶ事も暴れる事もなく備えられたベッドに腰を下ろしてじっとしていた。

 

 彼の脳裏に過ぎるのは狂った表情で此方を見つめ殺そうとした女と、それを止め自分を助けた少女。

 

 何故、敵である筈の自分を助けたのか?

 

 そもそも何故あんな幼い少女が軍艦に乗っている?

 

 本当に彼女や後から来た二人は自分と同じコーディネイターなのか?

 

「……クソ!」

 

 考えれば考える程に深みにハマり明確な答えが出る事なく時間だけが過ぎていく。何故敵であるアイツ等の事が気になるのか…!

 

 苛立ち……と言うよりかは戸惑いをイザークは隠せなかった。

 

「……!」

 

 その時、此方に近づいてくる足音が耳に入る。音のする方に見ればあの時に部屋に入ってきた黒髪に赤い瞳の少年と茶髪に紫色の瞳をした少女……シンとキラが現れ自分の居る牢屋の前で止まった。

 

「………話ってなんだ?」

 

 緊張感が漂う中で話を切り出したのはシンだった。何故自分とキラを呼んだのか?そもそも目の前のイザークは避難民の乗っていたシャトルを撃ち落とそうとした……無意識にシンとキラは目の前に居るイザークに厳しい目を向けていた。

 

 対するイザークもシンとキラを不機嫌そうな目で見つめ口を開く。

 

「貴様等があの二機のパイロットか…?」

 

 誤魔化しは許さん…と言いたげなイザークの表情を見てシンはキラに視線を移す。それが何を意味するのか分からないキラではない、シンの視線に頷いて返して……

 

「………そうだよ。私がパイロット…キラ・ヤマトだよ」

 

「……シン・アスカだ」

 

 自らの口でイザークが求める答えを言う。それを聞いたイザークはシン達を睨む。どっちかどのパイロットかは言わないが、イザークもそこ迄は期待してないだろう。

 

「……この傷をつけたストライクのパイロットが貴様等の様なひ弱そうな奴の“どちらか”だとはな…!」

 

「…………ッ!」

 

 額に刻まれた傷に手を置きイザークは屈辱に塗れた表情で項垂れる。一方でキラはイザークの額に刻まれた痛々しい傷は自分が刻んだモノだと目を逸らしたくなった。

 

「………あのイかれた女が言っていたが、貴様等はコーディネイターなのか?」

 

「………そうだよ。俺もキラ先輩も妹のマユも、アンタと同じコーディネイターだよ」

 

「通りで手こずる訳だ…」

 

 そんなキラを心配そうに見つめつつもシンはイザークの言葉に自分達もコーディネイターだと返す。それを聞いたイザークは合点がいったと鼻を鳴らす。

 

 今まではプライドを傷つけられた怒りで然程気にしなかったが、戦闘中に見せたアストレイとストライクの凄まじい動き、アレがマトモなOSすら作れなかったナチュラルにできる筈がない。

 

「だが何故だ!俺達と同じコーディネイターの貴様等が何故ナチュラル共の味方をする!?」

 

 しかし、新たな疑問も浮かぶ。何故、コーディネイターであるシン達が地球軍の艦に乗ってナチュラル共の味方をする。

 

 ナチュラルは新たな種である自分達コーディネイターの共通の敵。

 

 幼い頃から母にそう言い聞かされてきたイザークはそれを疑わなかったし、それは自分の周りの人間も同じだった。

 

 故にコーディネイターがナチュラルの味方をするのかが分からなかった。

 

「………俺達だって初めから地球軍だった訳じゃない、俺達はアンタ達が暴れ回ったヘリオポリスの民間人ですよ…。コロニーの中でMSを使って暴れ回るアンタ達から必死に逃げてあの二機を見つけて…そこからは無我夢中だ」

 

「………どうしてあんな事をしたんですか。拠点爆撃装備で乗り込んで来て!ユニウスセブンの悲劇を叫んでおきながら、何でヘリオポリスを崩壊させたんですか!?ヘリオポリスにはナチュラルだけじゃない、貴方と同じコーディネイターだって大勢居たんです!」

 

「………ッ!?」

 

 シンとキラの言葉にイザークは頭を殴られたかのような衝撃を受け言葉が出なかった。

 

 ユニウスセブンの悲劇……プラントに住む誰もがそれを忘れる事なく、ナチュラルを野蛮な奴等と怒り憎んできた。

 

 イザークもまた、ユニウスセブンを崩壊させたナチュラルを憎み、母の言葉に賛同してプラントの為に戦ってきた。

 

 故に中立を謳っておきながら地球軍の新型機動兵器開発に協力したヘリオポリスが滅びようが、“自業自得”と笑っていた。

 

 其処に住む何も知らない民間人を……ましてや戦争なんて嫌で中立を選んだ自分達と同じコーディネイターの事など欠片も考えてはいなかった。

 

 しかしシンやキラは別にヘリオポリスが崩壊させられた憎しみで戦ってる訳じゃない。ザフトと地球軍は戦争をしていて、地球軍に肩入れしたヘリオポリスには攻め込まれる理由があったのは理解している。

 

「ナチュラルとか、コーディネイターとか知ったこっちゃない。自分や大切な人を守る為に俺達は戦っている」

 

「………あんなイかれた女でもか?」

 

 ナチュラルはコーディネイターの野蛮な敵…そんな常識が崩れそうなのを感じてイザークはフレイを引き合いに出す。

 

 条約によって禁止された筈の捕虜に対する自己中な殺人未遂。更にそれを実行しようとしたフレイの目は完全に澱んでいた…アレがイカれてなければ何だと言うのか?

 

 あんなイかれた女を守るのか?そんなイザークの言葉と視線に答えようとしたシンだったが、シンが口を開く前にキラが一歩前に出る。

 

「………フレイはね、お父さんをコーディネイターに殺されたの」

 

「………………………」

 

 父親をコーディネイターに殺された、だからコーディネイターが憎い。驚く程単純で明確な理由だが、それを完全に否定できる者など誰も居ない。

 

「貴方は私達が憎かったんだよね?」

 

 キラの問いかけにイザークは何も答えないが、その沈黙が答えだった。エリートである自分のプライドを傷つけた…憎くない訳がない。

 

「だから低軌道の時、私達を執拗に攻撃して………シャトルを撃とうとしたの?」

 

「なに?」

 

 シャトル?一瞬何の事か分からなかったが、低軌道の時と言われ思い出す。危険域までストライクを追い詰めたがアストレイに邪魔され離脱しようとした二機を狙い射とうとして射線に割り込んできた一機のシャトル…。

 

「……あのシャトルか?逃げ出した腰抜け兵が乗っーー「ふざけないで!!」ーー…ッ!?」

 

 自らの行いを省みないイザークの発言に遂にキラが激昂する。

 

「アレには…!アレには避難民が乗ってたんだよ!!貴方達が暴れて帰る場所を失ったヘリオポリスの避難民が!避難民が乗ってる事を示す信号だって出ていた!なのに!!」

 

「なっ…!?」

 

 キラの発言に再び頭を殴られたかのような衝撃を受けるイザーク。あの時、自分は額の傷やプライドを傷をつけたストライクとアストレイを倒す事だけを考えていた、それしか傷つけられたプライドを治す術がなかった。

 

 故に射線上に入り奴等を倒すチャンスを奪ったシャトルに矛先を向けた、あのシャトルが何なのか考えも確認もせずに“逃げ出した腰抜け兵”と勝手に決めつけ、またしても二機を仕留められなかった屈辱の捌け口にしようとして……。

 

「………………」

 

 イザークは何も言えなかった。ナチュラルを見下すイザークとて虐殺がしたい訳ではない。エリートの意識が高くザフトの軍人としてプラントの剣であり盾である事に誇りを持ってイザークは戦ってきた。

 

 しかし蓋を開けてみればユニウスセブンの悲劇を叫んでおきながら中立のコロニーを破壊して、プライドを傷つけられた事で激昂し戦う術を持たない無防備な避難民を一方的に虐殺しようとした……。

 

 何がクルーゼ隊だ、何が赤服だ、何が誇り高いザフト軍人だ……父親を殺された憎しみで無防備な自分を殺そうとしたイかれたフレイと何も変わらないではないか…!

 

「……………ッ!」

 

 後悔が見て取れる表情で頭を抱えるイザークをシンとキラは静かに見ていた。

 

「……先輩」

 

「……うん、行こうシン」

 

 これ以上言う事はない。そう思ったシンとキラはそっとこの場を後にする。それに気づいたのかは定かではないがイザークは二人を呼び止める事はなく一人残った牢屋で思考する。

 

「…………………くそぉぉ」

 

 プライドと自尊心に従って戦っていたイザークの心に何かが生まれようとしていた。

 





 予想はできたと思いますが、イザークがフレイに撃たれ………マユに助けられました。

 これが今後、どの様に影響するのかお楽しみに!
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