νシン・アスカは伊達じゃない! 作:DestinyImpulse
今回でこのssのヒロインが登場します!
この身が主人公の一人である以上、大まかな世界の流れからは逃れられないと悟った俺はその時の為に準備した。
MSの性能に振り回されない強い身体作りにOSを組み立てる為のプログラミング技術に、機体の特性を理解する為の整備や電子工学の知識。
そして何より操縦技術。
この世界の現在の兵器のヒエラルキートップがMSである以上。当然モルゲンレーテもMS開発の研究をしていた。しかし流石のモルゲンレーテも人型兵器の知識もないのに一から作るのは無理がある。
ならどうすればいいか?簡単だ、見本があればいい。
戦争が起きているこの世界だ。大破したザフトのジンなんかは宇宙に転がっている。そういったジャンク品を回収して売り払うジャンク屋がこの世界には存在し。エリカさんはジャンク屋の古い知り合いから時々、MSのジャンク品を秘密裏に購入していた。
お姫様には内緒よ…そう言って笑みを浮かべるエリカさんが脳裏を過ぎる。そうして集めたジンのジャンク品を解析して作り上げたMSのシミュレーターを時々使わせてもらった。
架空とは言えMSの操縦を体験できるチャンスを逃したくなく、エリカさんもデータ集めに二言で承諾してくれた。
結果として俺の操縦データはエリカさんの理想以上だったらしくホクホク顔で開発に没頭するエリカさんに両親共々、苦笑いで見つめるしかなかった。
因みに俺の他にもシミュレーターを使った三人組がいるみたいだが、俺に比べてかなりお粗末だったらしいが今はどうでもいい。
俺達が乗り込んだこの機体のコクピット、薄暗くて最初は気づかなかったがよく見ればモルゲンレーテのMSシミュレーターのコクピットによく似ていた。
おそらく発展させたのだろう、つまりこれを作ったのは……
「…………相変わらず隠れてやるのが上手い人だ」
地球軍と共同開発する裏で連合の最新技術を盗用して自国のMSを作る、確かにあの人なら顔色一つ変えずにやりそうだ。
とりあえず脱出するか……立ち上がらせた機体を動かそうとするが、動きがかなりぎこちない。
もしやと思いOSを確認する。
「……おいおいこんなお粗末なOSでMSを動かすつもりだったのかよ!?」
随分と粗末なOSだ……未完成か?
ともかくこれでは満足に動かせないので書き換えるしかない。システムを起動してOS設定を行う。
「疑似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結。ニューラルリンケージ・ネットワーク、再構築。メタ運動野パラメータ更新。フィードフォワード制御再起動。コリオリ偏差修正。運動ルーチン接続。システム、オンライン。ブートストラップ起動……よしいける!」
俺のタイピングの速さと言ってる言葉が上手く聞き取れずにチンプンカンプンなマユが目を丸くしているが、お前が慕う先輩は俺の五秒は早くOSを作れるぞ。
設定したOSは正常に作動し先程とは比べ物にならない程に滑らかに動く。近くに置いてあった盾とライフルを装備する……てか、これビームライフルかよ!ザフトのジンですら突撃銃なのに、流石はエリカさんだ。
「マユ、外は戦闘が続いている筈だ……気を抜くなよ」
「……うん」
この衝撃からして外はザフトが暴れている筈だ。そんな中にMSに乗って出ればどうなるか……想像は難しくない。マユも一瞬俯くがすぐに俺にしがみついてくる……覚悟十分だな。
いざ脱出しようとした時に気づく、そう言えばこの機体の名前は…そう思って調べると画面に表示されたのは…。
「アストレイ……王道ではない…か、洒落た名前だな」
揺れが激しくなっていく。もう限界だな…右腕に装備したライフルを頭上に構え左腕のシールドを構える。ビームライフルだった事には驚いたが好都合だ、ビーム兵器なら崩壊しかけた天井を一気に破壊するなんて簡単だ。落ちてくる瓦礫をシールドで防ぎブースターを全開にすれば脱出できる筈だ。
後は引き金を引くだけ。マユも顔を強張らせながら頷く……
「いくぞ!マユ!アストレイ!!」
俺は妹と機体に呼びかけ覚悟を決める。気分はさながらラストシューティングだ!
そうして俺は遂に引き金を引いた。
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ヘリオポリスの工場区では地響きと共に大きな衝撃音が鳴り響く。ほんの数十分前までは平和そのものだった街も今や見る影もない程に崩壊していた。
瓦礫の街をザフトの主力MSのジンが駆け抜け、相対する地球連合の試作型MSの一機である“ストライク”に突撃する。ストライクも黙って見てる筈もなく頭部に装備されたバルカン砲のイーゲルシュテルンを放つが狙いが悪くジンに掠りもせずに逆に重斬刀を叩き込まれる。
ストライクはこれ迄の装甲とは一線を超えた相転移のPS装甲がありダメージはない。しかし、衝撃までは撃ち消せず、もろに斬撃を喰らったストライクは大きく体勢を崩し後ろにあった施設に倒れ込む。
「生意気なんだよ!ナチュラルがMSなど!」
「ッ!」
ジンのパイロットがトドメを刺そうと重斬刀を突き出そうとし、ストライクを操る地球軍士官が息を飲んだその時だった。
爆煙に包まれ瓦礫の山と化した工場区から一筋の光がヘリオポリスの空へと昇る。
「なんだ!?」
「アレはビーム兵器!?でも、なんで!?」
ジンを操るパイロットは疑問を、ストライクを操る地球軍士官であり技術者でもあるマリュー・ラミアスは驚愕する。
あの光は間違いなく試作MSが使用するビーム兵器だ。しかし、それを扱う試作MSは四機が奪われ唯一残ったストライクを死守しているのだ。
もうヘリオポリスにビーム兵器を使える機体なんて残っていない。しかし、それを否定する様にビームによって弾き飛ばされた瓦礫と爆煙を突き抜けて、一機のMSが現れる。
スマートな見た目はザフトのMSよりもストライクを含めた試作MSに限りなく近い。そして何よりも特徴的な金色に輝くフレームがヘリオポリスを照らす光に当てられ輝く。
「……金色のMS」
その姿を見たマリューと共にストライクに乗っていた一人の
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「よし!外に出たぞ!」
「お兄ちゃんアレ!」
一時はどうなるかと思ったがどうにか外に出れて安心したのも束の間、マユが指差した方に機体カメラを向けるとザフトのジンと何処かアストレイに似た機体が此方を見ていた。
ジンはともかくあの機体は…おそらくこのアストレイを作る為に盗用した地球軍の新型だろう。……前世で見た事あるな、確かストライクガンダム だったか。
そんな事を考えつつもジンに視線を向ける。向こうのストライクは大した武装もないし動きも悪い……まぁ、あのOSなら当然だ。つまり今この場で脅威なのはジンだ。
このまま帰ってくれるのが一番いいが……。
そんな期待も虚しくこちらに向けられるジンのモノアイ、そして向けられる重斬刀。クソ!表向きは中立のコロニーで散々暴れた癖にまだ戦いたいのかよ!
「……周りに被害を出す訳にはいかない…マユ。手荒になるからしっかり掴まっていろ」
「…うん!」
カメラに映る周囲で逃げ惑う一般人にセンサーから聞こえる悲鳴。アストレイに搭載されているビーム兵器を無闇に使う訳にはいかない。
緊張で冷や汗が頬を垂れる。そんな俺の事など構わずジンが重斬刀から突撃銃へと持ち替える。それを見た俺は左腕のシールドを構えてアストレイのスラスターを全開にする。
この機体の装甲は前に父さんやエリカさんが自慢していた発泡金属だ。防御が低い分、機動性と柔軟性は高い。
銃弾はシールドで完全に防ぎジン目掛けて突撃する。突撃銃を撃っていたジンでは回避は不可能。それでも左腰にマウントしていた重斬刀で迎撃しようとするが……
「ここから出ていけー!!」
大きく加速をつけたアストレイのシールドタックルの方が早かった。ジンを大きく吹き飛ばす。ジンの向こう側には誰も居ないのはさっき確認済みだ。
しかも嬉しい事にさっきのタックルでジンが左手に握っていた重斬刀を手放してくれたので、ビームサーベルの代わりとしてパクっておく。
起き上がったジンが突撃銃を此方に向けようとしてくる。
「民間人が辺りに居るのが分からないのか、アンタ達は!?」
中立のコロニーなんだから俺達兄妹や“先輩”の様なコーディネーターだって居るってのに!!
そう苛立っていた時だった……今は正に突撃銃の引き金を引こうとしていたジンの側面から、さっきのストライクが突撃する。
しかもその動きは先程とは格段に正確で速かった。あまりの変わり様にジンのパイロットも対応できずに狙いが定まっていない。
「なんで急に動きが……まさかOSを書き換えたのか!?」
この僅かな時間でOSを書き換えた、そうとしか考えられない!しかもあんな動きができる程に高度なOSを……そんな事ができるのはあの人しか居ない!
俺の視界にはジンの銃撃を避け懐に飛び込んだストライクが両手に持っていたナイフをそれぞれ、銃を持つ右腕の付け根と首に突き刺していた。火花が飛び散りやがて糸が切れた人形の様にジンは動かなくなり……パイロットと思わしき人物がその場から離れる様に脱出した。
「ッ!ヤバい!!」
アストレイのスラスターを全開にして飛び込み、抜け殻となったジンをシールドで弾き飛ばす。
吹き飛ばされたジンは次の瞬間、内側から膨れるようにして光に飲み込まれ爆風が襲いかかる。
「グゥッ!」
「キャァァァッ!」
凄まじい衝撃が襲いかかる。なんとかシールドを構えるのが間に合った。ついでに爆風で吹き飛びそうなストライクを支える……あの人が乗ってるんだからな。
爆風が収まり、辺りには痛々しい戦場の跡だけが残る。その光景に心を痛めながらもアストレイの外部スピーカーをオンにしてストライク…
〈先輩、俺です!シン・アスカです!大丈夫ですか!
…に乗っているであろう先輩に呼びかける。
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訳が分からなかった。
いつもの様に教授の課題と言う名の仕事の押し付けを一緒にやる為に“可愛い後輩”とその妹を待っていたら。突然、ザフトが襲撃してきて、必死に逃げようとしたら教授のお客さんだという女の子がどこかへ走り出して、慌てて追い掛けたら全く見た事のない二機のMSを見つけて。
そしたらいきなり「お父様の裏切り者ー!!」なんて女の子が叫ぶから敵と間違われて銃を向けられて…。シェルターに避難しようとして、もう限界だと言われたけど、どうにかその女の子だけでもと頼み込んで、暴れるあの子を無理矢理押し込んで別のシェルターに逃げようとした。だけど、ザフトと戦闘していた地球軍のお姉さんに近くのシェルターはもう破壊されたから来いと言われて…
そして月で別れた親友を見た気がした。その事を確かめる暇もなく、地球軍の人と一緒にMS……“ガンダム”に乗り込む事となってしまった。
立て続けに起こる出来事を受け止める時間も与えてもらえずにジンに襲われ。だけど機体の動きはかなり悪くOSを覗いてみれば、どうしてコレでこれだけの機体を動かす気になったのか問い詰めたい程に滅茶苦茶だった。
そんな時に瓦礫の山と化した工業区からフレームが金色の趣味の悪いMSが飛び出してきた。……立て続けに起きる現状にもう泣きそうだった。
だけど金色のMSはジンの相手をしてくれたのでこの隙にOSを書き換える事ができた。後ろに下がらせたお姉さんが何か言ってくるけど、それどころじゃない。
そうしてどうにかジンの動きを止めた時、パイロットと思わしい人が脱出して逃げたと思ったらお姉さんがジンから離れてと言ってきた。何故なのか分からなかったけど、その意味を次の瞬間嫌と言う程に思い知った。
金色のMSがジンをシールドで吹き飛ばした瞬間、ジンは眩い光と共に自爆した。
悲鳴が溢れ、強い衝撃を受け機体が大きく揺れる。だけど碌な構えをせずに棒立ちしていたこの機体が吹き飛ばされる事はなかった。不思議に思い思わず瞑ってしまった目を開いたら…。
あの金色のMSが支えてくれていた。
〈先輩、俺です!シン・アスカです!大丈夫ですか!キラ先輩!?〉
そうして聞こえてきた声に
〈……うん、大丈夫。ありがとうシン!〉
准将はキラ君じゃなくて、キラちゃんだったんだー!!
な、ナンダッテー!?
と言う訳で、このssのヒロイン事、キラちゃんです!
映画のシンが准将大好きな忠犬だったので、だったらキラをTSにしてヒロインにすればいいと、頭に電流が走り……こうなりました。