νシン・アスカは伊達じゃない!   作:DestinyImpulse

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28. PHASE-28【砂塵に招かれる者】

 

 

「気をつけろよ?この辺りは、廃坑の空洞だらけだ」

 

 “明けの砂漠”本拠地の司令室で地図の赤い光点で場所を示すサイーブの言葉を、マリューやムウ、ナタルは静かに聞いていた。

 

「こっちには、俺たちがしかけた地雷原がある……戦場にしようってんなら、この辺だろう」

 

 今度は付近を囲んで、その指がくるりと円を描いた。

 

「向こうもそう考えてくるだろうし、せっかく仕掛けた地雷を使わねえって手はねぇ」

 

 うまくハマってくれればバクゥを撃破することも可能な場所であり立ち塞がるであろう砂漠の虎を相手にするには絶好の場所だ。

 

 サイーブの立てた作戦を聞きながら、ムウがちらりとマリューに目をやった後、尋ねる。

 

「本当にそれでいいのか?俺達はともかく、あんたらの装備じゃ、被害はかなり出るぞ」

 

 マリューは目の前にどっしりと座った男に目をやった。サイーブは唸る様にに答える。

 

「虎に従い、奴の下で、奴等のために働けば、確かに俺達にも平穏な暮らしは約束されるんだろうよ。バナディーヤのように」

 

 サイーブが目を細めながら言う。確かに権力のある者にひれ伏せば、安全と豊かな暮らしを得られることだろう。

 

 バナディーヤ……砂漠の虎の支配を受け入れることにより、平和と繁栄を約束された都市。幻に見える程に街は活気に満ちていた…と、物資の補給に出向いたナタルやトノムラから、マリュー達も聞かされていた。

 

「女達からはそうしようって声も聞こえる……だが、支配者の手は気まぐれだ。何百年、俺たちの一族がそれに泣かされてきたと思う?」

 

 ムウの顔に重苦しい表情が浮かぶ。マリューもサイーブの言葉を複雑な思いで聞いた。彼女らは間違いなく、サイーブ達一族を泣かせてきた者の側にいる。サイーブの手には無意識に力が籠っていた。

 

「支配はされない、そしてしない。俺達が望むのはただ自由に、誰かの力に怯えずに暮らす生き方…それだけだ」

 

 虎に押さえられた鉱区を取り戻せば、それも叶うとサイーブは小さく笑う。

 

「こっちはアンタらの力を利用しようってんだ。それでいいだろ?よけいな気づかいは無用だ」

 

「……オーケイ、わかった」

 

太い笑みを浮かべるサイーブにムウが無粋な事を言ったという調子で肩をすくめ、マリューに同意を促すような笑みを向ける。

 

「艦長?」

 

「ええ、わかりました。ではレセップス突破作戦へのご協力、喜んでお受けします」

 

 

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「おおっとお!」

 

「うわあ!すげー! これで十五機だぜ!」

 

「へえーっ!」

 

 その頃、アークエンジェルの左舷格納庫の一角で、少年たちが口々に興奮した声を発していた。通りかかったトールが近づいて声をかける。

 

「なにやってんの?」

 

 スカイグラスパーのシミュレーターを取り囲んでいたミリアリアやカズイが振り向く。

 

「あ、トール見て!この子すごいの!」

 

 シミュレーターに座り、操縦桿を握って画面上のスカイグラスパーを操っていたのはカガリだった。興味を引かれたノイマンも寄ってきて、皆の背後から覗き込み、面白がりつつも意外そうな顔になる。

 

「確かにやるねえ。えーと、カガリちゃんだっけ?空中戦の経験ある?」

 

「まぁ…なぁ!」

 

 カガリは得意げに笑いトリガーを引いた。画面の中では最後の敵機が撃ち落とされ、シミュレーション終了をしめす画像に切り替わる。被験者の成績が並び、カガリの名前がダントツのトップに表示された。皆が感嘆の声を上げると、カガリは満更でもないといった表情になる。

 

「二発喰らっちゃったかな」

 

「でもすごいじゃん!俺なんか、戦場入ったとたんに落とされたもん」

 

「私も……」

 

 カズイが興奮して言い、ミリアリアも情けなさそうに笑う。

 

「おまえら軍人のくせに情けなさすぎ。んなこっちゃ死ぬよ? 戦争してんだろ、戦争」

 

 カガリは、ぴょんと座席から飛び出しながら馬鹿にした調子で言い、立ち去る彼女を見送ってノイマンが苦笑いする。

 

「……たしかに」

 

「なによぉ、アンタだってキラに助けてもらった癖に…」

 

「でもまぁ、軍人の心構えはそろそろ自覚してもらわないと困るな」

 

カガリの背中を見やりながら、ミリアリアがつんとして言うと、ノイマンがちくりと釘を刺す。フレイとサイのやらかしは目に余るモノだ。そろそろ軍人として意識を持ってほしい。

 

 ミリアリアとカズイが、しゅんとして顔を見合わせるが、トールだけがどこ吹く風と、面白そうなオモチャを見つけた子供の表情でシミュレーターに近づく。

 

「次、俺やってもいい?ねね、やらせて」

 

「話を聞いていたか?ゲーム機じゃないぞ」

 

ノイマンが苦笑い浮かべて嗜めるとシートに座りかけていたトールはわざわざ立ち上がり敬礼してみせる。

 

「は!わかっております。訓練と思い、真剣にやらせていただきます!」

 

「そんならよーし!ただし撃墜されたらメシ抜き!」

 

「えー!?」

 

 ノイマンの言葉に抗議の声を上げつつも、トールはシミュレターにおさまった。それを取り囲んで子供達が声援を送り、その一角がまた騒がしくなる。

 

 少年たちの声を聞きながら、カガリはスカイグラスパーの実物に近づき、物欲しそうな目で機体を見上げた。その姿に気づいた警備士が、慌ててその前に立ちふさがる。

 

「ダメダメ! ダメだよ、本物は」

 

「……わかってるよ!」

 

 カガリはガッカリしてそう言いつつも、彼女は憧れの目で、白く輝く美しい機体をいつまでも見上げていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なんでザウートなんてよこすかね?ジブラルタルの連中は!バクゥは品切れか!?」

 

「はぁ…。これ以上は回せないという事で」

 

 書類をデスクに投げ捨てながら吐き捨てるバルトフェルドに、ダコスタも苦い表情を浮かべながら返した。

 

 ザウートは燻んだ赤のボディを持つ、砲撃支援向けの地上用重火器型MSだ。砂漠など足場の悪い地理的条件に対して、人型からキャタピラを駆動して移動するタンクモードへの変形機構を持つものの、その動きはいかにも鈍重で、敏捷さを身上とするバクゥとは雲泥の差だ。

 

「全く……要望の“アレ”をよこさなかったら抗議してたぞ」

 

「その埋め合わせのつもりですかね、クルーゼ隊のあの二人は……」

 

 ダコスタは舷窓から甲板を見やった。レセップスにたった今到着した輸送機から、赤いボディのザウートと共に、見慣れない形のMSが現れる。降りてくる少年二人は、エースパイロットの証である赤いパイロットスーツを身につけていた。

 

 しかし、バルトフェルドが笑う様に言う。

 

「……かえって邪魔になりそうな気がするけど?“彼”からも聞いたけど、地上戦の経験ないんでしょ、彼ら?」

 

「エリート部隊ですからね」

 

「大体、クルーゼ隊ってのが気に入らん。僕はアイツが嫌いでね」

 

 そう言いながら、バルトフェルドは宇宙からの増援を出迎えるべく立ち上がる。その後ろにダコスタも続き、二人は甲板へと出ると、輸送機の離陸と共に巻き起こった風に髪が揺れると共に、吹き付ける細かな砂が全身を打つ。

 

 

「うわっなんだよこりゃ…酷えとこだなぁ」

 

「……っ!」

 

 輸送機から降りてきたディアッカとアスランを出迎えたのは、過酷な地球の環境だった。

 

「砂漠はその身で知ってこそってねぇ。ようこそレセップスへ。指揮官のアンドリュー・バルトフェルドだ」

 

「クルーゼ隊、アスラン・ザラです」

 

「同じく、ディアッカ・エルスマンです」

 

「宇宙から大変だったなぁ。歓迎するよ」

 

「ありがとうございます」

 

 形だけの挨拶を済ませ、アスランがバルトフェルドに訪ねる。

 

「バルトフェルド隊長。“足つき”の動きは?」

 

 “足つき”とは、地球連合軍の新造戦艦の名称がアークエンジェルと知らないクルーゼ隊がつけた呼称だ。

 

「あの艦なら、ここから西方へ180キロの地点にあるレジスタンスの基地にいるよ。無人探査機を飛ばしてある。映像、見るかね?」

 

 バルトフェルドは話しながらぶらぶらと歩き、甲板に下ろされた二機のMSを見上げる。アスランとディアッカは毒気を抜かれた表情で、のんびりしたようすのバルトフェルドを見ている。それをどこ吹く風とバルトフェルドは呟いた。

 

「なるほど、同系統の機体だな。あいつとよく似ている」

 

「バルトフェルド隊長は、既に連合のMSと交戦されたと聞きましたが」

 

 そう言うディアッカの言葉に、バルトフェルドは小さく笑みを浮かべる。

 

「ああそうだな。僕もクルーゼ隊を笑えんよ。“彼”から話は聞いているが凄いな…」

 

 弱気にも取れるバルトフェルドの発言に呆気にとられるが気になる言葉が出てきた。

 

「あの、彼とは?」

 

「失礼します」

 

 ディアッカが尋ねた瞬間、甲板のドアが開きある人物が現れ二人は目を見開いた。

 

「「イザーク!?」」

 

 それは低軌道後に行方不明になっていたイザークだった。バナディーヤに向かう道中で解放されたイザークは無事に街に着く事ができ、こうしてバルトフェルドに保護された。

 

「無事だったか!心配したんだぜー!」

 

「ふ…心配かけたなディアッカ」

 

 再会を喜ぶイザークとディアッカ。アスランも近くで笑みを浮かべている。それを暫く眺めた後にバルトフェルドが話を切り出す。

 

「彼を保護したのは先日。どうやら彼、足つきの捕虜になっていたそうだ」

 

「ま、マジかよ!おい、大丈夫だったのか!?」

 

「………見ての通りだ。まぁ…デュエルは奪われて、回してもらえる機体がない以上、俺は今回の作戦には参加できん」

 

 足つきの捕虜にされていた相棒にディアッカが目を見開きながらイザークに問い詰める。一方のイザークはマユに助けられた事やデュエルが奪われてしまった事など様々な感情があって、やるせない笑みを浮かべていた。

 

「まぁ、悔しさも人生には大事だよ少年。興味深い話も聞けたしね」

 

 イザークの肩に手を置いてバルトフェルドは笑みを浮かべる。彼から色々な話を聞いたが特にシンやキラ、何よりもマユの事は聞き応えがあった。

 

「興味深い話?一体ーー「………あの二機のパイロットはコーディネイターだった」ーー…なっ!?」

 

 興味深い話というのは足つきに関してだろう、興味を持って問いかけるディアッカにイザークは静かに言った。

 

「そう驚く事じゃないと思うがね?あの二機の活躍を見れば普通のナチュラルには無理だと一目瞭然だ」

 

「名前はシン・アスカとキラ・ヤマト。どちらがどのMSに乗ってるかは分からないが…」

 

 何故、自分達とコーディネイターが…と言いたげに驚愕するディアッカ。あの動きがナチュラルにできる筈がない。まだまだ若いなと笑みを浮かべるバルトフェルド。

 

 そんな時に会話の外に居たアスランが口を開く。

 

「……金色の方に乗っているのがキラで、ストライクに乗っているのがシン・アスカだ。ラクス嬢の引き渡しの時にクルーゼ隊長と確認した」

 

「おいおいマジかよ…。てか、知ってたなら教えてくれてもいいだろ」

 

「………敵のMSを動かしていたのがコーディネイターと分かれば穏健派が騒ぎ出すからだろう。アスランのお父上はザラ国防委員長だ。察してやれ」

 

 黙っていた事を軽くディアッカが問い詰めるが、母が過激派のNo.2であるイザークが宥める。一方でアスランの内心は穏やかではなかった。

 

 脳裏にある少女の顔を過らせる。

 

(キラ…)

 

 あんなに一緒だったのに……何故こんなに離れてしまったのか…。

 

 彼女は言った、友達や大切な人が居るからと彼女は言った…いや、そんな筈はない。

 

 彼女はコーディネイターだ、卑怯者のナチュラルと居るべきじゃない。

 

 確かにヘリオポリスの件はキラの叫びで罪悪感を感じ反省する点もあった。しかしユニウスセブンの事を許せる筈がない。だって地球軍は核を撃ち込んだにも関わらずに、それを認めず、あろう事が自作自演と言ってきたのだ。

 

 断じて許せる筈がない!

 

 そんな非道な連中ではなく、彼女は同類であるコーディネイターと…自分と共に居るべきなんだ…!

 

 必ずキラは取り戻す…!

 

 だから、邪魔をするなら例え同族でも容赦しない…シン・アスカ…!

 

 

「………………」

 

 そんな彼をバルトフェルドは黙って見ており、その目には先程ののんびりとしたモノではなく真剣そのモノだった。

 

 





 そろそろアストレイ第三形態を出せると思います。
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