νシン・アスカは伊達じゃない!   作:DestinyImpulse

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 【機動戦士ガンダムSEED BATTLE DESTINY REMASTERED】が発売されましたね。

 私は少し様子を見てから買おうと思います。


30. PHASE-30b【砂塵の戦場・後編】

 

 「ゴットフリート、バリアント、撃てぇー!」

 

 ナタルの号令がブリッジに響く。敵艦に澱しい砲撃が向けられるが、自身も被弾し、艦体に大小の衝撃が襲う。

 

 外ではレジスタンス達のバギーが飛び交う戦闘ヘリにランチャーやバズーカを向け懸命の援護に勤めている。

 

 バギーから発射されたミサイルが戦闘ヘリを撃ち落とした。快哉を叫ぶレジスタンス達は、次の瞬間ミサイルの爆発で吹き飛ばされる。

 

「ECMおよびECCM強度、十七パーセント上がります!」

 

 謹慎を解かれたサイが計器を見ながら呼び、射撃指揮のパルが報告する。

 

「バリアント砲身温度、危険域に近づきつつあります!」

 

「艦長! ”ローエングリン"の使用許可を!」

 

「だめよ!あれは地表への汚染被害が大きすぎるわ!バリアントの出力とチャージサイクルで対応して!」

 

「しかし…!」

 

 ナタルが不満げな表情になるが、それを抑え込む様にマリューは言い放つ。

 

「命令です!」

 

「……了解しました」

 

  渋々ナタルは引き下がった。彼女の耳にはマリューの言葉は綺麗ごとに響くのだろう。そんな甘い事を言っていて、艦が墜ちたら元も子もないと言いたいに違いない。

 

 そんな中、ムウのスカイグラスパーが駆逐艦に集中砲火を浴びせかけ、アグニから発された強烈なビームが甲板で砲台として使われていたザウートを貫き艦体に突き刺さる。

 

「機関区に被弾!速力50%にダウン!」

 

「消火急げ!転進して残骸の影に入るんだ!」

 

 アークエンジェルと同様に慌しいレセップスのブリッジでは言うことを聞かなくなりつつあるエンジンを庇いながら、ダコスタの指示のもとレセップスは艦砲射撃をやめてアグニの脅威から脱しようと試みる。

 

 そうはさせまいと迫るスカイグラスパーも、ザウートの対空防御と攻撃ヘリにより行く手を阻まれていた。

 

「なんて強力な砲だ!間もなく、ヘンリーカーターが配置に付く!持ち堪えろ!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「たぁぁぁぁ!!」

 

 一方でストライクも残りのバクゥを相手に獅子奮迅の活躍をしていた。飛びかかってきたバクゥを引き抜いたビームサーベルで逆に切りつけ、そのまま持っていたビームサーベルを別方向から迫るバクゥに投擲する。

 

 投げられたビームサーベルはバクゥの頭を的確に貫き、動揺した隙を逃さずビームライフルを構えると同時に狙い撃つ。

 

「ハァ…ハァ……シンは!」

 

 これで全てのバクゥは倒された…。コックピットで乱れた息を整えつつキラはシンの状況を知ろうとモニターを操作する。

 

 モニターにはライトニングストライカーを纏ったアストレイが明らかに特別仕様のオレンジ色のバクゥに似た機体、ラゴゥ・ハイマニューバと交戦していた。

 

 ライトニングストライカーの機動力で空を飛ぶアストレイに砂漠を走り追い縋るラゴゥ。空と大地、互いのテリトリーを持つ両機は幾度とぶつかり合う。

 

 ラゴゥの背部や両翼に備わったビーム砲から放たれるビームを回避しつつ急降下して対艦刀を振り下ろすアストレイ。当たれば真っ二つになる一撃をバックステップで躱すラゴゥが反撃しようとするが、既にアストレイは空中に戻っており、両腕部から徹甲弾を放ち迎撃する。

 

「隊長機…?あの人か…!?」

 

 

  一進一退の攻防を見ていたキラの脳裏を先日見たバルトフェルドの顔が過ぎる。

 

 ともかくシンの援護に向かおうとしたその時だった。アークエンジェル”が後ろからの砲撃に晒されてしまったのは。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「やった……!」

 

  転進するレセップスにアークエンジェルのブリッジが沸く。だがその時激しい衝撃が背後から艦を突き上げた。

 

「なに...!?」

 

 トノムラが体を立てなおしてレーダーに目をやり、息をのむ。

 

「ろ、六時の方向に艦影!?敵艦が…!」

 

「なんですって!?」

 

 マリューは思わずCICに顔を向ける。六時の方向…真後ろだ。ナタルが歯噛みする。

 

「もう一隻、伏せていたのか!?」

 

 相手はザフトの名将【砂漠の虎】。一筋縄でいく相手ではない。正面から来ると見せかけて進攻させ、戦闘開始より前に身を隠していた一隻とで、アークエンジェルを挟撃する作戦だったのだ。

 

 後方からの一斉射撃がアークエンジェルを襲う。

 

「艦砲、直撃コース!」

 

「躱せ!」

 

「撃ち落とせ!」

 

 同時に叫ぶマリューとナタルだが双方叶わず、数発のミサイルが直撃した。

 

「くうっ…!」

 

 被弾した艦は大きく傾き、タルパティア工場跡地に突っ込んだ。かつて稀少金属の採掘、精製を行っていたこの工場は、現在、砂漠の中に放棄されていた。吹き寄せる砂に埋もれかけていた建物を、アークエンジェルの巨体が轟音を上げて薙ぎ倒し、めり込むようにして止まる。

 

 動かなくなったアークエンジェルに容赦なく敵の砲撃が集中した。揺れる艦内で敵艦の情報を分析していたトノムラが弾かれた様に声を上げた。

 

「これは…!?レセップスの甲板上にイージスとバスターを確認っ!」

 

 クルーは皆、耳を疑う。しつこいにも程がある!

 

 マリューは焦りを感じ、パイロットシートのノイマンに向かって叫ぶ。しかしノイマンが苛立ちを隠す事なく叫び返す。

 

「スラスター全開、上昇!これではゴットフリートの射線が取れない!」

 

「やってます!しかし船体がなにかに引っかかって…!」

 

 墜落の時、建物の骨組みにアークエンジェルの翼が入り込み、身動き取れなくなってしまったのだった。これでは砲撃を避けるどころか、主砲の射線を取る事もできない。

 

「くっそー!やってくれるじゃないの!虎さんよ!」

 

 駆けつけたムウのスカイグラスパーが、伏兵で現れた敵艦へ迫りアークエンジェルへの追撃を許さない。そしてジープに乗っていたキサカとカガリが、煙を上げて廃墟に着底したアークエンジェルを見て叫びを上げた。

 

「アークエンジェルが!」

 

「これでは狙い撃ちだぞ!ストライクとアストレイは?…カガリ!?」

 

 キサカが周りを見渡してる間に、カガリはジープから飛び降りると真っ直ぐにアークエンジェルへ駆け出していた。キサカが止まるように叫んだが、彼女は聞くことなく走り続ける。

 

 後を追おうとキサカも動くが、逸れた艦砲射撃が辺りに落ちて、彼もまた身動きが取れなくなるのだった。

 

 その間にカガリは“アークエンジェル"のハッチから駆け込んだ。格納庫へ駆け込んだ彼女の姿に、マードックとマユが目を見開く。

 

「おい、なんだ!嬢ちゃん!?」

 

「か、カガリさん!?」

 

 カガリは二人に目もくれず、スカイグラスパー二号機に駆け寄りコクピットに乗り込む。

 

「なにすんだ!?おい、嬢ちゃん!」

 

「カガリさん、まさか!?」

 

「機体を遊ばせていられる状況か!?」

 

 咎めるマードックとマユに怒鳴り返し、カガリはエンジンをかけ、計器をチェックしはじめる。

 

「私がこいつで出る!」

 

「なんだってえっ!?」

 

「えぇ!?」

 

 カガリの言葉に唖然とするマユ、確かにシミュレーターで高い記録を出していたが、必ずしも実戦で通用する訳じゃない。一方で冗談じゃない、とマードックが立ちふさがる様に機体の前へ回る。

 

 しかし関係ないとカガリは風防ガラスを下げ、対外スピーカーごしに怒鳴った。

 

「下がれ!吹っ飛ぶぞ!ハッチ開けて!!」

 

 この騒ぎにほかの整備士達も驚き、寄ってくるが、彼女の言葉に慌てて後ずさる。

 

「ま、マードックさん!」

 

「あああ〜もう!今どきのガキはぁ〜っ!ハッチ開けろ!」

 

 このままじゃハッチを破壊してでも出撃しそうなカガリにマユが混乱し、マードックは大事な機体を案じて髪を掻きむしる。フレイと言いサイと言い、最近の子供は無茶苦茶だ。

 

 せっせと真面目に働くマユを少しは見習ってほしいとマードックは素直に思った。

 

 しかし、カガリが早くも機体を浮かせジェットの排気が風を巻き起こすと、腹をくくったように叫ぶ。

 

「落としたら承知しねえからな!」

 

 そんなマードックの声は果たして聞こえたのか、スカイグラスパー二号機は砂漠の空に飛び出した。

 

<“スカイグラスパー”二号機が発進……!>

 

〈なに?フラガ少佐が......>

 

<おい! 二号機に誰が乗ってる!>

 

  当然、ブリッジも二号機の出撃は確認しており、騒然となる。ムウが乗り換えたのかと思ったが、当のムウが一号機から通信を入れてくる。

 

 

〈私だ!カガリ・ユラだ!〉

 

 それに怒った声で通信を入れるカガリ。返事も聞かず操縦桿を傾け、すでに一号機が攻撃しているレセップスをめざす。二号機が獲物を前に舞い降りる鷹のように優美な軌跡を描き巨大な空母に襲いかかった。

 

 バルカンが発射されて甲板に着弾し主砲に当たった。一瞬のちに爆発が起こり、ムウが口笛を吹いた。

 

<やるねえ、嬢ちゃん!…墜ちるなよッ!>

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 強い…!

 

 バルトフェルドと戦闘を開始して十分。シンは激しく息を吐き、汗で滲む手を駆使してアストレイを動かす。

 

 パワーがバクゥとは段違いだ。それに機動力だってエールストライクと同等。そして操縦者はそれを見事に乗りこなし、時折思いもかけない動きで自分を追いつめる。

 

 今だってそうだ。迫る四つのビームを回避したアストレイの動きを予測して飛びかかる。徹甲弾を放つが相手はバーニアを噴かし、難なく身を躱して右前脚を振り下ろしてくる。

 

「…ッ!」

 

 脚部裏側に備わったキャタピラでアストレイの頭部を抉るつもりだ。息を飲みつつ、キャタピラが付いていない表面を右手で掴み、続いて迫る左前脚も左腕で掴む。

 

 しかしこれで両腕が防がれてしまい、ラゴゥが頭部全面に備わったビームサーベルを展開して此方を突き刺そうと迫る。

 

「容赦ねぇな!?」

 

 慌てて脚部に備わった追加バーニアを吹かせて加速の乗せた膝蹴りを串刺しになる前にラゴゥの腹に叩き込む。

 

 流石にコレには堪えた様で吹き飛ばされるラゴゥに両腕の加農砲を構えて徹甲弾を放つ。放たれた徹甲弾がラゴゥの両翼に備わったビーム砲に命中しラゴゥ・ハイマニューバの両翼を半壊させる。

 

「…なっ!?」

 

 しかし相手も黙ってやられない。なんとラゴゥの後部に備わった尻尾と思わしきパーツが突如として何倍にも伸びて此方に迫ってくる。

 

 咄嗟に身を翻すが完全には躱せず右腕の加農砲が破壊される。爆発する前にパージしてダメージを抑えるが、これでもう連結して加農砲を使う事ができない。

 

 爆発の余波で機体が揺れるもアストレイを持ち直す。ラゴゥも見事に砂漠に着地して頭部のモノアイを此方に向けている。

 

「……やっぱり強いな…!」

 

 ここまで緊迫した戦いはラウ・ル・クルーゼとの時以来だとシンは冷や汗を流す。

 

「……ハァ、ハァ……凄まじいな」

 

 しかしそれはバルトフェルドも同じ事だ。ラゴゥ・ハイマニューバの機体性能をフル活用してもライトニングストライカーを纏ったアストレイの機動力に舌を巻いていた。

 

 どうにか厄介な加農砲の一部を破壊したが、両翼を半壊させられ損害は此方が大きい。

 

「熱くならないで、負けるわ」

 

「…分かっている」

 

 激しい戦闘による緊張感と疲労感で息を乱すバルトフェルドを同じコクピットに居るアイシャが宥める。

 

 このラゴゥ・ハイマニューバはその機体性能からコーディネイターですら一人で運用できる物ではなく、火器管制をアイシャが、機体制御をバルトフェルドが担当する事で初めて機体のポテンシャルがフルに発揮される。

 

「……いい腕ね」

 

それでも此方が押されている。そんな状況に冷や汗を流しながらアイシャが感心する。そんな彼女の声に、バルトフェルドも自慢げに頷いた。

 

「だな、この前のキラ君も凄かったが……!」

 

 あの時のストライクの鬼神めいた動き。今、自分達に剣を向けるアストレイはそれと同等かそれ以上だ。

 

 その強さはバルトフェルドを飽きさせる事はない。そんな彼に、アイシャは少し悲しそうな声で問いかけた。

 

「なんで嬉しそうなの?」

 

「……………」

 

 その言葉に、バルトフェルドは何も言えなかった。シンが自分達と戦う事に迷いながらも、キラやマユを守るという信念を持って剣を構えている。

 

 そんなシンを、この戦場で戦っているであろうキラを、そしてアークエンジェルに居るであろうマユを……同胞として出会いたかったと心から思ってしまった自分が居る。

 

 そんなセンチメンタルな気持ちをアイシャは的確に汲み取っていた。

 

「辛いわね、アンディ。ああいう子達、好きでしょうに」

 

「……投降すると思うか?」

 

「いいえ」

 

 故に、はっきりと彼女は即答した。もう他に術はなく、ならばやることは一つ。

 

 バルトフェルドは操縦桿を握り、アイシャは引き金に指をかけた。

 

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