νシン・アスカは伊達じゃない!   作:DestinyImpulse

39 / 41

 


34. PHASE-34【紅海の激戦】

 

 

「レ、レーダーに反応!」

 

 シンとキラによって最適化された水中用ソナーの実践テストを行っていたブリッジで突然、モニターを監視していたカズイが大声をあげた。

 

「また民間機とかじゃないのか?」

 

 そう言って他のオペレーターがモニターを監視すると、その異変にすぐ気がついた。捉えた反応が民間機にしては異常に速いのだ。

 

「これは!攪乱酷く、特定できませんが、これは民間機ではありません!」

 

 その異変に対して、マリューは素早く反応する。

 

「総員、第二戦闘配備!機種特定急いで!」

 

 その瞬間に、ナタルが慌ただしく対空迎撃の準備を始め、パルが艦内へ放送を流した。

 

〈総員、第二戦闘配備!繰り返す!第二戦闘配備!〉

 

 その声に、先程まで穏やかな時間が流れていたアークエンジェル内が、一気に慌ただしくなった。

 

 マードック指揮の元、スカイグラスパーやアストレイとストライクの発進準備が大急ぎで行われていく間にも上空からモビルスーツがアークエンジェルへと襲い来る。

 

 ディン……大気圏内の飛行を可能としたザフトのモビルスーツ。

 大気圏内の飛行を可能とする為に装甲が軽量化され、更に揚力を得るために背部には六枚の巨大な翼が取り付けられた。

 

 ディンはアークエンジェルの眼前で翼を広げ、更に接近してくる。

 

 アークエンジェルもすぐに武装の展開を開始する。

 イーゲルシュテルン、ヘルダートを起動させ、上空から迫るモビルスーツ隊を迎え撃たんと戦闘準備を整えていく。

 

「よーし!足つきを確認した!グーン隊、発進準備!」

 

 ディンからの情報を受け潜水母艦から指示を出すのは、マルコ・モラシムだ。彼らはアークエンジェルのソナー範囲外まで潜水母艦で近づき、機会を窺っていたのだ。

 

 海を進むアークエンジェルを睨みつけながらモラシムは呟く。

 

「見ていろクルーゼめ…!貴様が逃した獲物…喰らい尽くしてやる!」

 

 大いなる野望を胸にモラシムは絶対的な自信を持ち、早足で愛機の元へと向かうのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 やっぱりこうなるか!!

 

 

 鳴り響く戦闘配備を放送を聴きながらシンはキラと共にパイロットスーツに着替えて格納庫へと向かっていた。

 

 此処は海だ、踏みしめる地面が無いという事は敵は空中か水中に特化したモビルスーツである事は間違いない。空中ならばライトニングストライカーを装備したアストレイなら問題ないが、水中ならば厄介だ。

 

「あ、シン!」

 

 そんな事を考えていると端の通路からフレイが現れてシンに語りかける。不安そうな表情で此方に縋る彼女の姿は、多くの者の保護欲を掻き立て決して無碍にはしないだろう。

 

「ね、ねぇーー「ごめんフレイ、時間がないの!シン!」ーー……」

 

「はい!すみません、フレイさん!」

 

 しかし、キラに出鼻を挫かられてシンも一刻も早くアストレイの元へと向かわなければならならい状況故に一言だけ断りを入れてフレイを素通りする。

 

「…………………」

 

 故に気づかない。先程とは打って変わり恐ろしい程に冷たく澱んだ表情で二人の背中を睨むフレイに……

 

シンを籠絡し傀儡化させコーディネイターを殺させ最後にはボロ雑巾の様に使い捨てるフレイの策略は、然程も進んでなどいなかった。自他共に認める自身の魅力を使えば男なんて簡単に籠絡できると思っていたフレイだったが、シンは常にキラやマユの側におり、二人きりになる時など片時もなく。自身が寄ろうとすれば困惑した様子で距離を取られる……

 

「なんでよ…!なんでなのよ…!」

 

 現在アークエンジェルは紅海を横断しており…このままではシンはオーブへと帰ってしまう。自分が唯一の肉親である父を失ったのにあの兄妹は家族の元へと帰るのだ……

 

「そんなの…認められない…!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 格納庫へと向かいアストレイへと乗り込んだと同時に、先に出撃して牽制し、補給に戻ったムウのおっさんから通信が入る。

 

「潜水母艦?」

 

〈ああ、いくらなんでもカーペンタリアから直接は無理だ。こっちだって動いてんだしさ。ギリギリ来て戦えたって、帰れないからな〉

 

 たしかに。モビルスーツのバッテリーのことを考えるならば、オーストラリア大陸から直接来ているというより、こちらに探知されない程度の近海に母艦の存在を想定する方が当たっているだろう。

 

〈CIC、モビルスーツの航跡から、敵母艦の位置を割り出せないか?〉

 

〈待ってください〉

 

 おっさんの言葉にブリッジのサイ先輩達がデータの洗い直しを始めた。

 

 一方、左舷カタパルトデッキでは「だからなんで機体を遊ばせておくんだよ!」と、カガリさんが“スカイグラスパー”二号機の前で、マードックさんに噛みついていた。

 

「私は乗れるんだぞ!」

 

「いや、でも、あんたは…!」

 

 マードックさんが許可を出さないのも当然だろう。カガリさんはパイロットどころか、軍の人間ですらない。一民間人の少女に機体をまかせることは勿論だが、戦場に送り出して撃墜されでもしたら……と思うのだろう。しかしカガリさんは言いってのけた。

 

 

「アークエンジェルが沈んだらみんな終わりだろ!なのに、何もさせないで、それでもしやられちゃったら、恨んでバケて出てやるぞ!」

 

「か、カガリさん…」

 

 あまりの剣幕にマードックさんはタジタジとなり、後ろで見ていたマユがドン引きする中で一号機の機上からムウが笑って声をかける。

 

「お嬢ちゃんの勝ちだな。曹長!二号機、用意してやれよ!母艦をやりに行くんだ。火力は多い方がいい」

 

 そう笑ってマードックさんに指示を出すが、次の瞬間、笑みを引っこめ、カガリさんに向きなおる。

 

「だが、遊びじゃないんだぜ、お嬢ちゃん。言い出した以上は分かってるんだろうな?」

 

「カガリだ!分かってるさ、そんなこと!」

 

 カガリさんは口を尖らせて言い返した。

 ランチャー装備の一号機と、装備なしの二号機が、敵艦予測位置のデータを得て発進していく。海中からは依然、攻撃が続いており、艦底部の“イーゲルシュテルン”では“グーン”を捉えきれない。海中から浮かび上がったモビルスーツは容赦なく、腕からミサイルを撃ちかけ、被弾する艦は大きく揺れる。

 

〈シン君!キラさん!敵は空中と水中の両方のモビルスーツを展開しているわ、宇宙用の二機では厳しいだろうけどお願い!〉

 

「了解!先輩!俺が水中に行きます!今のアストレイなら水中でもある程度は戦えるので!」

 

 水中ではビームは使えない。故にビーム兵器が主流のストライクでは分が悪い。ならば、ビームを消せば実剣になる対艦刀に電磁加農砲を装備したアストレイの方が良い。

 

「そうだよね………分かった、気を付けてね」

 

 先輩も、空を飛べなきゃ泳げもしないストライクよりもアストレイの方が適正だと分かっている筈だ。

 それでも、隠しきれない不安を浮かべるその表情を少しでも晴らそうと俺は笑みを浮かべる。

 

「勿論ですよ、先輩もアークエンジェルをお願いします」

 

 水中は俺が押さえるが、その間は勿論、対空防御は先輩に任せるしかない。

 

 ライトニングストライカーを纏い、目の前のハッチが開く。

 

「シン・アスカ!アストレイ…いきます!」

 

 勢いよく飛び出した機体の体勢を整えつつ、こちらの出撃に気付いたディンが武装を向けるが、先に出撃した先輩の牽制で離脱。その隙に海中へと機体を潜らせる。

 

 強烈な日差しも海中には僅かしか届かず、黄昏の世界にいるようだ。装甲を一枚隔てた外は、冷たく重い水なのだ。

 

「っ!」

 

 薄暗い海中に圧迫感を覚える中で、頭に電流が走る様に直感が働く。

 

 その直感に逆らう事なく対艦刀を抜き一閃…此方に体当たりしようと突っ込む水中用モビルスーツ…グーンを斬り裂く。肩から腰に斜め一直線に裂かれたグーンはユラユラと海の底へと沈んでいく。

 

 まずは一体…そう思ったが不意に襲い来る悪寒に従って、機体をその場から遠ざける。直後、俺の目の前で緑のレーザーが過り、更にその直後に近くにあった岩が大きく抉られた。

 

「ビーム!?……いや違うレーザーか?」

 

 センサーが示す方に視線を向けると、相手は“グーン"ではなかった。見るからに水中戦向きに特化した機体だ。背中や肩を羅のようなパーツが覆い、ずんぐりした、だがなめらかなフォルムを持つ機体は、水中での高速移動を可能とし先端に三本の鉤爪を有する長い腕部が目立つ。

 

 アストレイのコンピュータがデータと照合し、機種を特定する。

 

「ゾノ?グーンの次世代機か!」

 

 乗ってるのは部隊長だろう、更に二機のグーンを引き連れながら、ゾノは再びレーザーを斉射する。

 

 しかし動作が丸わかりだ、充分に警戒さえすれば、恐る必要はない。

 

「っ!そう上手くはいかないか…!」

 

 しかし、それは一対一の場合での話だ。

 先の一機に加えてゾノが今、連れて来た二機…合わせて三機のグーンが居るのだ。

 

 回避した先に、体当たりを仕掛けてくるグーン。咄嗟に右手に握った対艦刀を振り下ろす。

 こちらの反撃を察知したグーンが急速旋回して斬撃を回避。

 

 残りの二機が魚雷を放つが両腕の加農砲から徹甲弾を放ち迎撃、中央で発生する爆発の振動が海に響く。

 

 ………サメ映画の登場人物になった気分だな。

 

 ふと、そんな考えが過ぎり思わず笑みを浮かべて俺はアストレイを動かす。

 

 

 紅海の戦いは始まったばかりだ。

 

 

 





 長々とやってもしょうがないので、紅海編はマキでいきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。