νシン・アスカは伊達じゃない! 作:DestinyImpulse
沢山の方に読んでもらって、お陰様でランキングに載りました!
本当にありがとうございます!!
Netflixを見ながら書いてます。
消える前に完結できるか…
「ラミアス大尉!よくご無事で!」
戦闘が終わり、マユ達を手のひらに乗せたストライクとアストレイがアークエンジェルに着艦する。降りてきたマリューに向かって地球軍の軍服を纏った者達が集結し黒髪の女性のナタルが声をかけた。
「バジルール少尉!」
「御無事で何よりでありました!」
「貴方こそ、よく【アークエンジェル】を…お陰で助かりました」
地球軍の敬礼をし合うマリューとナタル。その時、ストライクとアストレイのコクピットが開きキラとシンの二人が降りてくる。MSから降りてきたのが正規兵ではなく、まだ幼さが残る子供と知り、辺りからざわつきが起こる。
「おいおい何だってんだ?子供じゃないか!あの坊主と嬢ちゃんがアレに乗ってたってのか」
「それよりも、あの金色のMSはなんだ?」
アークエンジェルの整備長であるマードックが、髪をガシガシとかき、呆れたように言う。G兵器は連合軍の機密中の機密。それを操っていたのが子供とは何の冗談だ?
それにあの金色のMSは何だと、アークエンジェルのクルー達はアストレイとシンに奇怪な視線を向ける。
「ラミアス大尉…これは?」
ナタルは軍人らしい面構えでマリューを見つめマリューも答えを渋るような表情を浮かべるが、せめてシンの無罪を晴らそうと答える前にハンガーの奥から声が響く。
「へー、こいつは驚いたな」
そこに居たのは、メビウス・ゼロから降りたムウ・ラ・フラガだった。
「地球軍、第7機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉、よろしく」
「第2宙域、第5特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」
「同じく、ナタル・バジルール少尉であります」
ムウの敬礼にマリューとナタルもビシッとした敬礼し返す。
「乗艦許可を貰いたいんだがね、この艦の責任者は?」
ムウの言葉に、ナタルの表情が沈痛なものになっていく。
「……艦長以下、艦の主立った士官は皆、戦死されました。よって今は、ラミアス大尉がその任にあると思います…」
「え…」
「無事だったのは艦にいた下士官と、十数名のみです。私はシャフトの中で運良く難を…」
「艦長が…そんな…」
ナタルから言われた現実にマリューは深いショックを受けている様子だった。
「やれやれ、なんてこった。あー、ともかく許可をくれよ、ラミアス大尉。俺が乗ってきた船は落とされちまってね」
それでも、ムウが催促するようにマリューを見つめる。いつ迄も落ち込んでられないとマリューは姿勢を正した。
「あ…はい、許可致します」
「で、あれは?」
あれというのはストライクから降りて友人達に囲まれている少女のキラと、謎のMSであるアストレイとシンを指しているのだろう。
「御覧の通り民間人の少女です。襲撃を受けた時、何故か工場区に居て…私がGに乗せました。キラ・ヤマトと言います。あの金色のMSはアストレイ…おそらくオーブが独自に製造した物と考えます。彼はシン・アスカ。操縦はしていましたが工場区で避難する途中で偶然発見し脱出の為にあのMSを使用。尋問の結果、深い関わりのない一般人です」
アストレイの説明を聞いて顔を強張らせシンに厳しい視線を向けるナタルに怯えたマユがキラとシンの後ろに隠れてしまう。そんなナタルを制しながらシン達が偶然発見しただけで深い関わりがない一般人とマリューは説明する。
「ふーん」
「…う、彼等のおかげで、先にもジン1機を撃退し、ストライクだけは守ることができました」
「ジンを撃退した!?」
「あの子供が!?」
マリューの言葉にナタルを含めたクルーが驚いたように声を上げた。連合の兵器では全く歯が立たなかったジンを正規兵でもない子供が撃破した。その事実はそれ程に大きな物である現れだった。
しかしムウは気にせず、キラとシンの前まで歩いた。
「な、なんですか?」
「………………」
ムウはキラとシンを交互に見つめると、何でもないような口調で言った。
「君達、コーディネーターだろ?」
途端に、空気が張り詰めるように緊張する。それを何となく察したシンは怯えるマユと、苦しげな表情を浮かべるキラを庇う様に前に立ち。
「………はい」
そう口にした。
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「ミゲルがこれを持って帰ってくれて助かったよ」
ザフトの戦艦ヴェサリウスのブリッジでクルーゼはミゲルが持ち帰ったストライクのデータを眺めていた。彼の前にはミゲルを含めた緑服のザフトの兵に、エリートである赤服を身に包んだ深い青の髪をした少年。キラの幼馴染である“アスラン・ザラ”が居た。
「いくら言い訳したところで、地球軍のMSに機体を損ねた私は大笑いされていたかもしれん。オリジナルのOSについては、君らも既に知っての通りだ。なのに何故、この機体だけがこんなに動けるのか!更にあの金色のMSは何なのか!?」
モニターに映るアストレイ。自分が掴んだ情報では新型は五機の筈だった。そんな自分達の前に現れたアストレイ。しかもその動きはストライクと遜色ない。
「だが我々がこんなものをこのまま残し、放っておく訳にはいかんと言うことは、はっきりしている。捕獲できぬとなれば、今ここで破壊する。戦艦もな。侮らずにかかれよ」
クルーゼの策はすなわち殲滅。
作戦に使われる装備をコロニー内で使えばヘリオポリスは簡単に崩壊するだろう。しかし、もはや彼等にとって、そんな事は関係ない。何故ならヘリオポリスは中立と謳いながら連合に尻尾を振っていた裏切り者だ、躊躇はいらない。
ザフトの脅威が三度、ヘリオポリスに襲いかかるまで時間はかからない。
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「この状況で寝られちゃうってのもすごいよな」
ムウにコーディネーターと断言されたあの後、一悶着あったが民間人としてアークエンジェル内の一室に待機させられたサイ達は、自分達の目の前で寝ているシン達を見ていた。
「疲れてたのよ。キラもシンも、本当に大変だったんだから」
「マユちゃんだって、変な男に襲われたって言うし、精神的に疲れていたんだろ」
シンとキラに挟まれる形で寝ているマユをサイは心配そうに見ていた。いきなり戦争に巻き込まれて銃を突きつけられて、さっきだってコーディネーターだからとナタルって人に厳しい視線を向けられた。
自分達よりも幼いマユの精神的ストレスは大きいだろう。甘える様に実の兄であるシンと姉の様に慕うキラに体を預けている。
「大変だったか…ま、確かにそうなんだろうけどさ…」
「何が言いたいんだ。カズイ」
本心からキラ達の心労を労わるミリアリアと違って、カズイが言う言葉には心配以外の感情が入り混じってるようにサイには感じられた。
「別に。ただキラには、あんなことも大変だったで済んじゃうもんなんだなって思ってさ。キラ、OSを書き換えたって言ってたじゃんアレの。それっていつさ?」
「いつって…」
サイからの非難の目にカズイは目を背けながらも思ったことを口にしてしまう。言い淀んだサイにカズイは畳み掛けるように自分の臆病でひ弱な心に従った言葉を紡いでいく。
「キラだって、あんなもんの事なんか知ってたとは思えない。じゃあ、あいつ、いつOS書き換えたんだよ。シンだってあのアストレイってヤツを初めて見たのに手足の様に動かしてさ。キラ達がコーディネイターだってのは知ってたけどさ、遺伝子操作されて生まれてきた奴等、コーディネイターってのはそんなことも大変だったで出来ちゃうんだぜ?」
心にある劣等感を覚えずにはいられなかった。ナチュラルであるカズイ達と、さっきまでMSで戦っていたキラとシン。キラとシンは学友や妹を守るために戦っていた……それでも妬まずにはいられない。
「ザフトってのはみんなそうなんだ。そんなんと戦って勝てんのかよ、地球軍は…」
カズイの呟きがやけに深くサイ達の耳に入っていった。
一方、嵐の前の静けさとも言える中のアークエンジェルのブリッジでは今後について話していた。
「はぁー。コロニー内の避難はほぼ100%完了しているということだけど、さっきので警報レベルは9に上がったそうよ」
「シェルターは完全にロックされちまったって訳か。あー、けどそれじゃぁ、あのガキ共はどうすんだ?」
「え?」
ヘリオポリスをこんな事をしてしまった罪悪感を覚えていたマリューはムウの言葉に呆けた声を出した。なんだ、考えてなかったのか?と、若干呆れた表情をしてから、ムウも面倒くさそうに口を開く。
「もう、どっか探して放り込むって訳にも、いかないじゃないの」
キラとシンをはじめとした、ヘリオポリスのカレッジで学ぶ学生たち。臨戦状態となった今では、彼らも避難民だ。軍とは無関係である彼らを安全な場所に連れて行きたいところだが、レベル9となれば、シェルターは外部からの出入りが完全に遮断される。
「彼らは、軍の機密を見たため、ラミアス大尉が拘束されたのです。このまま解放するわけには……それにあのアストレイについて詳しい話を!」
「それはもう艦長さんがしたんだろ?あの坊主も妹のお嬢ちゃんも嘘をついてる様には見えないぜ。これ以上何を聞くつもりだ?」
共同開発をしていたオーブが自分達の技術を盗用してMSを製造した。断じて見逃せるモノではない。しかし、操縦していたシンは本当に唯の民間人だ。詳しい話などこれ以上きける筈もない。
「上層部にモルゲンレーテを売り込んだのはオーブの五大氏族のサハク家。おそらくシン君達を襲った男はサハク家の人間ね」
「この件は至急報告するべきです!」
そんな事を言うナタルに“随分先の話をしてるなー”と呆れていたムウが話を戻す。
「で、あの坊主達にもアークエンジェルの脱出にも付き合ってもらうってのか?ヘリオポリスの外に出れば、ド派手な戦闘になるぞ」
「……あの二人の力も必要になると思うのですけど」
ムウとナタルの顔がこちらへ向けられる。
マリュー自身、自分が軍人として大人として間違った事を言ったと自覚をしていた。しかし、現状をどう考えても今のアークエンジェルでこの状況を乗り越えるのは不可能だ。
脳裏に過る、シン・アスカとキラ・ヤマトが操るアストレイとストライクの強さは折り紙つきだ。
「……それをあの坊主と嬢ちゃんは了承してるのかよ?」
「今度はフラガ大尉が乗られれば…」
ムウは大人としての問いをマリューにするが、横から何処までも軍人なナタルの言葉に色んな意味で呆気に取られたムウが勘弁してくれと肩を掠める。
「おい!無茶言うなよ!あんなもんが俺に扱える訳ないだろ!あの坊主と嬢ちゃんが書き換えたっていうOSのデータ、見てないのか?あんなもんが普通の人間に扱えるのかよ」
「…なら、元に戻させて…ともかく民間人の、それもコーディネーターの子供にこれ以上大事な機体を任せる訳には!」
「それでのろくさと出て行って的になれっての?」
ムウの言葉にマリューもナタルも黙ってしまった。
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「お断りします!」
アークエンジェル内の居住スペースにキラ先輩の声が響く。
「私達をもうこれ以上、戦争になんか巻き込まないで下さい!」
「…キラさん」
眠りから覚めた俺やキラ先輩が飲み物を飲みに食堂に向かおうとしていた所、マリューさんが頼み事をしにやって来た。
ストライクとアストレイに乗って戦ってくれと……。
それを聞いたキラ先輩は断固として反対する。当然だ、あのムウっておっさんの件でコーディネーターと分かった時、ここのクルーはいきなり銃口を向け、明らかにコーディネーターを嫌悪していた。
それなのに敵が来たから戦え?理不尽にも程がある。
「私達は戦争が嫌で中立を選んだんです!…今、貴女が言った通り、ヘリオポリスの外が戦争をしていたとしても…私は!」
そんなキラ先輩の言葉を遮って、艦内に警報音が鳴り響く。警報音の合間にクルーの焦ったような声が響き渡った。
〈ラミアス大尉!至急ブリッジへ!〉
通路に壁に備え付けられた通信機に、マリューが応答すると、今度はムウのおっさんの強張った声がスピーカーから発せられる。
〈MSが来るぞ!早く上がって指揮を!〉
「わ、私が?」
〈先任大尉は俺だが、この艦の事は分からん〉
「…分かりました。では、アークエンジェル発進準備、総員戦闘第一戦闘配備!大尉のMAは?」
〈駄目だ出られん!〉
「ではフラガ大尉にはCICをお願いします」
「………お兄ちゃん」
マユの俺に掴まる力が強くなる。理解したのだろう、また戦闘が始まると……。
「シェルターはレベル9で、今はあなた達を降ろしてあげることもできない。どうにかこれを乗り切って、ヘリオポリスから脱出することができれば…」
自分達を巻き込んだ癖に……隣にいるサイ先輩や恋人同士で抱き合うトール先輩やミリアリア先輩達にはマリューさんの姿が白々しく見えてもおかしくない。
「………卑怯ですよ!あなた達は!そしてこの艦にはMSはあの二機しかなくて、今扱えるのは私達だけだって言うんでしょ!」
ふざけるな、理不尽だと叫ぶキラ先輩を俺は見ていた。
SEEDの主人公であるキラ・ヤマト。原作を知らない俺は彼がどの様な人物なのかは分からない。だけど、今目の前に居る俺のカレッジの先輩であるキラ・ヤマトは、何かを作るのが好きで、友達思いの優しくて美人でスタイル抜群の女性だ。
兵器を使い誰かを殺す。そんな世界に居る様な人間じゃない。
ここはアニメじゃない本当の現実。キラ先輩がどう生きるのかは先輩が決める事だ。
そして先輩が戦いたくないと言うのなら……。
「…………分かりました」
……俺がやる。
俺はシン・アスカ。キラ・ヤマトと並ぶもう一人の主人公だ。不遇と言われているらしいが有象無象に負ける道理はない。
「お兄ちゃん!?何言ってんの!?」
「そうだよシン!戦う必要なんて!?」
先輩達が信じられないと言わんばかりの目で俺を見て、マユとキラ先輩が止めようとする……その気持ちは凄く嬉しいが。
「別に俺は好んで戦うつもりなんて欠片もありません。戦争なんてゴメンだ、けれど何もしないでむざむざ自分や妹や先輩達が死ぬのはもっとゴメンだ!」
「…………本当にごめんなさいね」
恐らく、俺を格納庫へと案内するつもりだろう。先導するマリューさんに続いて、俺も歩き出す。
「キラ先輩、マユの事をお願いします」
「シン……」
マユの事をキラ先輩にお願いするが、そのマユは瞳に涙を溜めているしキラ先輩も悲しげな表情で俺を見ている……心が痛むな。
「大丈夫ですよ。あくまでも自己防衛です。自分から戦いに行く訳じゃありませんから」
こりゃ帰ったら説教されるな…。
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通信で聞こえるブリッジからの音が慌ただしくなる中、格納庫もあちこちで人の声が響いていた。
「3番コンテナ開けー!装備はソードストライカーだ!」
マードックさんの指示のもと、ストライクに次々と装備が装着される。背中には巨大な剣、左肩と左腕には水色のアーマー、近接戦闘用の【ソードストライカー】だ。
現在、俺はストライクのコクピットで最終調整を行なっていた。今回、俺が搭乗するのはストライクだ。アストレイを設計したであろうエリカさんには悪いがフェイズシフト装甲がある分、信頼性はストライクが上だ。敵が未知数で此方が俺だけである以上、スピードはあるが耐久性が低いアストレイよりもストライクの方がいい。
キラ先輩が乗らないのなら遠慮なく使わせてもらおう。
「美少女じゃなくて悪いが頼むぜストライク」
そんな軽口を叩いているとコロニーの壁が突如爆発と共に吹き飛び巨大な穴が空き、そこから三機のジンとストライクに似た赤いガンダム……マリューさんが言っていた奪われた四機の内の一機、イージスだ。実戦投入早くね?
「マリューさん!」
〈ええ、シン君お願い!〉
通信から聞こえてくるマリューさんの声。今後の展開は決まっており、俺は意識を切り替える。
これが三度目…慣れたのだろうか手の震えも心の冷たさも感じていない。戦う事に慣れるなんて悲しすぎて泣きそうだが……マユやキラ先輩達を守る為だ…!
「……シン・アスカ!ストライク行きます!!」
何の因果が次回作の主人公である俺は前作の主役機に乗って三度、戦場へと飛び出した。
マードック「坊主!どっちに乗るんだ!」
シン「ストライクで!!」
アストレイ「…え?」