νシン・アスカは伊達じゃない! 作:DestinyImpulse
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本当にありがとうございます!
後、キャラの言葉の表現は小説版を参考にしますのでよろしくお願いします。
「シン・アスカ!アストレイ、行きます!!」
アークエンジェルの開いたハッチから、ムウのメビウス・ゼロが先に出撃してから少し遅れて、アストレイとストライクが出撃した。
「後方より接近する熱源3、距離67、MSです!」
「対モビルスーツ戦闘、用意!ミサイル発射管、13番から24番、コリントス装填、リニアカノン、バリアント、両舷起動!目標データ入力、急げ!」
アークエンジェルも迎撃準備を整える。そんな中で、アークエンジェルの管制官チャンドラは最悪の情報を入手した。
「機種特定…これは…Xナンバー、イージス、デュエル、バスター、ブリッツです!」
「なにぃ!?」
報告にナタルが信じられないような声を上げた。艦長であるマリューも驚きを隠せない。
「奪ったGを全て投入してきたというの…?」
一方で出撃したキラには遥か向こうから一つの光がこちらに近づいてくるのがストライクのセンサーから確認できた。それは徐々に輪郭を帯びて行き、機体の姿も鮮明に見えてくる。
「あのMS…アスラン」
〈ヴェサリウスからはもうアスランが出ている。後れを取るなよ!〉
〈ふん!あんな奴に!〉
そしてアークエンジェルの後方から接近してくるMS。地球軍が開発した試作兵器であるデュエル、バスター、ブリッツ。
「敵MS群、散開!」
「迎撃開始!CIC!何をしてるの!」
迎撃を急ぐマリューの叱咤で、ナタルは慌てて指令を出す。
「ミサイル発射管、13番から18番、撃て!続いて、7番から12番、スレッジハマー装填!19番から24番、コリントス、撃て!」
ナタルの声と共に、アークエンジェルがMSの迎撃行動を開始して行く。
迫り来るミサイルを頭部のバルカン砲で迎撃して近づくデュエル達、その動きは的確だ。
〈ニコルは船を!俺とディアッカはアスランとMSをやる!〉
〈分かりました〉
〈オッケー、了解!〉
そのやり取りを皮切りに、ザフトのエリートであるイザークのデュエルが同じく赤服のディアッカのバスターと共にストライクとアストレイの元に向かい、残されたニコルのブリッツがアークエンジェルに迫る。
「……来たか」
迫り来るイージスを見てアストレイのコクピットでシンが出撃前にキラと交わした事を思い出す。
『ねぇ、シン』
『?、どうしたんですか先輩?』
『……アスランの事なんだけど』
通信モニターに映るキラは申し訳なさそうな表情をして口を開く。
ヘリオポリス崩壊後にシンはキラから詳しい話を聞いていた。【アスラン・ザラ】…キラが月の養成学校の時に仲の良かった幼馴染。家族間の付き合いもよく、キラの家に遊びに来ていた。
彼は正にエリートであり、キラの肩によく乗る鳥型ロボットのトリィもアスランが作り、別れ際にプレゼントされた大事な物。
『……大事な人なんですよね?』
『うん……アスランとは…戦いたくない』
もしこれをナタルが聞いていたら、“戦場で何を馬鹿な事を言っている!”……と、怒鳴られていただろう。
しかし、キラやシンは戦いたくて戦っている訳ではない。戦うしかないから戦っているのだ。昨日まで民間人だったのに戦場で出て大事な幼馴染と殺し合いなんてできる筈がない。
『ヘリオポリスの時に私がアストレイに乗ったから、アスランはアストレイの方に来ると思うんだ…』
崩壊前にアスランがキラが乗っていると思ってストライクに通信をした事はキラもシンから聞いた。
だったら、今度はアストレイの方に来る可能性だってある。
『だから…シン…!』
そこから先を言い出せずにいたキラ。
アスランと戦いたくない気持ちを消す事はできない。しかし、それではアークエンジェルを守れない。
だけど、言える筈がない、「アスランの事を任せたい」、「できればアスランを殺さないでほしい」…そんな身勝手な事をシンに…!!
『………分かりました』
しかし、シンはキラの言いたい事を察して了承する。
『え!し、シン!?』
『あのアスランって奴は俺が抑えますよ。俺だって進んで人殺しはしたくありません、先輩の大事な人なら尚更ですよ』
『で、でも!』
それに慌てたキラ。アスランも大事な幼馴染だが、シンだって大事な後輩だ。唯でさえ危険な戦場で自分の我儘をシンに押し付けて危険に晒せたくない。
『俺が戦うと言い出したのが始まりなんです。それぐらいの事は引き受けますよ!』
『……シン』
致し方ないとはいえ、自分が戦うと言い出した事がキラも戦う事を決意した要因の一つだと考え、シンは内心申し訳ないと感じていた。
故に戦う事に内心、心を痛めているキラに幼馴染と戦う、幼馴染を失う…そんな苦しみを味わってほしくなかった。
「……先輩の為だ。根性見せろよアストレイ!」
大事な人に悲しんでほしくない。そんな単純だけど、これ以上ない理由でシンは力強く操縦桿を握る。
モニターを見れば、イージスはストライクなど眼中にないかの様に無視して此方に向かってくる。
〈キラ!お前が何故地球軍に居る?何故ナチュラルの味方をするんだ!〉
そしてイージスからくる通信にシンは笑みを浮かべる。思い通り、アスランはヘリオポリスの一件でアストレイにキラが乗っていると勘違いしてくれた。
顔が映ってバレない為に通信モニターはオフにして、音声通信のみを繋げる。
ここまで分かれば大丈夫。
〈キ…!〉
下手に声を出してバレない為にイージスとの通信を切って集中する。
イージスが放つビームをシールドで防ぎ、バルカン砲で牽制する。
「シン!アスラン!……あっ!」
後輩のシンと幼馴染のアスランの戦いに苦しそうにするキラだったがストライクのセンサーから発する警告音に意識を向ける。
此方に迫るデュエルとバスターがストライクに向けてビームを連射、キラはスラスターを吹かせ回避する。
「何をモタモタやっているアスラン!」
「俺は別に構わないぜ、獲物を横取りできるからな!」
「イザーク!ディアッカ!」
「チィ!G兵器…デュエルとバスターか!」
新手に舌打ちしつつシンは二機の攻撃を回避しつつライフルを放つが当たらない。
「くそ……やっぱり付け焼き刃のパイロットの俺達じゃ分が悪いか」
如何にキラ・ヤマトやシン・アスカが主人公と言えども今は素人。軍の訓練を受けてそれなりの場数を積んだエリートであるアスラン達を倒すのは無理がある。
〈先輩!俺達は自分と艦を守れればいい。だから敵を倒す必要はありません!回避に専念しましょう!〉
〈う、うん!〉
シンの言葉を聞いて回避に意識を向けるキラ。迫り来るデュエルのビームをどうにか回避する。
「チィ!ちょこまかと!逃げの一手かよ!」
「さっさと落ちろよ!!」
「…クソ、好き勝手しやがって!」
逃げ道を塞ごうとバスターが電磁レールガンの散弾を放つ。アストレイは素早さを活かして回避を繰り返し当たりそうな物はシールドで防ぐ。
「シン!このっ、このっ!……うぅ!」
それを見てストライクがライフルを連射するがキラは民間人の女の子で、本来は戦いに向かない根が優しい子。覚悟を決めたとは言え、戦いのプレッシャーに精神がジリジリとすり減っている状況では狙いも曖昧で掠りもしない。
それに歯痒さを感じながらキラは必死にストライクを動かす。
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「敵、戦艦、距離740に接近!ガモフより入電。本艦においても確認される敵戦力は、MS二機のみとのことです」
「あのMAはまだ出られんと言う事か?」
「そう考えてよいのでは?」
アークエンジェルの前方にいるナスカ級高速戦闘艦ヴェサリウスの隊長を務めるクルーゼはオペレーターからの報告を受けて、ふむと顎に手を添えた。
あの忌々しいムウは今頃、アークエンジェルで無様に足掻いているのだろう…クルーゼはそう結論づけた。
(…まだか…)
しかしムウはメビウス・ゼロに乗り、小さなデブリが漂う宙域を低出力モードで飛行しながら、焦れる心をじっと堪えていた。自分が成功させなければ全てが終わる。
故にムウは焦れる心を必死に静め全身から汗を流していた。
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「でぇぇぇぇえええい!!」
「はぁぁあっ!」
雄叫びを上げながら、イザークはデュエル背後のラックからビームサーベルを抜き放ち一方のキラもストライクのビームサーベルを抜いてデュエルを迎え撃つ。
互いの斬撃をシールドで受け止め、それぞれの機体が力を込め、互いを押し込まんと力を込める。
「貰っ……ぐぅぅ!?」
「やらせるかよ!」
そんなストライクを背後から強襲しようとしたバスターにアストレイがスラスターを吹かせてシールドタックルを仕掛け吹き飛ばす!
既にシンもキラも心身共に疲れ切っていた。
「アスラン!」
「ニコルか!」
そこに追い打ちをかける様にニコルのブリッツも参戦してくる。四対二……しかもいずれもエースパイロット、状況は圧倒的に不利だった。
「…はぁ、はぁ……シン」
(……まだかよ、おっさん!)
キラの気弱な通信を聴きつつシンは作戦の要であるムウを案じる。
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(…捕まえた!)
同時刻、ついにムウは眼前にザフトのヴェサリウスを捉えた。低出力モードを解除し、四機のガンバレルからなるエネルギーを全開放し、一気に目標へ迫る。
「うおりゃぁぁ!!」
(……ッ!?)
ムウの接近は直前まで成功していた。
しかし、クルーゼは脳裏に過ぎる感覚から寸前のところで突貫するムゥの気配を察したのだ。
「機関最大!艦首下げ!ピッチ角60!」
「は!?」
「本艦底部より接近する熱源、MAです!」
クルーゼの突然の言葉とオペレーターが報告した情報が完全に一致した。真下から迫ってくるMAと言うならクルーゼにやられ出てこれないと思っていたMAのメビウス・ゼロだ。アデスの顔が余裕から焦燥に変わる。
「CU作動!機関最大!艦首下げ!ピッチ角60!」
しかし時は遅かった。メビウス・ゼロのリニアカノンから放たれた弾頭は、ヴェサリウスのエンジンを完全に捉えた。強い振動にブリッジにいた誰もが何もできずにシートにしがみついた。
「いーよっしゃぁぁ!!」
ムウの機体はヴェサリウスの装甲にアンカーを打ち込み、方向転換をして離脱していく。
「機関損傷大!艦の推力低下!敵MA離脱!」
「撃ち落とせぇぇ!!」
「第5ナトリウム壁損傷、火災発生、ダメージコントロール、隔壁閉鎖!」
(…ムウめぇ!)
推力を奪われ、このままではアークエンジェルに落とされる。クルーゼは苦虫を噛み潰しながら、撤退命令を出すのだった。
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「フラガ大尉より入電、作戦成功、これより帰投する!」
オペレーターのトノムラからの報告によりアークエンジェルのブリッジが沸き立つ。マリューは大きく息を吐き安堵しつつも、このチャンスを逃さない。
「機を逃さず前方ナスカ級を討ちます!フラガ大尉に空域離脱を打電!ストライクとアストレイにも射線上から離れるように言って!」
「ローエングリン、1番2番、斉射用意!」
「陽電子バンクチェンバー臨界!マズルチョーク電位安定しました!発射口、開放!」
アークエンジェルのカタパルトデッキの下に設けられたローエングリン砲台が姿を現し、エネルギーを充填して行く。
「ヴェサリウスが被弾!?」
「何故!?」
「俺達に撤退命令!?」
一方で母艦がムウの攻撃を受けた報告はイザークたちにも届いた。自分たちの母艦が機能不全に陥り撤退命令が下った以上、深追いはできない。
〈離脱します!先輩!〉
〈うん!〉
この隙にアストレイとストライクがローエングリンの射線上から退避する。
その瞬間に先程までシン達が居た場所を眩い光が全てを滅さんと疾る。このまま相手も消えてほしいが、イザーク達も勘が良いのか、射線上からしっかりと退避しているのが見えシンは内心舌打ちをする。
「うひょーー!」
そしてそれは、帰還するムウのメビウス・ゼロを通り過ぎて、エンジンに深刻なダメージを負ったヴェサリウスへ迫る。
「熱源接近!方位000、着弾まで3秒!」
「右舷スラスター最大!躱せっ!」
ヴェサリウスは辛くも攻撃を免れた右舷のエンジンを最大出力で動かしローエングリンの射線上からなんとか離脱する…が被弾。このままでは撃沈されるのは時間の問題だった。
「ナスカ級、本艦進路上より離脱!」
「ストライクとアストレイへ帰還信号を!アークエンジェルはこのまま最大戦速で、アルテミスへ向かいます!」
「帰還信号!?させるかよ!コイツ等だけでもっ!」
ローエングリンの射線から離脱した後も、G兵器4機の追撃は続いていた。ストライクとアストレイが離脱しようにも、イザークが駆るデュエルが追いかけて離脱できない。
〈イザーク!撤退命令だぞ!〉
〈五月蠅い!腰抜け!〉
アスランの制止も聞かずに、イザークはさらに追撃しディアッカのバスターも加わる。ストライクの中にいるキラはビームライフルの閃光を見ながら焦っていた。
「うぅ!これじゃあ!」
「くそ……母艦がボロボロならさっさと帰れよ!」
パワー残量と睨めっこしながらシンも適度にビームで牽制するが、四機に囲まれた状況では脱出は難しい。迫り来る四機の攻撃をどうにか捌いていくが、限界は徐々に迫ってきていた。
「…パワー切れ!?しまった!装甲が!」
そして恐れていた事態が起きた。ストライクのフェイズシフト装甲がエネルギー切れで色合いが褪せていき、無機質な暗色に覆われていく。
慣れない戦場のプレッシャーでビームを乱用し過ぎた結果だった。その機を逃すまいと、ビームサーベルを振りかざしたデュエルが迫る。
「はっ!手こずらせてくれたなぁぁぁ!」
「…!」
キラも残った僅かなエネルギーでデュエルから逃れようとするが、その動きは格段に悪く、懐にデュエルが潜り込む。
「先輩…!」
「おっと!お前もそのまま落ちなぁ!」
当然、シンが黙って見てる筈もなく助けに入ろうとアストレイを動かす。しかし、バスターの砲撃で足が止まったアストレイに三機のGが各々の武器で襲いかかる。
アスランはキラが乗っていると勘違いをしたまま、アストレイを達磨にしようとビームサーベルを、ディアッカはこれは自分の獲物だと薄い笑みを浮かべてガンランチャーを、ニコルは純粋に任務を完遂させようとトリケロスのランサーダートを…
「……ッ!」
それを見たシンは息を呑む。
正しく絶対絶命。生命の危機なのかスローモーションに見える光景にシンは打開策を模索する。
しかし今のシンに総合的な機体性能が上なアスラン達を退けキラを救出する技量はなかった。
リアルロボット世界であるガンダムではドラゴンボールの様に次の瞬間、急激なパワーアップをして大逆転。そんな都合の良い話なんて………あった。
(あの時の感覚…!)
あの時、謎の男に襲われた時に窮地を脱したあの感覚。身体が自分の想像以上に動き、どんな神技だろうと息をするかの様に当たり前にできたあの時の自分なら。
アレが何なのか?どうすればなれるのか?そんな事は分からない。しかしやらなければならない!
でなければ自分は愚かキラまで殺され、マユ達が居るアークエンジェルだって沈む。
「俺が…!俺がみんなを!」
妹であるマユを!!
学友であるトール達を!!
そして……誰よりも優しいあの人を!!
「あの人は…!先輩は!俺が!!」
戦闘による極限状態が!このまま死ねないと昂る気持が!守りたいと思う意志が!
「守るんだ!!」
シンの中にある
瞬間、右側面から接近していたイージスがサーベルを振り下ろすよりも早くシールドを首に突き刺し、メインカメラとコクピットを繋ぐ配線を破壊する。
そのままスラスターを吹かせて回転、左側から迫るランサーダートを右腕を犠牲にして防ぎ、爆発する右腕をパージしてシールドに首が突き刺さったイージスをブリッツに叩き込む。
「ぐぅ!メインカメラが!?」
モニターの大部分が死んだイージスや叩きつけられ吹き飛ぶブリッツなど眼中になくキラの救助に向かう。
「アスラン!ニコル!こいつ!さっさと落ちろよ!」
バスターが背後からビームを放つ。
「う、嘘だろ!?」
しかしアストレイに擦りもしない。振り返る事なく、スラスターを弱める事なくシンは脳裏を疾る感覚を頼りにバスターの砲撃を避ける。
その姿にディアッカは呆気に取られるしかない。まるで後ろに目がついてるかの様だ。今のシンにバスターは大した脅威にはならずにシールドを弾き飛ばされたストライクに迫るデュエルを捉えた。
「もらったぁ!!」
「…うっ!?」
トドメだと言わんばかりにデュエルがビームサーベルを振り抜く。エネルギーはなく打開策もない自分は死ぬ…キラがそう悟る直前……
「ぐぅぅぅう!!?」
凄まじい衝撃がデュエルを襲う。慌てて確認すれば背部のスラスターが破壊され爆発を引き起こしていた。
「先輩に……手を出すなぁぁぁ!!」
ビームライフルを残った左腕に持ち替えて敵にトドメを刺す瞬間で油断しきったイザークの虚を突き、見事にデュエルの背部スラスターを撃ち抜いたシンが突撃する。
「おのれ!貴様ァァァァァァ!!」
邪魔をされ激昂するイザークがデュエルのビームサーベルをアストレイに叩きつけようとするが、今のシンには手に取る様に分かる。
「うぉぉぉ!!」
「なっ!?…ぐぁぁぁああああ!」
デュエルのビームサーベルが振り下ろされる直前に巧みなスラスター操作でデュエルの側面に滑り込んだアストレイがその勢いを殺さずにデュエルを此方に狙いをつけているバスターに蹴り飛ばす。
「い、イザーク!?」
射線に味方が入った事で慌てて射撃をやめてデュエルを受け止めるバスター。
〈先輩!〉
〈…シン?〉
その隙にエネルギーの切れたストライクを抱えてアストレイがアークエンジェルに飛ぶ。無事を確認する為に呼びかけると、キラの声が返って来たが、その声は弱々しい。
「くそ!止まれキラ!」
体勢を立て直したイージスが二機を追おうとMA形態に変形しようとした、その時…。
「うぉらぁぁぁぁあ!!」
「なっ!MA!?」
アストレイに目を奪われていたイージスの頭上から四機のガンバレルを展開しメビウス・ゼロが攻撃を仕掛ける。放たれた一斉射撃が回避の遅れたイージスに直撃し大きく吹き飛ばす。
〈おっさん!〉
〈おっさんじゃない!…よく持ち堪えた坊主、嬢ちゃん!機体に掴まれ!一気に離脱するぞ!〉
〈了解!先輩、掴まったらエールのスラスターを全開にしてください!〉
〈…う、うん!〉
左側にアストレイ、右側にストライクが掴まったのを確認したムウはメビウス・ゼロの全てのスラスターを全開にしてアークエンジェルに向かう。直線的な加速ならメビウス・ゼロが上だ。ストライクもエールのスラスターを全開にして補助している。
もう捉える事はできない。
「くっ!キラ!!」
「くそ!このままおめおめと!」
〈アスラン!イザーク!これ以上の追撃は無理です!こっちのパワーだってもうありません!〉
それでも逃してたまるかと、向かおうとするアスランとイザークをニコルが諌める。此方の損害も大きい。エネルギーだってもう少しで尽きる。
「うっ…!くぅ…!」
「キラ…!」
本当にもう限界だと理解したのだろう。イザークはモニターに映るアストレイに拳を叩き込み無様な八つ当たりを、アスランは去っていくアストレイの姿をただ見ている事しかできなかった。
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「クソ!こんな…こんな結果認めてたまるか!」
戦闘終了後、母艦に戻ってきたアスラン達はパイロットルームの壁に拳を叩きつけるイザークを黙ってみていた。
「い、イザーク…落ち着いてください」
しかし、淡々と壁に拳を叩きつけるイザークを気遣ってニコルが声をかける。
「落ち着け?落ち着けだと!?」
「うっ…!」
しかしそれは火に油をかけた様だ。激昂するイザークにニコルは萎縮する。
「四機でかかったんだぞ!なのに一機も仕留められなかった…!こんな屈辱があるか!…許さんぞ!あの趣味の悪い金ピカメェ!!!」
怒りに顔を歪めたままイザークはディアッカと共に部屋から出ていく。残されたアスランにニコルは語りかける。先程からアスランも顔を俯かせたまま黙り震えていて、イザークと同様に任務を達成できなかった事を悔いているのだとニコルは思った。
「アスラン…そう気を落とさないでください」
「……今は放っておいてくれないか?……ニコル」
ニコルに対し、そう言ってアスランも部屋から出る。そして、廊下の壁を叩き憤りをぶつけていた。
「……キラ!」
アスランの脳裏を過ぎるキラの姿。自分の申し出に明確な拒否を示した彼女……彼女が乗っていると思わしきMS。
説得しようとしても、通信には応じずに、無様にエネルギー切れを起こしたストライクを救う為に無茶な行動をしていた。
キラは昔から、面倒くさがりで、ボーっとしていて、課題だって最終日まで全く手をつけずに自分に泣きつく、手のかかる奴だ。
しかし、追い詰められたキラは凄まじい事をアスランはよく知っていた。
「何故、あんなナチュラルを助けようと…!」
名前は確か……シンだったか。
「…やっぱりお前はナチュラルに利用されているのか!」
優秀だけどボーっとしてお人好しのキラはナチュラルに利用されている。
そうじゃないとコーディネーターのキラがナチュラルの艦に乗って自分達と戦う説明がつかない!
「……キラは必ず取り戻す!」
その怒りを抱いたままアスランはもう一度、拳を壁に叩きつけた。
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「あー死ぬかと思った」
どうにか危機を乗り越え無事にアークエンジェルに俺はヘルメットを脱いでからハッチを開き、コックピットを出た。
「おーい!こら嬢ちゃん!」
そんな俺の目に飛び込んで来たのは、ストライクの周りに集まる整備士達とストライクのコクピット付近でキラ先輩へと呼び掛けているマードックさんが居る光景だった。
「どうしたんですか?」
「おお坊主。いやーなかなか嬢ちゃんが出てこねぇんだ」
「おやおや」
メビウス・ゼロから降りてきたムウのおっさんがわざとらしく肩をすくませ俺を見る。俺に任せるって事だろう。
機材を操作しハッチを開けてコックピットの中へ身を乗り出す。
「はぁ…はぁ…!」
ヘルメットを被ったまま俯いているせいで、表情は確認できない。息を切らしながら、両手を操縦桿に乗せたまま動かないキラ先輩の姿があった。
「先輩…キラ先輩」
呼びかけてみたが反応がない。とりあえず呼吸しやすい様にヘルメットを外させる。ヘルメットに収まっていた長い髪が解放され無数の汗粒が無重力で浮き上がる。
するとようやく反応を示して、震えつつもゆっくりと俯いていた顔が俺を見る。
「……シン?」
「ええ、シンですよ。先輩」
先輩の顔は恐怖で引き攣っておりその目には涙が見える。
「ここ…は?」
「アークエンジェルですよ此処は。ほら、おっさんもマードックさんも居るじゃないですか」
指差せば「俺はおっさんじゃねぇ!」と言いたげなムウのおっさんとそれを宥めるマードックさんが居る。
「…アーク…エンジェル?」
二人の姿を確認したキラ先輩が此処がアークエンジェルだと認識して少しだけ呼吸が落ち着く。
「俺達は無事に生きて帰ってきた、アークエンジェルも無事です」
キラ先輩に語り掛けながら、操縦桿を握る彼女の指を静かにゆっくりと解いていく。
「あ……うぅ…シン!」
「おっ…と…せ、先輩?」
キラ先輩の手を操縦桿から離しベルトを解くと解放された様にキラ先輩が勢いよく俺へと飛び込んでくる。
「……先輩」
キラ先輩の両手が俺の背に回され先輩の顔が俺の胸に埋まる。密着した先輩の体は未だに震えていた。
「……大丈夫です先輩」
俺は導かれる様に先輩の背に両腕を回し先輩を受け止める。
「先輩は俺が必ず…俺が必ず守ります…!」
「いや〜若いね〜!」
「そうですね〜!」
追記
この後、ムウのおっさんとマードックさんに滅茶苦茶、話のネタにされ、顔がリンゴの様に赤く染まった先輩の顔を俺は生涯忘れないだろう。
νシン君「(俺が戦うと言い出したのも原因の一つだし。先輩に悲しい思いをしてほしくないから)いいですよ」
キラちゃん「…シン」←自分を気遣ってるとバレバレ。ちょっと曇りがち。
アスラン「キラを利用するだけでなく、性能の劣るMSに乗せ、自分はPS装甲の機体に乗るとか、父上の言う通りナチュラルはクソ!あのシンとかいう奴……ゆ''る"せ"ん"!!キラは絶対助け出す!」
イザーク「あの趣味の悪い金ピカメぇ!!」
アストレイ「(中の人的に)お前が言うな!」
今の各キャラの情緒はこんな感じですね。
狙っていたとはいえ、アスランの勘違いが…。果たしていつ気づくのか…
そして今回で本格的に種割れをしたνシン君。νシン君は准将やズラの様に自在に種割れできる訳ではありませんが、感情がトリガーなので割と簡単に覚醒します。………感情で覚醒とか、もろサイヤ人ですね。