νシン・アスカは伊達じゃない! 作:DestinyImpulse
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「よーし!そのままだ!動くな!」
「…シン」
「お兄ちゃん…」
突きつけられた銃口。マユを庇う様に抱き締めるキラ先輩を庇う様に前に出ている俺は銃を向けられた事に次第に慣れている自分に嫌気がさしていた。
あの戦闘を乗り越えた俺達は無事に地球軍の軍事要塞【アルテミス】に到着することができた。
アルテミス最大の特徴である全方位光波防御帯、通称【アルテミスの傘】。実体攻撃は勿論、ビーム攻撃も決して通さない絶対的防御力を誇る光波で基地全体を包み、それによってアルテミスはザフトから身を守って来た。
これなら少しはマシになると思っていた俺達の期待はアルテミスの武装兵が向ける冷たい銃口で泡と消えた。
マリューさんとナタルさん、そしてムウのおっさんは連れていかれ、それ以外のクルーは食堂に押し込められた。
「軍の人間が民間人に銃を向けるんじゃねぇよ」
そう吐き捨てつつ俺はキラ先輩とマユを連れてノイマンさんやマードックさんが固まっている場所に行く。この人達は立派な大人だ、最悪の場合マユを守ってくれる筈だ。
「ユーラシアって味方の筈でしょ?大西洋連邦と仲が悪いんですか?」
「そう言う問題じゃない」
「ハァー、識別コードが無いのが悪い」
「それってそんなに悪いんですか?」
「らしいな…」
どうやら軍にも色々とあるみたいだが……
「ま、本当の目的は別みたいだがな」
「…ですね」
……真っ当な理由じゃないらしい。マードックさんが溜め息混じりに言い、それにノイマンさんが同調する。
それを聞いた俺の脳裏に過ぎるムウのおっさんの言葉。アルテミスへ入港する前に俺とキラ先輩にあの人は言った。
(ストライクとアストレイの起動プログラムをロックしろ。君達以外に動かせない様に…)
どうやらムウのおっさんの嫌な予感は見事的中したって事か…。
「ねぇお兄ちゃん。私達、大丈夫なのかな…?」
「あの武装兵だって本気で俺達を撃つつもりはないだろう……マリューさんが戻ってこない以上今はできる事はない。大人しくしていよう」
俺とキラ先輩の間に居るマユを撫でつつ俺は武装兵を見る。
(頼むから……俺達の事はバレないでくれよ)
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「いくら不明艦といっても、この扱いは不当です!」
アルテミスへ連行されたマリュー達はアルテミスの司令官にゆっくりしろと言われたが、どう考えても幽閉された状況に陥っていた。
不満を爆発させて部屋の中をウロウロと歩くナタルが嘆く。
「仕方ないだろー?連中は今、俺達を艦に帰したくないんだからさ」
めんどくさそうに、ソファにくつろぐムウは、怒り心頭なナタルにそう言って笑みを浮かべる。
「俺が気になるのは連中がこのアルテミスだけは絶対に安全だと思いこんじまってるって事だ」
しかし次の瞬間真剣な表情に変わったムウはじっと天井を見つめていた。
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ザフト艦ガモフの艦長、ゼルマンはプラント最高評議会に呼び戻されたクルーゼに代わって、アスランを除いたイザーク達赤服の指揮を執っていた。
目標は、モニターに映る傘を展開したアルテミス……に逃げ込んだアークエンジェルだ。
「傘はレーザーも実体弾も通さない。ま、向こうからも同じことだがな」
まさに強力な防壁だ。ザフト艦が幾度となく攻撃をしかけても落ちなかった地球軍の難攻不落の要塞。
「だから攻撃もしてこないってこと?バカみたいな話だな」
「だが防御兵器としては一級だぞ。そして重要な拠点でもない為、我が軍もこれまで手出しせずに来たが、あの傘を突破する手立ては、今のところない。やっかいなところに入り込まれたな」
ディアッカの馬鹿にした様な声にゼルマンもまるで打つ手がないように顔をしかめる。
「じゃぁどうするの?出てくるまで待つ?」
「ふざけるなよディアッカ!お前は戻られた隊長に、何も出来ませんでしたと報告したいのか?」
イザークの顔が明確な怒りに染まる。
あの金ピカのMSにいい様にやられた事が何よりの屈辱だった。ヤツを引きずり出し、この手で撃たなければ気が済まない。
「ふん」
それはディアッカも同じだ。そんな中でニコルはじっと情報を見ていた。
「傘は、常に開いている訳ではないんですよね?」
「ああ、周辺に敵のない時まで展開させてはおらん。だが閉じているところを近づいても、こちらが要塞を射程に入れる前に察知され、展開されてしまう」
ふむと、話を聞いたニコルは暫く考え込むと、やがてニヤリと笑みを浮かべた。
「僕の機体、…あのブリッツなら上手くやれるかもしれません。あれにはフェイズシフトの他にもう一つ、ちょっと面白い機能があるんです」
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「この艦に積んであるMSのパイロット、及び技術者はどこかね?」
食堂に閉じ込められて暫くした後、どこからかこちらへ近付いてくる足音が聞こえ、やがてユーラシアの士官達が兵士を引き連れてこちらへやって来た。
「パイロットと技術者だ!この中に居るだろ!」
誰も答えずに、じっと偉そうなハゲを見ている状況が気にくわないのか、ハゲの副官が怒鳴り声を上げる。
それを見たキラ先輩が反射的に立ち上がろうとするがマードックさんと抑える。
(シン?)
キラ先輩が視線を向けてくるが、今はそれも不味い。そんな中で最初に声を出したのはノイマンさんだった。
「何故我々に聞くんです?」
「なにぃ?」
ハゲの副官に胸倉を掴まれてもノイマンさんは動じない。
「艦長達が言わなかったからですか?それとも聞けなかったからですか?ストライクとアストレイをどうするおつもりで?」
「別に、どうもしないさ。ただ、公式発表よりも前に見る事ができる機会が貰えたんだ。色々と聞きたくてね」
なんて白々しい…
「それで、パイロットは?」
「フラガ大尉ですよ。お聞きになりたい事があるなら大尉にどうぞ」
「先程の戦闘はこちらもモニターしていた。ガンバレル付きのゼロ式を操れるのはあの男だけという事くらい私でも知ってるよ。それに例え彼がパイロットの一人だとしても、機体はもう一機ある。不思議なものだな?」
マードックさんがムウのおっさんだと返すがあっさりと看破されてしまった。
クソが……!こりゃ覚悟しといた方がいいな。
「え、あぁ…いっ!」
「…女性がパイロットとは思えんが、この艦の艦長も女性という事だしな」
ハゲの笑みがゲスめいた物と変わり、近くに居たミリアリア先輩へと歩み寄ると、その細い腕を強く握り締めた。
「ミリアリア!」
ハゲは無理やりミリアリア先輩を立たせると、そのままどこかへ連れ去ろうとする。その様子を見ていたキラ先輩が立ち上がろうとするのを俺はまたも止める。
「シン…!でも…!」
「分かってます…」
表情を険しくさせるキラ先輩に笑い掛けてから、俺はマードックさんが止める前に立ち上がった。
「俺ですよ」
「…なに?」
「あのMSストライクのパイロットは俺ですよ」
突如名乗りを上げ、キラ先輩やマユに危害が及ばない様に近づく俺を見て、あのハゲはミリアリア先輩の腕を離し俺の方へと歩み寄ってくる。
「坊主、彼女を庇う心意気は買うがね。あれは貴様の様なひよっこが乗れるものじゃあない。ふざけた事を言うな!」
コレを避けて反撃したらみんなに危険が及ぶ……しゃあない、受けるか。
「くぅ…!」
ハゲに思いっきり殴られて数歩後退る。結構痛いな……。
「ッ!」
「……ヒッ…!」
「抑えろ嬢ちゃん…!お嬢ちゃんも此処は堪えてくれ…!」
それを見たキラ先輩が今にも飛び出しそうなのをマードックさんが抑えてつつ、マユを宥めていた。
「……お気持ちは分かります。ですが、ストライクの起動プログラムのロックを解除すれば納得してくれますよね?」
「何ぃ?」
殴られた頬を拭いつつ俺はハゲに向き直る。大方、俺達がかけたロックが解除できなくて此処に来たんだろう。
「貴様!まだ言うか!」
「やめてください!!」
今度はハゲの副官が殴り掛かろうとする。しかし、それを見かねたサイ先輩が止めようとする。サイ先輩、気持ちは凄く嬉しいんだけど今は辞めてほしかった…。
「うぅ!」
「キャー!サイ!」
貴方に何かあると貴方の彼女がカズイ先輩みたいに余計な事を言いそうで怖いんだよ。
「ちょっとやめてよ!その子がパイロットよ!」
殴られたサイ先輩を見てフレイ先輩が怒鳴る……頼む辞めてくれ!
「嘘じゃないわよ!だってその子、“コーディネイター”だもの!」
フレイ先輩の言葉が響く。それを聞いた副官が俺の顔をマジマジと見てくる。
「コーディネイター…」
「そうよ!彼だけじゃないわ!ーー「フレイ辞めろ!」ーー本当の事じゃない!その子の妹も、隣に居る娘もコーディネイターよ!」
感情のままに喋るフレイ先輩の言葉に食堂は静まり返る。ハゲと副官がフレイ先輩が指差すマユとキラ先輩に視線を向ける。
「馬鹿野郎!何考えてんだ!?」
「くそ!」
見かねたマードックさんがフレイ先輩に怒鳴り声をあげて、ノイマンさんと共に舐め回す様な視線向けられて怯えるマユを抱き締めるキラ先輩を庇う様に前に立つ。
「ほう……」
くそ!最悪の事態だ!何で自分が怒鳴られたのかが分からない表情のフレイ先輩に言いたい事は山程あるが、今はハゲ共だ。
おい!その下劣な笑みは何だ?
何で先輩達に向かってる?
伸ばしたその手は何だ?
先輩とマユに何かしてみろ…!
許さねぇぞ!!
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「ぐおぉぁ!?」
食堂にアルテミスの司令官であるガルシアの悲鳴が響く。フレイによってキラとマユまでもがコーディネイターだとバレてしまい最悪だった。
このままだとキラどころか幼いマユまでもが悲惨な目に遭う可能性がある。マードックとノイマンが庇う様に立つが状況が悪すぎる。
ガルシアが下劣な笑みを浮かべてキラに掴み掛かろうとした時……横から伸びた手がガルシアの腕を潰さんばかりの力で握る。
「シン…!」
「お、お兄ちゃん…!」
それはシンの腕だった。ガルシアの腕がメキメキと悲鳴を上げてガルシアの悲鳴が強くなる。
「し、司令官!」
しかし、誰も何をできなかった。先程まで偉そうにしていた副官すらも今は顔を青ざめてシンを見ていた。
「……司令官」
「ヒィ!」
当のガルシア本人もシンを顔を見て情け無く悲鳴を上げている。
先程まで唯の小僧と思っていたシンの様子が明らかに変わったのだ。声は冷気を思わせる程に冷たくなり、身に纏う雰囲気も剣の様に鋭くなり、周りに居た者が無意識に後退る。
そして何より恐ろしいのはシンの“瞳”だ。全てを燃やす焔の様に赫く、中心は底なしの闇の様に光がなかった。
「あのストライク達にロックをかけたのは俺です。お分かりいただけましたか?」
「わ、分かった、分かった!」
シンの瞳から逃げようとガルシアはシンの言葉に大きく頷いた。それを聞いたシンはガルシアを掴んでいた腕を離す。
「な、なら早速ロックを外してもらおう……できなかったら…た、唯じゃおかんぞ!」
「ええ、分かってます」
それに対し、シンは素直に従う旨の返答をして、食堂を出るガルシアの方へと近づく。
「シン!」
その時、背後からシンを呼ぶ声がした。
振り返れば、マユを抱きしめながらキラが心配そうな目でシンを見ていた。今すぐにでも飛び出してきそうな必死な目をしていた。
「……大丈夫です」
そんなキラにシンは安らかな笑みを浮かべて歩を進めて食堂を出る。
「…………」
「ヒィ…!?」
最後にフレイに視線を向けて。
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「何であんな事を言うんだよお前は!」
シンがガルシア達と共に食堂を出て数分後、我に帰ったトールがフレイに激昂する。
「だ、だって!本当の事じゃない!」
しかしフレイはサイの手当てをしながら反論する。
「シン達がどうなるかとか考えない訳お前って!」
「お前、お前って何よ!?あの子やキラは仲間なんだし、此処は味方の基地なんでしょ!?何で私が責められなきゃいけないの!?」
トールだけでなくミリアリアやノイマンもフレイに厳しい目を向けており、手当てを受けているサイも言葉を選びながらフレイの言い方に問題があると言う。
「見たでしょ、あの司令官を…!コーディネイターと分かってキラやマユちゃんに危害を加えるつもりだった」
掴まれた腕を摩りながらミリアリアが視線を移す。そこにはシンが連れて行かれた事に涙を流すマユを抱き締めるキラの姿。マードックも二人をほっとけないのか近くに鎮座してる。
「それならあのシンだって!」
あの光景が自分の発言のせいだと言われている様で居心地の悪いフレイは吐き捨てる。
ガルシアの腕を握り潰しかけたシンが怖い!あの真っ赤な瞳が恐ろしい!まるで背中に冷や水をぶっかけられたような冷たさがフレイの全身を駆け巡っていた。
「サイの後輩だか知らないけど!あんな恐ろしい子だったなんて!嫌よ!いつ襲われるか分かったもんじゃないわ!」
「勝手な事を言わないで!」
その時、食堂にマユの声が響く。涙目でフレイを睨みつけるその剣幕に誰もが呆気に取られる。
「そんなお兄ちゃんが意味なく人を傷つける様に言わないでよ!」
「な、何よ!?事実じゃない!あの司令官の腕を握り潰そうとしたじゃない!」
「それは私やキラ先輩を守る為だよ!」
確かにあの雰囲気の兄が怖いのは認める。それでも兄があの様に変わるのは決まって誰かを守る為だった。
あのヘリオポリスの時だって変な男に襲われた自分を守る為に兄は行動した。
あの変わり様が何なのか分からない。でもそんなのは関係ない。
「……心配するなマユ、お前は必ず俺が守ってみせる」
だって、あの時に自分を抱き抱えてくれた暖かさと、今さっきキラに向けたあの安らかな微笑みは確かに自分の大好きな兄の物なのだから。
「うん。マユちゃんの言う通りだよ」
それを必死に訴えるマユをキラは優しく抱き締める。キラにとって普段のシンもあの雰囲気のシンも変わらない。
「シンは優しい人だから…」
そんなキラを見つめガシガシと頭を掻くマードックはこの場に居ないシンの身を案じる。
(こんな良い子が待ってるんだ。無事に帰ってこいよ坊主……)
ニコル「僕にいい考えがある!!」
ブリッツ「………なんだろう、スゲー嫌な予感がする」
果たしてブリッツの明日はどっちだ!