予約投稿ができるようになって、かなり心の余裕ができています。理想は10話くらいの予約投稿がある状態(1ヶ月分とちょっと?)を継続する事ですかね。
「へぇ、あの時見た景色…このことだったのね。」
目の前の少女は感慨深そうに微笑む。最も、その笑みはレッドからすれば「微笑む」など生易しいものではなかった。「不敵な笑み」と言った方が、レッド目線では適切な表現だろう。少女を瞳に写したレッドは、一瞬だけ顔を顰めた後に少女を睨む。
「……ナツメ、お前はロケット団か?」
「あら、そうだったらどうするのかしら。」
「………………。」
レッドは無言のままモンスターボールを構えて、戦闘の意思を表す。しかし、敵意剥き出しのレッドに対して、意外にも目の前の少女は不思議そうな顔を浮かべてレッドの敵対心に反応しなかった。
「……なぜ、君が私の名前を知っているのか?とか色々聞きたい事はあるけれど…。貴方、不思議な人ね。」
「………………?」
「そこのヒスイの魔女は兎も角、貴方の未来を見ようとするとモヤがかかるのよね…。」
「それに、この景色を除けば…私の未来視に貴方は出てこなかった。どこかで死んだともとれるけど…変ね、未来視の中には直接貴方は写らないけれど、貴方を示唆するものもある。」
「……私の瞳に写る貴方は一体…?」
「………………。」
ナツメの不可解な言動に、レッドの敵対心は一気に削がれた。ナツメが不思議そうな表情をしていると、眉毛を八の字にしたロマーシカがゆっくりと口を開いた。
「その少年は神の気まぐれにあてられた子じゃ。そなたの未来視を超える運命力があるのじゃろう。」
「ふーん、神奥のね…。コギト、貴女…その子に肩入れしているのね。」
「そうじゃな、この少年の行く末を見届けてみたいと思うほどにはの。」
「貴女が肩入れるするなんて珍しいわね。ただ、貴女には悪いけど組織に仇なすこの子にはお灸を吸えなくちゃいけないみたい。」
レッドは急に寒気がしたような気分に陥った。目の前の少女が一瞬見せた殺気にあてられて、緩まっていたレッドの緊張感は再度引き締められた。
レッドが緊張感を高めているのを傍目に、ロマーシカはナツメをチラりと見て「ゲーチスも完封したこの子をそなたが倒せるかの?」と挑発的に返す。ロマーシカの発言に一瞬、驚いたような顔を見せたナツメだったが、直ぐにその表情を消してレッドのポケモンを観察する。
「へぇ、四天王の中でも上位の実力者である彼を…ね。確かに…その子のエーフィは別格みたいね。」
「単純な戦闘能力ならポケモンリーグの地方四天王クラスといったところかしら?だけど、それ以外のポケモンは精々中堅ジムリーダークラス。ゲーチスはその子のポケモンというより、エーフィに負けたんじゃないかしら?」
「………………!!」
レッドの事を「視た」ナツメは、過去視で24時間以内の彼の行動を読む。ナツメの能力を知っているレッドとは言え、的確にエーフィとそれ以外のポケモンの力量を見抜かれて一瞬驚いたような表情を見せる。しかし、直ぐにその表情を消して、ナツメの言葉を遮って彼女を圧倒する
「……貴方の未来は何故か見えない。けれど、それほどの強さを持っていて組織に反抗する貴方には、残念だけど消えてもらうしかなさそうね。」
「貴方が組織に敵対心を向ける理由…分からなくもないけど、貴方に憎むものがあるように私にも憎むものがあるの。だからーー」
「ーー御託はいい。さっさとかかって来い。」
レッドはエーフィに【
「……貴方、名は?」
「……レッーーソレイユ。地方兵組織カントー師団所属 ソレイユ二等兵だ。」
「ふーん、ソレイユ…ね。覚えておくわ。」
レッドの偽名を聞いたナツメは、スリーパーを繰り出す。ナツメに繰り出されたスリーパーは、彼女の命令で【
スリーパーの放った【サイコキネシス】によって消滅させられたのである。レッドは
「……
瞬時に、
【
スリーパーがよろめいた間隙を縫って追い討ちの【
頭部を地面に擦り付けながら吹き飛ばされたスリーパーは、白目を向いてピクピクと痙攣していた。スリーパーが瀕死に追い込まれた事を傍目で捉えたナツメは、小さく舌打ちをするとモンスターボールに戻した。
「…ポケモンもそうだけど、その戦い方…。ゲーチスが緋色の悪魔と呼ぶだけのことはあるわね。良いわ、今日のところは手を引いてあげる。でも、覚えておく事ね。これが最後通牒よ。」
「それにしても、貴女がその子に執着する理由…なんとなく分かったわ。それほどの才能を持った子供を手元に置いておけば、貴方の目的は成就できるものね。何よりーー」
ナツメはそう言い残すと、フーディンを召喚して消えてしまった。フーディンと共に消える刹那、レッドはナツメを呼び止めようとしたがロマーシカによって制止された。ロマーシカに制された事で、レッドはナツメが最後に言った「ーー何より、御しやすいものね」という言葉は聞こえていなかったようだ。
「……ロマーシカ、何故止めた。」
「アレは、威力偵察じゃ。深追いしては、手痛い反撃を食らうじゃろう。」
「……時期尚早と言いたいのか?」
「何れその時は来る。既にお主も戦ったじゃろう?あの小娘一人倒してもロケット団はビクともせん。」
「サカキという大元を倒さねばロケット団は滅びぬ。サカキという男の実力を知らぬわけではなかろう?」
「………………。」
ロマーシカに阻まれたレッドは、彼女に反論を試みるも見事に丸め込まれてしまった。最も、彼女の言い分は強ち間違ってはいないのだが。
彼女に言いくるめられたレッドは彼女が呼び出した地方兵組織を待ち、拘束していたロケット団数十名を引き渡した。この際、ロマーシカはワタルにロケット団数十名の捕縛を単独で成功させ、更にロケット団の
ロマーシカの命令?に了承したワタルは、自身の裁量権でレッドを二等兵から兵長に引き上げるという異例の三階級特進を決定。当然、この事を聞いた他の地方兵組織第1師団ことカントー師団の将官クラスは口を揃えて、「ーー殉職ですらない子供に三階級特進など前例がない。少年兵など秘匿すべき事であるのに、三階級特進などさせて墓穴を掘る気か!?」と非難されたが、「ーーでは、貴官らは地方兵組織の将官にありながら三度行われたロケット団との全面抗争においてロケット団四天王またはサカキ親衛隊隊長クラスの最重要人物を撃退する戦果を一度でも上げたのか?異例の戦果には異例の厚遇をもって賞賛すべきだ。信賞必罰とは、軍の常と心得よ!!」と老兵たちを一喝した事でレッドの三階級特進は現実のものとなったのである。
兵長に就任したレッドは一応直属の上司であるユウサクから部下を付けるかと問われたが、「……足でまといがこれ以上増えるのは御免だ。」と断ると、ロマーシカが「足でまといとは失敬な坊やじゃ。」と口をへの字にして明後日の方向に呟いた。
ご機嫌ななめなロマーシカに恐れをなしたユウサクは逃げるようにレッドの元を去ると、レッドはロマーシカに「……ロマーシカ、日の入りまでにはイワヤマトンネルに行くぞ」と抑揚のない声で呟いた。そんなレッドにロマーシカは相変わらず口をへの字にして小さく「…ふん」と呟いた。
□
「ーー以上が、ソレイユことサカキ様が接触したレッドという男の現状です。」
「そうか、ご苦労だった。ナツメ、今日は下がっていい。」
「……畏まりました。」
少女が恭しく中年の男にお辞儀をして下がると、口に弧を描いて呟いた。
「そうか、偶然とは言え…ヒスイの魔女を釣り出してくれるとはな。
「…
「最早、我々に抵抗できる勢力は居なくなる。そうなれば世界征服はすぐそこだ。」
中年の男は眼下に広がる夜景を見ながら笑った。男の願った世界の終焉は、ロケット団が奏でる軍靴と共に少しずつ近付いている。世界征服と新秩序創設を謳い、圧倒的なカリスマで200万人を超える構成員を束ねる史上最凶の悪人。
男は目の前に迫った未来を夢想して、目を細めて口先をつり上げる。言葉を紡ぐたびに、握っていたワイングラスに力がこもる。
「……もうすぐだ、深奥…
「……セキエイ連合議会も、元老院も、ヴァルハラ評議会も…全て私が壊してやる。自由という言葉で生物を堕落させ、神は万物を愛すると嘯く
「……私が世界を創り、人を…ポケモンを守るのだ。傲慢不遜で怠惰なる貴様らを失業させてやる。」
彼の最後の言葉と共に、握っていたワイングラスが粉砕する。紅いカーペットが滲んで行くのを気にも止めずに、彼は眼下の夜景を見下ろし続ける。
不敵に笑ってーー
ちょっと、今日は4000文字ちょっとと短め。
この作品におけるサカキの立ち位置を無理やり作りたかったのと、ナツメとの絡みも欲しかったので前回と今回はナツメを登場させました。ん?マサキはどうしたって?良いんだよ、別にアイツは飛ばしても(ヒドい)。