俺はーーマサラタウンのレッドだ。   作:ムキムキぷりん

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ホントは、日曜日に投稿するつもりが…脳死で画面押してたら投稿しちゃっててやっべ……ってなったけど、ままええかとなった先週の週末でした。
あ、関係ないですけど…前作に追いついたので前作は消しました。


第6話 英雄症候群(全ての始まり)

焚き火を囲んでの夕食が終わると、各々自分のテントに戻って就寝していった。他のテントから物音がしなくなってどれくらい経っただろうか。リーフがレッドのテントに入って来て、レッドを起こす頃には月も真上にまで登っていた。

 

 

「レッド、起きて。一緒に、ピッピの儀式を見に行こうよ。」

 

「………………。」

 

 

そう言えばそんな約束したっけ。ちょっと、眠いけど…しょうがない。

 

 

リーフに起こされたレッドはそっとテントから出ると、リーフに連れられて歩く。

少し歩くと、オツキミ山の中腹に小さな泉が見えてきた。

 

…こんなところに泉があったのか。

ニビシティのポケモンセンターで調べた限りでは、オツキミ山にこんな泉があるなんて情報はなかった。となると、ここはかなりの秘境で…リーフはきっとかなりマニアックなサイトまで調べたんだろう。

 

レッドがそんな事をぼんやりと考えていると、彼女がハンドサインで"止まれ"の合図をして来る。彼女の意図を図りかねて、彼女の視線の先にレッドも視線を合わせる。

 

 

「……凄い。これが、噂の"ピッピのお月見"なのかな。」

 

「………………。」

 

 

目の前にピッピとピクシーの群れが現れた。ピクシーたちは泉から少し距離を置いた位置で泉に向かうピッピたちを眺めていた。ピッピ達はというと、泉を囲うように近付くとおもむろに何かを泉に投げ入れた。

 

 

「……あれは、月の石?」

 

「……月の石だって?」

 

「多分そう。前にニビシティの博物館で見た事あるから間違いないよ。」

 

 

レッドは驚いていた。

ピッピが投げた"月の石"は、人間社会ではかなり希少な鉱石として知られている。ゆえに、10体ほどのピッピがそれぞれ投げた石が全て月の石であるならば、希少な鉱石として有名な月の石をピクシーたち一行は少なくとも10個持っていた事になる。

一体どこでそれ程の数を手に入れたのか?ピクシー達には、自分達だけが知る採掘場のようなものがあるのか?レッドはピクシー一行が推定10個の月の石を保有している事に驚きつつも、彼あるいは彼女らがどこでそれらを入手したのかについて思案を巡らしていた。

 

 

「あっ…。ねぇ、レッド。ピッピたちが泉の周りで踊り出したわ。」

 

「……まさか。」

 

 

ピッピたちが泉を囲ってグルグルと回るように独特の動きで踊り出すと、ピッピたちは少しずつ青白い光に包まれ出した。一匹、また一匹とピッピたちが次々に青白い光に包まれて行く。

それからどれくらい経っただろうか?実際は、数分も経ってないのだろうが…数十分もその儀式をしていたように感じる程に、レッドとリーフは見蕩れていた。

いつの間にか、儀式中のピッピの中にはピクシーに進化している者も現れた。そうして、ピッピ達の半分以上がピクシーに進化してきた時、儀式は突然中断せざるを得なくなった。

 

 

「へぇーこれが、あの有名な"ピッピの御月見舞踊"ってか。そこのピクシー共にポコポコ、ガキ仕込ませりゃあ…満月の日は大儲けできそうだなァ!!」

 

「……悪くない考えだが、今はコイツらが儀式石と勘違いして採取した石を奪う方が先だ。」

 

「へいへいっと。じゃあ、そこのピクシーとピッピ共はオレが捕まえても良いよな?」

 

「……好きにしろ。だが、世話くらいはしろよ?"処分"するこっちの身にもなれ。」

 

「安心しなァ!!ガキこさえられなくなったら、オレのギャラドスのエサにしてやるからよ!!」

 

 

突如乱入してきた男達は黒い服装に身を包んだ、如何にも柄の悪そうな連中だった。

男の一人が泉に放ったギャラドスによって、次々にピクシーやピッピ達が攻撃され、捕獲される様子を見ていたレッドはリーフが反応するよりも早く、草むらから飛び出していた。

 

 

「……いい歳した大人がポケモンの乱獲か?悪いが、ポケモントレーナーとして止めさせて貰うぞ。」

 

「おー?誰かと思ったら、威勢の良いガキじゃねぇか。ガキはおネンネの時間だろぉッ!!」

 

「……おい、さっきの話を聞かれている可能性がある。子供には悪いが、消すしかない。」

 

「……今退くなら、見なかった事にしてやる。これは最後通告だ。」

 

「へッ!!ガキがヒーローごっこかぁ?十年早ぇよッ!!ギャラドス、破壊光線!!」

 

「……GO、エーフィ(エリア)電磁砲(でんじほう)!!」

 

 

ギャラドスが口から橙色とも、紅色とも呼べる赤みがかった光線をエーフィ(エリア)に向けて放つ。しかし、レッドが指示した電磁砲(でんじほう)によってギャラドスの破壊光線はいとも簡単に押し潰されて、稲妻走らせる青い球体はギャラドスの口内で爆ぜる。

ギャラドスは断末魔とも思える絶叫を上げると、穴という穴から煙を吹き出して水飛沫を上げながら泉に浮かんだ。

 

 

「……おいおい、オレのギャラドスが殺れれるってマジかよ。」

 

「…チッ。お前のギャラドスで勝てないなら、勝算はない。目的のモノも手に入った。ここは一時撤退だ。」

 

「お、おい!!クソっ、覚えてろよ!!」

 

 

ギャラドスを繰り出した男は自慢のポケモンがたった一匹のポケモンによって倒された事に衝撃を受け、目を見開いた。もう片方の男は、ギャラドスを繰り出した男が負けると戦略的撤退を宣言して闇夜を駆け出した。ギャラドスを繰り出した男は、男に釣られるようにその後を追った。

目の前の男二人が逃げ出すのを視認すると、レッドはリーフに「……ピクシーとピッピを頼む!!俺は、あの二人を追う。」とだけ言って、二人の後を追って駆け出した。泉を横切る途中、儀式を邪魔されたピッピ達に「……乱入して済まない!!お前らの大事なモノは絶対取り返してくるから、待っててくれ!!」と言ってピッピ達の横を通り抜けた。

 

 

「……エリア、あの二人の位置は分かるか?」

 

フィッ!!

 

「……そうか、案内を任せる。」

 

 

レッドはエーフィ(エリア)の先導に従って、闇夜を駆け抜ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男たちを追って行くと、今にも倒壊しそうな廃墟に行き着いた。レッドはその不気味さに気圧されながらも、意を決して中に入ろうとする。すると、中から母と同じ30代の風貌をした貴婦人が現れる。

その貴婦人は、全身黒色で統一され宛ら喪服のような姿であった。よく、テレビで一部の貴婦人が被る「女優帽」と呼ばれる特徴的な帽子を被り、簡素なドレスを着用していた。勿論、どちらも黒色で統一されている。そして、腕を覆い隠すように白色のオペラグローブを装着していた。月に照らされ、より鮮明になった貴婦人を見て…レッドは白髪でグラマラスな体型をした目の前の貴婦人が、どこか浮世離れした存在のように感じた。

 

 

「ここから先に進めば…待っているのは地獄。それでも、そなたは進むのかのう?」

 

「……誰だ。」

 

「人助けはマーシュという娘で十分ではないかのう?今回もまた、人助けならぬポケモン助けができるとは限らんぞ。」

 

 

レッドの質問に貴婦人は答えない。貴婦人の言葉の節々から、自分の求めている答え以外に返答するつもりはないと言わんばかりの印象を受けた。

 

 

「……悪いが、ピッピ達が奪われたモノを取り返さなくちゃ行けないんでね。邪魔するならーー」

 

「ふふっ、あの御方が言っていた通りじゃ。随分と好戦的で、青いのう。安心せい、妾はそなたの敵ではない。」

「寧ろ、協力者と考えて貰っても構わぬぞ。」

 

「……協力者?」

 

「そうじゃ、ここの中に居る者とはちと因縁があっての。妾一人では、荷が重い。ゆえに、ここに用のあるそなたとは少なくとも協力できるはずじゃろうて。」

 

「……ピッピの儀式石を取り戻せるなら、構わない。」

 

「そうか、では交渉成立じゃな。」

 

「……俺はマサラタウンのレッドだ。アンタは?」

 

「妾はヒスイ地方より来たロマーシカと申す者じゃ。」

 

「……ヒスイ?聞かない名前だ。」

 

 

ヒスイ地方?聞いた事がない。この女はどこまで信用できるんだ?地理は得意な方じゃないけど…それでも世界に存在する地方はある程度言えるし、場所も問題なく分かる。だけど、ヒスイなんて名前は聞いた事がない。もしかしたら、俺が忘れているか知らないだけなのかもしれない。

……どちらにせよ、余り信用し過ぎるのは良くないな。目的を達成したら、直ぐに離れた方が良さそうだ。

 

 

レッドの不信感を感じ取ったのか、ロマーシカは穏やかに微笑む。だが、返ってロマーシカの配慮がレッドの不信感を加速させた。

底の見えない相手。日付的には昨日の事だが、目の前のロマーシカはサカキと対峙した時の不気味な感覚を彷彿とさせて、レッドに若干の鳥肌を立たせた。

そんなレッドを見て、ロマーシカは眉毛を八の字にして困ったような顔をした。

 

レッドが警戒しているからか無言のまま廃墟を突き進む二人だったが、廃墟の中にあった階段を降りると不意に扉が現れた。

扉からは聞き取れこそしないが、何かを喋っている声が聞こえた。声色から推測して、レッドは先程の連中の一人が居る事を察知すると、扉を破壊して乗り込んだ。

 

 

「……ピッピから奪ったモノを返して貰おうか。」

 

「ッ!!お前は、さっきのガキッ!!」

 

「……そうか、お前だけか。用はない、失せろッ!!」

 

 

レッドの威嚇と共に、背後に控えていたリザードは前に出ると龍の息吹(りゅうのいぶき)でそこら辺にあったものを灰にする。

 

リザードの攻撃と共に、レッドは逃げ惑う連中を敵対者だと判断して無差別に襲った。人もポケモンも見境なく襲うレッドを見て、「……溺れる、か。」とロマーシカはポツりと呟いた。

レッドが地下施設で暴れていると、金属製の重々しい扉から二人の男が現れる。

 

 

「まさかとは思いましたが…。ヒスイの魔女…なぜここに居るのですか。」

 

「さぁ、なぜじゃろうな。」

 

「ッ!!お前は、22番道路のガキ!!」

 

「………………!!」

 

 

緑色で特徴的な髪型をした中年の男は、どうやらロマーシカとの面識があったらしい。最も、お世辞にも良好とは言えなさそうなトーンで言葉を交わしていた。

そして、もう一人の男とは面識があった。そう、レッドが22番道路で逃げ惑っていた「マーシュ」を助けた際に、彼女を追い回していた男だった。警察に突き出したはずの男が、なぜここに居るのか等疑問は尽きなかったが…少なくとも、レッドの敵対者である事には間違いないと判断して、臨戦態勢となる。

 

 

「……魔女が純情な少年を誑かして何をするつもりなのかは分かりませんが、ここから立ち去るというなら今回は見逃しましょう。」

 

「怖気付いたか、ゲーチス。相手はただの女と子供だ。お前らしくもない。」

 

「いいえ、折角あの御方から頂いたこの施設を壊すワケにも参りませんので。それに、我々の目的も一定は果たせました。ゆえに、これ以上アナタ方と争うつもりはないという事です。」

 

「……ピッピの儀式石を返してくれるなら、別に俺もアンタらと争う理由はない。」

 

「……ピッピの儀式石ですか。この石を使った研究はあの御方に捧げる重要なモノなのです。どうか、諦めて頂けませんか?」

 

「……聞けない相談だ。」

 

「……そうですか、では…争うしかありませんねッ!!」

 

 

ゲーチスはポケットからモンスターボールを取り出すと、クロバットを取り出した。レッドは、リザードを下げてピジョンを繰り出して対抗する。

レッドは即座にピジョンへ砂かけ(すなかけ)を指示して、砂塵を舞い上がらせる。そして、舞い上がらせた砂塵が落ちる前にーー竜巻(たつまき)を指示して擬似的な砂起こし(すなおこし)を作り出す。擬似的な砂嵐を前に、クロバットは巻き込まれまいと後退る。

しかし、レッドはクロバットを逃がさんとばかりに擬似的な砂嵐に向けて風起こし(かぜおこし)を放つ事で、クロバットを砂嵐の中に閉じ込めようと画策。見事に砂嵐に巻き込まれたクロバットは視界を奪われる。

 

 

「………………。ピジョン、左80°上30°に向かって電光石火(でんこうせっか)。」

 

 

レッドの細過ぎる指示にも律儀に頷いたピジョンは、左80°上30°に身体を向けて突撃する。そして、ピジョンが砂嵐の中に消えたかと思うと、次の瞬間…砂嵐の中からクロバットの悲鳴が聞こえてきた。

すかさず、レッドはピジョンへ後退を指示。そして、次いで「右60°下45°に電光石火(でんこうせっか)」とまたもや細かい指示を飛ばす。

 

 

「………………。方向は分かっても、正確な距離まで特定できていない以上…まだ改善の余地はありそうだ。」

 

「ほぅ…まさか、これ程とは。あの御方が認めるだけの坊やじゃ。」

 

 

レッドは敵との正確な距離を計り切れていない事に若干の苛立ちを見せつつも、直ぐにその表情を隠した。

レッドの戦いを後ろから見ていたロマーシカは、目を細めて興味深そうにレッドとピジョンの戦い方を傍観していた。

 

ピジョンの二度に渡る強襲攻撃に翻弄されたクロバットだったが、子供相手に苦戦するクロバットに苛立ったゲーチスは、クロバットにエアカッターを命令して擬似的な砂嵐を掻き消す。

しかし、レッドはピジョンの強襲作戦が長く続かない事やピジョンがクロバットに決定打を有さない事を踏まえて砂嵐が消える直前にエーフィ(エリア)と交換する。

 

 

「……なるほど、優勢だったピジョンを下げる意図は…あくまで撹乱と主導権の確保か。面白いのう、歴戦の地方チャンピオンが繰り出すような老練な戦い方じゃな。」

 

 

エーフィ(エリア)を繰り出したレッドは、砂嵐が消えて顕になったクロバットに向けて先制攻撃のサイコキネシスをお見舞する。

レッドのサイコキネシスによって地面に強く叩き付けられ、物理的に身体の至るところを引き伸ばされたり縮ませたりされたクロバットは気絶した。ピジョン・エーフィ(エリア)の作戦勝ちである。

先発のクロバットを殺られたゲーチスは顔を歪ませたが、部下達に悟られまいとすぐさまかき消した。しかし、レッドはゲーチスの心の中に生まれた僅かな焦りを見逃さなかった。

 

 

「………………。どうした、相手はただの子供だ。余り遊んでいると子供相手に醜態を晒す事になるぞ?」

 

「……良い腕を持っているではありませんか。ですが、そう易々と負けるワケには行きませんよッ!!」

 

 

レッドに煽られたゲーチスはオニドリルを繰り出してエーフィ(エリア)蜻蛉返り(とんぼがえり)を命令。しかし、その攻撃はエーフィ(エリア)に触れる前に停止した。

 

 

「………………。その程度の見え透いた攻撃に被弾すると思ったか?舐められたものだな。」

 

「…フフっ、コギト……中々面白い少年を手に入れたようですね。」

 

「おや、ゲーチス。何時もの魔女呼ばわりはどうした?余程、余力がないと見える。」

 

 

 

レッドはおよそ子供が放つ言葉とは思えない言葉でゲーチスの命令した攻撃を非難する。レッドから溢れる殺気とプレッシャーに気圧されたオニドリルは、本能的に主の傍まで後退る。ゲーチスがロマーシカに遠回しな憎まれ口を叩くと、ロマーシカは手を口で覆ってゲーチスを嘲る。そんなロマーシカの言動にゲーチスは眉間に皺を寄せてプルプルと震えていた。

レッドはゲーチスを睨むと、「タイプ相性だけで、俺のエーフィ(エリア)を倒せると思うなよ。」と言い放って恩返し(おんがえし)を指示。レッドの言葉を受けたエーフィ(エリア)はオニドリルに向けて突進する。エーフィ(エリア)の恩返しを受けたオニドリルは壁際にまで吹っ飛ばされる。

そして、動きが鈍くなったところに止めの電磁砲(でんじほう)が炸裂する。これにより、レッドは無傷でゲーチスのポケモン二匹に勝利した。

 

 

「……くっ。スピアー、アーボック行きなさい!!」

 

 

レッドに圧倒されて後がない事を悟ったゲーチスは、二匹のポケモンを同時に繰り出す。レッドはゲーチスの行動を見て後がないのだと悟ると、ピジョンを再び繰り出して迎撃体制を整える。

エーフィ(エリア)のサイコキネシスでスピアーとアーボックの動きを一瞬止める。その隙に、ピジョンへ先ほどと同じように砂起こし(すなおこし)からの竜巻(たつまき)で擬似的な砂嵐を作り出させる。そして、エーフィ(エリア)のサイコキネシスとピジョンの風起こし(かぜおこし)で確実に一回で砂嵐の牢獄に敵を監禁する。

スピアーとアーボックの二匹が確実に砂の牢獄に囚われた事を視認すると、スピアーに向けてピジョンの電光石火(でんこうせっか)を浴びせ、アーボックにはエーフィ(エリア)恩返し(おんがえし)を浴びせる。

 

エーフィの足止めとピジョンの撹乱。そして、敵の視界を奪ったところで二匹同時に強襲攻撃を敢行する。一連のレッドの指示はクロバットで経験したゲーチスにとっては分かりきった事のような流れであったが、余りにも鮮やか過ぎるレッドの間断ない指示に頭では分かっていても反応する事ができなかった。

次にゲーチスが動き出せたのは、既にスピアーとアーボックがレッドのポケモン達によって瀕死に追い込まれた後であった。

 

 

「まさか、マサか、マサカッ!!こんな子供相手にワタクシのポケモンがあっさり殺られるなんてッ!!」

 

「………………。さぁ、ピッピの儀式石を返して貰おうか。」

 

「ッ!!レッド!!」

 

 

子供相手に完全敗北したゲーチスは怒り狂って、"Emergency"とイッシュ古語で書かれた如何にもヤバそうなボタンを握り拳で叩いた。

けたたましいサイレン音と共に、ゲーチスの背後からマルマイン達が次々に出現する。不気味に口元を歪ませるそのポケモン達は、レッドに向かって一斉突撃を敢行した。瞬時に、危険を感じ取ったピジョンはレッドを庇うように前へ出て、電光石火(でんこうせっか)で迎撃する。

突撃してきたマルマインは次々に眩い光に包まれ、大爆発(だいばくはつ)を実行する。数匹のマルマインの大爆発(だいばくはつ)に直撃したピジョンは、満身創痍になりながらも辛うじて飛行を続けていた。

 

 

「良いでしょう。アナタのポケモンバトルの強さに免じて、この石は差し上げましょう。喜びなさい、それはアナタのものなのですから。」

「……最も、生きて帰れたらの話ですがねッ!!」

 

「……ゲーチスッ!!」

 

 

マルマインの大爆発を皮切りに、次々とゲーチスの部下が押し寄せて来る。不利を悟ったレッドは目的の儀式石を奪取した事もあり、撤退を開始する。

 

 

「レッド、人を呼んでおる。夜明けまで逃げ切れば、救助して貰えるじゃろうて。」

 

「……ソイツは、信用できるんだな?」

 

「問題ない。その者たちはカントー地方兵組織の者たちじゃ。」

 

「……地方兵組織だと!?」

 

 

地方兵組織。

それは、各地方を守護する防衛軍であり、ポケモンリーグ運営委員会の矛でもある。その主な職掌は、災害救助や対テロ組織との戦闘に特化したものである。地方兵組織の司令は地方チャンピオンが務め、各地方兵組織を纏める総司令にはセキエイチャンピオンが就任するという不文律が存在していた。今は、セキエイチャンピオン"代行"の四天王筆頭格たるワタルが務めている事はカントー地方やジョウト地方では常識だ。

 

そんなポケモンリーグ運営委員会の暴力装置をいとも簡単に呼び出せる目の前の女に驚きつつも、その声色と表情から嘘ではない事を見抜く。

なぜ、ロマーシカと名乗る女性が敵対者と思わしきゲーチスから"コギト"と別の名前で呼ばれ、彼女が"ヒスイの魔女"と称されるのか。また、ポケモンリーグ運営委員会の暴力装置である地方兵組織を招集して私兵のように扱えるのか。疑問は尽きないが、今はゲーチスからの追手を振り切る事が最優先だと頭を振ったレッドは、逃げ切る事に意識を集中させる。

来た道を帰って、階段を駆け上がると誰もいないはずの廃墟を黒ずくめの男たちが取り囲んでいた。

 

 

「……そう易々と逃がしてはくれないらしい。」

 

「レッド、戦いは最小限にするのじゃぞ。オツキミ山にある泉で合流する手筈じゃ。彼の地ならば、夜明けまでに辿り着けるじゃろうて。」

 

「……分かった。そこまでの道順は覚えている。ゲーチス達が追い付く前にコイツらを突破しよう。」

 

 

レッドはピジョンを繰り出して、臨戦態勢の構えを見せる。ロマーシカを背後に下がらせ、レッドは黒ずくめの男たちを睨み付ける。

後世、オツキミ山事件と称されるこの事件は佳境を迎えようとしていた。後に、この事件はレッドという男の異常さを強調する事件の一つとして語り草にされる事となる。




ちなみに、当作品のロケット団は非常に凶悪となっております。構成人数は世界に散らばっているものの脅威の200万人以上。ロケット団はサカキのカリスマによって独裁的な組織となっていますが…サカキを支えるロケット団最高幹部には歴代ポケットモンスター作品のあのボスが…!?そして、最高幹部に仕える幹部たちの中にはあんな敵キャラやこんな敵キャラも!?
そう、この作品では世界に散らばるいわゆる悪の組織の根源というか大元はロケット団なのです。全ての悪の組織はロケット団から始まる。レッドがポケモンバトルの原点なら、ロケット団元いサカキは悪の組織の原点と言ったところでしょうか。

さて、そんなサカキとレッドの「ロケット団vsレッド」の抗争が始まろうとしています。
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