俺はーーマサラタウンのレッドだ。   作:ムキムキぷりん

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感想、有難く拝見させて貰ってます。今のところ感想はちょっとしかないので、全ての感想に返信させて貰ってます。
こんな小説をお気に入りにしてくれてるそこの奇特な人たち、感想書いて言っても良いんですよ?(/ω・\)チラチラ


第8話 溶けて混ざって

目の前の少年が放った言葉に困惑する。

 

僅か9歳の子供が軍属?自ら少年兵になるというのか?

確かに、コギト様の話を聞く限り…初めて捕まえたポッポを目の前で喪ったという凄惨な出来事を経験した今、地方兵組織に入隊して仇を討ちたいと考えるのは理解出来る。

しかし、普通…9歳の子供と言えば怒りよりも悲しみの方が先に来るのではないか?この少年は一体ーー

 

 

「…のう、オーキド少佐よ。ワタルには私の方から伝えておくゆえ、坊やをそなたの部下にしてはくれぬか?」

 

「コギト様!?いや、しかしーー」

 

「まぁ、少佐の地位では流石に現場裁量とは行かぬか。良かろう、"ぽけぎあ"なるものをを貸してくれぬか?」

 

 

ロマーシカはユウサクからポケギアを受け取ると、慣れない手つきでポケギアのボタンを押して通話を始める。

話の節々で「ワタル」という単語が聞こえて来たので、レッドは通話相手が地方兵組織のトップである「ワタル」なのだろう。ロマーシカがポケギアで通話をし始めてから少し経った頃、不意にユウサクへポケギアを渡す。

 

 

『オーキド少佐、レッドという少年を君の部下として地方兵組織に加える事を決定した。』

 

「ーーは?しかし、選抜試験等ーー」

 

『必要ない、他ならぬコギト様の推挙だ。それに、その少年は我々が長年抗争をしている「ロケット団」の幹部に接触した人間だ。』

 

「ッ!?」

 

『その上、コギト様曰く…信じ難い事だが、彼はロケット団幹部のゲーチス・ハルモニアに圧勝したという。実力の面で言っても申し分ない。』

 

「ゲーチスと!?」

 

『…分かるか?これ以上は通話越しでは話せないが、彼は我々の彼岸であるロケット団解散を叶える鍵だ。ゆえに、彼を引き入れる事は決定事項だ。』

 

「……はっ。」

 

『レッドくんに通話を替わりたまえ。』

 

 

「電話だ」と言って、ユウサクが不意にレッドへポケギアを渡す。レッドは頭にクエスチョンマークを浮かべながらも、彼のポケギアを受け取る。

 

 

「……もしもし?」

 

『レッドくんだね?初めまして、僕はポケモンリーグセキエイチャンピオン代行のワタルだ。』

 

「………………!!」

 

『君の望み通り、君の地方兵加入を認めよう。配属先は…そうだな、これも何かの縁だ。オーキド少佐の元に行くと良い。』

 

「……了解した。」

 

『最も、軍属と言っても君には特別任務を与える。』

 

「………………?」

 

『恐らく、ロケット団は必ず君の元に再び現れる。だから、君にはロケット団構成員の捕縛をお願いしたい。』

『君ほどの実力ならば、不可能ではないだろう?』

 

「……承った。ロケット団と接敵した際は、捕縛して其方に突き出そう。」

 

『うん、期待しているよ。ただ、君の年齢は少年兵に該当してしまい…国際軍事憲章を違反する事になってしまう。』

『ゆえに、君には偽名を使って貰う。コギト様からの命令では、"ソレイユ"という名を使うように言われている。だから、君はこれからロケット団と戦う時はソレイユと名乗るんだ。良いね?』

 

「ーーソレイユ。分かった。」

 

『では、オーキド少佐に替わりたまえ。』

 

 

……ソレイユ、それが地方兵組織での俺の名前か。俺の記憶に間違いがなければ…ロケット団とはタマムシシティとヤマブキシティで確実に接敵する事になるはずだ。

特に、タマムシシティはロケット団の金庫がある。ここを攻め落とせば、ロケット団の財政状況は一気に悪化するはずだ。

 

……しかし、それとは別に気になる点がある。あの服装は間違いなくロケット団のものだ。だが、ゲーチスという人間は聞いた事がない。あの様子から考えると少なくとも幹部クラスだろう。

幹部クラスにゲーチスという人間が居た記憶はない。俺が忘れただけという線もあるが…何せ、ここは俺のいた世界とは違う。俺の記憶の中にあるロケット団とは異なる可能性だって考えられる。

……地方兵組織という存在だって、俺のいた世界にはなかった組織だ。ジョーイやジュンサーと言った女性も居ない。ポケモンセンターやフレンドリーショップという存在こそ、俺のいた世界と同じで存在しているが…特にポケモンセンターに居るはずのジョーイという女性が居ないなどの相違点がある。

それらの事を踏まえれば、俺のいた世界のロケット団はカントー地方とジョウト地方に勢力を持つ反社会的勢力だったが…それよりも凶悪かつ凶暴になっていてもおかしくはない。

 

この世界の俺を取り戻すには、ピジョットの仇を討つしかない。

……そうなると、必然的にロケット団の解散は必要十分条件だ。だが、ロケット団を解散させるには少なくともサカキを倒す必要がある。偶然か必然か…俺のいた世界ではオツキミ山でサカキと出会うといった事はなく、タマムシシティで偶然ロケット団のアジトを発見してサカキと会ったのが初めてだったはず。

だが、この世界ではオツキミ山で出会うというかなり早い出会いとなった。そして…俺は負けた。そう、今の俺ではサカキを倒す事は到底不可能だ。少なくとも、今のエーフィくらいに手持ちのポケモンを育てなければ、サカキと戦って勝つなど不可能だ。

 

 

レッドが思案に耽っていると、不意にユウサクがレッドに話しかけてきた。

 

 

「レッド、君の地方兵加入が決定した。階級は二等兵、1番下だが問題ないか?」

 

「……問題ない。」

 

「では、君にはロケット団構成員の捕縛という特殊任務にあたって貰う。しかし、君の存在は地方機密だ。分かっていると思うが、君が地方兵に所属している事は許可が出るまで他言無用で願いたい。」

 

「……分かった。」

 

 

その後、ユウサクと少し会話をすると、彼らはどこかへ消えた。

ユウサクが居なくなるのを見送った後で、リーフとブルー、イエローにはここから先は一緒に旅ができない旨を伝えて、彼女らの前から立ち去った。

リーフは最後まで頑なに反対していたが、ブルーがリーフを宥めてくれたお陰でなんとか混乱を最小限に留める事ができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、ハナダシティに着いてしまったのか。早いのう。」

 

「……最短ルートは記憶している。」

 

「そうじゃったか。」

 

 

リーフ達と別れた後…一人旅をするつもりだったレッドだったが、なぜかロマーシカは着いてきていた。レッドはロマーシカに「坊やの行く道を見届けさせてくれぬかの?」言われて丸め込まれた感は否めないが…ともあれ、レッドはロマーシカと共に旅する事になったのである。

オツキミ山を一気に下山して、4番道路を僅か6時間程度で走破したレッド。常人というか普通はオツキミ山からハナダシティまでは徒歩なら1日から2日をかけて走破するはずだが、「前世」で最短ルートを熟知していたレッドにとっては半日もかからずに走破する事など余裕であった。

レッドの旅路に眉毛を八の字にしながらも内心ウッキウキでレッドに着いていくロマーシカは、レッドがジム戦に挑戦する姿を見たくてレッドに次の動向に関して聞く。

 

 

「それで、坊や。早速ハナダジムにでも挑戦するのかの?」

 

「……ジム戦か。確かに今日中に9番道路を走破しようと思ったら、ジム戦は先に済ませた方が良いのかもしれないな。」

 

 

 

 

 

 

ハナダシティに到着して、早速ハナダジムに向かったレッドとロマーシカ。ジムリーダーのカスミが居るかどうかを確認して、ジムの最奥へと進む。

 

 

「貴方が挑戦者ね!!私は、ハナダジムのジムリーダー カスミよ!!」

 

「……俺は、マサラタウンのレッドだ。」

 

「あのね、君!!ポケモン育てるにもポリシーがあるやつだけがプロになれるの!!」

「貴方はポケモン捕まえて育てる時、何を考えているの?」

 

「………………。」

 

「私のポリシーはね、水タイプポケモンで攻めて攻めて…攻めまくる事よ!!」

 

 

ジムリーダーのカスミが勝負を仕掛けてきた。カスミはヒトデマンを繰り出した。

レッドは、ピカチュウを繰り出してカスミに対抗する。

 

 

「ヒトデマン、水鉄砲(みずでっぽう)よ!!」

 

「……ピカチュウ、高速移動(こうそくいどう)で躱せ。」

 

「……ッ!!やるわね!!」

 

 

ヒトデマンの攻撃を軽やかな身のこなしで躱したピカチュウは、高速移動(こうそくいどう)でヒトデマンとの間合いを詰める。

ヒトデマンの懐に入り込んだピカチュウは、レッドの指示でスパークを放つ。ピカチュウの至近距離から放たれるスパークに、ヒトデマンは耐え切れず倒れる。

 

 

「ヒトデマン!?」

 

「……次。」

 

 

レッドはカスミに、次のポケモンを出すように催促する。カスミはレッドから放たれる異様な雰囲気に気圧されつつも、カスミのエースであるスターミーを繰り出す。

 

 

「ヒトデマンが倒されちゃったのには驚いたけど…次はこう易々とは行かないわよ!!」

 

「……スターミーか。」

 

「スターミー、ハイドロポンプよ!!」

 

「………………!!」

 

 

スターミーから放たれるハイドロポンプが低耐久のピカチュウにとって致命的なものであると悟ったレッドは、ピカチュウに高速移動(こうそくいどう)で躱すように指示。

スターミーのハイドロポンプを間一髪で躱したピカチュウは、レッドの指示で攻撃と攻撃の僅かな間隙を縫って電磁波(でんじは)をお見舞いする。

スターミーの機動力を奪ったピカチュウは、練り上げた機動力で容赦なく間合いを詰める。スターミーはピカチュウを近付けまいと怪しい光(あやしいひかり)を放つも、銀色に硬化させた尻尾で怪しい光(あやしいひかり)を粉砕する。

ピカチュウのアイアンテールによって追い込まれたスターミーは、尚もサイコキネシスでピカチュウに抵抗する。しかし、ピカチュウのスパークに捕まり、その意識は途絶えた。

 

レッドの圧勝である。

 

 

「うーん…!!私の負けね。しょうがない!!」

「私に勝った証拠に、ブルーバッチをあげる!!」

 

「………………!!」

 

 

【レッドはカスミからブルーバッチを貰った】

 

 

レッドはカスミからブルーバッチを貰うと、ジムバッチ2個目の獲得という事もあって、賞金5万円を追加で獲得した。

その後、カスミと次のジム戦に関して相談した結果、次は当初の目標通りシオンタウンを経由してクチバシティを目指す事になった。何やらカスミは今日二人もジムチャレンジャーが訪れて二連敗したのがかなり悔しかったらしく、「次戦う時はこうは行かないんだから!!」とレッドを恨めしそうに見つめながらジムを出る彼の背を見送っていた。

 

ハナダジム戦での圧勝劇に、ロマーシカは満足気にレッドの事を褒めていた。ロマーシカがご機嫌だった事もあり、レッドは足早にハナダシティを出発する事に決めた。

 

 

 

 

 

 

「よう、レッド!!まだ、こんなところをうろちょろしてるのか?」

 

「………………。」

 

「オレなんか強いの凄いの色々捕まえちゃって、絶好調だぜ!!」

 

「………………。」

 

「…どれどれ、レッドはなんか捕まえたか?見せてみろよ!!」

 

 

ハナダシティの北にある橋からやって来たグリーンと出会ったレッドは、グリーンと一緒にポケモン図鑑の見せ合いっこをしていた。レッドが心做しか楽しそうな表情を見せていたのを、ロマーシカは見逃さなかった。

グリーンはレッドよりも沢山のポケモンを発見して捕まえた事を喜び、レッドに自慢していた。レッドとグリーンの歳相応のやり取りを微笑ましく眺めていたロマーシカだったが、不意にグリーンが鍛えたポケモンを見せようという流れになってポケモンバトルをする事になった。

 

 

「行くぜ、レッド!!行けっ、ピジョン!!」

 

「……ラルトス(サナ)、行っておいで。」

 

 

出会い頭に、ピジョンは電光石火(でんこうせっか)を繰り出す。しかし、グリーンの行動パターンを熟知していたレッドは、敢えてその攻撃を許してピジョンが接触したタイミングに合わせてラルトス(サナ)にドレインキッスを指示。

グリーンにはラルトス(サナ)のドレインキッスがピジョンにギリギリ当たらなかったように誤認させつつ、確実にピジョンへダメージを与える事に成功する。そして、ピジョンへのダメージをカモフラージュするように、ラルトス(サナ)影分身(かげぶんしん)を指示してピジョンに与えたダメージを消耗戦による結果と、グリーンへ誤認させるような布石を打つ。

 

更に、影分身(かげぶんしん)によって下降した本体への被弾率を踏まえて、安全圏からピジョンに向かって催眠術(さいみんじゅつ)を放つ。

ラルトス(サナ)催眠術(さいみんじゅつ)に被弾したピジョンは、地に落ちる。ピジョンが催眠状態に陥った事を確認すると、ラルトス(サナ)念力(ねんりき)でピジョンを確実に仕留める。

次いで登場したラッタも難なく突破。ラルトス(サナ)の極限まで高められた回避率を前に一発の攻撃すら当てられずに安全圏から放たれる念力(ねんりき)を前に倒れる。二匹続けてラルトス(サナ)に難なく倒されたグリーンは、悔しそうにだがどこか嬉しそうに口に弧を描いて呟く。

 

 

「…レッド、戻ったんだな。あの時のお前に。」

 

 

ピジョンとコラッタを立て続けに倒されたグリーンは、続けてブラッキーを繰り出す。ブラッキー相手に安全圏からの念力(ねんりき)は相性的に効果がないと悟ったレッドは、接近戦に勝負を持ち込む。ラルトス(サナ)のドレインキッスはブラッキーに対して有効打となり得る。しかし、ブラッキーにも当然接近戦ではラルトス(サナ)への有効打となり得る噛み付く(かみつく)を持っている。

レッドは数秒考えた末に、ラルトス(サナ)へ影分身も含めて全員で一斉攻撃を指示。四方八方から迫り来るラルトス(サナ)の大群にブラッキーは二度蹴り(にどげり)で必死に抵抗。しかし、次第にブラッキーの攻撃よりも影分身からの接触の方が早くなっていくと、遂にラルトス(サナ)本体からのドレインキッスが炸裂。

ブラッキーはラルトス(サナ)からのドレインキッスにふらつきながらも、噛み付く(かみつく)ラルトス(サナ)を攻撃。ブラッキーは瀕死に追い込まれるも、ラルトス(サナ)を瀕死寸前にまで追い詰める事に成功した。

 

 

「……ポケモン一匹に、オレたちが壊滅寸前にまで追い込まれるなんてな。やっぱお前はそこらのジムリーダーなんかより全然強えよ。」

 

「………………。」

 

「だけど、このままじゃ終われねぇ。そうだよな、カメールッ!!」

 

 

グリーンがエースのカメールを繰り出す。レッドのラルトス(サナ)に渾身の力を込めて、水の波動(みずのはどう)を放つ。既に満身創痍のラルトス(サナ)は青く身体を照らしながら、返しの念力(ねんりき)を放つ。

前回の勝負同様に土壇場でレッドのポケモンが進化した事に驚きながらも、二の舞にはならんとばかりにグリーンはキルリア(サナ)を徹底的に追い詰める。

 

ラルトスからキルリアに進化したサナだったが、グリーンの間断ない攻撃によって追い詰められ、元々体力も限界だった事もあって倒れる。

しかし、次鋒として繰り出されたエーフィ(エリア)のサイコキネシスの前に、カメールは一瞬でねじ伏せられた。エーフィ(エリア)の圧倒的な力を見せつけられたグリーンは、彼女の力に恐れを抱きつつも目を輝かせた。だが、同時に駆け引きもクソもないポケモンを繰り出したレッドに小さく舌打ちをして、恨めしそうに呟いた。

 

 

「なんだよー!!ムキになっちゃって!!」

「…分かった、分かった!!」

 

「………………。」

 

「へへーんッ!!良いもんね!!」

「オレってばマサキの(うち)に行って、珍しいポケモンたくさん見せて貰っちゃったもんね!!」

「お陰でポケモン図鑑のページが増えたぜ!!」

「何しろマサキは、有名なポケモンマニアだからな!!」

 

「………………。」

 

「…次は、俺が勝つんだからな!!じゃな、バイビー!!」

 

レッドがロマーシカと一緒に居た事に全く気付かず、レッドとポケモン図鑑の話やポケモンバトルをして用が済むとハナダシティへ帰ったグリーンを見て、ロマーシカは「嵐のような男じゃったの。」と呟く。

レッドの方をチラりと見ると、若干口を緩ませてキルリア(サナ)の入っているモンスターボールを握りしめていた。一瞬、少し楽しそうな嬉しそうな表情を見せたレッドを見て、ロマーシカは我が子を愛でるような瞳で彼を見つめた。

その後、レッドはグリーンがやって来た橋をロマーシカと共に渡った。道中、何人かのポケモントレーナーから勝負を仕掛けられたが、キルリア(サナ)によって薙ぎ倒して進んだ。

 

橋を渡り終えたところで、レッドは思いもよらぬ男と出会う。そうーー黒ずくめの男「ロケット団の下っ端」である。偶然、橋を渡りきったところで木陰に休んでいたロケット団の下っ端を発見したレッド。

レッドは問答無用で、ピカチュウに電磁波(でんじは)を指示。ロケット団を捕縛した上で、リザードと共に尋問にあたった。当初、ロケット団の下っ端はレッドを見下して口を割ろうとはしなかったが、リザードの噛み砕く(かみくだく)によって左手から順に指の関節を一本ずつ折られたロケット団の下っ端は白状して、オツキミ山での一件から逃げているロケット団の下っ端達が居る場所を自白。

その後も尋問を継続したがこれ以上の有益な情報を引き出せないと判断したレッドは、ロケット団の下っ端の両膝をリザードに噛み砕く(かみくだく)ように指示して逃げれなくした上で、リザードに引き摺らせながら聞き出した場所へ向かう。

ロケット団の下っ端は痛みに悶えながら泣き叫んで失禁していたが、レッドは興味もないとばかりの鉄仮面で「騒ぐな、可哀想だろう?静かに暮らしているポケモン達が」と目を釣りあげて言い放つ。そんなレッドを見て、ロマーシカは苦笑しながらも少し寂しげな表情を浮かべた。

 

ロマーシカにとって、レッドが倫理的に反する行為をしようが知った事ではない。だが、目の前の少年が残虐な行為を平然と行うまでに追い詰められている事に僅かばかり心を痛めていた。目の前の少年に在るレッドという「少年の精神」とソレイユという「青年の精神」。まだ僅かな時間しか行動を共にしていないとは言え、数百年を生きる彼女にとってレッドに二つの意識があるという実情を知っている以上、彼の変化を知る事は容易であった。

思念体ゆえに干渉力の弱い「青年」の意識は、普段であれば出て来ない。しかし、ポケモンバトルの最中に興奮して感情が昂ったり、追い込まれた際に"彼"は気まぐれに意識の表層に現れる。ロマーシカは、思念体のレッドをそう解釈していた。だが、ピジョットを失った事で"本来の"彼は殻に閉じ篭って意識が弱まり、代わりに相対的に思念体のレッドが意識の表層に現れたのだろう。そう、レッドの複雑な事情をロマーシカは心の中で考察していた。

そして、同時に思念体であるレッドの意識は自分の解釈の中で「ひび割れたコップに入った水」と形容していた。普段は、"こちら側"のレッドという大きなバケツにひび割れたコップに入った彼の思念体を入れて、何とか外に漏れないようにカバーしている。それでも"コップ"からは確実に漏れているので、コップの中が完全に消えれば"向こう側"のレッドという思念体元い記憶の集合体は霧散する。だが、辛うじて"こちら側"のレッドというバケツに収める事でその存在を保持している。だが、"向こう側"のレッドを意識の表層に現す行為は、バケツの外にひび割れたコップを放置する事に他ならない。つまり、今のレッドを支配している意識いや、思念体がやろうとしている行為は完全に自殺行為である。このまま行けば、自らの存在は"こちら側"のレッドというバケツに遺らずに薄まり、忘れ去られるだろう。

なぜ、このまま行けば思念体という存在が"こちら側"のレッドから薄まり忘れ去られるのか?それは、記憶とは水であり幾ら心を閉ざしたとしても、この先のレッドは80年以上あるその生涯に様々な経験をして記憶という名の"水"を自らの器であるバケツに放り込んで溜めていくだろう。記憶とはそうして混ざり合い、蓄積して行くものだ。ともすれば、僅か数年しかない"向こう側"のレッドという記憶など、ここから先の80年の記憶と何方の方が質的にも量的にも多いかと言われれば間違いなく後者だろう。そして、"向こう側"のレッドの記憶はやがて"こちら側"のレッドの記憶と溶けて混ざって希釈され、ゆっくりと消えて行くのだろう。その過程はひび割れたコップに入った水の中身が減る程加速する。だから、自殺行為なのだ。このまま行けば、彼のやっている事は何も遺らない。

 

哀れだと思ったのだろう、ロマーシカは眉毛を八の字にしながら悲しげにレッドを見つめた。二つの意識が同じ器に住む事は「システム」的に有り得ない。多重人格のように一つの意識元い思念体が表層に現れるのを繰り返すのが限界だろう。そして、その記憶を共有する事も不可能だ。少なくとも、"こちら側"のレッドは。そして、消え行く運命(さだめ)にある"向こう側"のレッドを遺すには、器を構成する知識、感情、意思のうち記憶という概念は概念上の世界(イデア)において感情と同類に区分されている。つまり、記憶とは感情の連続または蓄積の結果であるという解釈。つまり、記憶を記憶たらしめるのは感情あってこそ。感情によって蓄積された五感に基づく主観的情報を記憶とするならば、その逆は客観的情報であるデータだろう。本来、"向こう側"のレッドという存在は"こちら側"のレッドにとってデータに過ぎない。いや、"こちら側"のレッドが"向こう側"のレッドと概念上の世界(イデア)の一部である「夢」で接触した際のものは「記憶」とは言えなくもないが、それでも"こちら側"のレッドにして見れば大河に流れる雫に過ぎない。

そんな知識と感情、意識において、もし他の意識体元い思念体と共存の道を歩むのならば、"向こう側"のレッドの「記憶」が"こちら側"のレッドに遺る必要がある。最も、その場合は"こちら側"のレッドの感情と引き換えになる。そこまでロマーシカは考えて、軽く首を振った。まさか、"こちら側"のレッドが平行世界とは言え、どこまで言っても他人の"向こう側"のレッドという存在を遺すために自分の感情を犠牲にするなど有り得ないからである。感情は記憶を作用すると同時に、記憶によって感情も作用される。ゆえに、感情と記憶はニコイチで他の意識体の記憶に浮気するなど「システム」的に不可能である。そして、記憶が一つしか遺せない以上は今まで積み重ねた約10年(正確にはまだ9年ちょっと)の記憶と引き換えにする必要がある。

 

 

「……坊やはどこまで行っても修羅の道を歩まねばならぬのじゃな。」

 

 

少年の行く末を悲しみ、ロマーシカは唇を噛み締めた。

"こちら側"のレッドを取り戻そうとするほど、"向こう側"のレッドが消える可能性は高まる。ゆえに、"こちら側"のレッドが帰って来ても、待ち受けるのはもう一人の自分が消える未来。かと言って、何もしなければこの少年は廃人同然。

そう思えばこそ、彼女の瞳にはより一層の悲壮感を滲ませた少年の姿が映る。"こちら側"の少年が目を覚ました時、彼はきっと自分を責めるだろう。そして、恐らく…何時になるかは分からないがこれまで積み上げてきた自分の姿を否定して、これは俺の実績じゃないと苦しむのだろう。

いずれ訪れるレッドの苦難に心を痛め、神の気まぐれからたった一人の少年が苦難と挫折に苦しむ半生を歩まされる事を哀れんだ。

 

 

 

 

 

 

ロマーシカが憂鬱げにレッドを見つめているのを傍目に、ロケット団の下っ端への尋問を慣れた手つきで進めたレッドは、オツキミ山の一件でハナダシティまで来ていたロケット団の一部が別件で動いていた「ポケモンマニア マサキの誘拐計画」に参加する下っ端達の元に合流していた事を突き止める。

そこでレッドは記憶を頼りに、ハナダシティから少し北上した後に東へ行く計画を変更して北上を企図。「ポケモンマニア マサキの誘拐計画」のために待機しているロケット団構成員襲撃の計画を思案していたのであった。

 

 

「……見いつけた。」

 

 

拷問したロケット団の下っ端から引き出した情報通りの場所に待機していたロケット団の下っ端達数十名を発見したレッドは、今までにない殺気を見せる。リザードに引き摺られたロケット団の下っ端は、レッドの放つ殺気に怯えて身体を震わせながら奥歯をカチカチと鳴らす。

 

 

「……なぁ、ロケット団だろ?置いてけよ、その首ッ!!」

 

 

レッドは怒りのままエーフィ(エリア)を繰り出し、虚をつかれたロケット団の下っ端達に向けてオーバーキルもいいとこの電磁砲(でんじほう)を連発する。

エーフィ(エリア)の強襲を受けたロケット団の下っ端達は、大混乱になりながらも辛うじて何人かは手持ちのポケモンを繰り出して応戦する構えを見せる。

 

 

「クソっ!!なんだよコイツ!!」

 

「アーボック、あのポケモンを攻撃しろ!!」

 

「なんで、攻撃が聞かないんだよぉぉ!!」

 

 

阿鼻叫喚の地獄と化した崖下を興味なさそうに見つめるレッドは、ボソッと呟いた。

 

 

「……こんなものじゃない、ピジョットの苦しみは。」

 

 

マサキの家を襲撃しようとしていたロケット団数十名は若干9歳のレッド相手に一方的に蹂躙され、口から泡を吹いて倒れていた。

最後まで必死に抵抗していたポケモンがエーフィ(エリア)のサイコキネシスで倒れると、レッドはユウサクを呼び出してオツキミ山事件から逃れたロケット団の下っ端達の回収を要請した。

死体の山のように雑に積み重ねられたロケット団の下っ端の山を、無感情とも呼べる鉄仮面で見つめていたレッドだったが、不意に彼らの山の上に少女が現れる。

 

 

「悪いけれど、ここに伸びている男共は回収させてもらうわ。」

 

「……ナツメ。なぜ、お前が…!?」

 

 

目の前に現れた少女にレッドは驚く。その表情は受け入れられないような、味方だった存在が敵として現れたような状況に陥ったとでも言っているかのようにロマーシカの目には映った。




第5話 不協和音なのですが、レッドとサカキの対決シーンが後半部分(エリアちゃんが出てから)がちょっと淡白というか…あっさりしてるなぁと思いまして、こっそり加筆修正しましたのでよろしければお読み下さい。
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