IF ひなた in B組・前編
4月、この日は雄英の入学式だった。
ひなたは新品の制服を着て初めての登校をする。
ひなたは、入試の時に会った心操と校門の前でバッタリ会い、意気投合して仲良くなった。
ひなたは、クラスが書かれた掲示板を指差しながら心操を引っ張って一緒にクラスを確認しに行った。
「えっと、あ…あ…あった! 僕B組だよー! ひー君は?」
「俺はA組だ…」
「あー、違うクラスになっちゃったね」
「でも休み時間とか会えるだろ」
「それもそっか!」
ひなたが少し残念そうに言うと、心操はひなたの手に頭を置いて言った。
校舎に到着すると、二人はそれぞれA組とB組と書かれた教室の前で別れる。
「じゃ、俺こっちだから」
「うん!」
ひなたは、『1ーB』と書かれた7mはある引き戸の前に立った。
ドアを横にスライドさせると、スパァン!! と勢いよくドアがスライドしていった。
思ったより勢いよくドアが開いてしまったため、ひなたは目を点にし、少し恥ずかしがる。
するとその時だった。
「やあやあおはよう! はじめまして、新たな仲間よ! 僕の名前は物間寧人。3年間よろしく頼むよ」
ひなたが教室に入るなり、金髪碧眼の男子生徒、物間がいきなりひなたに声をかけてきた。
物間が右手を差し出してくるので、握手を求めているのだろうと思い、ひなたは自然な流れで握手をし挨拶を返した。
「えっと、僕は相澤ひなただよ。こちらこそよろしく! ねいとん!」
「ねいとん?」
「うん。寧人くんだからねいとん。…嫌だった?」
「初対面の相手の呼び方は気をつけなよ。まァ僕は別にいいけどさ」
「ごめーん」
物間が注意をすると、ひなたは頭を掻きながら謝った。
その後ひなたは、廊下側の一番前の席に座った。
後ろの席には頭にバンダナを巻いた男子が、左隣の席にはオレンジのサイドテールの女子が、その後ろの席には黒髪ボブの女子が座っていた。
「あ、君は確か入試首席の! 俺は泡瀬洋雪。よろしく」
「私は拳藤一佳。この子は小大唯。よろしく」
「ん」
「僕は相澤ひなただよ。よろしく!」
ひなたは、席が近い泡瀬、拳藤、小大と仲良くなった。
するとその時、赤いコスチュームを着た強面の男が教室に入ってくる。
ブラッドヒーロー・ブラドキングだ。
ヒーローが教師をしていると聞いていた生徒達は、全員席に座って前を向く。
「よし、全員席に着いているな。今日から君達の担任になったブラドキングだ。皆よろしくな! 早速だが、これから体育館で入学式がある。名簿順に廊下に並べ。それから入試首席の相澤。…悪いが、新入生代表挨拶の原稿、用意してきてくれたか?」
「…? はい!」
申し訳なさそうに言うブラドキングに対し、ひなたは違和感を覚えつつもハッキリと答える。
その後、ひなた達は体育館で入学式を行った。
だが、そこにA組の担任と生徒の姿はなかった。
泡瀬は、隣の席のひなたにコソッと話しかける。
「あれ? ヒーロー科ってA組もあるよな?」
「まさか…」
A組が入学式に来ていないとわかったひなたは、顔をひくつかせる。
すると案の定、ブラドキングからアナウンスが入る。
『えー、大変申し訳ございませんが、ヒーロー科1年A組は担任の都合により入学式及びガイダンスを辞退する事になりました。ご了承ください』
(何しくさっとんじゃあのヒゲ面!!)
ブラドキングが言うと、ひなたは頬をひくつかせイラっとした表情を浮かべる。
A組だけ入学式を欠席した事に対して、他の組からは不満の声が上がり、中にはA組に敵意を抱く者も少なくはなかった。
そんな中、A組の担任の相澤の娘であるひなたは、何も悪くないA組の生徒達に対して心の中で謝っていた。
(A組の皆…ウチの愚父がごめんね…ごめんね…!)
その後、ひなた達は入学式とガイダンスを終え、下校となった。
ひなたが荷物をまとめていると、隣の席の拳藤がひなたに話しかける。
「ねえ。ひなたってさ、A組の先生と苗字同じだけど、もしかして親戚だったりする?」
「うん。娘です」
「へー」
「ねえ、ライン交換しない?」
「もちろん!」
「ん」
ひなたは、席が近い拳藤や小大とラインを交換した。
入学初日に友達ができて嬉しいのか、ひなたは触角をピコピコさせていた。
◇◇◇
翌日以降は、普通に授業が行われた。
ヒーロー基礎学の授業では、B組は身体測定ならぬ“個性”測定が設けられた。
“個性”を使って得意種目に挑戦し、記録を測るというものだ。
ひなたは、“個性”である声の大きさを測る声量テストを行った。
『YEAHHHHHHHHHH!!!!!!』
「相澤、168DB!!」
「ふぅ」
ひなたが大声で叫ぶと、耳栓をしたブラドキングが測った音量を言った。
ひなたが測定を終えると、顔が漫画のコマの形になった男子、吹出が話しかける。
「相澤さん! さっきの凄かったね! 身体の奥がドワァッとしたよ!」
「まー君の方がヤバいって。擬音具現化できるって強くない?」
「いやぁ、それがそうでもないんだよね。同じ擬音でも毎回同じものが出せるわけじゃないし、気分が乗らないと失敗しちゃうんだ」
「あー、そっか」
「あと喉痛くなったりするとつらいんだよね」
「わかる! 声の“個性”だとそうなるよね! 風邪とか絶対引けないよね!」
ひなたと吹出は、声の“個性”を持つ者同士の苦労を語り合い、一気に親密度が高くなった。
その後は“個性”の話だけでなく趣味の話になり、全員の測定が終わった後も好きな漫画や音楽について語り合った。
「相澤さんって最近漫画何読んでんの?」
「んっとね、チェンソーマンと、スパイファミリーと、あと……」
「お前ら何の話してんの? 俺も混ぜろよ」
そう言って会話に加わってきたのは、短めの茶髪とつぶらな目が特徴的な男子、円場だ。
円場の“個性”は、吐いた空気を固めるというもので、ひなたや吹出と同じく肺活量が死活問題となる“個性”だった。
その後も三人で趣味の話をし、円場が特撮好きという事がわかり、そこからどんどん話が盛り上がっていった。
「ひなちゃんゴジラ見た?」
「うん、見たよ! 敗戦直後っていう舞台設定がまた面白かったなぁ。こう、絶望に絶望を重ねる感じで、手に汗握りっぱなしだったよ」
「ひなちゃんすげー喋るな。映画の話でこんな盛り上がったの久々だわ」
「えへへ…映画の話できる友達ってあんまりいなかったから、今日めっちゃいっぱい話しちゃった!」
円場がひなたに映画の話を振ると、ひなたは嬉しそうに好きな映画の話をした。
肺を使う“個性”同士、ひなたは円場や吹出と“個性”や趣味の話で盛り上がり、一日で親密度がぐっと上がった。
◇◇◇
その翌日は、B組の委員長は拳藤、副委員長は推薦入学者の男子骨抜に決まった。
その後、昼食中にマスコミがなだれ込んでくるというトラブルがありつつも、A組の男子が生徒達を落ち着かせ、事態は無事収束へと向かっていった。
そして午後は、オールマイトが教師を務める戦闘訓練の授業だ。
ヒーローチームと
「ケヒヒヒ…闇…俺の世界…」
「何か今日メッチャ滾ってるわ! よろしくね、しー君!」
ひなたは、ペアになった黒色に軽く拳を向けた。
試合が始まると、早速ひなたは、黒色に作戦を話した。
「それじゃしー君、作戦通りよろしく!」
「…これ、本当にやるのか?」
「僕達ヒーローチームだし! 人数的にも不利だし! そんくらいやらなきゃ勝てないよ!」
「うん……」
作戦を聞いた黒色は、どこか乗り気ではない様子だった。
ひなた達の考えた作戦は、黒色が黒に溶け込む“個性”でひなたのブーツに溶け込み、ひなたが相手チームの三人を引きつけている間に黒色が建物の中にある黒を縫って核に忍び寄るというものだった。
こうして入学最初の戦闘訓練は、ひなた達の勝利で終わった。
◇◇◇
後日、A組がUSJで
ひなたは、事件に巻き込まれた心操のもとへ駆け寄り心配そうに声をかける。
「ひー君! 大丈夫だった?」
「うん。心配してくれてありがとな」
「この事件でお父さんやオールマイトが大怪我して…僕、もう心臓もたないよ…!」
ひなたは、USJの事件で相澤が重傷を負ったと聞き、ポロポロと涙を流して泣いた。
クラスが違うとはいえ、大好きな父親の受け持つ生徒達が危険に巻き込まれたのは他人事とは思えなかった。
◇◇◇
二週間後に雄英のビッグイベントである体育祭が行われる事になり、生徒達は自主練に打ち込んだ。
ひなたはというと、自主練に付き合ってほしいと心操に頼まれ、一緒に自主練をして過ごした。
そして迎えた体育祭当日。
『雄英体育祭!! ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!! どうせてめーらアレだろ!? こいつらだろ!!?
「人すげえ」
「クッソォ、A組ばっかり目立ちやがって…!」
「ははは…」
プレゼントマイクが実況をする中、焦茶色の短髪の男子回原は観客の多さに驚き、銀髪の熱血系の男子鉄哲はA組ばかりが注目されている事に不満を漏らし、ひなたは苦笑いを浮かべていた。
生徒達が全員入場すると、選手宣誓が行われたのだが、A組首席の男子爆豪が盛大にやらかす。
ひなたのクラスメイトは当然不満を漏らしたが、ひなたは爆豪の大胆不敵な態度に逆に燃え上がっていた。
「おおお、大胆不敵だあ…!」
ひなたが燃え上がっている中、ミッドナイトが競技の発表をした。
今年の第一競技は、スタジアムの外周を走る計11クラスでの総当たりレースだ。
ミッドナイトの説明が終わると明らかに狭めに設計されたスタートゲートが開き、ゲート上部に設置されたランプが点滅を始める。
すると物間は、後ろの方で待機しながらクラスメイトに合図を送る。
A組の“個性”を観察するため、わざと手を抜いて後ろを走る作戦だ。
「それじゃ皆、手筈通りに」
「ごめんねいとん、僕本気で一位狙ってるから」
ひなたは、物間の作戦を良しとせず、正々堂々1位を獲りに行く事にした。
「スタ──────ト!!」
ミッドナイトが掛け声を上げた瞬間、生徒達が一斉にゲートを通ろうとして押された。
ひなたは、小柄な体格を活かして生徒達の間をすり抜け走っていく。
その後のロボインフェルノ、綱渡り、地雷原などの障害物もものともせず、ひなたは最前線を走っていく。
障害物競走の結果は、ひなたが1位、普通科の女子が2位、A組の地味目の男子緑谷が3位、A組の推薦入学者の男子轟が4位、爆豪が5位という結果になった。
一位になりそうな相手に便乗してゴール直前で一位を掻っ攫う手筈だった普通科の女子は、残念そうな表情を浮かべていた。
「あらら…私とした事が、読み外しちゃいました」
ちなみに心操の順位は21位だった。
B組はほとんど手を抜いていたとはいえ、“個性”を使わずに素の身体能力だけで何とか頑張ったようだ。
(おお、ひー君ちゃっかり中位に食い込んでる。すごいや)
ひなたは、素の身体能力だけで中位に食い込んだ心操に対し、素直に感心していた。
そして始まった、第二競技の騎馬戦。
「どうしようどうしようどうしよう…!」
1000万ポイントを手にしてしまったひなたは、騎馬を組める相手がおらず焦っていた。
普通に考えれば初めから1000万を持って逃げ切るより、1000万を掠め取った方が勝率が高いので、誰もひなたとは組みたがらないのだ。
だがそんな中、サポート科の女子が声をかけてくる。
「1位の人! 私と組みましょう!」
声をかけてきたのは、発目という女子だった。
ひなたと組んでくれたのは、自分の作品の宣伝をしたいからだそうだ。
だがサポート科以外はひなたと組むメリットは無いので、誰もひなたに声をかけに来なかった。
最悪二人で騎馬を組む事も考えていたその時、鉄哲と、髪が荊になった女子塩崎が声をかけてくる。
「おーい! ひなちゃん! まだ空いてっか?」
「ひなたさん、宜しければ私達と組んでいただけませんか?」
鉄哲と塩崎がひなたに声をかけると、ひなたはパァッと笑顔を浮かべる。
鉄哲は、単純に1000万を持っていれば最終種目に進めるから、塩崎も同様の理由でひなたのチームに入ってくれた。
騎馬が完成したひなたは、他の騎馬を見渡す。
ひなたが気にかけていた心操は、緑谷、普通科の女子、そしてA組のうららかな女子と組んだようだ。
(へえ、ひー君あの緑の子と組んだんだ)
そして騎馬戦がスタートする。
ひなたは、声で他のチームを牽制しつつ、塩崎の蔓と発目のサポートアイテムを駆使して他のチームの鉢巻を根こそぎ奪っていった。
ほとんど全ての騎馬の鉢巻を奪った直後、時間切れとなる。
「1位相澤チーム!! 2位緑谷チーム!! 3位轟チーム!! 4位爆豪チーム!! 以上4チームが最終種目に進出だァ────ー!!!」
騎馬戦は、ひなた達相澤チームがほとんど全てのポイントを掻っ攫い、圧倒的1位となった。
唯一ひなた達の策略を読んで逃げに徹していた緑谷チームだけが生き残って2位となり、3位と4位は直前の順位から判断し轟チームと爆豪チーム、以上4チームが決勝進出となった。
そして最終種目に出場する16人が決まった。
「というわけで、組はこうなりました!!」
Aブロック
第一試合 緑谷VS心操
第二試合 轟VS瀬呂
第三試合 上鳴VS影山
第四試合 相澤VS八百万
Bブロック
第五試合 芦戸VS塩崎
第六試合 飯田VS発目
第七試合 切島VS鉄哲
第八試合 麗日VS爆豪
競技場のセッティングが終わり、試合が始まった。
第一試合は、緑谷は指を壊して心操の洗脳を解いたが、指の痛みで思うように動けず、ひなたに鍛えられていた心操に押し出され、心操の勝利となった。
第二試合は、轟が醤油顔の男子瀬呂を速攻で氷漬けにし、轟の勝利となった。
第三試合は、金髪のチャラい男子上鳴が電気をブッパして速攻を仕掛けたものの、あっさり普通科の女子影山に瞬殺された。
第四試合は、黒髪ポニーテールの女子八百万が武器を創造して応戦しようとしたが、ひなたが音波攻撃で八百万の『創造』を阻止し、一瞬で距離を詰めると掌底打ちで場外に突き飛ばした。
だが思ったより強く打ってしまい、八百万がリングの外に転げ落ちてしまったため、ひなたは気まずそうな表情を浮かべた。
第五試合は、全身ピンクの女子芦戸の酸を塩崎が蔓の盾で防ぎ、芦戸を拘束したまま場外に押し出し、塩崎の勝利となった。
第六試合は、眼鏡の男子飯田が発目に嵌められ、発目が自ら場外となったので飯田の勝利となった。
第七試合は、赤髪の男子切島と鉄哲が互角の勝負を繰り広げたものの、ひなたに教わった格闘術が決め手となり、鉄哲の勝利となった。
第八試合は、うららかな女子麗日がギリギリまで爆豪を追い詰めたものの、本気を出した爆豪に圧倒され、爆豪の勝利となった。
二回戦。
第一試合は、心操が左の炎を使わない轟を挑発したところ、全力を出した轟に熱風で場外に押し出され、二回戦敗退となった。
だがお互い、全力で戦えてスッキリした表情を浮かべていた。
第二試合は、いきなり正体不明の“個性”を使ってきた影山に、ひなたは一旦劣勢に追い込まれたものの、根性で喰らい付いて影山を根負けさせ、三回戦進出となった。
第三試合は、飯田が猛スピードで塩崎を場外に押し出し、飯田の勝利。
第四試合は、爆豪が鉄哲に容赦ない絨毯爆撃を仕掛け、爆豪の勝利。
そして準決勝。
第一試合は、全力を出してきた轟を、ひなたがさらに上から爆音攻撃で捩じ伏せ、激闘の末ひなたの勝利。
第二試合は、爆豪が空中を飛び回ったまま飯田に容赦ない爆破を仕掛け、爆豪の勝利。
そして迎えた決勝戦。
爆豪が持ち前のタフネスでひなたに容赦ない爆破を仕掛け追い詰めるが、初見殺しのひなたの“個性”への対策などできるはずもなく、最後は体育祭の為に編み出したひなたの大技で決着がついた。
『以上で全ての競技が終了! 今年度の雄英体育祭一年優勝はB組相澤ひなた!』
「「「ウオォオオオオオオ!!!」」」
プレゼントマイクが締め括ると、ひなたは満面の笑みを浮かべて手を振った。
すると観客席からは歓声が飛び交う。
体育祭の後、B組はクラス全員でひなたの優勝祝いと反省会を兼ねた打ち上げ会を開いた:。
ちなみに打ち上げ会場は、獣のような見た目の男子、宍田の家だ。
B組は、それぞれグラスを持って高々と掲げ、互いのグラスをチンッと鳴らした。
「「「カンパーイ!」」」
「いやぁよくやってくれたよ相澤さん! これでB組の方がA組より上だと証明できた!」
「勝ったのひなたと茨達じゃんね」
物間が高笑いしながら言うと、銀髪で片目が隠れた女子柳が物間にジト目を向けてツッコミを入れる。
「優勝おめでとうゴザイマースひなたサン!」
「私らが勝ったわけじゃないけど何か嬉しいよね」
「お菓子買ってきたノコ」
「ありがとう皆」
「叔父上から頂いた葡萄ジュースですぞ」
頭から角が生えた金髪碧眼の女子角取、ウェーブのかかった緑がかった黒髪の女子取蔭、茶髪のボブで両目が隠れた女子小森は、お互い持ち寄ったお菓子をテーブルに並べながらひなたの優勝を祝った。
宍田は、親戚から貰った高級葡萄ジュースをひなたのグラスに注いだ。
その後は、皆で持ち寄ったゲームで遊んだり、体育祭の反省会をしたりして、B組のクラスメイトと楽しい時間を過ごした。
休み明け、ひなた達はプロヒーローの事務所で職場体験をする事になった。
4500件もの指名を貰ったひなたはもちろんの事、2回戦まで勝ち残った塩崎には360件の指名が、鉄哲には68件の指名が来ていた。
それ以外は拳藤に13件、そして何故か物間に5件の指名が来ていた。
「だー白黒ついた!」
「やはりトーナメントに進んでいないと厳しいようだね」
「この悔しさを胸に刻もうぜぇ…」
「物間ちゃっかり指名貰ってんのな」
円場、庄田、鎌切、焦げ茶色の短髪が特徴的な男子回原が口を開く。
トーナメントに進めたひなたや塩崎、鉄哲はきちんと活躍を評価してもらえたが、そうでないと指名をもらうのは厳しいのだ。
「ひなちゃんすげーなあオイ!」
「そりゃあねえ、あんなの見せられたら誰だって注目するでしょ」
「優勝者様だもんなぁ」
ひなたの指名数を見た鉄哲がひなたの指名数の多さに驚き、凡戸と黒髪の三つ編みの男子鱗も口を開く。
その後、ヒーロー名を決めたりブラドキングから職場体験の説明があったりして、数日後に職場体験が行われる事になった。
ホームルームの後、ひなた達B組女子は集まって職場体験の話をした。
「へー、ひなたはエンデヴァー事務所かぁ」
「うん! せっつーは?」
「私はマジェスティック事務所にしよっかなって」
「…あー、マジェスティックかぁ。あの人女好きだから気をつけなね。セクハラされたら訴えていいよ。僕が許す」
「え、何、何でひなたそんな事知ってんの」
「………知り合いなの。昔お父さんの仕事の関係でさ…」
「あー…」
「うん、気をつけな切奈」
ひなたが話すと、取蔭が苦笑いを浮かべ、拳藤も苦笑いを浮かべながら取蔭に忠告した。
ひなたは、相澤の仕事の関係でマジェスティックと面識があったため、彼の性格を知っていたのだ。
するとひなたは、今度は拳藤に話しかける。
「いっちんはウワバミ事務所だったよね?」
「うん。ウワバミってテレビの露出多いし話題性高そうじゃん? 体育祭であんまり活躍出来なかった分、ここでアピールしようと思ってさ」
「強かダナー」
拳藤が言うと、ひなたは他人事のようにツッコミを入れる。
そして今度は、隣にいた塩崎に話しかける。
「いばっちゃんはシンリンカムイ事務所だよね」
「ええ。植物の“個性”でないとわからない事もありますので、是非ご師事をと」
「めっちゃしっかりした理由だぁ」
「そういうひなたは? やっぱNo.2だから?」
「うん!」
「ひなたも人の事言えないじゃん…」
柳が尋ねるとひなたが即答するので、柳はひなたに対し拳藤の事を言えないとツッコミを入れた。
平和主義を謳っておきながら虎視眈々とトップヒーローの座を狙っている強かさには、クラスメイトも感服していた。
そして数日後、一週間の職場体験が行われた。
ひなたはエンデヴァー事務所に行き、轟と交流を深めて帰ってきた。
一週間の間にヒーロー殺しの事件に巻き込まれ、A組と一緒にヒーロー殺しを確保した事は、世間には知られていなかった。
だがクラスメイト達は、ヒーロー殺しの被害に巻き込まれたひなたを心配していた。
「ひなちゃん!! おめぇ災難だったなぁ!!」
「無事で良かったデース」
「心配したノコ」
「皆…」
「全く、A組と関わると碌な事がないね! 真面目に努力している者がトラブルメーカーに足を引っ張られ…「やめろ!」
物間がここぞとばかりにA組を腐すと、拳藤が物間を手刀で気絶させた。
その後は皆職場体験の情報交換をし、ホームルームの後は通常通り授業が行われた。
◇◇◇
時は流れ、6月最終週。
1学期の期末試験まで一週間を切っていた。
「勉強してね──ー!!」
「あっはっはっは」
鉄哲が必死そうに叫び、吹出も半ば諦めた様子で笑っていた。
「普段ちゃんとやってれば特段困んなかったろ」
「怠け者が馬鹿を見るとはまさにこの事だね」
「お前らやめろそれ追い打ちだぞ!!」
骨抜と庄田が言うと、円場が必死そうに叫んだ。
ちなみに1学期のB組の中間テストの順位は以下の通りだ。
1位 相澤ひなた
2位 骨抜柔造
3位 拳藤一佳
4位 取蔭切奈
5位 泡瀬洋雪
6位 庄田二連撃
7位 塩崎茨
8位 宍田獣郎太
9位 小大唯
10位 鱗飛竜
11位 回原旋
12位 柳レイ子
13位 黒色支配
14位 小森希乃子
15位 凡戸固次郎
16位 角取ポニー
17位 円場硬成
18位 吹出漫我
19位 鎌切尖
20位 鉄哲徹鐡
21位 物間寧人
「しょうがないなぁ。皆、勉強わかんないとこあったら僕教えられるよ。期末までまだ1週間あるんだから、頑張ろうよ!」
「「「ひなちゃあああん!!!」」」
ひなたが救いの手を差し伸べると、鉄哲、円場、吹出の三人が真っ先に飛びついた。
そんな中、回原と角取もひなたに勉強を教わりに来る。
「俺もいいかな。数学ちょっと躓いててさ」
「私も、古文教エテ欲シイです! 日本語ムズカシイ!」
「うん、じゃあ今度の週末図書館で一緒に勉強会やろっか! ねいとんも勉強会来るよね?」
「フフフフ…僕達はA組に勝たなきゃいけないんだ…打倒A組…フフフフ…!」
「駄目だこりゃ病院連れてった方がいい」
ひなたは物間にも声をかけるが、物間はすっかり正気を失っており、骨抜が呆れ返っていた。
週末、ひなた達B組は図書館に集まって勉強会をした。
当然中間最下位の物間も強制参加させ、中間1位のひなたと2位の骨抜がスパルタで物間に勉強を教え込んだ。
そんなこんなで一週間はあっという間に過ぎ、筆記試験を終え、実技試験当日。
ひなた達は、実技試験当日になって試験内容の変更を聞かされた。
だがB組の生徒達は、あらかじめひなたからテスト内容の予想を聞いていたため、さほど驚いていなかった。
「あー、やっぱりそう来るか」
「A組にロボ演習だって言っちゃったよ…」
「ひなちゃんにテスト内容の予想確認しといて良かった!」
「アハハハ!! A組は今頃ロボ演習だと思い込んで慌てふためいているだろうなぁ!! いい気味だよ!!」
「物間ヤバ」
B組は、ひなたからテスト内容の予想を聞いてテスト対策をしていたので安堵しており、物間に至ってはA組を出し抜いたものと思い込んで高笑いしていた。
発表された期末試験の対戦相手表は、以下の通りだ。
・ブラドキングVS取蔭&物間
・オールマイトVS相澤&拳藤&骨抜
・根津校長VS鎌切&塩崎
・13号VS小森&柳
・プレゼントマイクVS円場&吹出
・エクトプラズムVS小大&鱗
・ミッドナイトVS泡瀬&凡戸
・スナイプVS黒色&角取
・セメントスVS鉄哲&宍田
・パワーローダーVS回原&庄田
「オールマイトと対戦…!」
「HAHAHA! 頑張って勝ちに来いよ、三人共!」
まさかのオールマイトと対戦する事になったひなたがわなわな震えていると、オールマイトが豪快に笑った。
そして始まった期末試験。
ひなた達は、今自分にできる全力と最善策をもってオールマイトに挑んだ。
だが圧倒的な力の前では多少の数の差などハンデにはならず、オールマイトを倒す事はできなかった。
それでもひなたは試験に合格する為何度もオールマイトに立ち向かい、拳藤と骨抜も全力でひなたをサポートしつつオールマイトにカフスをかけようとしたのだが、これがオールマイトのスイッチを入れてしまったのか、急に本気を出したオールマイトによって三人はなす術なく叩き潰されてしまった。
そして三人は、結局クリア条件を達成する事ができず、とうとう時間切れになってしまった。
「嘘だろ…!?」
「そんな……!」
「うぅっ……」
「HAHAHA! 惜しかったな、三人共! だが最後のは中々良かったぜ!」
クリア出来なかったひなた達が絶望の表情を浮かべる中、オールマイトは三人に賞賛の言葉を送った。
だがその後、隣のクラスの担任の相澤からオールマイトに電話がかかり、ひなた達に隠れてトゥルーフォームに戻ったオールマイトは説教を喰らう羽目になった。
『…オールマイト。あなたまさかB組の生徒相手に本気出したりしてないでしょうね。言ったはずですよ、ちゃんと勝ち筋は残せと。あんたが勝ち筋潰してどうすんですか』
「………やっちゃった…」
相澤がオールマイトに説教すると、オールマイトはさぁっと顔を青くする。
ひなたの猛攻に熱くなるあまり、『生徒に勝ち筋を残す』という約束をすっかり忘れていたのだ。
その後、ひなた、骨抜、拳藤の三人は、通夜のような表情でB組の教室に戻った。
「うっ、ひぐっ…みんなぁっ…! お土産話、楽しみにしてるっ、からぁっ…!」
「ごめん二人とも…俺がヘマしたせいで…」
「ううん、そっちこそごめんな…」
骨抜と拳藤は暗い表情を浮かべ、ひなたに至ってはボロボロと涙を流して泣いていた。
期末試験に合格できなければ夏休みの林間合宿に行けないため、生徒達は死ぬ気で合格をもぎ取ろうとしていたのだが、よりにもよってクラスメイトを鼓舞し引っ張ってきた三人が不合格になってしまったのだ。
だがその後、ブラドキングによって、期末試験にクリアできなかった三人は、オールマイトの不手際が原因だったため赤点ではない事、代わりに取蔭に任せきりで何もできなかった物間が赤点だった事、そして物間も含め全員が林間合宿に行ける事が伝えられた。
赤点を免れた拳藤と骨抜は、ほっとため息をつきながら胸を撫で下ろしていた。
「確かに、クリアできなかったら赤点とは一言も言ってなかったもんなぁ…」
「よがっだぁあああ…!!」
骨抜が脱力しながら言う中、ひなたは感情が抑え切れなくなりボロボロ泣いていた。
一方で、B組唯一の赤点となってしまった物間はというと。
「逆にクリアしたら合格とも言ってなかったよね…」
「は…はははは……」
柳が言うと、物間は絶望のあまり真っ白に燃え尽きた。
こうして怒涛の一学期も終わりを迎え、夏休みに突入した。
◇◇◇
そして迎えた林間合宿当日。
「え? A組補習いるの? つまり赤点取った人がいるって事!? ええ!? おかしくない!? おかしくない!? A組はB組よりずっと優秀なはずなのにぃ!? あれれれれえ!?」
「やめなってねいとん……」
物間が笑顔を浮かべながらA組を煽り倒すと、ひなたが引き攣った表情を浮かべながら物間を窘めようとする。
するとその時、拳藤の手刀が物間の首に叩き込まれ、物間は気を失った。
「物間怖」
「体育祭じゃなんやかんやあったけど、まァよろしくねA組」
「ん」
「あ、ねえねえ! せっかくの機会だしさぁ! ライン交換しようよ!」
柳は物間に対してドン引きし、取蔭、小大、ひなたはA組に気さくに話しかけた。
するとノリのいいA組の女子達は、ひなたのライン交換に応じる。
「いいねぇ!」
「しよしよー!」
「よりどりみどり…」
ひなたがA組の女子達とラインを交換しようとすると、葡萄頭の小柄な男子峰田が性犯罪者の目つきでB組女子を見てきた。
その視線を感じ取ったひなたは、ほぼ反射的に峰田をアッパーカットで殴り飛ばした。
「ちょ、いきなり何すんだよ!」
「視線が不快だったからつい」
「構わないわ。峰田ちゃん最低なの」
ひなたが峰田をいきなり殴り飛ばしたので切島が驚くが、ひなたが真っ当な理由を言うと、蛙顔の女子蛙吹は納得した。
峰田は、普段から女子にセクハラ紛いの事をするせいで、A組の女子からは蔑みの目で見られていた。
するとその時、ワイワイとB組女子と話しているA組の後ろから、見覚えのある男子生徒が顔を覗かせる。
「あっ…ひー君っ」
「ひなた…」
ひなたが先に声をかけると、心操が反応した。
二人は、互いに数秒見つめ合って顔を赤らめる。
その様子を見ていたA組とB組の一部の生徒達はニヤニヤしていた。
「B組のバスはこっちだよー。早くしな」
拳藤が声をかけると、ひなた達はゾロゾロとバスに乗り込んだ。
その後、ひなた達は一時間ほどバスに揺られていたが、途中でバスが止まり全員外に降ろされた。
そしてそこへプッシーキャッツの面々が現れ、ひなた達は全員崖から突き落とされ、昼食までに宿泊施設まで来いと告げられた。
「雄英こういうのは多すぎだろ…!」
「皆、文句言うのは後! 早く施設に向かわないと日が暮れちゃうよ!」
拳藤は、クラスメイトを先導して施設へと向かおうとした。
するとその時、土塊でできた魔獣がひなた達の行く手を阻んだ。
だがひなたは、“個性”で躊躇なく魔獣を蹴散らし、それに続けて鉄哲も魔獣を鉄拳で砕いた。
「逃げてちゃお昼に間に合わない!」
「なら当然、正面突破だァ!!」
容赦なく魔獣を蹴散らした二人を見て、クラスメイト達は次々と動き出した。
ひなたと取蔭が索敵を行い、他の生徒はそれぞれの得意分野で魔獣を倒していった。
そして3時前。
ひなた達は、ボロボロになりながらも何とか宿泊施設に辿り着いた。
ひなたが宿泊施設までの最短ルートを探り、クラスメイトは最小限の負担で魔獣を倒していったが、それでも昼食には間に合わなかった。
聞くところによると、まだA組は魔獣の森を攻略中らしい。
ひなた達は、バスから荷物を下ろして休憩を挟み、A組が来るまでの時間は自主練に充てた。
その後はプッシーキャッツが作った夕食を食べ、全員で温泉に浸かって疲れを癒し、合宿の一日目が終わった。
二日目。
「“個性”を伸ばす…!?」
ブラドキングの発言に対し、拳藤が尋ねる。
するとブラドキングはA組の方を親指で差しながら言った。
「A組はもうやってるぞ。早く行くぞ。前期は我々B組が活躍したが、A組もA組で色々目立っていた。いいか、後期も勝つのはB組だ!!」
(((ほとんどひなちゃんのおかげだけどなぁ…)))
ブラドキングが言うと、B組の生徒達は心の中でぼやく。
確かにB組は、普段からひなたと一緒に訓練しているお陰でA組よりも飛躍的に力を伸ばしていたが、それでも体育祭ではひなたと塩崎と鉄哲以外目立った活躍ができず、客観的に見ればどうしてもA組より影が薄い印象だった。
すると、取蔭と鎌切が尋ねる。
「当然“個性”を伸ばすと言っても…21名21通りの“個性”があるし…何をどう伸ばすのかわかんないんスけど…」
「具体性が欲しいな」
「筋繊維は酷使するほど壊れ、強く太くなる…個性も同じだ。使い続ければ強くなりでなければ衰える! 即ちやるべき事は1つ! 限界突破!!」
「ぎゃああああああああああ!!!」
「いてええええええええええ!!!」
「クソがあああああああああ!!!」
B組の目の前には、A組が訓練している姿が晒け出される。
地獄絵図になっており、所々から悲鳴が聞こえてくる。
その様子はもはや拷問を受けている囚人だった。
訓練に勤しんでいるA組を見て震え上がるB組の生徒に、プッシーキャッツが“個性”伸ばしの訓練の説明をし、B組も訓練場へ連れて行かれた。
こうしてA組とB組は“個性”を伸ばすための訓練をする事になった。
相澤ひなた
発声練習、振動トレーニング、音感トレーニング、筋トレ、瞑想、練習試合。
総合力を鍛える為、これらを並行して行う。
泡瀬洋雪
様々な材質のものを溶接し、速度と精度の向上を図る。
回原旋
単純な増強型“個性”なので、地力を鍛えるために虎と我ーズブートキャンプ。
鎌切尖
硬いものを斬りつけ、刃物の切れ味と生成速度の向上を図る。
黒色支配
上限引き上げのため、光で照らされた状態で“個性”を使い続ける。
拳藤一佳
拳の強度を上げるため、硬いものを殴り続ける。
小大唯
上限引き上げのため、ひたすら身の回りのものの大きさを変え続ける。
小森希乃子
上限引き上げのため、ひたすら胞子を出し続ける。
塩崎茨
ひたすら蔓を伸ばし続け、蔓の生成速度と強度の向上を図る。
宍田獣郎太
単純な増強型“個性”なので、地力を鍛えるために虎と我ーズブートキャンプ。
庄田二連撃
上限引き上げのため、ひたすら大岩を殴って“個性”で破壊する。
角取ポニー
ひたすら角を生やしながら同時に複数の角を操り、角の生成速度と操作できる数の向上を図る。
円場硬成
肺活量が死活問題なので、低酸素マスクをつけたまま“個性”を使い続ける。
鉄哲徹鐵
鉄の強度を挙げるため、竈の中でひたすら自分を打ち続ける。
取蔭切奈
上限引き上げのため、分割する数を少しずつ増やす。
吹出漫我
声が“個性”なので、声が大きく出るよう発声練習。
骨抜柔造
上限引き上げのため、ひたすら地面を柔化させ続ける。
凡戸固次郎
接着剤の射出速度と強度向上のため、ひたすら接着剤を出し続ける。
物間寧人
上限引き上げのため、複数の“個性”をコピーし素早く切り替える。
柳レイ子
上限引き上げのため、上限いっぱいまで身の回りのものを同時に操り続ける。
鱗飛竜
硬くて丈夫な鱗を生やすため、ひたすら鱗の生成と射出を繰り返す。
こうして行われた“個性”伸ばしの訓練は、地獄絵図の一言だった。
訓練の後は、A組とB組合同でカレー作りをした。
B組の料理担当のひなたは、作ったカレーをクラスメイトに味見してもらった。
「どう?」
「美味え!」
「So good!」
「才能ガールだチクショウ」
「んん!」
ひなたの作ったカレーを味見したクラスメイト達は、幸せそうな表情を浮かべていた。
カレーの味を褒められたひなたが満面の笑みを浮かべていると、心操は少し離れたところからひなたを見つめる。
するとA組の委員長の飯田が心操に声をかけた。
「心操くん! 手が止まっているぞ!」
「あ、悪い」
その後、A組とB組は、自分達が作ったカレーを食べた。
ひなたが中心になって作ったB組のカレーは、訓練の疲れを吹き飛ばすほど美味だった。
A組のカレーも、料理担当の大柄なタラコ唇の男子砂藤が中心になって作ったためか、ひなた達の作ったカレーに負けていなかった。
その後、女子は風呂を覗こうとした峰田を成敗したり、両クラス合同で女子会を開いたりして楽しい時間をすごし、男子も男子で腕相撲や枕投げをして夜を過ごした。
三日目。
この日は、訓練の後施設の近くの森で肝試しが行われた。
まずはB組が脅かす側で、ひなた達は森の中でA組を待ち伏せしていた。
ちなみに一番この肝試しを楽しみにしていた物間は、補習のため施設に居残りさせられていた。
「ううヤダ怖い」
「ひなちゃんにも苦手なもんとかあったんだな」
ひなたが雨に濡れた子猫のようにプルプル震えながら怖がっていると、回原が口を開く。
すると鎌切が待ちきれないと言わんばかりに“個性”で刃物を生やす。
「何でもいいから早く切り刻んでやろうぜぇ…」
「待って今作戦考えてるから」
「おい」
早くA組を脅かしたがる鎌切に対しひなたが冷静に言うが、幽霊と虫を怖がるあまりちょうどいい感じの距離感で回原を盾にしていたため、回原がツッコミを入れる。
ひなたは、考えた作戦を二人に話した。
鎌切が仮面を被って腕からチェーンソーのような刃物を生やし、食紅を水に溶かして作った血糊を刃物に塗って物陰から飛び出す。
回原は腕を回して音を鳴らし、ひなたは声でBGMを担当し臨場感を出した。
すると耳朶がコードになった女子耳郎と、透明な女子葉隠のペアが悲鳴を上げた。
「「ひぎゃあああああああ!!」」
耳郎と葉隠が悲鳴を上げながら逃げていくと、ひなたは楽しそうに笑った。
「大成功!」
「ヒャヒャヒャ、A組の奴らすげえビビってたなぁ」
「怖さの種類が違くね?」
ひなたと鎌切に対し、回原がツッコミを入れる。
するとその時、回原は周囲に煙が漂っている事に気がつく。
「何だ、煙が…」
「轟か爆豪がビビって“個性”ブッパしたんじゃねえか?」
「二人とも、吸っちゃダメ!! この煙、毒だよ!!」
二人が状況を飲み込めずにいる中、ひなたは血相を変えて叫んだ。
ヒーロー科の生徒が集まるこの時を狙い、先日A組に奇襲を仕掛けた
ひなたは、声で煙を消して片っ端からクラスメイトを救いに行ったため、幸いにもA組B組ともに一人も重体にならずに済んだ。
だがこの日、ひなたは他のクラスメイトを庇って
「ひなたさんが…どうして……」
「ノコ…」
「クソォッ…俺達にはどうする事もできねえのかよ…!!」
連合の襲撃を受けて何名かは負傷しており、ひなた以外のB組20人が病院に集まって話していた。
大切なクラスメイトが攫われ、B組の間では通夜のような空気が流れていた。
すると物間が、珍しく笑みの消え失せた表情で言った。
「……僕ら、相澤さんの事知った気になってて何も知らなかったよね」
「うん…」
物間が言うと、拳藤が頷く。
B組は、連合のメンバーの一人からひなたの正体と過去を知らされていた。
何人かのクラスメイトは、ひなたが攫われていてもたってもいられず、ひなたを救出するため行動を起こした。
しかし、その代償として、ひなたを救うべく
この一件を受けて、雄英は全寮制になった。
そしてこの一件の後、ひなたは自分を救ってくれた心操と交際を始める事になった。
夏休みも残り2週間。
ひなた達は、それぞれの思いを胸に、再び学校生活が始まるまでの日々を過ごした。
ひーちゃんに優しい物間メッチャ違和感(笑)。
本作では、B組の委員長決めは戦闘訓練の日の午前中という設定です。
B組の授業をA組の1日遅れにするとか非合理ですし、普通はクラスごとに進度が合うように予定を前後させるよなぁと。
この世界線では、心操以外のA組はほとんど原作通り、心操とB組が強化されています。
本編ではデクはひなたの何気ない発言をもとにワンフォーオールのコツを掴み、轟や爆豪がひーちゃんの強さに危機感覚えて体育祭前に自主練したため大幅に強化されていますが、この世界線では三人ともひーちゃんの事を知らないので実力はほとんど原作のままです。