8月中旬。
ひなた達は、新しく出来た雄英の寮に入る事になった。
ひなたと心操が手を繋いで登校してきたため、普段ならクラスメイトが冷やかしていたところだが、ひなたは連合に攫われていてそれどころではなかったため、皆心の中で留めた。
ひなた達は、ブラドキングに連れられてB組の寮に入る。
1人1部屋エアコン、トイレ冷蔵庫にクローゼット付きの贅沢空間で、部屋割りは次のようになっていた。
2F
男子 女子
泡瀬 柳
回原 空室
鎌切 空室
黒色 取蔭
3F
男子 女子
空室 角取
宍田 空室
庄田 空室
円場 塩崎
4F
男子 女子
鉄哲 小森
吹出 空室
骨抜 空室
空室 小大
5F
男子 女子
空室 拳藤
凡戸 空室
物間 空室
鱗 相澤
部屋の荷物を整理したひなた達は、互いの部屋を見て回った。
2階の男子の部屋は、泡瀬は工作室のような部屋、回原は趣味の写真が飾られた部屋、鎌切は昆虫をイメージした家具や昆虫標本が置かれた部屋、黒色は真っ黒な厨二部屋。
3階の男子の部屋は、宍田は高級な家具が置かれたブルジョワな部屋、庄田はサンドバッグなどが置かれたボクシング部屋、円場は特撮のフィギュアやポスターが飾られた部屋。
4階の男子の部屋は、鉄哲の部屋は鉄製のカーテンを取り入れたジムのような部屋で、吹出は漫画や画材がたくさん置かれた部屋で、骨抜はクッションやリクライニングチェアーが置かれたゆったりめのレイアウトの部屋。
5階の男子の部屋は、凡戸はプラモが棚にたくさん置かれたオタク部屋で、物間はフランス風のオシャレな部屋で、鱗は中国の家具と和風の家具を両方取り入れた部屋だった。
女子の部屋は、拳藤はアンティークを取り入れたカッコいい部屋、小大は落ち着きのあるレイアウトにマトリョーシカがたくさん置かれた部屋、小森はキノコをイメージした家具が置かれた部屋、塩崎は観葉植物を取り入れた質素な部屋、角取は日本のアニメのグッズやヒーローグッズが置かれたオタク部屋、取蔭は恐竜のぬいぐるみや恐竜をイメージした家具が置かれた部屋、柳はホラー映画のDVDやポスターが飾られたホラー部屋だった。
ちなみにひなたの部屋は和洋折衷のレトロな部屋で、趣味のピアノが置いてあった。
そんな中、拳藤の一言から、話題がひなたの部屋のピアノに移る。
「へぇ、ひなたピアノ弾くんだ」
「うん! 一曲聴きます?」
「聴きた〜い」
クラスメイトがリクエストすると、ひなたはコホンと咳払いをしてから演奏を始める。
ひなたが弾いたのは、プロのピアニストでも弾きこなすのが難しい難曲だ。
ひなたのピアノ演奏を聴いたクラスメイト達は、すっかり聴き惚れていた。
「メッチャ上手いな!」
「心が洗われる…」
「耳が幸せ…」
「ん…!」
「えへへ…」
クラスメイト達が幸せそうな表情を浮かべると、ひなたはふにゃりと無邪気な笑みを浮かべた。
翌日からは、仮免試験に向けた本格的な授業が始まる。
ひなた達は、圧縮訓練で自分達の必殺技を身につけて仮免試験に挑んだ。
一次試験は、ボール当ての試験だった。
ひなた達は、他校の生徒の攻撃を受けて分断され、ひなたはたまたま分断されずに済んだ庄田と一緒にクリアを目指した。
ひなたは、声の“個性”で周囲の生徒の居場所を探った。
「全部で20人! 来るよ!」
「僕達の行動パターンが読まれているな…慎重に行こう」
ひなたと庄田は、『共鳴』と『ツインインパクト』による遠距離攻撃で他校の生徒達を近付かせず、何とか無傷で二人ずつ倒した。
一次試験をクリアした二人は、別室へ向かう。
ひなたは、控え室で庄田と話した。
「やったね、にっくん!」
「ああ。だが、他の皆は大丈夫だろうか」
「うーん…きっと大丈夫じゃないかな。皆、この日の為にいっぱい訓練したもん」
庄田が他のクラスメイトを心配すると、ひなたはグッと拳を握りしめて言った。
その後、他のクラスメイト達も続々とクリアしていき、B組は全員一次試験を突破した。
そして始まった二次試験。
ひなたは、泡瀬と凡戸と一緒に救助活動をした。
「これこのままどかしたら崩れるね。洋ちゃん、こじこじ。瓦礫固定してくれる?」
「うん、それが良さそうだな」
「わかったよぉ」
二人が“個性”で瓦礫を固定すると、ひなたは小柄な体躯を生かして要救助者を救い出した。
だがその時、突然
「ねえねえ! 私達の事も忘れちゃダメだよ〜」
「ククク、血が滾りますねぇ」
二人は、部下を連れて
要救助者を救護所に預けていたひなた達三人は、攻め込んでくる『四神』のサイドキックを何とか食い止めた。
「うわぁ、救護所に攻め込んでくるよぉっ」
「俺達で食い止めますんで、避難お願いします! ひなちゃん!」
「OK!! 『
泡瀬が指示を出すと、ひなたは大声で四神のサイドキック達を麻痺させた。
すると泡瀬と凡戸は、爆音で耳をやられたサイドキック達を、見事な連携で固めていく。
「ウェルドクラフト!!」
「グルースコール!!」
二人の“個性”によって、サイドキック達は完全に拘束された。
B組の連携プレイにより、
こうして二次試験が終わり、合格者が発表される。
B組は全員合格だった。
「やったああああああ!!!」
「マジかよぉ!」
「B組全員受かっちゃったよ!!」
B組は、全員で円陣を組んで合格を喜び合った。
その後は、仮免試験の点数が書かれた紙が配られ、ひなた達はそれぞれ自分の点数を確認する。
「なあ何点だった?」
「俺85点! 超優秀じゃね?」
「待ってひなた99点!?」
「ウラメシいわ…」
「逆に引かれた1点は何だったんだ」
ひなたの超高得点に、クラスメイト達は驚いていた。
無事全員仮免を取得した後は、寮で合格祝いパーティーを開いた。
「それじゃ、B組全員の合格を祝って!」
「「「カンパ〜イ!」」」
拳藤が音頭を取ると、ひなた達はグラスを高々と掲げてチンと鳴らした。
クラス全員でつかの間の楽しいひと時を過ごし、長かった夏休みも終わりを告げた。
そして始まった二学期。
ひなた達は、ビッグ3と呼ばれる三年生三人からインターンの話を受け、インターンに向けての準備を始めた。
だがブラドキングから一部の事務所以外はインターンを受け入れられない旨を伝えられ、結局元々ファットガムの指名を受けていたひなた以外はインターンに参加できなかった。
ひなたは、ファットガムの元でA組の切島や三年生の天喰と一緒にインターンをし、成り行きで
死穢八斎會の若頭、オーバーホールを倒したひなたは、翌日B組の寮に戻るとクラスメイト達から心配や称賛の声と共に温かく迎え入れられた。
◇◇◇
それから一ヶ月後。
「文化祭やるぞ!!」
「「「「ガッポォオォイ!!」」」」
ブラドキングが言うと、ひなた達のテンションが最高潮まで上がる。
ホームルームでは、B組の出し物を決める為の話し合いが行われ、物間の提案でひなた達は演劇をやる事になった。
そしてひなたがインターン中に出会った少女、壊理の見舞いに行っている間に物間が勝手に拳藤をミスコンにエントリーし、柳は拳藤の付き添いをする事になったので、この二人は不参加で、他の19人で劇をやる事になった。
「さあ、これが僕の書いてきた脚本だよ!」
そう言って物間は、いつの間にか刷ってきた脚本をクラスメイト達に配った。
こういう時の物間の行動力は鬼のようだ。
だがひなたは、脚本を読んで控えめに手を挙げて物間に話しかける。
「…あのさぁ、ねいとん」
「何だい相澤さん?」
「これ、パk…「僕の完全オリジナルストーリーさ! それじゃあ今から役割を決めようか!」
ひなたが何かを言おうとしたが、物間はすぐさま遮って強引に役を割り振った。
配役
ロミオ王子:物間
ジュリエット:小大
パリス伯爵:鉄哲
ロミオ王子のお付きの者・サム:泡瀬
ロミオ王子のお付きの者・フロド:庄田二連撃
指輪の精霊:塩崎
ヒッポグリフ:宍田、角取
宇宙解放同盟軍の生き残り・レイ:取蔭
宇宙解放同盟軍の生き残り:鱗
導師オビワン:凡戸
裏方
舞台監督:骨抜
舞台監督助手:回原
大道具:円場
小道具:黒色
衣装・メイク:小森、相澤
音響:吹出
照明:鎌切
といった具合で、配役が決まった。
配役が決まると、ひなた達は劇に向けて練習や準備を始めた。
ひなたも割と本気で楽しませにかかっており、他のクラスメイトの準備を手伝いながらも、劇に使う衣装を小森と一緒に手作りし、1ヶ月みっちりメイクの研究をした。
「ひなた、使えそうな布とか買ってきたノコ」
「ありがときーちゃん! 今ちょうど型紙ができたから、衣装作っちゃおっか!」
小森が生地を持って寮に戻ってくると、型紙を作っていたひなたが立ち上がる。
一応通販サイトも見たのだが、どこの通販サイトを探してもピッタリな衣装が見つからない役もあった。
ひなたは、隣のクラスの八百万に頼めば衣装を作ってもらえるのではないかと考えたが、それだとA組嫌いの物間が嫌がりそうだと思い、結局衣装を手作りする事にした。
ひなたは、早速小森と一緒に衣装作りを始めた。
型紙の形通りに切った布を、ミシンで縫い合わせていく。
そうして、文化祭の前日には役者全員の衣装が揃った。
ミスコンの準備をしていた拳藤と柳は、二人の作った衣装を見て驚く。
「え、本当にこれ二人が作ったの?」
「うん、何か出来ちゃった」
「何かやり始めたら楽しかったよねぇ」
「才能全開だ、ウラメシいわ…」
ひなたが照れ臭そうに頭を掻くと、小森も無邪気に笑った。
服飾の才能を発揮した二人に対し、柳が一周回って逆に怖がる。
そして文化祭当日。
クラスメイト達は、ひなたと小森にメイクを施され、二人が用意した衣装を身につけて舞台に立った。
「我が名はロミオ!! アズカバンの亡霊パリス伯爵よ! ジュリエットを返してもらおう!!」
本物そっくりのオモチャの剣を持ったロミオ役の物間が台詞を叫ぶ。
すると、黒いマントを羽織った鉄哲が台詞を言う。
「ロミオ…オビワンから父親の事聞いているだろう。ゴンドール王国の王であったと…あれは嘘だ。ワシがお前の父だ」
「嘘だあ────!!!」
物間が叫ぶと同時にスポットライトが照らされ、ピアノの鍵盤を叩く音が鳴り響く。
物間脚本の演劇は、色々な要素を詰め込みまくったツッコミどころのある劇だった。
だが観客からは好評価で、B組の演劇は大成功に終わった。
壊理も、通形に連れられてひなた達のクラスの演劇を見に行き、「よくわかんないけどすごかった」とひなたに感想を伝えてくれた。
◇◇◇
11月下旬。
「寒いねぇ」
「お、ひなた冬仕様」
ひなた達は、コスチュームを着て運動場γに集まっていた。
中にはコスチュームを冬仕様にしている者もおり、拳藤はコスチュームを長袖にし、ひなたも防寒用の黒いマントを羽織っていた。
ひなた達B組が雑談していると、奥の方からA組の声が聴こえてくる。
するとひなたは、触角をピンと立てた。
「あ、もうA組来てるんだねぇ」
(って事はひー君のおニューのコスが見られる…!)
ひなたは、心操の新しいコスチューム姿を想像して期待に胸膨らませながらほんのり顔を赤らめていた。
だがそんな中で、物間は不穏な笑みを浮かべていた。
「フフフ…それはちょうど良かった」
「ねいとん何する気?」
物間が良からぬ笑みを浮かべながらA組の方へツカツカと歩いて行くと、ひなたがツッコミを入れ、拳藤も一応後方でスタンバイする。
案の定物間は、A組に向かって盛大に挑発をした。
「おいおい、まーずいぶんと弛んだ空気じゃないか。僕らを舐めているのかい」
「お! 来たなァ!! 舐めてねーよワクワクしてんだ」
「フフ…そうかいでも残念。波は今確実に僕らに来ているんだよ。さァA組!!! 今日こそ白黒つけようか!?」
高笑いする物間とは対照的に、ひなたはやれやれといった様子で現れる。
この日は、A組対B組の合同訓練だ。
それぞれ4人か5人のチームに分かれ、相手のチームと対戦しより多く相手のチームメンバーを投獄したチームの勝利というルールだ。
「じゃ」
「クジな」
相澤とブラドキングは、それぞれクジが入った箱を出してきた。
そのままクジ引きが行われ、全5組の組み合わせが決定した。
第一試合 蛙吹・上鳴・切島・口田vs相澤・塩崎・宍田・円場・鱗
第二試合 青山・常闇・葉隠・八百万vs黒色・拳藤・小森・吹出
第三試合 飯田・尾白・障子・轟vs回原・角取・鉄哲・骨抜
第四試合 砂藤・耳郎・瀬呂・爆豪vs泡瀬・鎌切・取蔭・凡戸
第五試合 芦戸・麗日・心操・緑谷・峰田vs小大・庄田・物間・柳
「僕は…トップバッターか」
ひなたは、自分のクジを確認し、他のチームメイトを探す。
すると鱗が声をかけてきた。
「ひなちゃん、俺同じチーム」
「え、ホント!? やったあ! よろしくね、りゅー君!」
鱗が声をかけると、ひなたは触角をピンと立てて喜ぶ。
他は、宍田、円場、塩崎がひなたと同じチームだった。
「わぁい、皆も同じチームだったんだ! よろしく!」
「うむ、こちらこそ宜しく頼みますぞひなた氏」
「ひなちゃん一緒だと心強いな」
「共に勝利を目指し励みましょう」
ひなたは、チームメイトの4人と一緒に作戦を考えた。
そして始まった第一試合。
結果は、B組チームの圧勝だった。
ひなたが超遠距離爆音攻撃でA組チームを一網打尽にし、B組チームが一斉攻撃を仕掛けA組チーム全員を瞬く間に捕らえてしまった。
ただでさえ人数で有利な上に、B組の中でも戦闘力が高いメンバーが固まっており、近距離の宍田、中距離の円場・鱗、遠距離のひなた、そしてオールマイティーに動ける塩崎と、格分野のエキスパートが一つのチームに固まってしまったため、こうなるのはもはや必然だった。
「えげつないなお前」
「えへへ、褒めても何も出ないよ!」
「褒めてないから。俺達今敵同士だぞ」
「あ、そうだったね」
試合が終わった後、心操がひなたに話しかけると、ひなたはふにゃりと無邪気な笑みを浮かべ、心操がツッコミを入れる。
他のクラスメイトは、彼氏の心操と仲睦まじそうに話すひなたを見てニヤニヤし、ある者はカメラを構えていた。
続く第二試合。
結果は、B組チームの圧勝だった。
拳藤が司令塔としての才能を存分に発揮し、黒色の奇襲と小森と吹出の無差別攻撃が見事にハマったのだ。
A組チームのリーダーである八百万は、B組チームに一矢報いようと策を講じたものの、それすらも捩じ伏せられ拳藤に叩きのめされた。
「面目躍如だ拳藤ー!!」
「……また弱気になんねぇといいが…」
『第二セット!! 4ー0でB組勝利!!』
鉄哲は拳藤の勝利を喜び、轟は八百万を心配した。
こうして、第二試合が終わった。
二回も連続で惨敗したA組は、もう後がないと焦っていた。
そうして、一度インターバルを挟んでから第三試合が行われる。
第三試合。
結果は、ギリギリでB組の勝利だった。
A組の中でも圧倒的な実力を持つ轟の攻撃によってB組チームは一度は窮地に陥ったように見えたものの、骨抜の機転によって事なきを得て、そこからはしばらく膠着状態が続いた。
鉄哲には轟の“個性”が効かないため、容赦なく轟を殴り続けて足止めした。
結局、B組チームは尾白だけ牢に送り込んで時間切れとなり、僅差でA組に勝った。
『第三セット、B組チームの勝────ー利!! いいぞお前達!! その調子だ!!』
「「「「偏向実況に拍車かかってるよブラド先生!!」」」」
ブラドキングが教え子達の勝利を喜ぶと、A組がツッコミを入れる。
重傷の飯田と轟は保健室に行き、尾白と障子はとぼとぼとA組のもとへ戻った。
これでA組は三連敗、あとの二回で勝てても総合では負けが確定してしまっていた。
「ごめん皆…A組負けちゃった」
「そう落ち込むなって」
「総合では負けかもしれねえけど、次は俺らが勝ってくるからよ」
尾白がクラスメイトに謝ると、瀬呂と砂藤が励ました。
するとここぞとばかりに物間が煽ってくる。
「アハハハハ!! これでB組の三連勝!! A組負けちゃったねえええ!! ねえ知ってる!? トラブルっていうのは問題児が引き起こすものなんだよ!! 「ねいとんうるさい」ごめんなさい」
物間が煽りまくると、ひなたが威圧しながら物間を窘め、ひなたに圧された物間は大人しく謝った。
ひなたが物間をA組が視界に入らないところへ連れて行くと、拳藤は笑顔を浮かべながらA組に謝る。
「ごめんな」
その後、B組は出場選手の回原と角取を囲んで反省会をした。
ちなみに骨抜と鉄哲は重傷のため保健室にいた。
「やったねぇ、皆!」
「これ、全戦全勝ワンチャンあるんじゃない!?」
自分のクラスの三連勝にひなたが喜び、吹出も五戦全てでB組が勝てるのではないかとはしゃいだ。
その会話を聞いていた爆豪は、ビキッと顳顬に青筋を浮かせる。
(あいつら…! 後でぜってぇブッ殺してやる)
第四試合。
結果は、ギリギリでA組の勝利だった。
取蔭が策を講じ爆豪達に自由に行動させず、制限時間ギリギリまで追い詰めたが、爆豪が試合の中で成長を見せ、そこからは一気に形勢逆転してA組の勝利となった。
『第四セット! ぐぬぬぬぬ、A組の勝利!』
「どうだザマァ見ろクソB組!!」
「クソとは何だクソとは!!」
「ずっと切奈にいいようにやられてたくせに!!」
「うーん…やっぱり都合よく全戦全勝とはいかないね」
爆豪がここぞとばかりにB組を煽ると、売り言葉に買い言葉と言わんばかりにB組も反論する。
ひなたは、そんなクラスメイト達を遠目で見ながら頬をポリポリ掻く。
そんな中、唯一の負けチームとなってしまったB組チームのリーダーの取蔭は、落ち込んだ様子で物間に謝った。
「物間ぁ…私らだけダサい事になっちゃってごめん…」
「何を謝る事があるんだい取蔭! 君達は終盤まであの問題児を追い詰めたじゃないか! それに僕は、彼が今回の試合を機に言動を改めてくれたのなら何よりだ!」
取蔭が謝ると、物間は上機嫌で取蔭を励ました。
残念ながらB組の全戦全勝とはならなかったが、物間は、クラスメイトが予想外の成長を見せた事が嬉しいようだった。
そして最終の第五試合。
この試合で、緑谷が物間の挑発を受けて“個性”を暴走させてしまうというアクシデントが発生した。
だが、心操が緑谷を“個性”で助け、そのまま試合が続行し事なきを得た。
「僕は、ひー君に勝ってほしい」
「…ひなたさ、応援してるのB組だよね?」
「も、もちろんそうだよ! …でも、個人的には負けてほしくないんだよ。ヒーローになるためにどれだけ足掻いて苦しんできたかを知ってるから…」
「複雑だね」
ひなたが自分の本心を打ち明けると、拳藤がひなたの心情を理解し話を聞いた。
応援しているのはB組チームだが、ここに至るまでの心操の努力を間近で見てきた以上、個人的には心操を応援したいという気持ちが勝ってしまい、素直にB組チームを応援できなくなってしまっていた。
そして、そんな話をしている間に決着がついた。
結果は、A組の勝利だった。
物間を心操が追い詰め、他のB組チームは心操の“個性”に加え総力で何とか倒せた。
こうして、5戦全てが終了した。
『これにて5セット全て終了です。全セット皆敵を知り己を知りよく健闘しました』
ミッドナイトが実況をすると、A組はブラドキングとは対照的に公平な実況をするミッドナイトを支持した。
ミッドナイトは、続けて試合全体の勝敗を発表する。
『第1セットB、第2セットB、第3セットB、第4セットA、第5セットA、よって今回の対抗戦! B組の勝利です!』
「「「やったあああ!!」」」
ミッドナイトが全試合の勝敗を言い渡すと、B組は円陣を組んで喜び合った。
「ほぼ全員謀ってた」
「いやぁ、僕達勝っちゃったよ! ワクワクが止まらないね!」
塩崎は涙を流しながら心を痛め、吹出はB組の勝利を喜んだ。
その後、B組は、A組の寮に行き今日の訓練の反省会を行った。
「え──ーっ、二人とも付き合ってたの!?」
「まあな」
「えへへ…」
心操とひなたが付き合っている事を知らなかったA組とB組が驚いていると、二人は嬉しそうに語った。
恋バナが好きな女子や年頃の男子は、二人にいつから付き合っていたか、どこまで進展したか、デートはどこに行ったかなどを尋ねた。
「え、いつから!?」
「夏休み中に…」
「まじかぁ!!」
その日は、反省会をするはずが、二人の馴れ初めの話で盛り上がった。
時は流れ、12月。
ひなた達はクリスマスパーティーをしたり、大掃除をしたりして年の終わりを過ごした。
年明けの1月、ひなたはエンデヴァー事務所にインターンに行き、共にエンデヴァーのインターンに参加していた緑谷、爆豪、轟と一緒に訓練をして大きな成長を見せた。
年明けの最初の授業は、ひなたは相澤と山田に連れられてタルタロスにいる黒霧に会っていたため不参加だった。
ひなたが戻ってくると、ひなた達は鍋パをした。
B組は、鍋奉行のひなたが全ての鍋を監修し、すき焼きやクエ鍋、しゃぶしゃぶ、牡丹鍋、カニ鍋、きりたんぽ鍋、おでん、トマト鍋、チーズフォンデュ、スイーツ鍋などの鍋が完成し、A組の寮へ持っていった。
A組の寮では、どちらの鍋がより美味しいかを競い合い、結果はB組の鍋の圧勝となった。
負けたA組は罰ゲームとして闇鍋を食す事になり、B組はそれぞれ持ち寄った食品を鍋に入れた。
「ひなた何入れたの? 私納豆入れたけど」
「俺臭豆腐」
「ハンバーガー入れた」
「おぉう…皆えぐいねぇ。ちなみに僕生き血入れたよ。スッポンの」
「ひなたって私よりいやらしくない?」
ひなたがしれっと爆弾発言をすると、取蔭が顔を引き攣らせてツッコミを入れた。
すると、ひなたの入れた生き血の濃い部分をすくって食べたA組が次々と声を上げる。
「うえっ、鉄臭っ!! んじゃこりゃあ!?」
「血でも入ってんのか!?」
「うん、僕が入れたの」
「食い物じゃねーじゃねーか!!」
「スッポンの血だよ! ちゃんと食べ物でしょ? ヤギの血とか飲む地域もあるし」
「やめて気分悪くなってきた」
ひなたが言うと、グロテスクなものが苦手な耳郎が気分を悪くする。
こうして楽しい鍋パも終わり、B組は自分達の寮へ戻っていった。
◇◇◇
時は過ぎ、3月。
ひなた達ヒーローは、とうとう連合の居場所を突き止め、全員で連合率いる超常解放戦線を解体しにかかった。
最初はうまくいっていたが、突然超常解放戦線のトップである死柄木が目を覚まし、そこからは一気に形勢逆転した。
プロヒーローが死柄木にボロボロにやられ敗色濃厚な中、ひなたは必死に死柄木に喰らいついて倒そうとした。
だが死柄木に致命傷を負わされて前線を退き、そこからはしばらく目を覚まさなかった。
そして連合のメンバーにはひなたの消したい忌まわしい過去が世間にバラされ、世間からのひなたへの風当たりは強くなった。
一度は絶望し心が折れそうになったひなただが、心操やクラスメイト、担任がひなたを支えてくれたので、心までは完全に折れずに済んだ。
ひなたが喉のリハビリをしている間、隣のクラスの緑谷が雄英から姿を消し、ヴィジランテのように
それを聞いたひなたは、とても他人事とは思えず、何とか緑谷を連れ戻せないかと考えていたが、緑谷のクラスメイトもとっくに同じ事を考えており、緑谷はクラスメイトの説得を受けて雄英に戻ってきた。
だがその後、緑谷のクラスのナルシスト男子、青山が内通者であった事が発覚し、そこから一気に超常解放戦線の残党の確保に向けて作戦が固まっていき、数日後、二度目の決戦が行われた。
ひなたは、幹部である零と戦い見事倒し、その後オールフォーワンの確保に大きく貢献した。
ひなたがオールフォーワンの“個性”を全て壊し、爆豪がオールフォーワンを爆破して確保し、その他の
全てが終わった後、ひなた達は無事進級し、2年B組の教室で再び授業が始まった。
ひなたが教室でクラスメイトと雑談していると、正面のドアからブラドキングが現れる。
するとひなた達は、雑談をやめて全員大人しく席に座った。
「よし、全員席についているな。もう紹介の必要は無いと思うが、今年もお前達の担任をする事になった。よろしく頼むぞ」
ブラドキングは、教壇に立つと、教え子達に向かって話を始める。
隣のクラスの相澤なら、こういった話は必要最低限に削ってさっさと授業に移るところだが、可愛い教え子達一人一人に新しい環境での心構えをきちんと話すあたりがブラドキングらしかった。
「知っての通り、今でも日本中で復興作業が行われている。あの日から、完全に日常が戻ってきたわけじゃない。だからこそ、一刻も早くお前達の日常を取り戻す事が大事だと俺は思う。今日からは心機一転、2年B組の担任として、お前達を鍛えていく所存だ。プルスウルトラの精神で、共に励んでいこう!」
「「「「はいっ!!」」」」
ブラドキングが言うと、ひなた達は元気よく返事をする。
こうして、超常解放戦線との戦い以降止まっていた雄英での日常が、再び始まろうとしていた。