どうしてこうならなかった。
「ねえあっくん! みんなのところに戻ろうよ! 先生に怒られるよ!」
「うるせー! そんなこと言って一番乗りしようったってそうはいかねーぞ!」
それは、5月のある日の事だった。
その日は特に蒸し暑かった。
幼稚園の遠足に来ていた二人の男児は、遊具の近くで言い合いをしていた。
喧嘩をしているというよりは、心配して声をかける小柄な男児に対し、遊具の上に乗っている男児が反発していた。
心配している方の小柄な男児は、相澤零凪、“個性”を持たない少年だった。
「あー、クッソ楽しいぜこれ! こんな楽しいのにビビってやらねーなんて、みんなバカだなぁ!」
「あっくん、もうやめようよ! 危ないよ!!」
「うっせー! “ムコセー”のくせにオレさまに指図すんじゃねー! 殺すぞ!」
そう言って男児が“個性”を放ちながら飛び跳ねた、その時だった。
遊具のネジが外れ、遊具が崩れて零凪の方へと崩れた。
「うわぁあああああああ!!?」
零凪は、咄嗟に受け身を取る。
だが遊具は、零凪のところへは降ってこなかった。
恐る恐る見上げると、そこには崩れた遊具を背中で支えて零凪を守っているオールマイトがいた。
「怪我は無いかい? 少年」
「………! オール…マイト…!」
オールマイトが笑いかけると、零凪は目を見開く。
その後、零凪と男児はオールマイトによって無事救出された。
クラスメイトの少女は、零凪に抱きついてわんわんと泣いていた。
「うわぁあああん! 零凪くん!」
一方で、幼稚園の先生は、男児と一緒にオールマイトに感謝と謝罪を告げていた。
助け出された男児は、目に涙を浮かべてビクビクした様子で立っていた。
「本当にありがとうございました…! ほら篤彦くん、謝って」
「……すみませんでした」
「反省したならもう危ない事はするんじゃないぞ、少年。友達や先生にも迷惑がかかる!」
「………はい」
「それじゃ、私はこれで!」
男児が反省した様子を見せると、オールマイトは急いで去っていった。
ほとんどの園児が生のオールマイトに目を輝かせている中、少女は零凪を見て首を傾げていた。
「……零凪くん…?」
少女が零凪を見ると、零凪はふわっと髪を浮かせ、両眼の瞳を赤く輝かせていた。
「ワンフォー……オール…?」
零凪は、オールマイトの背中を見ながらポツリと呟いた。
この日の出会いが、世界の運命を大きく変える事は、まだ零凪自身も知らない。
◇◇◇
その日、遠足から帰ってきた零凪は、兄の消太に今日あった事を話した。
零凪は、髪を逆立てて眼を赤く光らせ、ポロポロと涙を流しながら話し始めた。
「零凪…」
「兄ちゃん…ぼく、ちゃんと“個性”あったんだよ…! これでもう、みんなに迷惑かけなくてすむかなぁ…?」
零凪が泣きながら“個性”を発動すると、消太は零凪を抱きしめた。
家族からも“無個性”だと思われていた零凪だったが、実はちゃんと“個性”があった。
零凪の“個性”は、あらゆる“個性”を無効化する“個性”だった。
正確には、視界に入れた他者の“個性”を分析し、その“個性”を打ち消す光子を体内で生成し放出する“個性”だ。
遅咲きな上に何かのきっかけがないと発現しない“個性”だったのと、足の小指の関節が2個あった事もあり、医者が零凪の“個性”を見落としていたのだ。
零凪が泣きながら語ると、幼稚園の先生から零凪が事故に巻き込まれかけた話を聞いた両親も、泣きながら零凪を抱きしめた。
「零凪…ごめんな。本当は、“個性”なんかどうでも良かったんだ。お前達が幸せなら、他に何もいらなかった。俺達が、零凪を守ってやらなきゃいけなかったんだ…!」
「零凪は、一番つらかったはずなのに、それでもずっと耐えてきたのに…消太は、私達家族を繫ぎ留めようとしてくれていたのに…勝手に諦めて、つらい思いさせて…ダメなお母さんで本当にごめんね…!」
「お父さん…お母さん…ぼくが家族でいいの…?」
「当たり前だろ…! お前は、俺達の息子なんだから」
両親が今までの事を詫びると、零凪は、今まで溜め込んできたものが溢れ出し、わんわんと大泣きした。
家族と和解を果たした零凪は、ずっと今まで味方でいてくれた兄に抱きつき、消太も優しく零凪の頭を撫でた。
その後相澤家は、母親の地元に引っ越した。
親族は、零凪を“無個性”だと勘違いした事を詫びてこれからも仲良くしてほしいと言ってきたが、精神を病むまで零凪の両親を追い詰めた罪は決して軽くはなく、家族4人で話し合った結果縁を切る事にした。
父親も引っ越し先で再就職し、少しずつ家族仲も修復し、零凪が小学校に上がる頃には以前のような明るい家庭を取り戻していた。
◇◇◇
オールマイトに助けられてから1年後、零凪は小学校のクラスメイトを追いかけて走っていた。
No.2ヒーローのエンデヴァーの長男、轟燈矢だ。
燈矢は、エンデヴァー以上の炎の素質を秘めた天才だったが、炎に弱い体質のせいで“個性”を使いこなす事ができず、“個性”を使う度に火傷を負っていた。
プライドの高い燈矢は、他のクラスメイトを寄せ付けなかったが、そんな中燈矢に唯一歩み寄ったのが零凪だった。
「待ってよ、燈矢くん! それ以上は危ないよ!」
「ついてくるな! 零凪もお母さんや冬美ちゃんと同じ事言いに来たんだろ!?」
「心配なんだよ!」
「うるさい!!」
燈矢は、苛立ちのあまり炎を放った。
だが零凪は、怯む事なく燈矢に歩み寄り、燈矢の腕を掴んだ。
零凪は、服の袖が焦げただけで、火傷を負うどころか熱がりもしなかった。
「燈矢くん、僕の“個性”知ってるでしょ。僕に炎は効かないよ」
炎を浴びても涼しい表情をしている零凪を見て、燈矢は怯んで半歩退く。
零凪は、“個性”を無効化する光子を放って燈矢を覆い、これ以上火傷が広がらないようにした。
「っ…離せよ!!」
「嫌だ、絶対離すもんか」
「お前には関係ないだろ!」
「関係なくないよ。だって、君は助けを求める顔をしてるじゃないか!」
零凪は、髪を逆立てて赤い瞳で燈矢を見ながら叫んだ。
燈矢は、目に涙を浮かべていた。
するとその時だった。
「ちょっとあなた達、そこで何してるの!」
年配の女性教師が、たまたま二人が“個性”を使って言い合いをしているところを見かけた。
燈矢が炎で零凪を燃やそうとした事は校長にまで話が行き、家族同士での話し合いの場が設けられた。
「うちの息子が、大変申し訳ございませんでした…!」
「轟さん、頭を上げてください。もう済んだ事ですし、零凪に怪我はありませんでしたし…」
燈矢の母親は、零凪と零凪の両親に謝罪をした。
そしてエンデヴァーは、零凪を燃やそうとした燈矢に説教をした。
「燈矢!! お前、また“個性”を使ったのか!! しかも、零凪くんに八つ当たりしただと!? 零凪くんが無事だったから良かったものの…! お互い取り返しのつかない事になっていたらどうするつもりだったんだ!!」
「っ………」
エンデヴァーに責められた燈矢は、俯いて目に涙を浮かべる。
エンデヴァーは、零凪の事だけではなく、燈矢の事も心配しているからこそ怒鳴っていた。
だが燈矢は、エンデヴァーの本心に気付かず、失敗作の自分より他所の家の子供を心配しているのだと思いさらに傷ついた。
だがその時、零凪が身を乗り出し、エンデヴァーに向かって叫んだ。
「待って下さい! 燈矢くんのお父さん、燈矢くんの話を聞いてあげて下さい!」
零凪は、エンデヴァーに向かって叫ぶと、俯いて泣きそうになっている燈矢にも話しかけた。
「燈矢くん、お父さんは燈矢くんの事をすっごく心配してたんだと思うよ。だから、お父さんに本当の事話してあげて」
零凪が言うと、燈矢はポツポツと本心を話し始めた。
ヒーローの特訓を禁止され、父が自分の代わりとなる子供を作ろうとしているのを知り、自分が見放されたと思って悲しかった事、本当はただ父に認めてもらいたかっただけだったと明かした。
燈矢の話を聞いたエンデヴァーは、まずは今までの態度を燈矢に詫び、その上で燈矢の事を誰よりも心配していたと明かした。
母親も、燈矢の本心を知っていながら、彼が父親との間に軋轢が生じていくのを止められなかった事を詫びた。
本心を話しボロボロと涙を流して泣く燈矢を、両親は優しく抱きしめ、家族三人で零凪達に深く頭を下げてから帰っていった。
それから数日後。
「零凪、ありがとう。俺、お父さんがどんな気持ちで俺を見てたのか、全然知らなかった。昨日、お父さんが初めて組み手に付き合ってくれたんだ」
「そっか、良かったねぇ」
嬉しそうに語る燈矢の話を、零凪も嬉しそうに聞いていた。
あれから燈矢は、家族と和解し、“個性”を使って無茶をするのをやめた。
そしてエンデヴァーも、育児を妻に任せきりにせず子供達と向き合う時間を積極的に作るようになった。
ヒーローに育て上げる為ではなく、自分の身を自分で守れるよう、“個性”を使わなくても戦える術も教えてくれるようになったという。
そんな中零凪は、とある疑問を燈矢に投げかける。
「ねえ燈矢くん、君は本当に炎の“個性”しか使えないの?」
「え…?」
「僕には、君の中に冷たい炎があるように見えるんだ。燈矢くんが“個性”を使う度に怪我をするのは、身体の中の冷たい炎が弱いからじゃないのかな」
零凪が言うと、燈矢は僅かに目を見開く。
炎の“個性”ばかり鍛えていたせいかうまく出す事ができなかっただけで、燈矢には母親から受け継いだ氷の“個性”も宿っていた。
エンデヴァー並みの火力を出しても身体に熱が篭らないのは、無意識のうちに氷の“個性”で身体の内側を冷やしていたからで、意識すれば氷の“個性”も使えるようになるのではないか、それが零凪の考えだった。
零凪のアドバイスを受けて、燈矢は家で母親から身体の内側を冷やす“個性”の使い方を教わり、零凪の考え通り自分の身体を傷付けずに“個性”を使えるようになった。
◇◇◇
「消太〜! 頼む宿題写させてくれ!」
「うるさい分倍河原」
「ひでぇ!」
零凪が燈矢と仲良くなった頃、消太もクラスメイトの分倍河原という男子生徒と仲良くなっていた。
2年生の時、転校してきたばかりでクラスに馴染めるか不安だった消太に気さくに声をかけてくれたのが分倍河原だった。
ある日の事、消太が分倍河原と駄弁りながら下校していた時、偶然分倍河原の家の近くで
結果、
消太は、勝手に“個性”を使用した事でヒーロー達に叱られたが、分倍河原と彼の両親が恩人である消太を庇ったため、消太はお咎めなしとなった。
それどころか、最小限の犠牲での
◇◇◇
それから1年後、相澤家は父親の仕事の都合で引っ越す事になった。
零凪が学校に通う最後の日、燈矢は零凪に別れを告げた。
最初は零凪の事を鬱陶しがっていた燈矢も、今では零凪の事を唯一本音で話し合えるライバルとして認めていた。
「燈矢くん、ありがとうね。短い間だったけど楽しかった」
「何言ってんだよ、次は雄英で会えるだろ? そしたら特訓の続きしようぜ!」
「…うん! 約束!」
零凪は、燈矢と雄英で会う約束をして学校を去っていった。
零凪は、自分が一人の少年の家族の運命を、そして世界の運命をも変えた事は、知る由もなかった。
◇◇◇
半年後。
小学校3年生になった零凪は、兄の消太と一緒に夕食の材料を買いに街を歩いていた。
消太は雄英の近くの安いアパートで一人暮らしをしていたが、今は夏休み中なので実家に顔を出していた。
「零凪、今日の夕飯何食べたい?」
「んっとね、カレー! にんじんを星の形にくり抜いたやつ!」
「ほんとそのカレー好きだな」
「だって美味しいじゃん、カレー!」
零凪が兄とそんな会話をしていた、その時だった。
銀髪の痩せこけた少年が、ゆらゆらと覚束ない足取りで歩いていた。
ボロボロの顔をした少年は、薄気味悪い笑顔を浮かべており、通行人は少年を気味悪がって見て見ぬふりをした。
そんな中、消太と零凪は、少年に歩み寄って声をかけた。
「君…大丈夫?」
消太は、倒れそうになる少年の身体を支え、話しかけた。
「お父さんとお母さんは? はぐれちゃったのかな」
消太が話しかけた、その直後だった。
少年は、その場で蹲りながら顔を掻き、過呼吸を起こし、嘔吐した。
「っお゛ぇっ、ゲェエっ」
少年は、吐瀉物を撒き散らしながら、消太に向かって手を伸ばす。
すると消太は、反射的に少年の“個性”を消し、そのまま少年を抱き留めた。
何も起こらなかったのを不思議に思ったのか、少年は小さく声を漏らす。
「ぁ……」
「…もう大丈夫。俺が、君を救けるから」
そう言って消太は、一旦少年を家に連れて帰った。
本当は両親を探して家に帰すのが最善だが、少年に家族の事を尋ねようとすると過呼吸を起こしてしまったので、少年が回復してから警察署に連れて行く事にした。
零凪が少年の足を拭いて顔に肌荒れ用の薬を塗っていると、消太が水の入ったコップを持ってくる。
消太からコップを受け取った少年だったが、少年がコップに触れた瞬間、コップが塵になって消えてしまった。
「あっ」
コップが崩壊し、水だけが重力に従って下に落ちる。
床には水溜りができ、少年の身体にも少し水がかかった。
「壊れちゃった…」
「五指で触れたものを壊す“個性”ってところか…ちょっと待ってて」
少年が“個性”を発動するのを見て、何かを思いついた消太は、2階から絆創膏を持ってきた。
少年の“個性”を消しながら、一番使う頻度が少ないであろう薬指に絆創膏を貼り、触れても“個性”が発動しないようにした。
「はい、これでひとまず安心だな」
消太が安心したような表情を見せると、両手の薬指を絆創膏でテーピングされた少年は、少し窮屈そうな表情を浮かべていたが、ひとまずは顔の痒みと吐き気は落ち着いたようだ。
身体の汚れを落とす為に零凪が沸かした風呂に入り、零凪のお下がりの服に着替え、消太が持ってきた水を飲んで落ち着いてくると、消太が少年に話しかける。
「そろそろ話せるかな」
「…うん」
「どうしてあんな所に一人でいたのかな」
「……家が、ないんだ。家も、モンちゃんも、お父さんも、お母さんも、おじいちゃんも、おばあちゃんも……華ちゃんも、みんな、みんな…っ、僕が…壊した」
消太が尋ねると、少年は過呼吸を起こしながら話し始めた。
少年は志村転弧といい、かつては純粋にヒーローに憧れる少年だった。
だが、彼の家ではヒーローについての話をする事は禁止されており、祖父母も、母も、転弧の味方にはなってくれなかった。
そんな中、姉だけは味方でいてくれたと思ったのだが、勝手に父の書斎に入りヒーローであった父方の祖母の写真を持ち出した事がバレると、姉は弟に罪をなすりつけ、父は転弧を庭に追い出した。
その晩転弧は、突然変異の“個性”を発現させ、愛犬の身体を壊してしまった。
“個性”を制御できなかった転弧は、そのまま姉と祖父母と母の事も壊してしまったが、唯一父親の事だけは明確な殺意を持って壊した。
それが昨晩の出来事だった。
家と家族を失った転弧は、長い間街を徘徊していたが、通行人は転弧の事を気味悪がり、誰も助けてはくれなかった。
「どうしよう…ぼく、どうしたらいいの…!? 助けてよ…!」
「大丈夫。助けるよ」
転弧が泣きじゃくると、零凪は転弧の頭を撫でた。
するとその時、部屋で調べ物をしていた消太が戻ってくる。
「聞いた話だと、“個性”事故として扱われる可能性が高いと思う」
「こせいじこ…?」
「うっかり“個性”を出しちゃって、それで誰かを傷つけちゃったとしても、それは誰も悪くないって事。“個性”が出たばかりの子供だと、たまにそういう事が起こるんだ」
「そう、なんだ……」
「“個性”事故なら、誰も転弧くんの事を怒ったりしないよ。お巡りさんなら、君の事を助けようとしてくれるはずだよ。一緒にお巡りさんのところに行こう?」
「……うん」
消太は、優しい言葉で転弧を説得し、最寄りの交番まで連れて行った。
消太の考え通り、転弧が家族を殺した事は、“個性”事故として扱われた。
本来、13歳以下の子供の“個性”による殺人には刑事責任が無く、加害者の保護者が代わりに責任を負うケースが多い。
それが仮に、加害者が故意に相手を殺した場合であってもだ。
転弧の場合は、被害者が全員身内であり、転弧の事を訴える人物は誰もいないため、今回の事件は身内内の“個性”事故として完結した。
その後は、事故の後処理が行われ、転弧は相澤家に引き取られた。
“個性”を消せる消太と零凪がいる方が安心だというのと、転弧自身が自分を助けてくれた恩人のもとで暮らす事を望んだので、相澤家で引き取る事にしたのだ。
「零凪、転弧ちゃん、ご飯できたわよぉ〜」
「ありがとう、お母さん」
「やった、オールマイトカレーだ!」
「昨日から煮込んだカレーだからすっごく美味しいわよぉ」
転弧を引き取ってから一週間、転弧はすっかり相澤家に馴染んだ。
零凪の両親は、客人用の空き部屋を転弧の部屋にし、転弧の為に服やオールマイトのおもちゃや家具などを買い揃えた。
両親は転弧の事を実の息子二人と分け隔てなく大事に育て、消太と零凪も転弧の事を弟として非常に可愛がった。
相澤家が転弧を引き取った事で、後に引き起こされる悲劇を回避したのだが、それは誰も知る事はなかった。
◇◇◇
消太が高校3年生になった年の夏。
消太は、親友の白雲と共にヒーロー事務所でインターンをしていた。
2年の頃から消太は白雲と一緒にインターンに行っており、消太がインターン時に子供を庇って建物の崩落に巻き込まれそうになった白雲を助け、二人とも無事にインターンから生還してからは、もう一人の親友の山田と並んで『A組3バカ』から『ビッグ3』と呼ばれるまでにメキメキと実力を伸ばしていった。
消太達がパトロールをしていると、オールマイトを崇拝する青年、赤黒血染が、街頭で英雄回帰の啓蒙の為の演説を行っていた。
『ヒーローとは、自己犠牲の果てに得うる称号でなくてはならない! 真の英雄とは、己を顧みず、利他の精神を持った者でなくてはならない! 金や地位の為に聖職に就くなどもってのほか!! ヒーローのあるべき姿とは何か、皆さんに今一度考えていただきたい!!』
「あー、またやってるよ“英雄回帰”」
「クスリでもやってんのかアレ」
「………」
赤黒が演説をしていると、通行人達は呆れ返る。
どうやら彼は毎日街頭演説を行っているようで、毎日のように英雄回帰の思想を聞かされていた住民はウンザリしていた。
「よし、俺ちょっと言ってくる!」
「白雲?」
白雲は、サポートアイテムのメガホンを持ち、“個性”の雲を出して赤黒のもとへ飛んでいった。
その頃赤黒は、自分の声に耳を傾けない民衆に失望し、こうなったら実力行使しかないという考えが頭を過っていた。
「…やはり、言葉で人は動かない、か」
そう言って赤黒がその場から退散しようとした、その時だった。
『おい、あんた! あんたの言ってる事、メチャクチャだぞ!!』
メガホンを持った白雲が、赤黒に向かって説教をした。
すると赤黒は、白雲に殺意に満ちた目を向ける。
「……何だと?」
「あんたの言い分だと、金の為に人を助けるヒーローは皆贋者なんだよな。でもそういうヒーローの中には、家族に腹いっぱい食わせる為に金が欲しいヒーローもいるんじゃないのか? 人助けの為なら、ヒーローの家族まで幸せを我慢しなきゃいけないのか?」
「ハァ……貴様、学生か? どんな理由であろうと、金儲けの為にヒーローを名乗るなど論外。大体、ヒーローが人並みの幸せを求める事自体が間違っている!」
「話にならねえな。街の人達が応援してくれるから、家で帰りを待ってる人がいるから頑張って人助けできる、ヒーローっていうのはそういうもんだろ! それで皆幸せなら別にいいじゃねえか! 何も見返りを求めずに、ただ機械みたいに人助けしてろって? そんなの、あんたの理想のヒーロー像と矛盾してるぞ!」
「貴様……!」
白雲は、赤黒に対して正論を言った。
自身の思想の矛盾点を指摘された赤黒は、ビキッと額に青筋を浮かせる。
すると白雲は、唐突に赤黒に疑問を投げかける。
「大体あんた、そんなにヒーローを変えたいと思ってるなら、どうしてヒーローにならないんだ?」
「腐敗しきった英雄思想に塗れた資格など、取るに値しない。俺は、贋者共と同類になる気など毛頭無い」
「ふざけんなよ! 贋者が増えるのが嫌なら、尚更ヒーローになって、周りを巻き込めるくらい活躍しなきゃダメだろ! あんたが変えようとしなきゃ、何も変わらねえぞ!」
現代のヒーロー教育に愛想を尽かした赤黒が白雲の言葉を聞き流そうとすると、白雲はさらに声を張り上げて説教をした。
すると、先程まで殺意を剥き出しにしていた赤黒の表情から殺意が消えていく。
「あんたの言う通り、真面目に人助けしないヒーローとか、自分が楽しみたいからって街の人を傷つける
そう言って白雲は、赤黒に手を差し伸べる。
すると赤黒は、毒気を抜かれたのか、深くため息をついてその場から退散する。
「ハァ………」
「どこ行くんだ?」
「演説をする気も失せた。今日は帰らせてもらう」
そう言って赤黒は、帰り支度をして人混みの中へ消えていった。
その日から、赤黒による演説はパッタリと止んだ。
その後、知人から聞いた話だと、赤黒は定時制のヒーロー科の高校に再入学し、ヒーロー免許を取得し公安直属のヒーロー『スタンダール』としてデビューを果たしたという。
見返りを求めず、悪事を働いているヒーローや徒に力を振るう
◇◇◇
それから時は流れ、零凪は雄英のヒーロー科に合格し、約束通りA組の教室で燈矢と再会を果たした。
「よっ、しばらく見ねえ間にデカくなったな。零凪」
「燈矢くん!」
燈矢が声をかけると、零凪は嬉しそうに笑顔を浮かべる。
あれから零凪は、すっかり背が伸びて体格も良くなり、クラスの中でも一番小柄だったのが、今では身長も180cmに届きそうだった。
すると、ターコイズブルーの髪を三つ編みにしたスタイルの良い美少女が零凪に話しかけてくる。
「零凪くん、久しぶり。私の事覚えてる?」
「…あ、あきちゃん!?」
「えへへ、ちゃんと覚えてくれてた。私ね、零凪くんに会いたくて、あれから毎日鍛えて勉強も頑張ったんだ」
幼稚園の頃、零凪と仲が良かった少女は、奇しくも雄英で零凪と再会を果たした。
ヒーロー名は、零凪は、『インビンシブル』、燈矢は『焔摩』、そして零凪の幼馴染みの少女、福門朗は『アルカイック』に決めた。
そして、その年の冬。
消太が追っていた
少女は、消太の献身的なケアによって少しずつ回復し、山田にひなたと命名された。
消太は、弟の零凪を連れてひなたの見舞いに訪れた。
「あいざわさん…この人は…?」
「俺の弟だ」
ひなたが首を傾げると、消太は零凪を紹介した。
零凪は、ひなたの痩せこけた姿を見るなり、ポロポロと涙を流してひなたを優しく抱きしめた。
「ひなたちゃん、今までずっと痛かったよね。つらかったよね。でも大丈夫だよ。これからは、僕達が君を幸せにするから。もう何も我慢しなくていいんだよ」
零凪がひなたを抱きしめて背中を撫でると、ひなたも涙を流して泣いた。
その後、ひなたは消太の養女として引き取られ、相澤ひなたとしての人生が始まった。
零凪と転弧も、ひなたの事を本当の妹のように可愛がった。
ある日の事、ひなたがいじめっ子に転ばされてボロボロになって帰ってくると、事情を聞いた零凪と転弧は今にもいじめっ子を殺しそうな勢いで殺気を放つ。
「……転弧」
「わかってるよ零兄。相手はガキだ。殺しはしない」
「零にい、転にい…! いいよ、僕はもう気にしてないから…!」
零凪と転弧は、笑顔で冷静を装っていたが、その表情は殺意に満ちていた。
大切な妹をいじめられて鬼神と化している男が二人、ここにいた。
ひなたへのいじめが発覚すると、零凪と転弧はいじめっ子をボコボコにして二度とひなたをいじめないと約束させた。
ひなたには過保護な兄が二人いるという噂が広まってからは、ひなたへのいじめがパッタリと止んだ。
それからしばらくして、ひなたの一つ上の学年に転校生が来た。
名前は渡我被身子といい、人当たりのいい優等生だった。
ひなたが一人で委員会の仕事をしている時も、気にかけて手伝ってくれるような優しい先輩だった。
「はい、これで全部ですか」
「ありがとうございます、渡我先輩」
渡我がひなたの仕事を手伝うと、ひなたが笑顔で礼を言う。
無邪気な笑顔を浮かべて礼を言うひなたに対し、渡我はニタァと不気味な笑顔を浮かべながら話しかける。
「…ひなたちゃんはとってもいい子ですよね。誰もやらない事を率先してやってくれて助かってるって、先生が言ってましたよ」
「……? どうも…」
渡我が口角を吊り上げて言うと、ひなたはきょとんとしつつもぺこっと頭を下げる。
渡我の“個性”は、血を飲んだ相手に変身できるというもので、“個性”の性質からか血に強く惹かれていた。
だが、両親に血を吸う事を禁じられ、友達にも気味悪がられた渡我は、自身の欲求を抑圧してきた。
今までずっと抑え込んできたものが、ひなたを前にしてとうとう抑えられなくなった。
「私、ひなたちゃんの事、前からいいなって思ってて…それで、ひなたちゃんの血をもらえたらなって……」
恍惚とした表情を浮かべながら、普通の人間が聞いたら頭がおかしいとしか思えない発言をする渡我を、ひなたは僅かに目を見開いて見ていた。
ひなたが見ている事に気がついた渡我は、我に返って自分の過ちを悟り、慌ててひなたから離れる。
「あっ、すみません、今のやっぱりナシで…」
「いいですよ」
渡我が慌てて撤回しようとしたその時、ひなたは平然と答える。
ひなたが言うと、渡我はみるみるうちに目を見開いていき、嬉しそうな表情を浮かべながら聞き返した。
「本当に!?」
「? よくわかりませんけど、血が欲しいんですよね? 渡我先輩にはいつも助けてもらってますし、僕で良ければ、いいですよ」
そう言ってひなたは、髪を掻き上げて白い首筋を見せた。
すると渡我は、パァッと笑顔を浮かべてひなたの首筋に齧り付いた。
犬歯がひなたの首筋の皮膚を食い破り、じわっと血が滲み出る。
ひなたの血を味わった渡我は、満足げに笑った。
「えへへ、おいしい」
「何か、渡我先輩の嬉しそうな顔、初めて見ました」
「え?」
「何というか、先輩、今までは無理に笑ってる感じがして、どう接したらいいのかわからなかったんですけど、そんな素敵な笑顔で笑える人だって知ってホッとしました。僕は、その顔の方が素敵だと思いますよ」
ひなたは、満面の笑みを浮かべながら言った。
すると渡我も、嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
その日から、渡我は、自分を偽るのをやめた。
血をくれる相手も、自分の笑顔を素敵だと言ってくれる相手もいると知った渡我は、自分を慕ってくれているひなたの為にも自分に正直でいる事に決めた。
「ひっ…!? と、渡我さん…!?」
「被身子…! お前、まだその癖直してなかったのか!? その顔をやめろ!」
友達は、渡我を気味悪がって離れていき、両親はすぐに笑顔をやめるように言った。
だが渡我は、自分が一番可愛いと思う精一杯の笑顔で言い放った。
「やだ」
「なっ…!?」
「お父さんとお母さんが私の為に言ってるのは知ってるよ。でも、それじゃ私がやなの。好きな子が、こっちの笑顔の方がステキって言ってくれたんだもん。だから私は私の“好き”なように生きるの」
渡我は、満面の笑みを浮かべながら、人生で初めて父親に逆らった。
愛想を尽かした両親は、親戚に娘を押しつけて行方を眩ませた。
だが渡我は、自分のした事を後悔していなかった。
その頃零凪は、偶然ワンフォーオールの秘密を知ってしまった者として、オールマイト自らのスカウトでオールマイトの事務所でナイトアイと一緒にサイドキックをする事になり、まだ高2にもかかわらずオールフォーワンとの戦いに駆り出された。
オールマイトとオールフォーワンは、お互い痛手を負ったが、オールマイトは見事オールフォーワンに勝利し、オールフォーワンをタルタロスにぶち込んだ。
決定打となったのは、オールフォーワンが取るに足らないと見下していた零凪のサポートだった。
オールフォーワンの“個性”が効かない零凪が全身にサポートアイテムを装備してオールフォーワンの体力をギリギリまで削り、オールマイトの勝利に貢献したのだ。
「ありがとう、インビンシブル。君のおかげで奴に勝てた。その名前に恥じない見事な活躍だったよ」
「…勿体無いお言葉」
病院に入院したオールマイトは、オールフォーワンを追い詰めた零凪に礼を言った。
オールマイトに感謝された零凪は、深々と頭を下げる。
「ところで、零凪少年。ワンフォーオールを継ぐ気は「要らないです」早いな」
「知っての通り、僕にはお父さんとお母さんから貰った“個性”がありますから。その力は、僕よりもっと必要な人がいるはずです。僕を見込んでくれた事は嬉しいですが、オールマイトの大切な力は受け取れません」
零凪は、そう言って頭を下げた。
◇◇◇
それから5年。
零凪も立派なヒーローになり、No.3ヒーローとして名を馳せていた。
クラスメイトの朗には、卒業式の後に告白され、そのまま交際を始め去年の夏に結婚した。
そんな中、零凪の事務所にとある人物が駆け込んでくる。
「インビンシブル!! 俺を弟子にしていただきたい!!」
「…え?」
爬虫類を思わせる顔をした青年が駆け込んでくると、零凪はキョトンとした表情を浮かべる。
青年の名は伊口秀一、駆け出しの新人ヒーローで、零凪のコアなファンだ。
「先日のCRC殲滅のニュース、拝見しました! スタンダールとチームアップを組んだとか…!」
「よく知ってるね…」
「俺も、あなたのような輝かしい人間になりたい! どうか、御師事を!!」
伊口は、零凪の前で土下座をして頼み込んだ。
結局、零凪は伊口の実力を確認してから弟子にする事に決め、伊口は零凪の課した合格ラインをギリギリ超えていたため、見事零凪の弟子になる事ができた。
その晩零凪は、妻の朗を連れて行きつけのバーに訪れ、バーの店主にその事を話した。
「って事がありまして…まあ、若い子が入ってきてくれるのは嬉しいんですけど、勢い凄すぎて正直かなりビビっちゃいました」
「あはは、零凪くんモテモテだねぇ。おじさんも肖りたいよ」
「ちょっと茶化さないで下さいよマスター」
零凪は、行きつけのマジックバーの店主、迫圧紘と話していた。
迫が経営している隠れ家的なバーは、一流の手品が見られる店として、割と繁盛しているようだった。
すると、店の厨房でつまみを用意していた店員、引石健磁がはしゃぎながら出てくる。
「ヤダ!! アナタ、インビンシブル様じゃない! 私大ファンなの! もし良ければ、サイン下さる!?」
「姐さん、今はお客様ですぜ」
「構いませんよ」
客として来ている零凪に対してはしゃぐ引石に迫が注意をしたが、零凪は笑顔でサインに応じる。
引石もまた、零凪のコアなファンだった。
零凪が性的マイノリティの人々への迫害を行っている
零凪が引石と話していると、迫が零凪と朗に話しかける。
「ところでお二人さん、今日は何か報告があって来たんじゃないのかい?」
「実は……」
迫が尋ねると、朗ははにかみながら話し始めた。
朗の話を聞いた引石は、驚いた様子で身を乗り出す。
「えっ、子供できたの!?」
「えへへ…」
引石が尋ねると、朗は照れ臭そうに微笑んだ。
二人は、今年の夏に結婚し、先週朗の妊娠が発覚したばかりだった。
兄や弟妹からは祝福され、先輩であり仕事で何かとご縁があるウォーターホース夫妻からも、昨日お祝いの品を戴いたばかりだ。
するとその時だった。
「マジかよ!?」
振り向くと、消太の親友の分倍河原が来ていた。
分倍河原は、若干気まずそうにしつつも気さくに話しかけながら零凪の隣の席に座った。
「ああ、すまねえな。立ち聞きしちまって…立ち聞きなんかしてねえよ!」
「仁ちゃん、来てたんだ」
「あたぼうよ! 二度と来るかこんな店!」
零凪が話しかけると、分倍河原はグッとサムズアップをする。
この店は、元々は分倍河原の行きつけの店で、零凪にこの店を紹介したのも分倍河原だ。
分倍河原は、雄英ではないがヒーロー科の高校を卒業し、『トゥワイス』というヒーロー名でプロヒーローになっていた。
今でも消太との交流があり、チームを組んだり一緒に飲みに行ったりしていた。
「にしても、こんなにちんちくりんだった零凪が父親にねぇ。嬉しいやら寂しいやら」
「そんなに小さくないよ! あとあきちゃんの前だからタバコやめて」
「おっと、そうだったな。悪い」
分倍河原がタバコを吸おうとすると、零凪が止める。
分倍河原とバーの店員達は、零凪と朗を祝福した。
◇◇◇
それから1年後。
雄英高校の2年B組の教室では。
「ねえ操くん! ひなたちゃんが入学したらしいですよ! 先生が言ってました!」
「知ってるよ…相澤先生んとこの娘でしょ」
渡我は、後ろの席の男子生徒、轟操に声をかけていた。
あれから渡我は、ひなたと同じ学校に通うために猛勉強して雄英に合格していた。
渡我が隙あらば操を刺そうとしてくると、操は本を読みながら『氷操』の“個性”で渡我を軽くあしらう。
「渡我さん、隙あらば刺そうとするのやめて。僕今日貧血気味だから」
「じゃあちうちうさせてください!」
「話聞いてた?」
渡我がキャッキャとはしゃぎながら話しかけると、操がツッコミを入れる。
その頃、ひなたはというと。
ひなたは雄英のヒーロー科に合格し、一緒に雄英に行く約束をしていた中学時代からの親友の竜崎浬と、入試で仲良くなった少年、心操人使と一緒に登校した。
「僕達みんな一緒のクラスだ! ラッキーだね! ひー君、カイリくん!」
「……そうだな」
「またざわっぴの事いじり倒せるな」
「ひぇっ!?」
竜崎がひなたをいじろうとすると、ひなたが怯える。
すると心操は、ひなたを庇うように立って言った。
「人が嫌がる事するなよ。お前それでもヒーロー科か?」
「人の受験を妨害したどこかの誰かさんには言われたくないんですけど?」
「は?」
「は?」
竜崎と心操は、互いに睨み合い、一触即発だった。
ひなたは、慌てて二人の間に入り、喧嘩を止めた。
「やめてよ二人とも! まだ入学式前なのに喧嘩してどうすんのさ! もうっ!」
「「…ごめん」」
ひなたが注意すると、二人は素直に謝った。
その後、三人で教室に向かうと、真面目な男子生徒、飯田天哉が、不良の男子生徒、爆豪勝己と喧嘩していたり、地味めの男子生徒、緑谷出久が、うららかな女子生徒、麗日お茶子と話していたりしていた。
しばらくクラスメイトと雑談していると、1年A組の教室に消太が入ってくる。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
(担任だった!?)
消太が自己紹介すると、A組の生徒達は驚く。
「そしてもう一人。副担任と教育実習生を紹介する。入ってこい」
消太が言うと、二人の青年が教室に入ってくる。
一人は零凪、そしてもう一人は転弧だった。
「はじめまして。…あ、はじめましてじゃない人もいるけど…副担任の相澤零凪、担任の相澤先生の弟です。僕の事は『インビンシブル』って呼んでください。皆よろしくね!」
「教育実習生の相澤転弧です。同じく相澤先生の弟です。相澤先生と紛らわしいんで、名前で呼んでもらって構いません。皆さん、よろしくお願いします」
零凪と転弧は、生徒達に頭を下げて挨拶をした。
三人が教卓の前に並んで自己紹介をすると、生徒達はワイワイと話す。
「インビンシブル、男なのにメッチャ美人だよなぁ〜」
「俺、イケるかもしんねぇ…」
「峰田ァ!?」
金髪の男子生徒、上鳴電気が言うと、葡萄頭の小柄な男子生徒、峰田実がヒーローらしからぬ血走った目を零凪に向ける。
男子二人がアホな会話をしている中、髪が左右で紅白に分かれた男子生徒、轟焦凍は、零凪に対して真剣な眼差しを向けていた。
(あの人がインビンシブル…親父や燈矢兄も認めるヒーローだ、学べる事は徹底的に学ばせてもらおう)
そして麗日は、隣の席のひなたにこそっと話しかける。
「兄弟三人ともヒーローで先生やってるって何かすごいね、ひなたちゃん」
「うん…全員僕の身内です。恥ずかしながら」
「「嘘ぉ!?」」
ひなたがはにかみながら言うと、麗日と、近くの席の女子生徒、芦戸三奈が驚く。
するとその時だった。
「うるさいぞ、ざわざわするな」
消太が、“個性”を発動して生徒達を睨みつける。
すると先程まではしゃいでいた生徒達は、全員黙り込んだ。
「早速だが、これから体育館で入学式がある。全員出席番号順に廊下に並べ」
そう言って消太は、ひと足先に廊下に出た。
ひなたの雄英での学校生活は、まだ始まったばかりだった。
原作および本編との相違点
・零凪くん生存
→学生時代の相澤先生のメンタル強化。そして両親の精神病院送りルート回避。父親が金融に再就職したため相澤家は転勤族となり、
・荼毘不在
→零凪くんがたまたま燈矢くんと同じ小学校に入学し、轟家を変えるきっかけを作ったため。
・トゥワイスヒーロー化
→相澤先生がたまたま分倍河原と同じ中学校に転校し、彼の両親を救ったため。
・相澤先生推薦合格
→分倍河原の両親を救ったため。中学校の教師が模範生の相澤先生を雄英に推薦し、根津校長が相澤先生の功績や“個性”の希少性を考慮し雄英にスカウトした。
・死柄木不在
→相澤先生と零凪くんが転弧くんを救出し、相澤家の養子として迎え入れたため。この世界線では相澤家の三男で、プロヒーローをしながら雄英の教員を目指している。
・黒霧不在&白雲生存
→相澤先生がヴィジランテよりもサクッと
・ヒーロー殺しステイン不在
→白雲に出会い説得されたため。現在は公安直属のヒーロー『スタンダール』として活動。
・トガヒミコ
→ひーちゃんがトガちゃんの理解者となったため。代わりにひーちゃんの追っかけになった。
・あきちゃん生存
→零凪くんに追いつくために雄英に入ったため。ちなみに本編で両親を殺し暴行してきた
・梅干し&ドクターフルボッコ
→オールマイトが打倒梅干しの為に零凪とチームアップを組んだため。零凪のサポートのおかげであっさり梅干しに勝ち、オールマイトも胃を全摘せずに済んだ。その後も、芋づる式にドクターの居場所も割り出され、トップヒーロー全員でドクターを確保。
・スピナーヒーロー化
→ヒーロー殺しステインがいないため。伊口はCRCを殲滅した零凪とスタンダールのファンになり、上京してヒーロー科の高校に合格し、零凪のサイドキックになった。
・Mr.コンプレス不在
→零凪の活躍によって治安が安定し、
・マグネ不在
→零凪がトランスジェンダーへの差別主義者の
・ウォーターホース生存
→零凪が間に合い、マスキュラーを倒したため。
・外典ヒーロー化
→きれいなエンデヴァーが外典くんを引き取ったため。以前は氷叢姓だったが、今は轟姓。
・轟くん無傷&パパっ子化
→家族仲が良好で、冷さんが精神を病まずに済んだため。外典くんが轟家の養子となったため、この世界線では四男。入学当初から炎もバンバン使う。
・夜嵐inB組
→轟くんとの推薦入試でのいざこざがなかったため。轟くんとはメッチャ仲良しです。ちなみにこの世界線では、推薦入試は1クラスにつき男子が2人ずつ、女子が1人ずつとなっています。
・カイリinA組
→零凪くんと転弧くんのおかげでひーちゃんが精神的に大人になり、割と早い段階でカイリくんの気持ちを理解できたため。ひーちゃんには中3の夏に告白してフラれましたが、その悔しさをバネに推薦で雄英に合格し、ひーちゃんと同じクラスにいます。
・イカレイザーヘッド不在
→零凪くんと白雲が生きているため。ちゃんと入学式に生徒を参加させるし、よっぽどの事じゃなければ除籍もしない優しい先生。
ちなこの世界線での零凪くんとあきちゃんのプロフィール
名前:
性別:男性
年齢:23歳
ヒーロー名:インビンシブル
“個性”名:『無効』
身長:179cm
体重:68kg
誕生日:2月29日(魚座)
血液型:AB型
出身地:東京都
好きなもの:家族の皆、オールマイト、あきちゃん、カレーライス
嫌いなもの:特にないです
性格:優しい
HERO’S STATUS
パワー:S
スピード:S
テクニック:S
知力:B
協調性:A
◯概要
相澤消太の実弟。
原作および本編では死柄木弔として登場した志村転弧の義兄であり、本編の主人公の相澤ひなたの叔父でもある。
◯人物
この世界線でのNo.3ヒーロー。かつてオールマイトのサイドキックだった事もある。
この世界線では、生き残った事により本編の連合メンバーとエンカウントし、図らずも全員の
女性よりも美しい造形の顔立ち、オールマイトも認める強さ、そして紳士的な性格を全て揃えた完璧超人で、国民からの支持も厚いが、未だにお兄ちゃんっ子ぶりは健在。
兄だけでなく、義弟と姪の事も溺愛しており、義弟と姪に手を出す者がいようものなら普段の優しい性格からは想像できない鋭い殺気を剥き出しにするといった豹変ぶりを見せる。
なお、現在は、幼馴染の福門朗と結婚し、一児の父となっている。
◯容姿
天然パーマの黒髪を低めのポニーテールにしており、母親譲りでくりっと丸いダークブラウンの目をしている。
顔は女性と間違われる造形をした美形男子だが、体格は割としっかりしている。
◯“個性”
『無効』
見た相手の“個性”を無効化する。
『抹消』に似た“個性”だが、あくまで『効かない』だけで“個性”の発動を妨害する事はできない。
心操の問いかけに答えても洗脳されず、緑谷の『フルカウル』使用時のデトロイトスマッシュもただのパンチになり、爆豪の爆破や轟の炎熱の炎の中でも火傷するどころか熱さすら感じずに動ける。
また、物体に宿す事も可能であり、ナイフに『無効』を宿せば、果物ナイフ一本で青山のネビルレーザーも両断できる。
ちなみに探知機の役割も果たしており、相手が自分に対して何の“個性”を使っているのかもわかる。
その本質は、“個性”を無効化する光子を生み出し放出する“個性”である。
名前:
性別:女性
年齢:23歳
ヒーロー名:アルカイック
“個性”名:『笑福』
身長:167cm
体重:56kg(妊娠前)
誕生日:6月26日(蟹座)
血液型:O型
出身地:東京都
好きなもの:零凪くん、シュークリーム
嫌いなもの:特にないです
性格:朗らか
HERO’S STATUS
パワー:B
スピード:C
テクニック:A
知力:C
協調性:A
◯概要
相澤零凪の妻。
ちなみに福門笑の再従姉妹でもある。
◯人物
零凪の幼馴染。幼稚園の頃から零凪に淡い恋心を寄せていた。
本編では、両親を
この世界線では零凪が生きているためそのような悲惨な目に遭わずに済み、零凪と一緒にヒーローになる夢を果たした。
なお、現在は、幼馴染の零凪と結婚し、一児の母となっている。
◯容姿
ターコイズブルーのロングヘアーを一本の三つ編みにしている。所謂タヌキ顔。巨乳。
◯“個性”
『笑福』
笑いによる健康効果を極限まで引き出す事ができる増強型の“個性”。
笑いによって発動するが、本人にその気がないと発動しない。
得られる効果は、主に脳の処理能力向上、新陳代謝の向上、筋力増強、免疫力増強、鎮痛作用など。
さらには、自分の寿命を消費する事で、他者に同様の効果を与える事ができる。
ちな子の世界線での席順
葉隠 障子 麗日 相澤
爆豪 耳郎 尾白 青山
緑谷 心操 上鳴 芦戸
峰田 瀬呂 切島 蛙吹
八百万 常闇 砂藤 飯田
竜崎 轟