天駆ける神意 HEAVENLY MIND   作:家葉 テイク

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『とある読者の廿年企画(ダブルディケイズ)』という読者企画の参加作品になります。鎌池先生、デビュー二〇周年おめでとうございます。


序 章
chapter00 不足を補うもの


 土地不足ってのは、いつの時代も人類につき纏う問題だ。

 

 御恩と奉公で語られた中世の武家社会では、人口増加に伴ってどんどんと『与えられる土地』が減っていって、不足した土地は奪い合いによって再分配するしかなくなっていった。そして人口推移の曲がり角を迎えた現代の日本にあっても、土地不足は変わらず問題で在り続けている。

 いくら人口減少で土地が余っているって言ったって、コンビニに行くのに車で数十分かかるような辺鄙な田舎に進んで住みたがる物好きはそういないからね。誰だって住むなら便利な都市部の方がいい。電車でアクセスできるのは最低限度って人の方が多数派よ。

 そういう連中にとって、辺鄙な田舎の『有り余っている土地』は存在しないも一緒。結局、狭い日本のさらに狭い都市部では中世の頃から変わらない『土地不足』が繰り広げられているって訳ね。

 

 そしてそれは、この学園都市でも同じこと。

 総人口二三〇万人のこの都市の面積は、東京都の三分の一程度()()()()。今なお多くの学生が街の外からやってきて外国からの留学生もひっきりなしにやってきているうえに、敷地の多くは実験場やら校舎で占められている。全体の土地に対する居住可能な土地なんて、雀の涙程しかないでしょうね。

 一応、第二二学区のような『地下に空間を作ることによる土地不足の解消』なんかも研究されているらしいけど、仮にも地震大国の日本で地下をスカスカにするっていうのは、国民的に忌避の対象だ。そう乱発できるようなもんでもない。

 逆転の発想で『空に土地を作るプロジェクト』なんてものも出てきているけど……あれもどうだかね。確かに、『別荘衛星(ラストリゾート)』だの『玉兎植民(ルナフロンティア)』だの、涙ぐましい努力は探せばいくらでもある。でも、そういうのを縄張りにしている統括理事の『忌まわしきブレイン』もいるし、一筋縄じゃいかないよ。上手いことやってたエンデュミオンタワーとかいう軌道エレベータも、この前派手にぶっ飛んだし。

 そういえば、最近じゃあ『雲上学区』……超巨大な飛行機を何機か連結させて、上空五〇〇〇メートルに新たな学区を作ろうなんてプロジェクトまで持ち上がっているって話も聞くけど、あれは件の『忌まわしきブレイン』の縄張りを荒らさないようにっていう配慮もあるのかもしれないわね。

 

 ただ、こういう土地不足を解消するのに、何もハイテクな技術は必要ない。

 たとえば『空地バンク』みたいな『住宅の物流』が整備されれば、放置されている空き家や空きテナントを適切に管理し分配したり、パズルゲームみたいに住宅地を適宜整理してやるだけで土地不足はある程度解消できる。どっかの試算じゃ、それだけで土地不足の二〇パーセントは改善できるなんて言われたりもしているくらいよ。

 

 重要なのは、物流。

 要は技術(テック)じゃなくて仕組み(システム)の方が簡単なんだよ。

 必要なものを必要な場所に。世の中が上手く回るコツっていうのは、そういうところにあるもんだ。

 

 ……あん? あぁ、いや別に。

 ただ実家の商売柄、土地の利用に関しては一家言あるってだけよ。ほら、商売の邪魔になりそうな家の住人に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ね。これも立派な『住宅の物流』だと思わない?

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