今回は綾瀬視点です。
放課後、佐倉が急いで帰る準備してる。そんな佐倉と目が合った。
「あ......」
「.......?」
佐倉が鞄に色々閉まってた手を止めちゃった。どうしちゃったんだろう。
「佐倉さんっ」
櫛田が佐倉に話しかけた。須藤のこと、聞かないといけないから。池とかも櫛田と佐倉のこと、気になってるみたい。
「......な、なに......?」
私の方を見てたから、横から櫛田に話しかけられてビックリしてる。
「ちょっと佐倉さんに聞きたいことがあるんだけどいいかな?須藤くんの件で......」
「ご、ごめんなさい、私......この後予定あるから......」
佐倉、櫛田の顔見ないようにしてる。あんまり話したくなさそう。
「そんなに時間は取らせないよ?大切なことだから話をさせてほしいの。須藤くんが巻き込まれた時、もしかしたら近くにいなんじゃないかって......」
「し、知らないです。堀北さんにも言われたけど、私全然知らなくて......」
「ごめんね......少しでもいいから、佐倉さんの話が聞きたいんだ」
佐倉は嫌がってるけど、櫛田も大事なことだから引き下がらない。
「......私、人付き合いが苦手なので......ごめんなさい」
佐倉、急いで荷物を片付けた。
「さ、さよなら」
机に置いてた四角いの持って教室出ようとした。でもちょうどそこには本堂がいて、佐倉はぶつかっちゃう。
「あっ!」
四角いのが落ちちゃった。佐倉がそれを急いで拾ってる。
「嘘......映らない......」
佐倉......凄い悲しそう......四角いの何回も触ってる。
「ご、ごめんね。私が急に話しかけたから......」
「違います......不注意だったのは、私ですから......さようなら」
教室出ちゃった......
「追いかけなきゃ......」
「......綾瀬?」
綾小路が話しかけてきたけど、今は佐倉のことが先。少し前の方に佐倉がいる。
「佐倉、待って」
「あ、やせさん......」
佐倉は泣きそうになりながら私の方を見た。
「それ、大事なもの......なんでしょ?」
「え......あ、うん......」
「そっか。それって、何?」
「えっと......カメラ、だけど......」
「......カメラって、これじゃないの?」
携帯を取り出した。
携帯の中にあるもの。それがカメラ......だと思ってたんだけど......違うのかな。
「カメラって色んな形があって、最近の携帯で使えるカメラも悪くないけど、学校の携帯だとあんまり性能良くなくて......だから、買っちゃった......」
「へー......色々あるんだ......」
全然知らなかった。多分私にはカメラの性能って分かんないけど、佐倉には佐倉のこだわりがあるんだ。
「佐倉の大事なもの、治さないと、だね」
「......うん」
......ちょっと笑った。うん、良かった。
「......きか、ないの?」
「......?何を?」
「須藤くんの、こと......」
「んー......今はいい......佐倉とお話してたい」
佐倉は須藤のこと話したくなさそう。それならいい。きっと須藤のことは
「あの、それなら......少し、私と行ってほしいところ、あるんだ......」
「どこにいくの?」
「特別......棟......そこで、綾瀬さんの写真を......撮らせてほしいの......!」
「......写真?」
「うん......本当はカメラで撮りたかったんだけど、壊れちゃったから携帯で......」
「......いいよ?」
私がそう言うと、佐倉が嬉しそうに『ありがとう』って言った。
写真は櫛田とかにいっぱい撮られたことある。だから分かる。
「私、初めて綾瀬さんを見たときからずっと写真を撮りたくて......」
「なんで?」
「綾瀬さんって......か、可愛いから......」
「......?」
女の人からよく言われるけど、可愛いって分かんない。聞いてみても意味が分かんなかった。
歩いてると、特別棟ってところについた。来るの初めて。
......そう言えば石崎が言ってたっけ。ここで須藤と喧嘩をしたって。
「私は何をすればいいの?」
写真を撮るときはポーズ、をするんだよね。ピース?とか。
「出来れば、お菓子を食べてるところを撮りたいな。綾瀬さんっていつもお菓子食べてるから、そっちの方が綾瀬さんらしくって......」
「うん。いいよ」
私のポケットにはいつもお菓子入ってる。
ポケットから出したのは棒つきのキャンディー。これ、結構好き。長く食べられるし、色んな味があるから。
「はわわわわ......カワイイ......!」
キャンディーを舐めてると、佐倉が携帯を持ちながら震え始めた。
「カワイイ!カワイイ!」
「え......佐倉......どう、したの?」
「あ、そのまま動かないで!!」
「う、うん......」
佐倉の大きな声、ビックリした......なんか目もギラギラしてる......
「はあああぁぁぁ......水着とか着せたらもっとカワイイんだろうなぁ......今度一緒に......ああ!でもでも!それは恥ずかしいかも......けど、やっぱり綾瀬さんとなら......!」
パシャパシャって音が凄い......
どうしよう、佐倉がおかしくなっちゃった......それとも佐倉って本当はこんな感じ、なのかな......
「えーと......何をやっているんだ?」
「......はっ!?あ、綾小路くん!?......と堀北さん......!?」
綾小路と堀北だ。何しに来たんだろう。
「うおっ、佐倉ってそんな大きな声出せたんだな......」
「あ......えと......」
佐倉の顔、凄く赤い。恥ずかしいってやつだ。
少しの間静かになって、佐倉も落ち着いてきた。
「少し話を聞いてもいいかしら佐倉さん」
「あっ......わ、私......何も......」
堀北が話を聞こうとすると、さっきまで赤かった顔が青くなって怯え始めた。事件のこと、話したくないから。
「まあ待て。佐倉、帰ってもいいぞ」
綾小路が堀北の前に立つ。それを見て佐倉ちょっとホッとした。
「さ、さよなら」
佐倉は急いで逃げようとした。
「無理しなくてもいいからな」
綾小路が話しかけると、佐倉は止まった。
「佐倉が目撃者だったとしても名乗り出る義務はない。もし怖い誰かに強要されそうになったら相談してくれ。どこまで力になれるかは分からないが手は貸す」
「それ私のことかしら?」
「んー......堀北、怖くないから違う......と思うよ?」
「......ごめんなさい」
佐倉が頭を下げてこの場を去った。佐倉の知らなかったところ、知れて良かった。
「良かったの?千載一遇のチャンスだったかも知れないわよ?」
「無理強いしたって仕方ないんじゃないか?それに堀北も分かってるだろ?Dクラスの目撃者は証人として弱いって」
「どうして?」
「突然現れたDクラスの目撃者。そんなものは端から見れば、口裏を合わせて証言させているようにしか見えないからよ」
「えーと......」
「ようは須藤を救うためにオレたちが嘘をついてるんじゃないかと思われる可能性があるってことだ」
「じゃあ......やっぱり話し合いだと須藤が悪くないって証明できないの?」
「どうだろうな。今のままだとそれは厳しい」
「何かしらの奇跡があってCクラスが訴えを取り下げるなんてことがあればいいけど、そんなことは現実的じゃないわ」
「......そっか」
やっぱり話し合いは駄目。なんとなく、わかってた。
「ねえ君たち、そこで何してるの?」
新しい声。振り返ると、そこにはピンク色の髪をした、職員室で見たことある人がいた。名前は知らない。
「私たちに何か用かしら」
「用っていうか......ここで何してるのかなーって」
「佐倉と写真撮ってた」
「しゃ、写真......?あれ、てっきり喧嘩騒動絡みでここにいると思ったんだけど......違った?」
「もし私たちがその件に関わる調査をしていたとして、あなたに関係があるの?」
「んー、関係はあんまりないね。でも概要を聞いてちょっと疑問に思ったから、それで一度様子を見ようと思ってここにきたの。君たちDクラスだよね?よかったら事情を聞かせてくれない?」
私は調査に来たわけじゃないから......堀北たちに任せた方がいいのかな......
「ダメかな?他のクラスのことに興味を持ったら」
「裏があるようにしか見えないわね」
「裏って?私たちがCクラスやDクラスを妨害する、みたいな感じの?」
その人は少し困ったような顔をした。
「そこまで警戒しなくてもいいんじゃないか?本当に興味本位って感じだし」
「私は他人の興味本位に付き合う気はないから、勝手にして」
堀北は窓の外に立った。この人のこと、嫌いなのかな。
「聞かせてよ。先生や友達からは喧嘩があったくらいにしか聞かされてないんだよね」
綾小路が話してくれた。石崎たちは須藤に呼び出されて殴られたこと、でもそれは逆で、須藤が石崎たちに呼び出されて殴られたこと、そして喧嘩した後に学校に嘘の報告をされたこと。
「そんなことがあったと。なるほどなるほど。ねえ、これって結構大きな問題じゃない?どっちかが嘘をついてる暴力事件ってことでしょ?」
「だから一応現場に来て調べてた。別に何もなかったけどな」
周りを見てみるけど、何がおかしいのかなんて私には分からない。綾小路の言う通り何もないようにしか見えない。
「君たちはクラスメイトとして、須藤くん、だっけ、の方を信じてるんだよね。だからDクラスにとっては冤罪事件ってことだけど......もし須藤くんが嘘をついてたらどうするの?無実どころか、有罪確定の証拠が出てきたと仮定してね」
「正直に申告させるわ。その嘘は後々、必ず自分の首を絞める結果に繋がるから」
「うん、そうだね。私もそう思う」
嘘をついて、罪を隠す。
それはこの世界では赦されないこと。
私は胸の辺りにある十字架に手を添えた。
「んー、あのさ、もし良かったら協力しようか?目撃者とかもいるかもしれないし、そうなったら人手が多いほど効率的でしょ?」
「どうしてBクラスの生徒に手伝ってもらう流れになるのかしら」
「BもDも関係ないよ。個人的には嘘をついた方が勝っちゃうのが見過ごせないんだよね」
「おー......なんかかっこいい......平田みたい......」
「平田くん?あははっ、彼のことはよく聞くけど、私はそんなに立派な人じゃないよ」
「そうなの?」
なんとなく平田っぽいけど......違うのかな。
「それで、どうかな?私は悪い提案じゃないと思ってるけど」
「......手伝って、もらう?」
私には良いことばっかりな気がする。
「そうね。協力関係を結びましょう」
「決まりね。私は一之瀬。一之瀬帆波」
「堀北よ」
「私、綾瀬心音」
「綾小路だ。よろしくな一之瀬」
Bクラスの人と友達になっちゃった。友達いっぱい。
「それから目撃者の件だけれど、それ自体はこちらで見つけられたわ。ただ、残念なことにその目撃者はDクラスの生徒だったけれどね」
「あちゃー、まあ、ほら、それでも目撃者であることに変わりはないし。他に目撃者がいないとも限らないでしょ?可能性は低くてもさ」
目撃者も他のクラスの人だったらいいんだよね。いるのかな。
「それにしても暑いねー、ここ。3人とも大丈夫なの?」
「私は暑さや寒さには比較的強いから」
「私も、全然大丈夫」
「羨ましい......オレには暑くて仕方ないぞ......」
綾小路辛そう。今は暑い......のかな。全然分かんないや。
「あ、そうだ。円滑に物事を進めるためにも連絡先聞いてもいいかな?」
「うん。いいよ。......どうやってやるんだっけ......綾小路、やって」
「携帯をそう簡単に渡すのは止めなさい......綾小路くんに渡したら変なことされるわよ」
「しないから。お前はオレをなんだと思ってるんだ」
「あはは!君たち仲良いんだね!」
「それはないわ」
「右に同じく」
「......仲良しだよ?」
堀北が監視しながら綾小路に携帯を操作してもらった。堀北は連絡先を交換しなかったから、連絡は綾小路がすることになった。
綾小路、ちょっと嬉しそう。私も、嬉しい。