ようこそ理想郷へ   作:ナムさん

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第21話 自由人

 試験の説明も全て終わり、放り出されたDクラス。こういったときに必ず率先して行動するのは平田だ。

 平田を中心にまずはベースキャンプをどうするかといった話し合いが始まる。と思った矢先に須藤が簡易トイレを使ったことがきっかけとなり、話はまたトイレをどうするかという問題にシフトする。トイレは必ず必要となってくるため、こちらも早々に解決すべきではある。

 

「マニュアルの中を見ると、仮説トイレもポイントで購入出来るみたいだね」

 

「え!それ見せて!」

 

 平田の言葉に篠原たちが一斉に集まり、マニュアルを覗き込んだ。

 

「参考写真を見る限りだとそこまで普通のトイレと変わらないみたいだよ。水も流せるしね。必要なポイントは......20ポイントだね」

 

「これ絶対いる!本当はそれも嫌だけど......それじゃないと無理!」

 

 篠原の発言を引き金に、多くの女子が賛同する。

 

「ちょ、ちょっと待てよお前ら!20ポイントだぜ!?たかがトイレに!今は節約しないとまずいっしょ!」

 

 反対したのはポイントを節約してたまらない池。そして簡易トイレで十分だと思っている一部の男子たちだ。

 

「あんたが決めないでよね。意見をまとめてるのは平田くんなんだから。ね、平田くん」

 

「そうだね......やっぱり水洗トイレはあったほうが......」

 

「平田。意見をまとめるのは自由だけど、何でも勝手に決めるなよ」

 

「あーもううっさい。軽井沢さんも何とか言ってよ。仮説トイレはいるって」

 

 同意を求めるように、女子の代表格である軽井沢に声をかける篠原。

 

「そう?や、そりゃきついけどさ。ポイントは欲しいし......あたし我慢する」

 

 意外なことに、真っ先に文句を言いそうな軽井沢が簡易トイレの使用に賛同した。

 

「お風呂だって川があるんだから何とかなるんじゃない?」

 

「そんな......軽井沢さん!」

 

 軽井沢がそう言ってしまったら、我の強い篠原でも正面から逆らう術はない。多数の女子が軽井沢についている以上、発言力はどうしても限られるからだ。

 

「......平田、辛そうだね」

 

 ヒートアップが止まらないトイレ論争の中心に立つ平田を見て綾瀬がそう言った。平田は男子と女子の意見に板挟みされどうしていいか分からず、それでも困った顔は極力見せずに取りまとめようと必死だった。そんな姿が綾瀬には辛そうに見えたらしい。

 

「統率力のないDクラスじゃ、先が思いやられるわね。それに平和主義の彼、平田くんには何一つまともに決められないんじゃない?」

 

「じゃあ......どうするのが正解なの?」

 

「そうね......私としてもポイントは1ポイントでも多く残したいわ。でも、満足のない状態で1週間生活を送れるような自信はない。それが正直な意見よ」

 

「誰だってこんな環境で過ごしたことなんてないだろうからな......全てが未知数すぎて正解なんて誰にも分からない」

 

 サバイバル経験者でもいれば話は別なんだが。

 

「あっ......ねえ見て。AクラスとBクラス。ひょっとして話が纏まったんじゃない?」

 

 焦る女子の声に、オレたちは一斉に振り向く。

 

「俺たちもこうしてられないぜ......キャンプ地とスポットを探しに行く!」

 

「待って池くん。計画もなく森に入るのは────」

 

「平田。いかせてあげて」

 

 さっきまで隣にいた綾瀬は平田の元に駆け寄り、そう言った。

 

「今は分かんないことだらけ、だからとりあえず動く。頭スッキリするから」

 

「綾瀬ちゃんの言う通りだぜ。使えそうなスポットとか拠点見つけたらすぐに戻ってくるからさ。その後全員でそこに移動してから話し合いすればいいじゃん。簡単な話だろ?」

 

 須藤と山内も一緒にいくつもりなのか。苛立つ池の周りに集まる。

 

「綾瀬。お前もいこうぜ」

 

 須藤が綾瀬を誘うが、綾瀬は平田の方を一瞬見た後に、首を横に振って断った。綾瀬なりに平田のサポートをした方がいいと判断したのだろう。

 

「......三人とも。絶対に一人で行動しないようにしてほしい。迷うと大変だからね」

 

「わかってるって。んじゃ、色々見つけてくるぜ!」

 

 溢れだした勢いは止まることなく、池たちは森の中に駆け出した。

 

「平田、皆暑そう」

 

 見回してみると、普段あまり外に出ていなさそうな生徒たちは汗をかいて苦しそうにしていた。かく言うオレもこの暑さは厳しい。

 

「そうだね......皆、とりあえず森の中に入ろう。日陰だからここよりは涼しいはずだよ」

 

 率先して平田と綾瀬はテントを運ぶための準備を始めた。最初は綾瀬が折り畳まれたテントを2つ運ぼうとしていたが、それはさすがに平田が拒んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 森に足を踏み入れてたオレたちは平田を先頭にして奥へと進んでいく。

 オレは須藤が使った簡易トイレをしっかり処理した後、それを折り畳んで運んでいた。女子の綾瀬がテントを一つ持っているため、ここで行動しておかないとそれを引き合いに出されたときに立場がなくなってしまうと判断したからだ。

 

「綾瀬は偉いな。ああいう場で率先して行動しようなんて」

 

「ううん、私なんて平田に比べれば何も出来ない。それに勉強も一番下だから、今回は頑張る」

 

「以前に学力以外のところが問われるかもしれないって話をしたわね。まさに今がそのときなのね」

 

 今回の試験は身体能力に自信のある綾瀬が輝く試験。少なくとも堀北はそう思っているだろう。確かに異常な力と異常な足の速さを持つ綾瀬なら活躍の場面も多い。

 

「ねえ綾瀬さん。あなたはどうして普段の体育で本気を出さないの?」

 

 そういえば櫛田が言ってたな。綾瀬は手を抜いてると。

 

「んー......誰も私についてこれないから......道具とかも壊しちゃったりするかもしれないし......」

 

「凄い自信ね......」

 

 綾瀬は身体能力に関しては絶対的な自信を持っている。初めて会った橘書記に対しても自分の方が強いと豪語したりするからな。他にも似たような場面は多く見る。

 改めて綾瀬は謎が多い。身体能力も力があるとかそんな単純な話じゃなくて、堀北兄と戦った際には身のこなしが洗練されたものだったのをよく覚えている。おそらく戦闘の方面で綾瀬に勝てる生徒が果たしているのかどうかといったレベルだろう。オレの見立てでは、一流の格闘家でも綾瀬には勝てないと思っている。

 

「ここなら日差しも遮れるし、誰かがいても話を聞かれる心配はないね」

 

 平田たちは森から少し入ったところで足を止め、話の続きを再開した。

 

「池たちだけじゃなくて、俺たちも動くべきじゃないか」

 

 そう言ったのは幸村だった。幸村もポイントは節約するべき派で、その理由も決して小遣いを得るためではなく、Aクラスとの差を少しでも縮めるためといったものだった。

 

「うん。そうだね。すぐに動かなきゃいけない。だけど問題を放置したまま散り散りになるのは良くないよ。まずトイレの問題を解決しないと」

 

「だからそれは支給されたトイレで対応すればいいだけの話だろう」

 

「でも幸村、もし皆がトイレに行きたいって言ったらどうするの?」

 

 綾瀬が幸村に対して発言する。きっと綾瀬もトイレはあった方がいいと考えたんだろう。

 

「そんなの順番で使えばいいだろ」

 

「あ、そっか......」

 

 あっさり納得してしまった。頑張れ綾瀬。

 

「いや、30人以上いるクラスで不慣れな簡易トイレ一つをトラブルなく回すなんて無茶があるよ。今綾瀬さんが言ったみたいに皆がトイレを使うことになったら一人3分でも90分以上はかかる」

 

「......私、あのトイレを上手く使える自信ない......」

 

「そうなるともっと時間が掛かるかもしれない。それだと緊急のときに対応できないよね。だからやっぱりまずは一つトイレを設置するべきだと思う」

 

 少しだけ強い口調で平田は幸村たちに言う。

 

「僕はこのトイレのこともそうだけど、支給されたものだけじゃ限界があると思うんだ。これはきっとポイントは無意味に我慢するものじゃなく、逆にある程度使う方が効率が良いってことを教えるためのヒントなんじゃないかな?」

 

「限界......ねえ、テントってよく分かんないけど......あのテントって皆入れるの?」

 

「まだ開いていないから確かなことは言えないけど......きっと皆が入るのは厳しいんじゃないかな......」

 

「そっか......じゃあ私は外で寝るよ?」

 

 それを聞いて男子たちはさすがに申し訳なそうな顔をした。そして幸村にもう折れるべきだと目で訴える。

 

「......分かった。平田の意見に賛成する」

 

 幸村も周囲の視線に耐えきれず折れる。幸村は元々頭の良い生徒だ。平田の話を聞いてポイントを節約し続けるのは現実的じゃないとすぐに分かったんだろう。そんな幸村でも冷静になれないほどに様々な情報が詰め込まれすぎた。

 ひとまずトイレ問題が片付いたことによって安堵の空気が流れる。

 

「次は......さっきも意見が出ていたけど、ベースキャンプを決めるために僕らも探索するべきだと思う。誰か参加してくれる人はいないかな?もちろん僕もいくよ」

 

「平田、平田。私いきたい」

 

 手をピシッとあげて迷うことなく参加を表明する綾瀬。こればかりはオレも参加するべきだな。オレも綾瀬に続いた。

 

「あの、私で良かったら行くよっ」

 

 そして櫛田も参加を表明。

 綾瀬と櫛田が率先して参加する以上男としては自分もいかなければ情けないと思うだろう。これで一部の男子も参加を表明した。そして意外なことに佐倉も手をあげている。綾瀬に感化されたんだろうか。

 

「16人かな。よし、3人ずつの4チームと4人の1チームで行こう」

 

 そして各自チームを組んでいく。オレは綾瀬と佐倉にくっつく形で組むことにした。

 

「よ、よろしくね二人とも」

 

「うん」

 

「こちらこそよろしく頼む」

 

 平田たちも順当にチームを組んでいったが、ここで一人余った生徒がいた。高円寺六助だ。平田は高円寺を誘おうとしているが、残りの二人から拒否されてしまっている。他のチームも高円寺は入れたくないようだ

 

「高円寺。私たちのとこに入れてあげよ」

 

 綾瀬がそう言うので高円寺はオレたちのチームに入ることになった。まあ特に支障もないので良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、美しい。大自然の中に悠然と佇む私は、美しすぎる......!究極の美!」

 

 探索を始めたオレたちは先ほどいた場所から少し歩いたところにいた。高円寺は一人で盛り上がっていて相変わらずだ。

 

「高円寺。どんどん先に行ってる」

 

「う、うん。高円寺くん、歩くの早いね」

 

 高円寺は佐倉のことなど考えずに森の奥へと進んでいく。そしてその足取りには一切の迷いがなく、その進行ルートも『オレの理想とする道筋』であったことにオレは感心していた。

 ただ問題は、佐倉が高円寺のペースについていくのに必死で息が上がり始めていること。

 

「高円寺。あまり速いペースで進むのはまずいんじゃないか?迷うぞ」

 

 佐倉を気遣って声をかけるが、高円寺は後ろ姿を向けたまま髪をかき上げた。

 

「心配はいらないさ。この森なら多少のことが起こってもノープロブレムさ」

 

「それはどういう意味だ?」

 

「ここは自然の森と呼べない。少なくとも日中、彷徨って迷う確率は極めて低い。だからこそ多少興味はあるがね」

 

 意味深な言葉を残した高円寺は、オレたちから興味を失ったのか先ほどよりも足取り速く歩き出す。佐倉がついていけるペースじゃない。

 

「おい────」

 

「あ、あの。私は大丈夫だから。頑張ってついていくよっ」

 

 汗をかきながら、グッと小さくガッツポーズを作って見せる佐倉。

 

「ううん、佐倉休んだ方がいい」

 

「え?でも高円寺くんが......」

 

「私がついてくからいいよ」

 

 確かに綾瀬ならついて行けると思うが......果たして手綱なしで綾瀬を行かせてしまってもいいのか。

 それにオレとしても綾瀬が離れてしまうのはよろしくない。

 

「じゃあ。行ってくる」

 

「あ、待ってくれ────」

 

 綾瀬は止まることなく走り出してしまった。

 

「あ、綾瀬さん......大丈夫かな......迷ったり、しないかな......」

 

 もしそんなことになったら堀北から説教を食らうだろうな......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高円寺が先に行っちゃったから追いかける。

 

「高円寺。待って」

 

「やあホワイトガール」

 

「ううん、違うよ。私、そんな名前じゃない。綾瀬心音」

 

「君の意見はどうでもいい。私がそう呼ぶことに君が拒否する権利などないのさ」

 

「でも名前は大事だよ?自分を自分だと証明してくれるから」

 

「なるほど、今の発言で君のことが大体分かったよ」

 

「分かった?私を?すごいね」

 

 みんなは私のこと分かんないって言うのに。

 

「ホワイトガール。君は臭うねぇ」

 

「私、臭い?」

 

 自分のジャージの匂いをかぐ。これ、臭いのかな。旅行だからって言われて堀北が洗濯してくれたはずだけど。

 

「安心したまえ。君が想像しているようなものじゃない。君の内面の話だ」

 

「内面......中身?」

 

「君は器こそ美しいが、その中身には醜悪なものが詰まっている。君は上手く隠しているつもりかもしれないがね」

 

「......?何も隠してないよ?」

 

「自覚は無しか。だが溢れ出る()()をまともに浴びたものは正気を保ってはいられないだろう。もちろん私には効果がないがね」

 

「えーと......」

 

 高円寺の話、難しくてよく分かんない......()()を浴びたら正気を保てないって、どういうこと?

 

「あ、そうだ。高円寺、皆の所に戻らないとダメだよ?」

 

「断る」

 

「え?戻ってこないと皆心配しちゃうよ?それに点呼にいないとポイント減っちゃうし......」

 

「それは私の知ったことではないがね。だが君のその健気さに称して特別にチャンスを与えよう。もし君が私とデートしてくれるというなら考えなくもない」

 

「デート?」

 

「そうさ。もし私についてくることが出来たら、そのときは(みな)のところに戻ることも考えようじゃないか」

 

「つまり......追いかけっこ?」

 

「そうだ。ついてきたまえ」

 

 高円寺は背中を向けて走り出した。すごく早くて、もう見えなくなりそう。

 

「追いかけなきゃ......」

 

 私も走る。

 走るときは私の身体にたくさんの糸が刺さったイメージをする。

 頭の上に突き刺さった糸、これで姿勢がしっかりして身体がぶれない。

 腕は弓を引くみたいに片方を後ろに動かしたら、もう片方を連動させて前に動かせる。

 足は少し違う。糸に思いっきり引っ張られた片方の足が前に来たら、もう片方の足を引っ張られてるみたいに足を出す。そして力強く地面を蹴って、地面を飛ぶように蹴る。

 凄い風。こんな自然がいっぱいのとこで走ったの初めて。気持ちいい。

 少し走ると高円寺の背中が見えた。走りながら高円寺に話しかける。

 

「追いついた」

 

「随分大振りなフォームだねぇ。身体の力を余すことなく使っているようだ。では、これはどうかな?」

 

 高円寺は大きな木を登った。動きが凄くきれい。あっという間に一番高いところまでいった高円寺が私を見下ろしてる。

 私も登らないと。木は登ったことない。でも簡単そう。

 手で木を掴む。足を落ちないように木に絡める。そしてそのまま腕の力で身体を持ち上げて登る。

 

「まるでクマのような登り方じゃないか。決して美しくはないが、そのスピードで迫られるとなかなか見応えはある」

 

 すぐに高円寺のとこに並ぶ。

 

「服、汚しちゃった。洗えば大丈夫だよね?」

 

「これは手を抜きすぎると絡め取られるのは私か。それではもう一つギアをあげよう」

 

 高円寺が木の枝に勢いよく飛んだ。飛んで、くるくる回ったりもしてる。

 勢いをつけて、飛ぶ。余った力は回転して逃がす。枝と枝が近かったら片手で掴む。しっかり見て飛ぶところを選ぶ。

 うん、理解した。あれだよね、高いところにある棒を掴んでその場で回ったりするやつと似てる。あれを移動しながらやればいいだけ。

 

「あっ......」

 

 木の枝を回って次の木の枝に飛ぼうとしたら力加減を間違えた。

 私の身体は上を向けて寝た状態になっていて、飛ぼうとしていた枝の上を足から通過しようとしてる。もう背中も通過した。

 でも、まだ間に合う。右手を背中の方に回してその枝を掴む。無理やり動きを止めたから身体がガクッてなった後にビキビキって音がしたけど全然大丈夫。私の身体はしっかり動く。

 今は右手だけで枝を掴んで宙ぶらりんな状態。とりあえず左手でも掴む。そして足を振って力を作る。そのまま飛んで、飛んだ先の木に腕を回しながら身体を寄せて支える。両足はその木の太い枝に乗せて着地。

 高円寺はもう遠くにいる。このままだと見失っちゃう。

 高円寺って凄いんだね。これは思ってた以上だ。もしかしたら高円寺なら私についてこれるかも。

 

「高円寺────本気でいくよ」

 

 全身に線を張り巡らせる。

 

 高円寺の背中についてく。今はそれだけを頭に入れる。

 

 多分学のときや龍園のとき以上に()()()()()()()()()()()()()()

 

 思考は信じない。信じるのは直感だけ。

 

 本能で────飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────あれ?」 

 

 どれくらい飛んでたんだっけ。全然気づかなかった。

 

「やっとお目覚めかな?フッ、これは素直に認めよう。私は君の実力を見誤っていたようだ。まさか君が猛獣だったとはねぇ」

 

「あっ、高円寺だ」

 

 高円寺に追いつくと、高円寺が止まった。私も止まる。

 

「このまま続けてもいいが......そろそろゴールも見えてきたようだ。ではここらで幕引きとしよう」

 

 高円寺が木から飛び降りた。じゃあ私も飛び降りよう。

 

「追いかけっこ、終わり?」

 

「なに、あと少しさ。ここからはゆっくりいこうじゃないか」

 

 高円寺と歩いてると、砂浜が見えた。

 

「あれ、船だ」

 

 ここって......最初にいたところ?高円寺がそのまま船のとこまで歩いてく。

 

「私はここでリタイアだ」

 

「え......でもついてこれたら戻るって言った......高円寺嘘つき......」

 

「私は考えると言ったのさ。考えた結果、リタイアを選択したのだよ」

 

「どうしてリタイアするの?」

 

 リタイアするとポイントたくさん減る。だから良くない。

 

「すまないねぇ、見ての通り体調が悪くてね」

 

「あ、そうなんだ......私には見ても分かんないけど......ごめんね」

 

 高円寺はいつもと変わらないように見えるけど、高円寺がそう言うならきっとそう。ポイントが減っちゃうけど、それなら仕方ないよね。

 

「気にする必要はない。君とのデートは存外に楽しかった」

 

「えっと、お気を付けて?」

 

(みな)にはよい旅をと伝えておいてくれたまえ」

 

「わかった。ばいばい」

 

 高円寺はそのまま船に乗っちゃった。私は皆のところに戻ろう。

 

「......あれ、どうやって戻るんだっけ......」

 

 えっと......どこから森に入ったんだっけ......戻ってくるなんて思ってなかったからさすがに覚えてない。あっち側だったと思うけど......全然自信ない。

 まだ空は明るいけどいつか暗くなる。暗くなるまでに点呼、いないと駄目なんだよね。

 

「んー......」

 

 とりあえず島を一周してみよう。それなら誰かに会えるよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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