ようこそ理想郷へ   作:ナムさん

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第22話 思惑のズレ

「綾瀬さん......行っちゃったね......」

 

 綾瀬と高円寺がいなくなって取り残されたオレたちは結局二人で探索することになった。

 

「綾瀬も無事に帰ってくるといいんだが......」

 

 ここにいても何も起こらないので森の中を歩いて行く。

 

「佐倉は綾瀬のことどう思ってるんだ?」

 

 間が持たないので軽く話しかけてみる。あの事件を経て佐倉が綾瀬をどう思っているのかはずっと気になっていた。

 

「綾瀬さんは、私にとってヒーローだよ。私は、綾瀬さんには救われたから。でもね......だからこそ、たまに綾瀬さんがどうしようもなく心配になるときがあるんだ......」

 

「それは、どうしてだ?」

 

「綾瀬さん、優しいから。きっと皆を助けようとするんじゃ、ないかなって。綾瀬さんは違うって言うかもしれないけど、綾瀬さんは平田くんみたいだよ。だって綾瀬さんは、やり方は凄かったけどあの人も......あっ、ごめん、なんでもない......」

 

 あの人とは佐倉のストーカーのことか。あまり思い出したくないのか、佐倉は目を瞑った。 

 Dクラスを纏めている平田を綾瀬は辛そうだと言った。佐倉も平田を見てそう思ったんだろう。だから佐倉は綾瀬が皆を救おうとするあまりに自分が潰れてしまうことが不安なのかもしれない。

 もしそうだとしたら佐倉も優しいとオレは思う。なぜなら、オレが綾瀬に対して不安だと思っていることとは大分()()()()()からだ。

 

「綾瀬ならきっと大丈夫だ」

 

「そう、だよね」

 

 とりあえず綾瀬のことは一旦置いておくしかない。

 

「道があるな」

 

 森の中から人が切り開いたと思われる道が出てきた。大木を切り倒し整備された跡がある。

 

「うわ......凄い......!」

 

 道を歩いていると山の一部にぽっかり大穴が空いた洞窟の入り口を見つけた。よく見ると、洞窟内はしっかりと補強されており、穴そのものが人の手で作り出したようなものだった。

 

「もしかしてアレ......スポット、なのかな?」

 

「さて、どうだろうな」

 

 確かめるべく洞窟に近づこうとしたところで、穴の奥から一人の男子が出てくるのが見えた。オレは佐倉の進行方向に手を伸ばし、静かにするようジェスチャーした。オレの意図を察した佐倉が兎のように素早く隠れる。オレも息を殺してその男を観察する。

 無駄がなく、素早いスポットの確保。そして男の手にはしっかりキーカードと思われるものが握られている。

 やがて内部からその男に向けられた声が聞こえた。

 

「この大きさの洞窟があればテントは二つで十分ですね葛城さん。それにしても運がよかったです。こんなに早くスポットを押さえられるなんて」

 

「運?お前は今まで何を見ていた。ここに洞窟があることは上陸前から目星はついていた。見つかるのは必然だったということだ」

 

「上陸前から、ってどういう意味ですか......?」

 

「船が何故か遠回りするように島の外周を一周したことは覚えているか。あれは生徒たちにヒントを与えるための学校側の行動だったんだろう。この洞窟に至るまでの道も船のデッキから見ることが出来た」

 

「で、でもただの観光というか、景色を楽しむ配慮だった可能性はないんですか?」

 

「それはない。あのアナウンスを聞く限りではな」

 

 葛城と呼ばれた男はあの『奇妙』なアナウンスに気づいていたようだ。

 

「俺には全然分からなかったですけど......葛城さんは学校の意図も見抜いていたんですね......流石です!やはりリーダーである葛城さんは......」

 

「弥彦。どこで誰が聞き耳を立てているか分からないんだ。言動には気を付けろ」

 

「は、はいっ!すみませんでした......でもこれで結果を残せば『坂柳』も黙るしかありませんね」

 

「敵は内側ばかりじゃない。いずれ足元をすくわれるかもしれないぞ」

 

「でも警戒するとしたらBクラスぐらいですよ?Cクラスも恐れることはありませんし、Dクラスなんて不良品の集まりじゃないですか」

 

 その言動から二人がAクラスであることが分かった。

 

「そろそろ次のスポットへ向かうぞ。お喋りはここまでだ」

 

 そんな二人の声と足音が聞こえなくなるのを待ち、念のため更に2分ほど待った。

 

「行ったか......」

 

「ね、ねえ綾小路くん。もしかしてさっきの人が......リーダーってこと......?」

 

「もしあの洞窟がスポットで、占有されていたとしたらその可能性はあるだろうな」

 

 スポットを占有するためにはリーダー本人でなければならない。

 オレたちは洞窟に足を踏み入れた。内部には壁に埋め込むようにしてモニター付きの端末装置が設置されており、画面にはAクラスの文字と7時間55分を切ったカウントダウンが表示されていた。

 これでAクラスはこのスポットを占有権を更新し続ける限り、8時間毎に1ポイントを獲得し続けることとなる。

 

「スポットを占有してるから......やっぱりあの人が......どど、どうしよう。凄い秘密、知っちゃったね......!」

 

 Aクラスに大打撃を与える情報を耳にしてしまい興奮気味、焦るように佐倉が言う。

 

「後でオレの方から平田に報告しておく」

 

 有用な情報であることは間違いない。ただ、この場に綾瀬がいないことが残念で仕方ないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 成果なく元いた場所に戻ると、堀北がオレたちのところに駆け寄ってきた。

 

「綾瀬さんはどうしたの?」

 

「あー......それが......」

 

 オレは高円寺とはぐれてしまったこと。そして綾瀬がその先を追ったために綾瀬ともはぐれてしまったことを伝える。

 

「あなたは一体何をやってたの?」

 

 それを聞いた堀北はご立腹状態となった。

 

「仕方ないだろ......高円寺はもう知っての通りだが綾瀬も大概自由人だ。まあいずれ帰ってくるだろ」

 

「あんな森の中を綾瀬さん一人で回れると思う?今頃きっと迷子になっているはずよ」

 

「いや、そこは高円寺もいるし......」

 

「彼がこっちに戻ってくる保証なんてないでしょう。でも綾瀬さんなら点呼のために戻ろうとするはずよ。そのときに帰り道を覚えているかしらね。はぁ......あなたがしっかり止めていれば......」

 

「あ、あの......綾小路くんだけが悪いわけじゃなくて、私も......」

 

「私は今綾小路くんと話してるの」

 

 機嫌が悪い堀北は佐倉を鋭い瞳で見据えた。

 

「ご、ごご、ごめんなさいぃ!!」

 

 佐倉は慌てて頭を下げ、ぴゅーっと走り去って距離を取ってしまった。

 

「あまり佐倉を怖がらせるなよ」 

 

「......そんなつもりはないわ。彼女の性格上綾瀬さんを止めるのは無理だろうから非はないと言ったつもりだったの」

 

 オレにはしっかりと非があるようだ。

 

「私も綾瀬さんが自由に動くことについてはあまり煩く言うつもりはないわ。でも限度があるのよ」

 

「ほう、意外だな。お前が綾瀬の自由をある程度は認めてるなんて」

 

「私はいつか綾瀬さんには自立出来るようになってもらいたいと考えてるわ。まあそれも大分先にはなりそうだけどね」

 

「自立?それはまたどうして」

 

「私が甘やかしてばかりだと彼女が成長しなくなってしまうからよ」

 

 しっかり甘やかしている自覚はあったのか。そのセリフも出会って二日目ぐらいにオレに向けて言ったはずなんだけどな。

 とにかく堀北は綾瀬のためを思って自立させたいと考えているようだ。決して綾瀬が煩わしいからというわけではないらしい。

 

「おーい!俺たち凄いもん見つけたぞ!」

 

 探索組も戻ってきて一息ついていたところに池の元気な声が聞こえてきた。

 

「池くん。何があったんだい?」

 

「川だよ川!すげぇ綺麗な感じの!そこに装置みたいなのあったんだよ!あれが占有とか何とかの機械だ!ここからは10分もかからないから全員で行こうぜ!」

 

「それは大手柄だね......!水源が確保出来たら僕たちの状況は大きく好転するかしれない」

 

 見つけてきたスポットをもとに、ベースキャンプ地が決まりそうだった。

 

「だけどまだ戻って来てない人がいるね。綾瀬さんと高円寺くん、かな......?」

 

 しっかりチームを組んでいたはずの二人がいないことに平田は疑問を覚えていた。

 

「ほら、説明してきなさい。自分の監督不行き届きでございますってね」

 

「分かった分かった」

 

 この件はしばらく掘り返されそうだな。

 オレは平田に堀北と同じように綾瀬たちのことを説明する。

 

「それは心配だね......でもベースキャンプも決めないと皆が不安になるだろうし......」

 

「ここに目印を置いとくしかないんじゃないか?いつ戻ってくるか分からないぞ」

 

「そうだね。二人には申し訳ないけど、僕らは池くんたちの言っていたスポットにいこう」

 

 分かりやすいところに石で矢印を作った。今日のところは何事もなければ形がそのまま残っているはずだ。

 そして川にたどり着いたオレたち。川辺には先ほど洞窟で見た装置が大岩に埋め込まれてあった。

 

「うん。きれいな水に、日光を遮る日陰。地ならしした地面。ここならベースキャンプにするのに理想的かもしれないね。凄いよ池くん」

 

「へへへ、だろ!」

 

 静かに流れる川は幅10メートルほどの立派なものだった。川の周囲は深い森と砂道利に囲まれているが、この場所は整備されたように開けていた。

 これが偶然出来た立地とは思えない。意図して学校がこの空間を作ったんだろう。

 

「ここをベースキャンプとするのは確定として、問題は誰をリーダーに据えるかだね」

 

 ここを占有するのは当然のこと。もし他クラスに占有されてしまったらこの川は使えなくなってしまう。

 占有するために必要なリーダーという存在。誰もがその重役を避けたいと思う中、櫛田は皆に集まるように言い、円を作らせると小声で話した。

 

「私も色々考えてみたんだけど、平田くんや軽井沢さんだと嫌でも目立っちゃうよね。でもリーダーを任せるなら責任感のある人じゃないとダメでしょ?だから堀北さんならどうかなって思ったんだけど、どうかな......?」

 

「櫛田さんの意見に賛成だよ。というより、僕もリーダーは堀北さんが良いって思ってたんだ。後は堀北さんが良ければ引き受けてもらいたい」

 

 視線が集まるも、本人は特に拒否する様子はなかった。

 

「分かったわ。私が引き受ける」

 

 堀北も他の人間に任せるよりは良いと判断したのだろう。

 程なくしてキーカードを受け取った堀北は装置へと向かう。当然誰かに見られている可能性も考慮して誰がリーダーが分からないようなカモフラージュもした。 

 

「よーしこれで風呂と水の問題は解決したよな!」

 

「はあ?川の水飲むとか、あんた正気?」

 

 池はこの川を飲み水と風呂の両方で活用する気満々だったが、篠原たち女子にはそんな考えはなかったらしく、呆れたように川を一瞥した。

 

「なんだよ、全然いいじゃんか。綺麗な水だろ」

 

「いや無理すぎ......川の水飲むなんて普通じゃないって......」

 

 更に数人の女子が集まり、こそこそと相談しあう様子を見て池は苛立ちながら口を開く。

 

「そうかあ?水は透き通ってるし、天然水のようなもんだろ!」

 

 濁っていたりすることはなかったが、女子だけじゃなく男子の一部もどこか一歩引いた位置で川を眺めている。

 

「何が不満なんだよ皆。折角見つけ川を有効活用しない手はないだろ!」

 

「じゃああんたが試しに飲んでみてよ」

 

「は?別にいいけどさ......」

 

 半ば強制的に女子に催促され、池は手ですくって川の水を飲んだ。

 

「かー!キンキンに冷えてて気持ちいいぜ!うめぇ!」

 

「うわマジドン引き。無理無理、そんなの飲むなんて。気持ち悪い」

 

「はあ!?お前が飲めって言ったんだろ篠原!」

 

 二人はまたも互いににらみ合いバチバチと火花をぶつけ合う。

 

「とりあえず水の問題は後で考えることにしようか。喧嘩してても辛いだけだよ」

 

 今の状況を打破したい平田はそうみんなに伝える。

 平田の意向なら特に反論もでないだろう。そんな風に思っていたが、意外なところから話の流れに待ったをかける男がいた。

 

「篠原。お前も文句言ってやんなよ。全員で協力しなきゃならない試験だろ、これって」

 

 クラスの問題児、須藤だ。いつになく冷静な口調で篠原を窘める。

 

「ちょ、やだ笑わせないで。それ須藤くんが言う?」

 

 入学してから度々問題を起こしてはクラスをかき回していた須藤が協力なんていったものだから篠原はバカにした態度で笑った。

 それは須藤自身が一番分かっているようで、それでも態度を変えることなく続けた。

 

「俺がクラスに迷惑をかけたことは分かってんだよ。だからこそ言ってんだ。つまんねーことで反感買ってたら、いずれそれが自分に跳ね返ってくるってよ」

 

「......なにそれ。どうせ須藤くんだってポイントを使いたくないだけでしょ」

 

「誰もそんなこと言ってないだろ。寛治、お前も冷静になれよ。いきなり川の水飲めって言われたら誰だって普通抵抗を感じるだろ。俺だってそうだしな」

 

 須藤がこうしてしっかり周りを見た発言をクラスメイトにしたことはなかった。そのことに驚いた両者は、少しだけ冷静さを取り戻す。

 

「一度解散にしよう。まだ時間はあるし、慌てて決める必要はないよ」

 

 平田が再び落ち着くよう声をかけ、篠原は引き下がった。

 

「前途多難ね。この様子じゃいつまでたっても団結なんてしないわ」

 

「それならお前も何かしてやったらどうだ?平田の補佐とか」

 

「私が彼の補佐?出来ると思う?」

 

 そんな自信満々に言われても困る。

 

「綾瀬さんなら話は別でしょうけどね」

 

「綾瀬か......帰ってこないな......」

 

「......大丈夫かしら」

 

 心配そうに呟く堀北。少しはその心配をクラスにも向けて欲しいところだがまあ無理だろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 迷っちゃった私はとりあえず島の外周を回ってた。まだ人に会えてない。

 

「あれ......なんか聞こえる......」

 

 砂浜の方から声が聞こえてきた。人もいっぱいいる。なんか凄い楽しそう。見たことない道具とか食べ物がいっぱいある。あれはCクラスの人たちだ。ちょっとお邪魔しよう。

 

「ねえ」

 

 私は外側にいた二人に話かけた。

 

「お前は......綾瀬心音か。こんな時間に何をしにきた?」

 

「迷っちゃった」

 

「......は?迷った?」

 

「高円寺と追いかけっこしてたんだけど、高円寺が体調悪くなっちゃって船に帰ったの。その後迷ったから人探してた。そしたらここ見つけた」

 

「......ふざけてるのか?」

 

「......ふざけてないよ?」

 

 その人たちは身体を寄せあってひそひそ話し出す。

 

「お、おい......高円寺がリタイアしたって......本当だと思うか?」

 

「知らねぇよ......大体高円寺って身体能力が化け物だって噂だぞ。そんなやつと追いかけっこって......」

 

「......俺は以前こいつがとてつもないスピードで走っているところをたまたま見たことがある。あれは人間が出せるスピードじゃなかった......」

 

 この人たちは私のこと知ってるのかな。

 

「とりあえず龍園さんに報告......だな」

 

 話が終わったその人たちは私を龍園のところに連れていってくれた。龍園は椅子で寝っ転がってる。

 

「あの、龍園さん......例の......」

 

「龍園。やっほー」

 

 朝にチエがやってた挨拶を真似してみた。

 

「心音じゃねえか。お前こんなところで何やってやがる」

 

「迷っちゃった」

 

「......そこまで迷うような森じゃないだろ。さっそく偵察にでも来たのか?だがそれにしては早すぎるな。お前たちにはもうそんな余裕があるのか」

 

「ううん。本当に迷ったんだよ」

 

 龍園はちょっと考えてたけどすぐに分かってくれたみたい。

 

「その様子だとマジで言ってやがるな。考えてみればそれも当然か。どうせDクラスなら今頃水をどうするか、なんてことで揉めてそうだしな」

 

「綾瀬さんじゃないですか!来てくれたんですね!!」

 

 石崎が走りながらこっちに来る。

 

「石崎だ、やっほー」

 

「綾瀬さんがウチのクラスに来てくれるなんて......やっぱり龍園さんに会いに......?」 

 

「......?違うよ?」

 

 龍園たちにここまで来るまでに起こったことを説明してあげた。

 

「高円寺が船に帰ったて......それ本当かよ!?じゃああいつリタイアしたのか......信じられねぇ......」

 

「うん。嘘じゃないよ」

 

「あ、いえ!決して綾瀬さんのことを疑ったわけではありません!!」

 

「心音。高円寺はどうだった?」

 

「凄く足が早かったよ。木とかもビュンビュン飛んでた」

 

「やはり高円寺は化け物だったか。あいつの身体能力はある程度聞いているからな。まあそれに追い付くお前も化け物ではあるが」

 

「あの高円寺に......やっぱすげぇ......」

 

 石崎が私のこと驚いた顔で見てる。

 

「心音。どうせならゆっくりしていけよ。ここでならバカンスを堪能出来るぜ?」

 

「あ、でも皆のところに戻らないと......」

 

「帰り道も分からないんだろ?あてもなく彷徨ったところでDクラスの連中に会える可能性は『かなり低い』。それなら大人しくお迎えを待っていた方がいいとは思わないか?」

 

「んー......」

 

 島なんて初めてだがらどれくらい歩けば皆に会えるかなんて確かに分かんない。

 

「お前のためにこっちでもDクラスを探しといてやる。お前がこっちで元気でやっていると聞けばあいつらも安心出来るはずだぜ?」

 

 もしずっと歩き回っても皆に会えなかったら更に心配かけちゃう......それなら龍園の言うことが正しいかも。

 

「......そう、だね。うん、ありがとう。龍園はいい人だね」

 

「クハハハハ!!そのセリフをDクラスの連中にも聞かせてやりたいぜ。まあせいぜい楽しんでいけよ。あと一週間もあるんだ。旅行なんだから楽しんでいかないとな?」

 

「綾瀬さん!いきましょう!俺が皆に声かけときますよ!」

 

 石崎は他の人たちに私のことを説明した後に、私を遊びに誘ってくれた。なんか櫛田みたい。そのまま石崎と歩いていく。

 

「石崎はどうして私にそこまでしてくれるの?」

 

「それはもうあの龍園さんの拳を敢えて避けなかったときの綾瀬さんが滅茶苦茶カッコ良かったからですよ!あれを見てこの人には敵わねぇって思いましたね......しかも龍園さんに臆することなく対等的に接しているのも凄いことですから!」

 

「皆は龍園が怖いの?へー......」

 

 私には恐怖なんてないから分かんない。

 

「俺はもう確信してますよ。綾瀬さんなら龍園さんとタメを張れる存在になれるってね......あ、おーい!アルベルト!」

 

 石崎に呼ばれた人は背が大きくて、黒いメガネをかけてる。あんなメガネ初めてみた。

 

「アルベルトはこの前トイレに行ってて見てないだろ?この人が綾瀬さんだよ!」

 

「よろしくね」

 

「......」

 

 アルベルトって人が喋らない。

 

「綾瀬さん気を悪くしないでくださいね。アルベルトは日本人と黒人のハーフで、日本語で話すのが苦手なんですよ。でもこっちの言ってることはなんとなく分かるみたいです」

 

「そうなんだ......えと、そのぶらっくメガネ、くーる......あっ、まいねーむいず、あやせ......へろー?」

 

「......Hello」

 

「あの滅多に喋らないアルベルトが喋った......」

 

 良かった。ちゃんと英語が出来たみたい。

 

「あ。あそこでビーチバレーやってるんで俺たちも混ぜてもらいましょう」

 

「ビーチバレー......普通のバレーとは違うの?」

 

「俺もルールとかは詳しくないですけど......そんなに変わらないんじゃないんですかね?多分ボールが違うのと砂浜でやるってだけですよ。あとは二人でやるとか」

 

「へー......」

 

 ボールを触ってみる。柔らかい。体育で触ったことあるのと全然違う。

 私たちがコートに入れてもらうと、龍園もこっちに来て見に来た。

 

「おい心音。本気でやってみろ」

 

「え?本気?」

 

「お前の身体能力に関してはこっちでも色々話を聞いてる。だが普段の体育では手を抜いているんだろ?あんな異常な力を見せたぐらいだ。力は相当あるはずだ」

 

「んー......いいの?」

 

 一応聞いてみたら龍園は頷いた。じゃあいっか。

 私は石崎とチーム。相手はアルベルトと知らない人。

 アルベルトがコートの反対側からボールを飛ばしてきた。私の方に向かってくる。

 

「えと......確か腕を閉じて......」

 

 ボールが来たら腕で受け止めて上の方に弾くんだっけ。

 

「ナイスレシーブです!綾瀬さんパスいきますよ!シュート決めちゃってください!」

 

 石崎が私の頭を越すところにボールを飛ばした。

 

「私も飛ばなきゃ......」

 

 足に力を込めて地面を蹴る。コートで見えづらかったアルベルトたちが良く見えた。

 

「うおっ!?メチャクチャ飛んだ!?」

 

 ボールがすぐ近くにある。本気でやらないといけないから......

 

「いくよ────」

 

 右腕を全力で振る。手に感触が伝わってきた。

 

「......あれ?」

 

 って、思ってたら凄い音が鳴ってボールが消えた。手に当たった気がしたんだけど......

 

「ボール、どこ......?」

 

 近くで見てた龍園に聞いてみると、龍園がちょっと驚いてた。

 

「ねえいしざ────」

 

「ボ、ボールが......破裂した......」

 

 石崎は地面を指差しながら腰を抜かしてた。

 私も地面を見てみると、さっきのボールみたいなのがバラバラになってた。

 

「あ、壊しちゃった......ごめんね」

 

「クク、これは想像以上だ......こうしちゃいられねぇな。心音、これからテストをするぞ」

 

「え......テスト嫌い......」

 

「安心しろ。テストと言っても遊びみたいなもんだ。お前は何も考えずにただ遊んでればいい」

 

 それなら楽しそう。龍園についていって色々遊ばせてもらおうっと。

 

 

 

 

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